ヨーグルト
「……ぅぅ」
「いやぁ……少しつらいね」
「う、るせ……」
「お客様……大丈夫ですか?」
あまりにも苦しそうな二人に店員が思わず声を掛ける。青年は机に突っ伏した状態で手を上げ、魔法使いはいつもより顔色が悪いが穏やかな顔を浮かべていた。
「いやぁ、実は昨晩飲み過ぎてしまってね……」
「そうなんですね。それはつらいですねー……もしご注文がお決まりでないなら、おすすめを持ってきましょうか?」
「ありがたいな、よろしくお願いするよ」
魔法使いの言葉に店員は「すぐ持ってきますね」と言って厨房に戻っていった。魔法使いは力なく机に突っ伏している青年を見て同じように、椅子に背中を預けると力を抜いた。そんな二人とは逆に喫茶店の中は賑わっており、誰も二人の様子に気づいてないようだった。
暫くして先ほどの店員が白いものが入ったグラスを二つ持ってきた。机に置かれたそれを見る二人に店員は笑顔で説明を始める。
「こちらはヨーグルトです!」
「よーぐると、って飲み物か?」
「はい!我が星ではヨーグルトは飲み物として扱われています。そうでない星もあるそうですね。飲みやすいように加工がされてますので喉に詰まるといった心配はないですよ!そしてなにより……酔い残りには効果抜群です!」
店員はそういって戻っていく。魔法使いと青年はお互いにグラスを持つと口に含み始めた。口の中には少し重たい感触が広がるが、店員が言ったように飲みやすくなっているようで、するすると喉を流れていく。半分ほど一気に飲み干して二人は息を吐いた。
「うまい……」
「そうだね。美味しいし、なんとなく胃腸に良い気がするよ」
魔法使いの言葉に青年は静かに目を伏せる。そして後悔しているように、
「昨日は、飲み過ぎた……」
そう言った。
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青年の言葉に魔法使いは頷く。そして昨日の様子を思い出しているようだった。
「飲み過ぎたね。特に君は。……すこしは気が晴れたかい?」
「んなわけ、あるか…!」
魔法使いの言葉に青年は鋭い目をさらに尖らせる。
「ここのやつら、みたいにな、俺のこれは、酒なんかで忘れられねぇんだ……!」
胸元を握りしめ、青年は言葉を吐き出す。苦しそうなその姿に魔法使いは悲しそうな、憐れむような瞳を向けた。幸いにもそれは青年には見られていなかった。
身体を休めるように、少しずつヨーグルトを魔法使いは飲む。青年は先ほど起き上がると残ったヨーグルトをやけくその様に飲み干し、再び机に埋もれた。
二人の席に店員が回ってきた。その手には二人が頼んだヨーグルトが入っており、終わりかけていたグラスに追加がされた。
「サービスです!お二人とも酔い残りがひどそうですから。さっきとは違ってハーブが入ってるのでさっぱりしますよ」
笑顔と一緒に去っていった。店員に会釈をして魔法使いはヨーグルトを口に含む。確かにさっきとは違いハーブが入っているようで、さっぱりとしている。魔法使いは青年のグラスを青年に寄せる。肘に当たったそれに青年は魔法使いの方を見た。
「なんだよ」
「いいから、君も飲んだらどうだい?まだ苦しいんだろ?これでさっぱりするのもいいと思うよ」
魔法使いの言葉に青年は舌打ちをし、グラスを掴む。勢いよく飲み干された空のグラスが再び机に置かれる。
「さっぱりなんてしてられっかよ……」
鋭い眼光は変わらずどこかを睨んでいる。魔法使いは青年の様子を見てため息を吐く。
「全く。しょうがない子だ」
魔法使いはそう言って手元のグラスを見つめる。中にはまだ少しヨーグルトが残っていた。




