第53話 トーナメント第1試合第1回戦
そして翌日、俺達はトーナメント出場選手控室に居た。
「皆様、本日はトーナメント戦です。第1回戦、第2試合まで行います。思う存分に楽しんでいってください!!」
割れんばかりの拍手と声援が送られる。昨日にも増してすごい人と熱気だ。それだけ皆が楽しみにしているのだろう。
「それでは第1回戦を始めます! Dランク冒険者ムクノキ選手 対 ヴェント騎士団副団長ギャレン選手」
拍手と歓声が沸き起こる。俺は闘技場へと足を踏み出した。
「がんばるんじゃぞ」
「いってらっしゃ~い♪」
俺はギャレンと対峙する。いちお、鑑定しておくか。
「鑑定」
名前:ギャレン(男性)
職業:騎士団副団長【剣士】
LV:10
HP:89 MP:12
ATK:68 DEF:28 MAG:5 SPD:20
スキル一覧
剣術 大剣術 身体強化(中)
ふむ。最初の頃に出会ったエリンと同等か。いや、身体強化が中だから、実質はそれ以上といったところかな。
「よろしく頼む」
「あぁ。D級でよくここまでこれたもんだが、勝つのは俺だ」
「それはどうだろうね?」
長髪騎士が挑発気味に言ってきたので、俺はそのまま返事を返す。
「それでは第1回戦、第1試合、初め!」
ギャレンは剣を振りかぶって俺に襲いかかる! 大ぶりだが速い! 俺は即座にスキル【隠密】を発動。前に出る寸前に3倍を一瞬だけさらに発動させる。
高速で迫ってくる俺にギャレンは身構える。俺はそのまま剣ふるう。
ギィン!
「なかなか速いな」
「あなたこそ」
そのまま俺はギャレンと剣で攻防を繰り広げる。3分程経った時、ギャレンの動きが鈍った。おそらくスキルの能力強化が切れたのだろう。
俺は気配遮断を追加で発動、ギャレンは気配が一瞬消えた事に動揺。その瞬間、後ろへ移動し、背中へ蹴りをいれる。ギャレンは踏ん張る事が出来ずに、吹き飛ばされ、そのまま場外へ。
「ギャレン選手、場外! ムクノキ選手の勝利です!」
「まさか最初から全力でいって負けるとはな」
「いやいや、なかなか手強かったです」
ギャレンと俺はそのまま退場。俺は一回戦を突破したのだった。
**
「それでは第1回戦、第2試合を行います!」
「この試合はどっちが勝つかな? 鑑定しておこうか」
名前:コーラム(男性)
職業:宮廷魔法師【魔法使い】
LV:9
HP:63 MP:30
ATK:27 DEF:17 MAG:28 SPD:16
スキル一覧
火魔法 土魔法 水魔法 魔法消費半減
名前:極マッチョ(男性)
職業:冒険者【武道家】
LV:9
HP:96 MP:0
ATK:63 DEF:19 MAG:0 SPD:16
スキル一覧
武術 身体強化(筋肉)
宮廷魔法師はさすがだな。いろいろな魔法を使う事が出来るみたいだ。しかも魔法消費半減スキルがある。なにあれ? ほしいんだが。それよりも、もう一人の方が気になってしまった。
「極マッチョて⋯⋯名前じゃないんだが⋯⋯しかもスキルも身体強化(筋肉)って何よ!」
冒険者ギルドに居たゴリマッチョより強いマッチョだった。
「身体強化? なんじゃそのスキルは?」
「いや、あのマッチョのスキルにそう書いてあるんだもんよ」
「筋肉は裏切らない~?」
プリンさんや? なぜその励ましの言葉を知ってるんだい?
「初め!」
おっと。試合が始まったようだ。コーラムは始まったと同時に土魔法でマッチョの周りを壁で囲む。時間を稼いでいる間、すかさず魔力を練った。マッチョはどうするのか、俺は鷹の目スキルを使って上空で見る。脳筋なのか、マッチョは俺の予想通り、壁にタックルをぶちかまして破壊しようとしていた。3回目の破壊でようやく壊れた壁から出たマッチョ。目の前には出てくる所を見計らっていたコーラム。
「火球!」
「うぉおおおお!」
コーラムの放った魔法がマッチョに直撃。そのまま倒れるかと思いきや、身体強化(筋肉)を発動して堪えた。どうやらこのスキル、一時的に皮膚や筋肉が強化される変わりに、動けなくなってしまうスキルのようだ。
「あぶねえなぁ」
「やりますねえ」
コーラムは後ろへ下がりつつ、土魔法のストーンバレット?というらしい。それを何発もマッチョに向かって発動をする。小石マシンガンみたいなもんだな。
「きかねえよ!」
マッチョは強化スキルを発動。それを狙っていたコーラル。
「そのスキル、持続時間は何秒ですか? 5秒くらいじゃありませんかね?」
「!!」
コーラルは「ニヤリ」とした後、火魔法の火球を発動。硬直が解けた瞬間を狙われたマッチョは、その火球をモロに顔面に直撃!
