第09話 戦闘狂ですか?
訓練場に出向いた俺はその絡んでくる冒険者と木の剣を持って対峙した。
「冒険者の厳しさをきっちり教え込んでやる!」
「テンプレっちゃテンプレな展開なんだが、困ったな。中身おじさんに喧嘩とかやめてほしい」
「いくぞ! おらぁ!」
その冒険者は剣を両手に思いっきり振りかぶりながら俺に突っ込んできた。力強化を使っているのだろう。だがいくら力が強くなったとしてもレベル差で俺の方がすべてが高いので余裕を持って避けられる。
何度も避け続けて相手はイライラしてきたのか、剣の振り方がかなり大ぶりになってきた。そこで俺は前に出て袈裟斬りをしてきた相手の剣を剣で弾き返した。
隙だらけになった腹部に、柄の方で強い打撃を与えようと仕掛けようか悩んでいた、その時
「おい! コーラル! 新人冒険者に悪さしちゃ駄目だと言ってるだろうが!」
「エ、エリン! これは、その……」
コーラルは絡んできている冒険者の名前だ。鑑定はしてたから名前は知っていたぞ。あいつは名乗ってなかったけどな。
「いいから剣を元に戻してこっから出ていけ!」
「はっはいぃっ!!!!」
見にきていた冒険者やコーラルのパーティーメンバーらしき人達はいつの間にか蜘蛛の子を散らして消えていた。
「逃げ足だけは…ったく。すまなかったな。私の名はエリン。Aランクの冒険者だ。ってもなったばかりの新米だけどね」
おぉAランクなのかこの人。ちょいと鑑定したら
名前:エリン
職業:冒険者【剣士】
LV:10
HP:83 MP:0
ATK:61 DEF:31 MAG:0 SPD:24
スキル一覧
剣術 身体強化(弱) 料理
と出た。なんとなく思うんだが、スキルってレベルないのかね? それとも調整中なのかね?
「大丈夫だ。それよりも助かった。俺の名前はムクノキ。おかげでボロボロにならずに済んだよ」
「それは良かった。コーラルは何考えてんだか」
とりあえず危なかった様な口調で俺は言った。エリンは溜息をついて嘆いていた。
「ま、なんにせよ無事なら良かった。私はもう行く。じゃあまたな!」
そう言ってエリンは訓練場を後にした。
「主よ。なんでコーラルという奴だったか? そんなのと遊んでおった? あんなやつ剣でぶっ倒してしまえばよかろうに」
「ここでそんな事したら注目浴びちゃうでしょ! 来て早々に注目なんか浴びたくないに決まってるでしょうが!」
「ふん。つまらん」
なにがつまらないんですかね? ヴァイスは戦闘狂の民族なんですか? サ◯ヤ人なんですか? その白い髪は能力2倍強化したら金色に輝く事になるんですかね?
「それよりもカード出来たんじゃない? 戻ってみよう」
ギルド内に戻ると受付嬢の女性が
「ツイてなかったわね。はいこれカード」
と同情をしてくれた。そんな同情いらん!
「それでは代金を頂戴します。はい。以上で登録完了です」
「あ、それと近くに宿はありますか?」
「宿ですか? 宿はこちらの地図で確認してください」
俺は注目をされる前にとっとと弱い魔物をある程度売ってギルドを出た。いきなりオークとか新人が出すと注目されちゃうからね。自重はしないとね。そして宿はまだ空きがあったので一週間分とりあえずお金を払っておいた。
一息つくことができたのでそのまま宿を出て街をぶらぶらした。
「主! あの串焼きが食べたいぞ!」
「ぷるぷるぷる!」
おぉう? あそこの屋台か? 俺は串焼きを3本買って食べてみた。
「ん? なんかちょっと残念? 醤油味のタレじゃない?」
俺は思った。
「主。美味い事には美味いが、主の串焼きの方が美味いぞ」
「そうだな。なんというか、雑味が少しあるというか」
「ぷるぷるぷる♪」
他にもいろいろお店がやっていたので、買って食べた。この世界は美味しいものはそこまでないかもしれないが、不味くて食べるのがないとかそういう事はなさそうだ。
「まぁ我に取っては主の作った食事が一番だが、街にいるときはさすがに無理だろうから我慢してやろう」
「そりゃーありがとさん!」
街の食事事情をある程度理解した俺達は宿に戻って今日の疲れを取るのであった。
ちなみに宿は1室しか借りてない。風呂は俺だけ入ってヴァイスの汚れはプリンの吸収で済ましている。プリンは常にツルンツルンピッカピカなので綺麗にする必要は当然ない。寝る時は布団にフェンリル形態のヴァイスが寝てそのもふもふをダイブをして堪能した後ヴァイスを背にプリンを抱いて寝た。いつもどおりのスタイルだ。
え?抜け毛やらなんやらは大丈夫なのかだって? プリンがいるじゃん。ほんと万能!
