突然の異世界と1人な俺
俺は1人が好きだ。
早くもボッチ宣言!?と思われるかもしれないが、ちょっと待って欲しい。
別に、小学校・中学校と目に見えるような嫌われ方はされなかったし、高校1年の秋である今も、いじめはないし、悪口を言われているのを聞いたこともない。
ただ、俺は一人で居ることが好きなのだ。
1人はいい。
人に迷惑をかけることなく、自分の好きなように生きることができる。
俺は今まで、1人でも生きてこれた。
だからこれからも問題なく、1人で生きて行くのだ。
この時の俺にはわからないだろう。
これから起きる事。
そして…一緒に生きて行く仲間ができるということを。
□
俺、一宮誠也は、青春真っ盛りの高校一年生だ。
ちなみに俺の通う神夜高校は私立高校で、俺は特待生としてこの高校に入学した。
この高校自体、そんなに学力は高くない。 また、俺自身は進学を考えて特待生入学したわけではない。
俺が特待生として入学したわけはずばり金がかからないからだ。
俺には今、両親がいない。
俺が小学生の時、俺を祖父の所に預け、両親は旅行にでかけた。
というのも、両親は新婚旅行以来1度も旅行に行かなかったのだ。
だから俺は、2人を思い、旅行に行かせてあげた。
だが、この選択が今の俺をつくり上げる元となったとは、このときの俺にはわからなかっただろう。
両親の旅行先は飛行機でいかなければならないような距離であった。
そして両親は飛行機に乗り込んだ。
飛行機は無事離陸したが、目的の空港まであと少しという所で事故が起きた。
飛行機が墜落したのだ。
当然、飛行機に乗っていた人は全員死亡。
俺から親という存在が消えた瞬間だった。
その後俺は、祖父母に学費を出してもらい小学校、中学校と通った。
だが祖父母はもう働いておらず、年金で生活している。
だがら迷惑はかけられないと高校は金がかからないこの特待生入学を選んだのだ。
そして無事合格し、特待生として入学。
また今は週2でバイトをし、そのお金で激安アパートを借り、1人で生活している。
こんなことがあったからだろうか。
人に頼らず、自分の好きなような生きようと思ってしまったのは。
高校生活は楽しいといえば楽しい。
今日の授業の調理実習で、班になった奴らに少し避けられたりするが楽しい。
まあ避けられる原因は、俺がクラスの連中に話しかけられても無視をすることだろう。
そりゃ、避けられるわな。
まあ1人で生活してても特に何も起こらないし、いいんだけどね。
昼休みになった。
俺はいつもの様に弁当をひろげる。
もちろん俺の手作りだ。
1人暮らしを始めて料理を作るようになったが、やってみると楽しいこと。
今では多分世界中の高校生の中で一番上手いだろうと自負している。
…あくまで自負な訳だが。
まあそんなことは置いといて、早速お弁当ターイ…
「うわーすごーい!美味しそうだね!」
…またこいつか。
いつも俺の1人の時間を邪魔するこいつの名前は、浅間香織だ。
浅間香織は、大企業アサマグルーブの社長令嬢。ルックスは街中で横を通れば、男女問わず誰もが振り返るレベルで、スタイルもよく、明るい性格から、学校では人気者で、告白する男子は後を絶たない…らしい。
正直興味がないので、心底どうでもいい。
まあそんな人気者さんが、何故だかいつも話しかけてくる。
いつ話しかけてきてもまともに返事したこともないのに。
俺はいつもの様に無視をした。
香織は悲しそうな顔をしながら席に戻って行った。
俺に無視されただけで何故こんなに悲しそうな顔をするんだ?
わからん。
クラスの皆からの視線が痛い。
だが気にしない。
誰にも、俺の1人の時間は邪魔させないのだ。
□
授業が終わり、今日の夕飯は何にしようか考えていると、担任の先生が入ってきた。
ん?なんかいつもと違う気が…
あ!ハゲてない!まさかリー○21でも使ったんじゃ…。
クラスの皆もびっくりしているようだ。
そんなクラス全員から向けられている視線に気づいていないかのように、先生は話しだした。
「今から、アンケートをとってもらうぞー。ちなみに全ての項目に答えなければ、退学とするんでよろしくー」
ぶっ飛んでる!たかがアンケートで何を言い出すんだこの先生は!