次から次へと飛んでくる火球に、マッチョは耐えきれずその場へ倒れた。
「極マッチョ選手、場外! コーラル選手の勝利です!」
⋯⋯司会者も極マッチョって言うの? まぁいいけど。
「なかなか見応えあるなぁ」
「そうじゃのぅ。マッチョは先手を取られてしまわなければ、まだ勝ち筋はあったんじゃがの」
こうして、第1回戦第2試合は終了した。
**
第1回戦第3試合は、騎士団団長とB級冒険者の対戦だ。
「鑑定」
名前:エリオット(男性)
職業:騎士団団長【剣士】
LV:11
HP:101 MP:19
ATK:76 DEF:32 MAG:9 SPD:26
スキル一覧
剣術 大剣術 身体強化(強) 再生(微)
名前:ジャミン(男性)
職業:冒険者【斧使い】
LV:8
HP:82 MP:0
ATK:52 DEF:36 MAG:0 SPD:19
スキル一覧
斧術 身体強化(中)
エリオット団長は大剣、ジャミンは斧といった感じだ。これまた迫力のある、試合が繰り広げられた。
ひたすら切り合う、ただそれだけであった。
血しぶきが飛び交う中、全力の大剣と斧が交差、ジャミンの斧を持つ握力が、少しずつ、なくなってしまっていたのか、斧が後方に吹き飛んで勝敗は決まった。試合終了となる。
「鑑定結果と比べても、やっぱりそうなるか」
「B級に騎士団の団長がやられる訳にはいかんじゃろうのぅ」
え? 俺と対戦して団長が負けちゃってたらどうなっちゃうんだ? そこは気にするなと言う事か? 副団長大丈夫かな?
「ジャミン選手、ギブアップ! エリオット選手の勝利です!」
**
第1回戦第4試合は、プリンとC級冒険者の対戦だ。
「プリン、がんばれよ!」
「負けるんじゃないぞ?」
「がんばるのぉ~♪」
対戦相手はあの選手か。一応、鑑定しておくか。
名前:パッサ(女性)
職業:冒険者【料理人】
LV:7
HP:66 MP:18
ATK:32 DEF:16 MAG:12 SPD:16
スキル一覧
催眠術 包丁術 旨味強化
んん? 料理人? なんでトーナメントまで上がって来れたんだ? と思っていると試合の開始となった。
「それでは第1回戦、第4試合を行います! 開始!」
プリンは対戦相手を見るやいなや、こう言った。
「あれぇ~? 昨日の予選の試合に居た人~?」
「そうですよ? トーナメントに出る気はなかったんですよ。そもそも私、料理人ですし。この街に住んでいる人は出ないとダメみたいなんですよ」
「へぇ~大変なんだねぇ?」
「戦う前にプリンちゃん、ちょっとコレ見てくれない?」
すると何かの糸に吊るした硬貨を見せる。ん? あれって⋯⋯地球でもよくある⋯⋯
「あっ! 催眠術だ! プリン! 見続けるな!」
「主よ。時、既に遅しじゃ」
「ぐぅぅぅ~♪」
プリンは寝ていた。そしてパッサはプリンを抱えて、そのまま場外へ優しく降ろす。
「プリン選手、場外! パッサ選手の勝利です!」
勝敗が決まった後、プリンはパッサの指を鳴らす音ですぐに目を覚まし、負けた事を悟ったプリンはうつむきながらこっちに帰ってきた。
「眠らされたぁ~」
半泣きのプリン。頭を撫でてやる。
「しょうがないさ。相手の方が一枚、上手だったって事だ」
「そうじゃのぅ。プリンの純粋さ、ゆえの弱点を突かれたという所かのぅ」
「プリンちゃん! ごめんねー!」
パッサは平謝りしていた。プリンはふるふると首を振っていたのであった。それにしても、こういう勝ち方もあるんだな。
トーナメント表
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ム ギ コ 極 ヴ エ ジ プ パ D
ク ャ | マ ァ リ ャ リ ッ 級
ノ レ ラ ッ イ オ ミ ン サ 冒
キ ン ム チ ス ッ ン 険
ョ ト 者
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本日の残り試合のスケジュール
第2試合1回戦【コーラム選手 対 ヴァイス 選手】
第2試合2回戦【パッサ 選手 対 D級冒険者選手】
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キリがいいところまでひたすら書いてたらちょっと長くなった?
と思いきや、ステータスの表記やトーナメント表があるおかげで、省いたら、そんな事もなかった事実に驚愕。おかしいなぁ⋯⋯
ちょっと体調を崩してしまっているので、更新がおそらく落ちます。ご了承ください




