第48話 アゴス村
主人公視点に戻ります。
朝、小さい森を抜けた俺達はそのまま西へと向かう。道中に冒険者や商人もいない事を確認した俺は、ヴァイスに乗り、西へと向かっていた。
「あ、見えたぞ! あそこか!」
俺は少し遠くに村が見える位置でヴァイスから降り、ヴァイスとプリンは……変化をしていた。子フェンリル達は影に……移動してるね。もはや言わなくてもわかってる感だ。
「ん? なんだ? 主よ?」
「なぁにぃ~?」
「「「「わんわーん?」」」」
「きゅっきゅー?」
……有能ですね。うん。いい事だ。ハムは真似しただけだろうな。無駄に喋ろうとしなくていいぞ。
「何でもないよ。準備終わったらアゴスの村に行くぞー」
そして準備が終わった俺達は、村に入った。
「おぉ。思ったよりも村って感じがしないん所だな」
舗装はされているし、建物もちゃんとしている。さらには冒険者ギルドも建っている。人はあまりいないんだろうと思っていたがそんな事もない。町としてはそこまで広くはないのになぜだ? 考えても始まらんか。
「冒険者ギルドがあるのは驚いた。ギルドがあるならここでも魔物を売りさばいておくか」
「まだまだ魔物が大量にあるからのぅ。さばける時にさばいておくべきじゃろうのぅ」
俺達は冒険者ギルドへ先に行く事に。受付嬢が「ワイバーンの魔物があればあるだけ売ってくれ」と言われたので、俺が20匹出したら驚かれた。
少し多めに出したからか、魔物討伐数が一定数達したと言われ、俺は無条件でCランクへと上がったのであった。
「なんか……さばきついでにCランクに上がってしまった」
「別に困る必要はないじゃろぅ?」
「そりゃそうなんだが……最近、依頼受けてないしなぁ」
横ではプリンが踊っていた。あ、頭の上のハムも一緒になって踊ってる。
「シィランクゥ♪ シィランクゥ♪」
ヴァイスも踊れば? 的な目を向けると睨まれた。解せぬ。
「さて、村の散策にいくぞー」
プリンのダンスが激しくなってきたので、とっとと終わらせる為、俺はそういい散策をする。気になっている事があるからな。ウェスリーが言っていた、まかない料理だ。俺は店を見つけ、料理を堪能した。そのままいい時間になったので宿探しをするものの、どこも宿が埋まってしまっていた。
「ゆったりしすぎたか? うーん」
「まぁ外で野営するしかないのぅ」
俺は村を出て街道からそれる。誰にも見つかりそうにない場所で野営することにした。寝る前に小腹がすいたので、ポテトチップスを出してやったら、みんな無言で食べていた。
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次の日、街道へと戻り、さらに西へと向かう。道中、ヴァイスに乗ろうにも、いつもより多い冒険者に俺は不思議に思った。
「なぁ、なんでこんなに冒険者が多いんだ?」
「わからんのぅ。そこらへんの冒険者に聞いてみたらどうじゃ?」
俺は30代風の冒険者に近寄り話かける。
「なぁ。俺はムクノキっていうCランクの冒険者なんだが、ちょっと聞きたい事があるんだがいいか?」
「ん? あぁ。なんだ?」
「みんな、どこに向かってるんだ?」
「あぁん? お前知らないのか? ヴェントの街で毎年行われる大会があるからに決まってるじゃねーか?」
「大会?」
「そうだ。その名もスクラップ・コロッセオ闘技大会。この大陸で年に一度だけ実力者が集う大会さ」
ほほぅ? 実力者が集まる大会か。これはこれで楽しみではある。
「そうなのか。もしかして出場者?」
「はっはっは! 俺が? 馬鹿いえ。あんな大会に出る程強くはないさ。観戦しに行くだけだよ」
「それで村にも人が沢山いたのか」
「あぁ。アゴス村の事か? あそこは毎年この時期に冒険者がやってくるからな。いろいろと料理を出して儲けてるらしいぜ」
なるほどなぁ。休憩所と言われるアゴス村の料理が美味いのも頷ける。
「ありがとうな。これ教えてくれたお礼にどうぞ」
「ちなみにまだ出場枠はあるらしい。優勝者にはスキルオーブだとさ」
「え、マジで!」
俺は金を少しばかり手渡してその場を離れる。
「という事らしいぞ」
「スクラップ・コロッセオ闘技大会にスキルオーブか。主、それとプリンよ。出場するのじゃ! スキルオーブをゲットしようではないか」
「なぜそうなる?」
「しゅつじょぉ~?」
俺は聞いた情報を仲間に説明したらヴァイスがそう言った。
「スキルオーブは滅多な事じゃ見つかる代物ではない。まぁ良いではないか。我は獣人化しておるし、プリンも人化できる。主は今の自分の実力がこの大陸でどれほど通用するのか把握するのもいいのではないか?」
俺の実力か。それは確かに気になるが優勝は100%無理だ。ヴァイスが出るんだったらもはやその上の強者と言えばドラゴンしかいない。
優勝してスキルオーブをゲットしたところで俺はもう使ってるから要らんのだが。しかもヴァイス含め、みんなかなり強い。だがスキルオーブが欲しいかと言われたら、俺以外のみんなは欲しいのが普通か。
「出場するとして、試合形式うんぬんを聞いてくるの忘れてたな」
「着いてから聞けばいいではないか? 出場するぞ? いいか? 主?」
んー。こんな俺でも本当に強いのか、試したい気持ちはないこともないな。
「まぁいいか。それじゃヴェントの街に着いたら、出場者登録をするぞ。参加者は俺とヴァイスとプリンだ。ハムは影で子フェンリル達と一緒に居れば大丈夫だろう」
とまぁこんな感じで、まったりと話をしながら街道を進んでいた。魔物が全然出てこない。不用意にヴァイスに乗る事もできない。なんせ街道を外れた場所にも冒険者がたくさんいて、魔物を見つけ次第倒している感じなんだよ。プリンも暇そうにしている。
「こういう気楽に旅をするのもいいな」
「なんじゃ? 我が子が倒すのと冒険者が倒す場合と何が違うのじゃ?」
「違わないけど、非現実的なのか現実的なのかの違いかな?」
「我にはどっちも現実的なのじゃが……」
「ヴァイス的にそうだろうけどね」
俺は話を濁しながらも周りの冒険者より少し早めに足を進めヴェントの街へと向かった。
そしてその夕方、俺達は3つ目の四大都市ヴェントへと到着したのだった。
ちなみに昼食は人がいない空間が丁度あったのを見つけ、そこへと移動してハンバーガーを大量に出してやったぞ。もちろんフライドポテトとジュース付きだ。
プリンがなぜかスライムに戻ったので様子を見てたら、ハムがプリンにポテトを突き刺しまくっていた。ハリネズミみたいなその状態でも食べれるのはいいんだが、食べ物を粗末にするわけでもないから怒るに怒れない、腑に落ちない俺だったのは秘密にしておこう。
「キュポン♪ おいしぃ~♪」
……。
これでこの章は終了です。帰還編という事で、時系列が訳わからん事になるトラップに四苦八苦。




