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第41話 ハムと共に

車に戻った俺はハムスターの箱を空ける。


「きゅっ?」


買う時に購入したひまわりの種をハムスターに渡してやる。


「今日からお前の名前はハムだ!」


「きゅっきゅー♪」


口にひまわりの種を入れたまま両手を上げて嬉しそうに鳴くハム。器用なやつだな。


「ハム。俺の言葉わかるか? わかるなら回転してみてくれ」


ハムはくるくると回転。


「おぉう。従魔にしたからなのか? すごいな。じゃあ箱じゃ狭いだろうから出してやる、だが見える位置に居てくれよ? わかったか?」


「きゅっきゅっ♪」


頷くハムを俺は箱から出して助手席の椅子に置いてやる。するとハムは


とてててててー


車のタコメーターの所で寝っ転がった。


「ハム。転移できるようになるまで車の中に居てもらうことになるが、大丈夫か?」


「きゅっきゅっ♪」


大丈夫なようだ。


「温度とか気にしないとやばそうなんだが本当に大丈夫か?」


「きゅっきゅっ♪」


そしていろいろと聞いていくと段々とわかってきた。どうやら従魔になったから通常のハムスターとは異なるらしい。温度管理は不要、走り回らないとストレスを感じたりとかもなし、巣箱も必要なし。


「お前、従魔になったおかげで、世話要らずの楽なペットになってるじゃないか!」


「きゅっきゅん♪」


えっへん? と言っているのか? まぁいい。無駄に二足で立っていたので、指で突っついて倒してやる。ハムがプリプリ怒ってきたが、気にしない。


ある程度テストに満足した(実際は神様にきいた)俺はそのまま家へと帰る。ハムは車で留守番だ。一応トランクには買った時の箱にトイレとヒマワリの種やペレットを入れておく。それで十分なようだった。


そして17日目。今日は少し異なる車通勤となる。いつものように車に乗り込む。タコメーターの所にはハムが居た。


「おはよう。今日は仕事だ。朝は少しの時間だが一緒だ」


「きゅっきゅっ♪」


俺はそのまま異世界アニメを再生。それを観ながら通勤をする。俺が夢中になっているのを見たハムも一緒になって視聴。ハムもハマってしまったようだ。うむ。仲間が増えるのは嬉しいぞ。歓迎しよう。


「じゃあ行ってくる」


俺が車を降りようとするとハムに止められた。


「きゅっきゅきゅきゅ!」


……え? 異世界アニメが観たい? スマホを貸してくれ?

しょうがない。ここはとりあえず貸してやるか。


「ほれ。今日だけだぞ」


俺はスマホをハムに渡して会社へと向かった。


「おはようございまーす」


「あ、村木さんおはようございます!」


昨日、少し話をした檜垣が話かけてきた。


「あれから【異世界でスキル使えたんだから、地球に戻ってこれたらこれたで、スキル使えんじゃね? これチートなんじゃ?】の事少し調べたらちょっと気になる事がネットで噂になってましたよ」


「ほぅ? どんな事だ?」


「それがですね、シーズン2打ち切りらしいっす」


なんだと! アニメの打ち切りだと! 俺の楽しみがまた一つ減ってしまったではないか。


「面白かったがな。異世界シリーズのアニメは多い。人気が出なかったら即打ち切り。仕方がないっちゃないことなんだがなー」


「せめていい感じに終わらせてほしかったっすね。戦闘中のまま終わってましたからね」


そうなんだよな。アニメで収まりきらず、しぶしぶ戦闘中のいいところで終わってしまったんだよ。そんな他愛のない会話をしていると、開始のチャイムが鳴った。



**



昼休み。昨日と同じ一室にて俺は飯を食べた後、ハムの事が気になって車へと戻った。ハムはアニメにまだ夢中になって朝と変わらぬ場所で見ていた。


「ハム。今休憩時間なんだが、体調はどうだ? それと充電は大丈夫か?」


「きゅっきゅっ」


体調は良いアピールなのか、ボディービルダーのようなダブルバイセップス・フロントのポーズしていた。スマホは残10%。さすがにないな。


「今から営業で外に出る事になってるから、ついでにモバイルバッテリー買っとくか。ハム、もうちょっと待っててくれ」


俺は会社に一旦戻り、早めに外に出る事を伝えた後、車に戻った。そして電気屋へと向かい、モバイルバッテリーを買う。後はいつものように仕事をこなしていった。


仕事帰り、俺はコンビニに立ち寄りコーヒーを買う。ハムにもおやつとして異世界ボックスから野菜を出して与えた。


そのまま車で家まで帰ったのだが、たまたま妻と子どもが買い出しの帰宅途中だったらしく、鉢合わせてしまった。


「あなた? そのハムスターは?」


ハムをそのまま出したままだった俺は気づくのが遅くなってしまった。


「あぁ、少しの間、同僚が旅行に行く事になってな。ケージも必要ないらしくて段ボールの箱だけでそこに入れておけば良いそうなんだ。だから少しの間だけ世話をすることになってな」


な、なんとか誤魔化せたか? 俺はハムにサインを送った。ハムは理解していたのか、グッ! 妻には見えない位置でサインを送っていた。

家に帰ると、そりゃー大騒ぎでハムスターが箱でバタバタする様子を子ども達は見てはしゃいでいた。妻は野菜やら餌を与えたりしていた。

ハムも言葉は理解しているのか、ある程度融通をきかせているような動きをしているようだった。


「ハム。明日はおそらく連れて出られん。モバイルバッテリーは無駄になったな」


ハムはその言葉を聞くと跪き頭を垂れるポーズをして動かなくなってしまった。


そしてそんな生活を3日。この日は土曜日。もちろん出勤だ。

まだかな? と思いながらしているとようやく神様からの電話がかかってきた。


「お久しぶりー☆ ようやく復旧したよー☆ 転移しても大丈夫だからねー☆」


「復旧しましたか! わかりました。用事と準備が終わり次第、転移してみます」


夕方、俺はその日はコンビニに寄らずに家に帰る。


「ただいま。ハムの飼い主が帰ってきたから今から渡しに行ってくる」


ハムは家族から大人気だった。毎日のように構ってくるのでハムも対抗をしたのか、部屋を颯爽と走り回っていた。


家族もハムとの日常は楽しかったのだろう。


「またね。ハムちゃん。うちもハムスター飼おうかしら?」


とか妻が言っていた。ハムはハムスターとは違うからやめとけ。なんて俺は言えずにいた。


そして車で外に出た俺達は公園の駐車場へと向かった。


「ここなら誰もみていないだろう。転移しても大丈夫だな。ハム! 異世界に転移するぞ! こことはちょっと違う世界だが、楽しい所だ。来てくれるな?」


「きゅっきゅっ♪」


敬礼のポーズをとるハム。


「それじゃ、戻るぞ! 転移!」


俺達は20日ぶりに異世界へと戻ったのであった。

今気づいた。プリンにハム。また食べ物の名前じゃん……と。

だってハムスターだよ。ハムになっちゃうじゃん。あれ? 自分だけなのかな

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