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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

金曜の夜の束縛は、少し強めでも大丈夫と彼女は囁く

 かって男子であるならば、30にもなって独身であると、親戚一同や職場の上司などから、アイツは性的不能なのではないかとか、同性愛者ではないのかと囁かれた時代もあったが今は昔の話である。


 まわりを見回してみれば、30どころか40を越えても独身である者は少なくなく、その中でも、たった一度でさえ夫婦の契りをかわした事がないと言う猛者も多い。


 私自身も42の大厄を迎えた今に至るまで、たった一度も結婚をした事はなく、悠々自適の独身ライフを送っているのであるけれど、自分とは全く正反対に、二度、三度と結婚と離婚を繰り返す猛者も知り合いにいるのだが、ぜったいに某かの問題がそいつにあるのだろうと言う事は、平和な日常生活を送っていく為にあえて言った事は無いのである。


 もちろん若い頃はそれなりに、幸せな家族という存在に憧れた時代もあったのだが、何かを得るためには、何かを失わなければならないと言う現実問題に直面するたびに、私は解決すべき様々な諸問題を一切合切先送りする事にした事で、いま現在の私が置かれた状況というものが存在するに至るのであった。


 そう、孤独である。


 だからと言って寂しがり屋のウサギちゃんのように、孤独に耐えきれなくて死んでしまうと言う事はもちろん無い。


 長い年月に渡って孤独に蝕まれた私の心は、結果オーライで一人の時間に打ち勝ち、独りぼっちのプレッシャーをものともしない強靱な心を持ち合わせる事が出来るようになったのであった。


 「そうは言っても、その姿じゃ何の説得力も無いんですけどね」


 身に付けたのは白いブリーフ一枚に、たるんだ脂身をキリキリと締め付ける荒縄のみ。


 そんな雄弁に語った私の姿をスマホのカメラ機能で撮影しながら、出張SM倶楽部「旭陽楼」のTUMUGI女王様は微笑みながら言うのである。


 もちろん股間を踏みつける赤いハイヒールが履かれた踵に、その笑顔のような優しさの如き手加減はない。


 出張SM倶楽部「旭陽楼」は地元では安心、安全、低料金で知られた老舗の出張SM倶楽部である。


 いつもは私が責めるM女VIPコース・120分・30000円を依頼していたのだけれども、今日に限ってはいつもと違う刺激を求めてしまったのか自分でも解らないのだが、S女王様VIPコースを頼んでしまった私であった。


 S女王様VIPコースはS系最上級のコースであるだけあってなかなかハードであった。


 私のような初心者には向かないと言っておこう。


 そう思った時に一瞬、呼吸が止まって走馬燈が見えたのは、華麗なTUMUGI女王様の前蹴りが股間に決まったからであると気が付くまで、私はしばらく床の上を涙目で無様にのたうち回る事となった。


 「……子供を、子供を産めなくなります。私はこう見えても子供は大好きなのです。だから、股間は、股間は勘弁して下さい、TUMUGI 女王様」


 「いいですか、子供は一人で作れませんし、老い先短い人生です。むしろあなたの好きは性的な意味で別の所にあるように思えてなりません。だから半田ごてで焼き切ってしまいましょう」


 プレイグッズが詰まっていると思えるバックから、TUMUGI女王様は手早く半田ごてを取り出すと、コンセントに刺したのだった。


 「初心者の私には過ぎるプレイです。私はもっとソフトな方向でお願いしたいのです」


 「正式な料金をいただいている以上は、職務として私はやり遂げねばなりません。イヤよ、イヤよも好きのうち。押すな、押すなは押せの合図なのです。それに誰にだって最初はあるのです。そうやって人は大人になっていくのですよ」


 正直言えば、命の危険さえも感じ始めた私だった。


 荒縄が肌に食い込み、跡が残ってしまって日常生活に支障が出ると私は訴えるのだけれども、そもそもそんな程度の事で失うものなど最初から持っていないでしょうとTUMUGI女王様は言い、金曜の夜の束縛は、少し強めでも月曜日の朝までには消えるから大丈夫と言うのであった。

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