真実
智は刑事と向かい合ってテーブルに座っていた。
「コーヒーは飲めるかな?」
刑事の優しい声がし智は緊張から少しは落ち着きをとりもどしていた。 「はい。大丈夫です、ありがとうございます。」
刑事はにこっと微笑み暑いから気をつけるようにとコーヒーを智に渡した。
少しコーヒーを飲んだ頃刑事から
「少しは落ち着いたかな?」
と微笑みかけられた。
「はい。」
「じゃあさっき言っていた事を聞かせてもらえるかな?なぜ犯人が彼ではないと思うのか…」刑事の目が変わった。肘を机について手の平をあわせ智をじっと見つめている。
智はこれでは取り調べを受けているようだと思いながら深呼吸をし、話しだした。
「私達はいつも一緒にいました。藍那は7年前に入院していた頃気になっていた彼がいて彼を忘れられないといつも言っていました。他の男性なんかには興味なんかなくて付き合った事もありません。そして私が病室行った時少しだけ藍那が目を覚ましてこう言ったんです。『彼がいたの』って。藍那が彼って言うのは7年前の彼いないんです。」
少しの沈黙が続いたあと刑事が口を開いた。
「だから犯人は彼だと…言いたいのかな?」
刑事はじっと智を見つめている。
智もだんだん自信を失ってきた。
「はい…」
「その彼が今の容疑者とは考えられないのかな?」
「それは有り得ません、藍那と五つ位しか年は離れていないはずだから」と智が言うと刑事が確かにとうなづいた。
「では容疑者に聞きたい事とは何なのかな?」刑事の鋭い目に負けてしまいそうになるも震えながら言った。 「あなたが本当に犯人なのかと、本当に誰でも良かったのかと…誰かに頼まれたのではないか…です。」
最後の質問は刑事も考えてもみなかった質問だった。 刑事は考えた
「確かに誰でも良かったと言うわりには目撃者の情報では容疑者は彼女を狙って走ってきたとの事だった。それに彼女言う『彼』が気になるな」刑事は智に質問した。
「その藍那さんの言う『彼』とは誰か解るかな?」
「解りません、藍那自信も覚えてないみたいで」
刑事はずっと下向き返事が無かった。智は自分の力では無理だったと落ち込んでいた。すると刑事は顔をあげ智に話し掛け始めた。
「私はね智さん、ただ『彼』と言う言葉だけで今の容疑者を犯人ではないとは言えないし、7年前の彼が犯人とも言えないよ。でも確かに私も容疑者の言う『誰でも良かった』は納得が出来ないんだよ。」
智は刑事を見つめていた。刑事は手を鼻の部分に持っていき悩んでいるようだ。そしてすっと立上がり智に言った。
「とりあえず容疑者に共犯者がいないかと20歳代の男性を知らないか調べてみよう。」
智は解ってくれた事が嬉しく刑事に感謝した。
「ありがとうございます。宜しくお願いします。」
「こちらこそわざわざ知らせてくれて助かったよ。」と先程の優しい笑顔に戻った刑事がそこにいた。
その頃藍那は7年前の時代にまだいた。
藍那はここ2、3日宏と過ごしている中で宏を思い出す事が出来て幸せな毎日を送っていた。そして今日が宏の退院の日である。
「やっぱりこれは夢じゃないのかな?だって現実ならあたしが先に退院だし…」と考えているとノックする音が聞こえた。
「はい。」
藍那が返事をするといつもならジャージ姿の部屋着で来るのに今日は退院する日であるため、ジーンズにグレーのTシャツとシックに決めた姿の宏が入って来た。
「今日の調子はどう?」
「今日は平気、退院おめでとう。」笑顔で言うと宏が少し申し訳そうな顔をした。その顔を見た時、
「あれ今の顔見覚えがある…」と思っていると宏が、
「調子が良いなら少し散歩に行かないか?」と車椅子を持って来たため一緒に中庭に行った。
中庭で他愛の無い話しをしていると藍那はじょじょに淋しさが込み上げてきて涙を流して泣いてしまっていた。
「もう会えなくなってしまう。過去に来てしまった事で悩んでいたけど、ここで彼に会えた事だけはなによりも感謝していたのに」そう思いながら泣いているといきなり両手を握られた。
「そう泣くなよ。これで会えなくなるわけじゃないんだから。」その言葉は聞き覚えがある言葉だった。
「俺は今日で退院するけどまたお前が元気になったら会いに行くから」 藍那は混乱していた。宏の言う言葉は全てに聞き覚えがあり、初めて言われた気がしないのだ。混乱していると宏が藍那の手に小さめのノートを渡した。
「お前が元気になるまではこのノートで交換日記をしよう。お互い書いたら封筒にノートを入れて送り合おう。」藍那は涙をながしながらうなづいていた。
「じゃあ俺そろそろ行くわ。またな」そういうと宏は去っていった。
藍那はノートをみながら全てを思いだし涙が止まらなくなっていた。
「そうよ。このノート見覚えある。彼の一言一言をあたしの心は覚えていた。あたしの過去の記憶なんかより今いるこの過去の現在が真実なんだわ。」藍那は涙が止まらなかった、彼を待ち続けた7年はなんだったのか、覚えていれば会いに行けてこんな思いはしなかった。するとふと藍那は気付いた
「あたしなんで記憶が消えたんだろう…」そう思った途端いきなり凄い頭痛に教われ心臓も痛みだし藍那は倒れてしまい、気をうしなった。
「う…ん」藍那は体特に背中の痛みで目がさめた。いろいろな線が体に繋れている。
「ここは…」
そう藍那が呟いたとき、
「藍那…………」
と叫び声が聞こえて見ると母親が藍那を見ていた。藍那の母親は藍那に抱き付くと抱き締めて泣きわめいた。
「私……現代にかえれたんだ…」
藍那は18歳の今の時代に帰ってきたのだった。
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