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異世界への招待状 おじさんはそれなりにがんばる  作者: りのぺろ
第六章 四大都市ヴェントの街
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第62話 森へと帰還

リリィを孤児院に送り届けた後、俺たちは宿へと戻っていた。なぜかブランクも一緒だ。


「ちょっと乱暴すぎたかな?」


俺がそう呟くと、ヴァイスが呆れたように言った。


「主よ? 暗殺者ギルドじゃぞ? 下手に手心を加えれば、こちらがやられていたかもしれん。あのぐらいが丁度いいんじゃないかのぅ?」


「あるじぃ、ちょっと怖かったけど、誰も怪我しなかったから良かったのぉ〜♪」


「いや、情けは無用だ。むしろ、あの状況で死者を出さずに制圧した手腕は見事という他ない。俺一人ではこうはいかなかっただろう」


ブランクも深く頷いた。そうか。それなら良かった。自分の子供が攫われた時のことを考えたら、腹が立って冷静ではいられなかったが、結果的に間違いではなかったようだ。


「それよりもじゃ、主よ」


ヴァイスが真剣な面持ちで口を開く。


「リリィが持つという聖なる源泉(MPドナー)のスキル。あれはあまりにも希少で、そして危険じゃ。このまま孤児院に置いておくのは、また同じような連中を呼び寄せることにならんか?」


「……また狙われる可能性がある、ということか」


ヴァイスの懸念はもっともだった。暗殺者ギルドを壊滅させたとはいえ、その情報がどこからか漏れれば、第二、第三の捕獲者が現れないとも限らない。リリィの身の安全をどう確保するか。それが新たな課題として俺たちの前に横たわった。その時、ブランクが何かを決意したように顔を上げた。


「ムクノキさん。今回の件、そしてリリィ殿のスキルの件、俺から王国へ正式に報告させてもらう。そして、君に一つ頼みがある」


「なんだ?」


「ヴェント隠密部隊長として、いや、この国の民を守る一人の人間として、君にリリィ殿の保護を正式に依頼したい。もちろん、相応の報酬は国から支払われることになるだろう」


「報酬が欲しいわけじゃない。だが、俺がリリィを守ることに異論はない。あの子を危険な目には遭わせたくないからな」


俺の即答に、ブランクは安堵の表情を浮かべた。


「感謝する。では、俺は急ぎ王宮へ向かう。詳しい話は戻ってからだ」


ブランクはそういうと宿を出て行ってしまった。それをみたハムがひょっこり顔を出してみんなと戯れる。その様子を見ながら今後の話をしていると、いきなり目の前に精霊が飛び出してきた。


「うぉ!」


おれはびっくりして後ずさってしまった。


「ん?どうした主よ?」


「目の前に精霊がひょっこり出てきてびっくりしたんだよ」


すると精霊はそこから動くわけでもなくじーっと俺を見つめてきた。


「この精霊さんは炎?の精霊さんなのかな?」


すると炎の精霊さんは俺の頬にそっと触れた。


「ん?」


俺は何かが頬に当たった間隔があったので、炎の精霊さんが触った頬へと手を触れた。


「これは⋯⋯お護り?」


名前:炎の精霊のお護り

効果:怒気での精神異常を微遮断。

持っているだけで炎を操る能力が上昇。


「いいのか?」


炎の精霊さんは首を縦に何度もふった。そしてフッとそのまま消えてしまったのであった。


「なんか効果を見る限りじゃ、見透かされている感覚だが⋯⋯もらっておくか」


「お護りをまたもらったのか? 主は全種集めるつもりなのかのぅ?」


「こんぷりぃーと♪ こんぷりぃーと♪」


「きゅきゅ~♪」


俺は今後のことを考える。リリィをどう守るか。一番良いのは、俺たちの手の届く場所にいてもらうことだ。


「なぁ、ヴァイス、プリン。リリィに、俺たちと一緒に来るかと聞いてみるのはどう思う?」


「ふむ。それが一番安全じゃろうな。我らのもとにおれば、並大抵の輩は手も足も出まい」


「さんせーいなのぉ〜♪ リリィちゃんと一緒なら、プリンも楽しいのぉ〜☆」


ハムも「きゅきゅ~♪」と賛同するように鳴いた。仲間たちの同意を得て、俺はもう一度孤児院へ向かうことに決めた。

孤児院に着くと、シスターが涙ながらに俺を迎えてくれた。リリィは他の子供たちに囲まれ、少しはにかみながらも笑顔を取り戻していた。その光景に、俺の心も温かくなる。

俺はシスターとリリィに、今回の件の経緯と、リリィが持つスキルの危険性、そして今後のことについて話した。


「……というわけで、リリィさえ良ければ、俺たちと一緒に旅をしないか? もちろん、無理にとは言わない。ここに残るというのなら、俺は定期的に様子を見に来る。だが、一緒にいれば、俺が必ず君を守れる」


俺の提案に、リリィは驚いたように目を丸くした。そして、シスターと、周りの子供たちの顔を不安そうに見る。


「でも……そしたら、みんなと会えなくなっちゃう……」


リリィの言葉に、年長の少年が力強く言った。


「リリィ、行けよ! お前がいなくなったら寂しいけど、でも、また悪い奴らに狙われるのはもっと嫌だ! お兄ちゃんと一緒なら安心だろ?」


「そうだよ、リリィ!」「またいつでも会いに来てよ!」


子供たちの言葉に、シスターも優しく微笑みながらリリィの背中を押した。


「リリィ。ムクノキさんのおっしゃる通りです。あなたの安全が一番ですよ。私たちはいつでも、あなたの帰りを待っていますから」


みんなの温かい言葉に、リリィの瞳に涙が浮かぶ。彼女は俺の方を向き、そして、こくりと小さく頷いた。


「……うん。行く……! お兄ちゃんと、一緒に行く!」


その決意に満ちた返事に、俺は力強く頷き返した。数日後、王宮から戻ったブランクが、正式な書状を持ってきた。そこには、国王直々の名で、俺、ムクノキをリリィの専属護衛に任命すること、そしてその活動を全面的に支援することが記されていた。

こうして、俺たちの旅に新たな仲間が加わることになった。


名前:リリィ

職業:家事手伝い

LV:2

HP:13 MP:21

ATK:9 DEF:4 MAG:11 SPD:13

スキル一覧

聖なる源泉(MPドナー) 家事


「⋯⋯あ! ウェスリーの存在忘れてた! みんな森に帰るぞ!」


俺達はリリィに詳しく話す事もしないまま、フェンリルの森へと転移したのであった。

第6章、これにておしまい。この章での精霊さんの存在がちょこっとだけなのは気にしないでorz

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