どうやらクラスの全員同じ意見らしい。
まあこれは先生の冗談だと思うけど。
とりあえず俺はアンケートに答えていくことにした。ちなみに内容はこうだった。
1. あなたは異世界についてどう思いますか
ぶっ飛んでる!
先生といい、このアンケートといい、なんなんだ!
…まあ、一応答えるけど。
1. あなたは異世界についてどう思いますか
A.自分の好きなように生きていける異世界があるならば、異世界は良い所だと思う。
2. あなたが異世界で必要だと思うスキルは何ですか?次の10つのなかから5つ選びなさい。
①アイテムボックス操作
②索敵
③言語理解
④武器製作
⑤薬調合
⑥火魔法・中
⑦水魔法・中
⑧風魔法・中
⑨雷魔法・中
⑩闇魔法・小
…もうツッコまないよ。
今度はスキルを選ぶらしい。
まあ確かに、ゲームでもスキルは大事だしな。
まあとりあえず選んでみるか。
まず、①のアイテムボックス操作と②の索敵と③の言語理解は、基本として必要だと思うから、選んどこう。
あと残りは2つか。
とりあえず異世界ということと、このスキルからみて、魔物のようなものが出るかもしれないからな。
そんな時のためにも薬調合はあった方がいいだろう。
あと1つかー。
残りは武器製作と魔法系だな。
まあ、武器はどこにでも売っているものだし、魔法があれば、最悪武器がなくても戦える。
ここは魔法から選ぼう。
ところで何故闇魔法だけ小なのだろう。
これじゃ、誰も選ばない気がする。
ということは、闇魔法ちゃんも1人ということになるな。人間じゃないけど。
1人か。俺と一緒だな。
なんか闇魔法に愛着が湧いちゃったよ。
よし、魔法は闇にしよう。
これで、全て選べたぜ。
…ってなにを真剣に考えているんだ。
ただのアンケートなのに。
まあとりあえずこれでいいか。
2. あなたが異世界で必要だと思うスキルは何ですか?次の10つのなかから5つ選びなさい。
①アイテムボックス操作
②索敵
③言語理解
④武器製作
⑤薬調合
⑥火魔法・中
⑦水魔法・中
⑧風魔法・中
⑨雷魔法・中
⑩闇魔法・小
A. ① ,② ,③ ,⑤ ,⑩
3. 最後に。もし異世界召喚ができるとしたら、あなたは異世界召喚されたいですか?
1. はい
2. Yes
同じじゃないか!
はあ、何かぶっ飛び過ぎてて、頭痛くなってきたわ。
ん、だが待てよ!?
もしかしたら何か違いがあるのか…
いや、ないか。
おれは無表情のまま、1を選んだ。
3. 最後に。もし異世界召喚ができるとしたら、あなたは異世界召喚されたいですか?
1. はい
2. Yes
A. 1
以上でアンケートは終わりとなります。
ご協力ありがとうございました。
ふぅ、終わったか。
しかしこのアンケートは何に使えるんだ?
こんなこと調べても何もないと思うが。
何か嫌な予感がするな。
「はい、そこまで!」
そんなことを思っている内にアンケートは終了した。
後ろからまわして先生が回収した。
「ふむふむ。な〜るほどねぇ。これはまた面白いねぇ〜」
ん?先生?
突然、先生の印象がガラリと変わった。
あれか。若い子の真似して、私まだ若いですよアピールか。
いやそれなら朝からそうするはずだよな。
「いや〜皆さん、ちゃんと答えてくれてますね〜。嬉しいな〜」
あれ?何かちょっとウザくなってきたぞ?
先生を殴りたくなってきたぞ?
そんな時、急に大きな音が鳴り響いた。
ピロリーンピロリーン
『あ、もしもし〜?』
お前かよ!…危ない、つい叫んでしまいそうだった。
『ん?あぁ、準備できた〜?こっちもだよ〜ん。は〜い。おっけ〜☆じゃあバイビ〜」
シーンとする教室。
そりゃそうだよ。
だって60近い爺さんが、今時使わない話し方してて、さらに教師のはずが、生徒の前で堂々と電話してたらそりゃ、こうなるわな。
そんな生徒からの視線を気にしている様子もなく、先生が話しだした。
「は〜い。では、準備ができたので〜、みんなには異世界にいってもらうね〜。では、バイビ〜☆」
先生がそう言った途端、教室の床に魔法陣が浮かび上がってきた。
え!?まじで!?
