第56話 トーナメント準決勝第2回戦
トーナメント表
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ム ギ コ 極 ヴ エ ジ プ パ ブ
ク ャ | マ ァ リ ャ リ ッ ラ
ノ レ ラ ッ イ オ ミ ン サ ン
キ ン ム チ ス ッ ン ク
ョ ト
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本日の試合のスケジュール
第3試合2回戦【エリオット選手 対 ブランク 選手】
第4試合決勝戦
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ムクノキとヴァイスが戦っている時、エリオットとブランクはムクノキとヴァイスの戦いを見ていた。
「おいおいおい。マジかよ。あの二人、強いなんてもんじゃないぞ」
「同感ですね。動きが速すぎて目で追うのがやっとですよ」
エリオットは二人の戦いを見て驚愕のあまり言葉を漏らしていた。その言葉を聞いたブランクもエリオットの言う言葉に同意をしていた。
「ん? あぁブランクか。エリオットだ。俺が決勝に行っても、あの二人のどちらも俺は勝てそうもないな。お前はどうだ?」
「はじめまして。対戦相手のブランクです。私も勝てる見込みはありませんね」
「俺は騎士団長なんだぞ? レベルも高いと自負している。だが、あの強さはなんだ」
「何なんでしょうね? 私にはわかりかねますが⋯⋯」
そして戦いが終わるまで終始無言になって、二人の戦いをジッと見ていたのであった。
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「それではブランク選手、エリオット選手準備はいいですか? 試合開始!」
ブーラとエリオットは共にレベル11か。
影を纏い、風のように戦場を駆けるヴェント隠密部隊長ブランク。もう一方は王国最強の盾と矛、騎士団団長エリオット。対極的な戦闘スタイルを持つ両者って訳か。
すると、ブランクの姿が陽炎のように揺らぎ闘技場から消失した。スキル「隠密(中)」と「気配遮断(中)」の同時発動。LV11にして中級の隠密スキルを二つも習得している彼の気配を、並の戦士が捉えることは不可能に近い。
「消えたぞ!」「どこだ!?」
観客席がどよめく中、エリオットは微動だにしなかった。彼はその巨躯に不釣り合いなほど巨大な大剣をゆっくりと肩に担ぎ、目を閉じる。静寂。風の音、観客の息遣い、そして……自らの血の流れる音だけが、彼の意識を満たしていた。素早さはブランクに遠く及ばない。
小手先の追跡が無意味であることは、戦う前から分かりきっていた。彼が信じるのは、長年の死線で磨き上げられた自らの感覚と、歴戦の肉体のみである。
空気が震えた。エリオットの右後方の死角から。
殺気なき刃が音もなく彼の首筋へ迫る。ブランクの双剣だ。しかし、刃が皮膚に触れる寸前、エリオットの目がカッと開かれた。
「そこか!」
轟音と共に大剣が薙ぎ払われる。それは予測の一撃。
ブランクの位置を正確に捉えたものではない。だが、その圧倒的な質量と剣圧は不可視の壁となってブランクの奇襲を阻んだ。
「クッ…! さすがに仕留めれませんか」
ブランクは悪態をつきながら、バックステップで距離を取る。彼の双剣はエリオットの分厚い鎧に阻まれ、わずかな火花を散らしただけだった。
「さすがは団長殿。気配を殺しても、殺意までは殺しきれないか」
再び姿を現したブランクが、軽口を叩きながら双剣を構え直す。彼の額には、一筋の汗が流れていた。今の攻防で、エリオットの恐るべきATKとDEFを肌で感じ取ったのだ。HP84、DEF24の自分では、あの大剣をまともに受ければ一撃で戦闘不能になりかねない。
対するエリオットは、スキル「身体強化(強)」を発動させ、全身の筋肉を隆起させる。ただでさえ高いATK76が、さらに凄まじい領域へと引き上げられていくのが分かった。
「お前の速さは脅威だ、ブランク。だが当たらなければ意味はない」
静かな宣告と共に、エリオットが動く。ブランクに比べれば鈍重な動き。しかし、一歩一歩が地面を揺らし、凄まじい圧力を放っていた。ブランクは再び姿を消し、エリオットの周囲を旋回する。狙うは関節、鎧の隙間。かすり傷でもいい。手数でHPを削り切るのが、彼の勝ち筋だ。
カン、カン、カン!