寝る前はいつもの水分補給のボボンの実をみんなでゴクゴク。もう毎日同じ事してるからヴァイスもついでに飲んどこう的なノリなようだった。
そして何日か街でゆっくりした後、朝早い時間に起床し、冒険者ギルドで依頼を受けに行こうと思いギルドに行った。
「ギルドの依頼のFランクの討伐は……これにしようか」
「すいませーん。これ、お願いします」
「はい。ゴブリンの討伐ですね。最近ここ周辺ではゴブリンをよく見かけ、村にも被害が出ているそうです。集団になってくると討伐依頼はランクC相当になりますので気をつけてください。討伐の報酬は右耳ですので、お忘れなく」
「わかりました。それでは行ってきます」
俺はその足でそのままヴァイスとプリンと共に街の外に出た。場所はどうやらここから少し西に行った所のようだった。
「我に乗るか?」
「そこまで遠くないし、ゆっくり歩きながら行こう」
ヴァイスは今はフェンリル形態だ。ずっと獣人のままだと疲れるらしい。そりゃ普通は4足歩行なのに獣人になった途端2足歩行になるんだもんな。疲れるんだろう。
道中は、角うさぎやイノシシもどきをヴァイスが見つけては倒すようにこっちに誘導するので倒す。もちろんプリンもここぞとばかりに触手を使って倒していた。
「今の人間達は昔と比べ弱かったが、結局は自分のレベルは上げておいて損はない。いつも通り魔物は狩って行くぞ」
今は血抜きやらなんやらは後にすることにしてアイテム袋に投げておいた。
思えばアイテム袋って時間停止な訳だから後回しにできるじゃんか。と宿で休んでいた日に気付いたのである。もっと早く森出られたじゃん。と思ったのは秘密だ。
目的地には3時間程度歩くと着いたが、意外と時間かかった。
どっかに車ないかな? ないか。ある訳ないよな。中世の世界だもんな。心の中で愚痴っていたのは秘密だ。
そんな中、ヴァイスは匂いを嗅ぎゴブリンの場所を探しているようだった。
「おそらくあっちだな。周辺にゴブリンの群れはあるが、規模が小さい。おそらくゴブリン大量発生の原因はあっち方面の群れが原因だろう。なにがあっても我がおる。ゴブリンごときにやられはせんから安心しろ」
「何故か群れを駆逐する流れになってる気がするが、気にしないでおこうか。とっととゴブリンを倒して帰宅しするぞ!」
っと。その前に俺達のステータスを確認しておこう。
名前:村木京介
職業:冒険者【テイマー】
LV:17
HP:138 MP:60
ATK:91 DEF:45 MAG:37 SPD:45
スキル一覧
鑑定 アイテム袋(時間ストップ無限収納) 夜目 不眠不休 テイマー 種火(火魔法) オートマップ 無限異世界ボックス 能力2倍強化
名前:プリン(スライム)
職業:京介の従魔
LV:15
HP:118 MP:39
ATK:56 DEF:30 MAG:17 SPD:73
スキル一覧
物理無効 触手 初級回復魔法 変形 能力2倍強化
名前:ヴァイス(フェンリル)
職業:京介の従魔
LV:58
HP:468 MP:195
ATK:174 DEF:122 MAG:96 SPD:343
スキル一覧
魔法反射 切り裂く トルネード(風魔法) 変化 疾走 能力2倍強化
なんだかんだと弱い魔物をひたすら狩っていたおかげなのかレベルが1つ上がって、ボボンの実効果でさらに全員のATKが上昇している。もはや何日分かはわからなくなったが、能力2倍強化使えばチート級のATKではないのだろうか。
さて、ゴブリンを倒しに行こうか!!!
な、長くなりすぎた……キリが良い所がここしかなくて……
お陰様で何度も読み返しながら投稿してるのにやっぱり改変作業はしちゃう作者。しかも長いから改定もその分あっちこっちと…まったく成長しとらん作者で申し訳ないorz
内容はさほど変わりはないので悪しからず。