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カフェラテ

新しい星に着き、いつも通り喫茶店に入った二人は店員の案内でいつも通り窓際の席に座った。木目調の机にはメニューと紙ナプキン、少しの調味料が置かれている。二人がメニューを選んだ頃に店員がサービスの水とおしぼりをもってやってきた。

「ご注文は?」

「カフェラテを二つ」

「かしこまりました」

店員が去ってから喫茶店を見渡す。木目調の机に木目調の椅子、その席に合わせた店内の落ち着いた雰囲気と、小さく流れるミュージック。バランスの取れた店内では、二人の他にもお客は居て、お喋りをしている人もいれば、なにやら機械を弄っている人もいる。

「静かだな」

「そうだね。穏やかなお店だ」

「メニューも特にこれといったものはないな」

「うん。だから飲みたいものを選んだよ」

「そうかよ」

備え付けのメニューを青年はパラパラとめくる。青年が言った通り、メニューに並んでいるのは喫茶店等にありがちなものばかりだった。魔法使いが選んだカフェラテもアイスとホットが選べるだけで、奇異なトッピングもなかった。


暫くして店員が二つのカップをトレーに乗せてやってくる。白いカップにカフェラテのまじりあった色が浮かんでいた。カップの大きさも普通だった。

「ごゆっくりお過ごしください」

そう言って礼をして店員は去っていった。

青年と魔法使いはカップに口を付ける。一口啜ると、魔法使いは机に備え付けられている砂糖を手に取り、カップに入れる。スプーンで一つかき混ぜて再び口を付けた。

「うん、美味しいね」

「砂糖一つ入れないと満足できないのかよ」

「大体のカフェラテは僕にとっては少し甘みが足りないんだよね」

「あんたが子供舌ってだけだろ」

「そんなことないさ。甘いものは誰だって好きだろう?」

青年は呆れたようにカップに口を付けた。



1/2

カフェラテを飲む二人の間には静かな時間が流れていた。二人の間に流れる音はカップが発する音だけだ。相変わらず店内には穏やかな時間が流れている。

窓の外を眺める二人に水の入ったポッドを持った店員がやってきた。

「お客様、お水のお変わりはご入用ですか?」

「いいや、僕は大丈夫」

「俺もいらない」

「かしこまりました。ごゆっくりとお過ごしください」

「なぁ」

立ち去ろうとした店員を青年は引き止める。

「はい」

「あんた、今の生活に不満はあるか?」

「?」

いきなりの質問に店員は目をぱちくりさせながらも、青年の方を見る。青年は店員の答えを促すようにじっと彼を見つめていた。

「え、っと……お客様の質問ですが、個人的なことでいいんでしょうか?」

「あぁ。あんたのことが聞きたい」

「そうですね……」

店員は真面目なのだろう。知り合いでもない青年の質問に答えようと顎に手を当てて、考え始めた。うーんと唸っていた店員だったが、「あ」、っと思いついたことがあったようだ。

「強いて言うなら、普通過ぎることでしょうか」

「普通、ね」

「はい。この星はとても平和です。とても普通の星です。他の星のことをたまに聞くんですが、この星にはこれといった特徴はありません。だから偶になにか起こらないかな、って思っちゃうんです。平和なのが一番ですし、それ以上のことはないとは思うんですけどね」

恥ずかしそうに、誤魔化すようにして店員は笑う。青年は店員の答えに満足したのか、カフェラテを一口啜ると、店員に感謝を述べた。店員は再び、

「ごゆっくりお過ごしください」

と言って、去っていった。

再び二人の間に静かな時間が流れる。魔法使いはもう半分以下になっているカフェラテに再び砂糖を足してスプーンでかき混ぜて、一口啜る。

「うん、流石に甘すぎたかな」

「当たり前だ。ばーか」

「ばかはひどいなぁ」

ざりざりと音が鳴りそうなそれをかき混ぜて魔法使いは砂糖を溶かす。青年は何も入れていないカフェラテを啜る。彼が見つめる窓の外には何の変哲もない日常があった。

「何も変わらない。平凡な日常が一番いい。……そういうもんだろ」

ぽつりと青年が呟く。その言葉は同意を求めているわけでも、魔法使いに話しかけているわけでもないものだった。

ただ、静かに魔法使いは頷いた。



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