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エナジードリンク

「……おかしくねぇか?」

「まぁこういう星もあるさ」

「あるだろうがよ……」

喫茶店の窓際の席。そこに座った二人の目の前には先刻頼んだメニューが置かれていた。それは透明なグラスにゴールド調の液体が注がれており、それには小さな気泡がいくつも浮かんでいる。恐らく炭酸飲料なのだろう。ストローがそれぞれに刺されているがまだ二人とも飲んではいない。

「ま、飲んでみないとわからないからね」

魔法使いはそういうとストローを口に咥え、その飲み物を飲み込む。青年は魔法使いの様子を確認し、自身もストローを咥えた。青年の口の中では炭酸が弾けて、彼の目は見開かれた。

「なんだ、これ」

「これは凄いねぇ……」

「おい、これなんか魔力とかそういうんじゃねぇのか」

「いやいや、これは人間が作ったものだよ。そういう作用のあるものを沢山入れているんだろうね」

興味深そうに魔法使いは飲み物を見る。青年は自分の身体に起きた反応が落ち着かないのだろう、どことなくそわそわとしている。

「なんつーか、この星の奴らがあぁいう感じな理由がわかった」

「そうだね、これは興奮作用というか、体を活発化させるもののようだからね。みんながハキハキと動いているわけだよ」

「ハキハキっつーか、止まったら死ぬ、みたいな勢いだったけどな」

窓の外にいる人々、店内にいる人々を見る。彼らは全員とても速かった。速いと言っても光速で移動しているわけではない。彼らはみな競歩の様に早歩きで動き、手を素早く動かし、早口言葉の様に日常会話をしている。実際先ほど二人に注文を聞きに来た店員も言葉が早く、二人は戸惑った。しかし戸惑った二人が胸に付ける『星跨ぎ』の証を見て旅人だと気が付いたのだろう。少しだけ言葉がゆっくりになった。が、その後の行動は機敏で、ゆっくり喋った分その時間を埋めようとするかのようにその後の動きは早く、二人がしゃべる時間もなく二人の注文品を持ってきた。

「ではごゆっくり」

決してその言葉通りとは思えない速さで店員は去っていった。



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「この星の人は急ぎ過ぎだと思うけどなぁ」

「それがこの星の特徴なんだろ。そうじゃなきゃこんなんが喫茶店のメニューに載るかよ」

「それもそうかもね。人が道で寝てるし、宿は『星跨ぎ』専用だっていうじゃないか」

いつもよりむすっとしたような声音で魔法使いは窓を見る。その姿に青年はため息を吐いて同じように窓の外を見た。

魔法使いが言うように窓の外には人が転がっている。それは一人ではなく、何人もだ。道行く人々にそれを気にかけているような人はおらず、転がっている人はそのままだ。しかしその人達も数分すると何事もなかったように立ち上がり、きびきびと歩き出す。そしてまた誰かが倒れるのだ。その間にも、周りの人間は誰一人として立ち止まらなかった。

「まさかベッドで寝ないとはな」

「宿屋が僕たち専用なわけだよ。きびきびしすぎてて休めるのか心配だけどね」

「別に俺たちは関係ないだろ」

「目に映る風景というのは大事だよ」

グラスを傾けて魔法使いが言う。

「穏やかな風景を見れば穏やかな気持ちになって、優しい風景を見れば優しい気持ちになる。好きじゃない風景を見れば気持ちが沈むだろう?」

「言ってることはわかるけどな」

「それと一緒だよ」

窓の外を魔法使いは見る。エナジードリンクを見て最初にはしゃいでいた瞳はどこに消えたのか、

「こんなに急がなくてもいいのにね」

どこか憐れみの色を乗せて魔法使いが言う。彼のグラスにはまだ中身が残っていた。

「シャキッとするのなんて年に1回くらいでいいと思うけどな」

まるで反抗期の子供を見るような、そんな親のような眼を魔法使いはして窓の外を見ている。青年はため息を吐いてグラスを飲み干した。

また身体が軽くなった気がした。


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