そう思う間も無く、魔法陣は俺達を包みこみ、そして俺達の存在は地球から消えたのだった。
□
空を見上げると竜が飛んでいる。
俺達はどうやら本当に異世界に来てしまったらしい。
皆一様に、ぼーっとしていて、誰も現状を理解できていないようだ。
「本当に異世界に来ちゃったの!?」
「まじかよ!ざけんじゃねーよ!」
「やだよー。お家に帰りたいよー」
ザワザワザワザワ
「みんな!一旦落ちつこう!」
でた、長谷川大輝だ。
長谷川大輝は、サッカー部エース。誰にでも優しく、顔も良い。まさにイケメンの鏡。
イケメンとはこうあるべきだという見本のようなやつだ。
「確かに不安かもしれない。俺も不安だ!
だが、とりあえず現状を把握しないことには何も始まらないじゃないか!」
さすがイケメンの鏡。
皆落ちつきを取り戻してきたみたいだ。
「よし。みんな落ちついたね。じゃあ、現状を確認しよう。まず、ここはちきゅう…ではないみたいだね。ということは、異世界だろう。そして、あのアンケートが関係しているのならば、この世界では戦わなければ生きていけないだろう。だからみんな!元の世界に帰る為に、クラス皆で協力して頑張ろう!」
クラスの士気が上がった。
やはりさすがだ。そりゃもてるわ。
なんて考えているうちに、とりあえず現状をさらに把握することにした。
そしてわかったことがいくつかある。
まず、ここは異世界であること、そしてステータスを確認する方法を見つけ確認したところ、どうやらアンケートで答えたスキルが使えるようになっていること。また、運良く看板が近くにあったので確認すると、今いる草原が、街の近くであったこと。そして最後に…帰る方法が見つからないとうことだ。
「よし、とりあえず街に行こう」
大輝の提案に皆は賛成し、街へ向かった。
その道中は魔物らしきものはでず、無事街についた。
□
街についた俺達は、この世界の人と話が通じることを確認した。その後、武器、防具屋により、アイテムボックスに何故か入ってたお金で、装備を揃えた。そして街をでて、街で聞いた情報を頼りに魔物を倒した。
こんな生活を続けて1週間が経過した。
クラスの皆は戦いに慣れ始め、この世界に慣れ始めていた。
レベルも上がり、お金も少したまった。
そんな時、大輝から違う街に行ってみようという提案が上がった。
皆はその提案に賛成した。
この時、俺は思った。
その時なら、皆から離れられるのではないかと。
俺は最近、思っていたのだ。
この世界に来て、人に頼り過ぎていると。
1人で生きて行くと決めたのではなかったのかと。
だから、俺は決意した。
皆が次の街に行くときにクラスから抜け出そうと。
そして次の街に行くと決めてから2日後、
次の街へ向かう道中、俺は皆に気づかれないように、元来た道を戻ろうとする。
今、森を抜けたところなのだ。
森ならば隠れる場所は多いし、誰にも見つからないだろう。
そして俺は元来た道を戻ろうとクラスの皆に背を向けた…
「どこいくの?」
香織の声が響き渡る。
そしてその声に反応して、皆こちらをむいた。
「もしかして、1人でどっかいっちゃうの?嫌だよ。何処にもいかないでよ」
香織が泣いている。
だが俺は何も答えず、森へと歩きだす。
後ろから、香織の泣き声が聞こえる。
クラスメート達の叫び声が聞こえる。
俺は、俺は、誰にも頼らず1人で生きて行くんだ。
そして俺はもう振り返ることなく、森の奥へと入って行った。
異世界、ハーレムなどラノベでは王道な展開が多い作品です。
そんな、異世界へと飛ばされるような王道展開が好きな方は是非読んでください笑
楽しく書き、そして読者の皆様に楽しんで頂けるように頑張ります。
皆様、よろしくお願いします。