金属音が断続的に響き渡る。ブランクの二刀流が、目に見えぬ速さでエリオットの鎧を打ち据える。しかし、その全てが分厚い装甲に弾かれるか、致命傷には程遠い浅い傷しか与えられない。エリオットのスキル「再生(微)」が、そのわずかな傷を瞬時に塞いでいく。
攻防が続く中、ブランクに焦りが生まれ始めていた。このままではじり貧だ。有効打を与えられぬまま、時間だけが過ぎていく。しかし、その焦りは彼の思考を鈍らせるものではなかった。むしろ、逆。
彼の頭脳は、この鉄壁の騎士を打ち破るための一手を導き出すべく、かつてない速度で回転していた。
(奴の防御は完璧に近い。だが、完璧だからこその”癖”があるはずだ)
ブランクは攻撃の手を緩めない。だがその目的は、ダメージを与えることから、エリオットの動きを分析することへと完全に切り替わっていた。大剣を振るう角度、攻撃を受けた際の体重移動、視線の動き。その全てを、その目に、体に焼き付けていく。
そして、数百に及ぶ斬撃を交わした末、ブランクはついにそれを見出した。エリオットがカウンターを狙う瞬間の、ほんのわずかな予備動作。
(これだ…! この一瞬に賭ける!)
ブランクは芝居を打った。これまでで最大の隙を、あえて見せつけるかのように。大きく踏み込み、エリオットの脇腹を狙って双剣を突き出した。それは誰の目にも明らかな、焦りから生じた無謀な一撃に見えた。案の定、エリオットはその好機を見逃さなかった。
「終わりだ、ブランク!」
エリオットはブランクの突撃を待っていたかのように、必殺の一撃を放つべく大剣を振りかぶる。スキル「大剣術」と「身体強化(強)」、その全てを乗せた一撃。闘技場の空気が震え、剣圧だけで周囲の砂塵が舞い上がる。
観客の誰もが、ブランクの敗北を確信した。
だが、死地へと自ら飛び込んだはずのブランクの口元には、予測不可能な笑みが浮かんでいた。
「誘い(・・)ですよ、団長殿」
エリオットの大剣が振り下ろされる、その刹那。ブランクは前進を止めるどころか、さらに加速した。回避ではない。後退でもない。彼は、振り下ろされる死の刃そのものに向かって、懐へと飛び込んだのだ。
「なっ!?」
エリオットが驚愕に目を見開く。大振り故に生まれた、剣士の腕元。そこは唯一無二の安全地帯であり、絶対的な死角。
ブランクの体が、大剣の側面を紙一重でかすめ、エリオットの巨体に張り付く。そして狙うは首ではない。彼は体勢を低く沈めると、エリオットの体重を支える軸足の、膝裏の装甲のわずかな隙間へ、双剣の一本を滑り込ませた。
ザシュッ!
肉を断ついやな音と共に、エリオットの巨体がぐらりと傾ぐ。腱を断たれた足では、もはやその体重を支えきれない。
「ぐっ!」
バランスを崩し、エリオットはたまらず片膝をつく。振り下ろされるはずだった大剣は軌道を失い、闘技場の床に突き刺さった。勝負は、決した。
エリオットが体勢を立て直すより早く、ブランクは彼の背後に回り込み、冷たい刃をその首筋に添えていた。
「……まいった」
静まり返った闘技場に、エリオットの声が響き渡る。
「勝者、ブランク!」
一瞬の沈黙の後、観客席は爆発的な歓声に包まれた。膝をついたエリオットは、首筋の刃を感じながら、悔しさの奥に不思議な満足感を覚えていた。
「……見事だ、ブランク。お前の勝ちだ」
そして残るはトーナメント決勝戦のみとなった。
トーナメント表
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ム ギ コ 極 ヴ エ ジ プ パ ブ
ク ャ | マ ァ リ ャ リ ッ ラ
ノ レ ラ ッ イ オ ミ ン サ ン
キ ン ム チ ス ッ ン ク
ョ ト
くっ。早く戦闘シーンを切り上げなくては先に進めない。。。orz




