第04話 フェンリル
「おいおいおい! あれはやばい!」
遠くからでもわかるその威圧感がある大きな白い狼。俺はそこからゆっくりと立ち去った。
「ふぅ。とりあえず離れたから大丈夫だろうけど…」
それにしてもこの森の魔物が少ないと感じていたのはあいつが居るからなのか? どっちにせよあの白い狼はスルーして迂回して先に進む事にしようか。
「プリン、教えてくれてありがとうな!」
「ぷるぷるぷる♪」
危機感を感じた俺は迂回中にちょっと先が尖っていた石を見つけ拾った。ツタのようなもので木の剣の先に固定。うん。バッチリだ。
**
「ここまで離れたら大丈夫かな」
「ぷるぷるぷる♪」
すると…
がさがさがさ…
「!!!」
なんだ! 何かがいる!
「プリン 攻撃準備!」
俺はアイテム袋から木の剣を出して構えた。そこから出てきたのは通常のうさぎより少し大きく角が生えたうさぎだった。
うさぎは俺を見つけると俺に向かって突撃してきた。俺は初めての戦闘で硬直したままで動けなかったがプリンが俺の頭からうさぎに向かって突撃し、触手でうさぎを掴み地面に叩きつけた。
「ぷるぷるぷる!」
「プリン助かった!」
俺だけだったら異世界生活どころか人生終了してたところだった~。でもなんで突撃したんだ? そうか! プリンは物理無効がある! だから突撃していったのか。
うさぎは動きもせず気絶していた様だったので、木の剣でうさぎの頭を叩き倒した。
ついてに血抜きもしてっと。内蔵もいらんな。気持ち悪いがしょうがない。
「ふぅぅぅ~。処理が終わったうさぎはアイテム袋にとりあえずしまっておこう。」
「ぷるぷるぷる♪」
プリンは周りを警戒?しつつも俺が捨てたうさぎの血と内臓を吸収していた。それが終わるまで待っていようと思ってたがあることを思い出した。
「そういえばいまさっき力が湧き上がってくる感覚があったな。これはもしかして…鑑定!」
名前:村木京介
職業:アニオタ
LV:2
HP:18 MP:6
ATK:7 DEF:6 MAG:2 SPD:4
スキル一覧
鑑定 アイテム袋(時間ストップ無限収納) 夜目 不眠不休 テイマー 種火(火魔法)
名前:プリン(スライム)
職業:京介の従魔
LV:2
HP:12 MP:2
ATK:5 DEF:5 MAG:2 SPD:8
スキル一覧
物理無効 触手 初級回復魔法
二人ともレベルが上がってるじゃないですかー。ちょこっと強くなってる。これは嬉しい。プリンもMPが満タンになっている。俺は火魔法のスキルが増えた! プリンは回復魔法だ!
「やったなー。プリン! レベルが上がって魔法のスキルが増えてるぞ!」
「ぷるぷるぷる♪」
プリンは吸収がおわりいつの間にか頭の上のってて嬉しそうにしていた。さて、プリンの触手があればうさぎは倒せる事はわかったが、うさぎを探そうにもあの白い狼がこっちきたらと思うと迂闊に動けない。火魔法が使えるようになったんだし、うさぎを解体して肉を食べてみるかな。一応鑑定したらうさぎは食用で美味いって書いてあったし。
**
「ここら辺でいいか」
少しひらけた場所でここだけなぜか地面が窪んでいるが、まぁいいだろう。プリンを地面におろし、そこら辺に落ちている枯れた木を集めた。
「種火!」
ボゥ! と小さな音を出して火がついた。成功だ。さっきのうさぎを出して小枝に丸ごと刺しじっくり焼いた。
「おぉ。いい匂いがする」
「ぷるぷるぷる♪」
じっくり焼く事数十分。
「完成~♪(ぷるぷるぷる♪)」
俺は木の剣(尖った石)でうさぎをある程度切った後、プリンと食べた。
「うまーい!」
俺は夢中になって食べているとプリンが揺れて必死に何かを訴えていた。
「ん?どうしたプリン?食べないのか?」
「ぷるぷるぷる!」
俺はプリンの触手で指を刺した方向を見ると、そこにはあのホワイトウルフとその子ども達がいた。
少し窪んでいるせいもあり、見えない場所の警戒が少しおろそかになってしまった。
「あ…これは死んだかも…」
プリンは俺の頭の上にのると警戒して触手を出していた。ゆっくりと近づいてくるホワイトウルフに俺はさすがに死を覚悟したが…
「お主。旨そうなのを食っておるのぅ? 我にも少しくれんか?」
「は?????ウルフがしゃべ・・・え?」
なんと、ホワイトウルフが喋った!
「いや、だからのぅ。遠くからおいしそうな匂いがしての? 我は肉は生でしか食べた事がなくてな?ちょっとで良いからわけてほしいんだが?」
俺は戸惑いつつもようやく理解した。ウルフは鼻がいい。多少遠くに行った所で匂いで居場所はバレる。そういう事か。
「わ、わかった。やるから! そのかわり殺さないでくれよ?」
「我は無駄に殺生なんぞせんぞ? この森はそもそも我が支配した森だしのぅ。それと我はフェンリルじゃ。ウルフなんぞと一緒にしてくれるなよ?
おぉぅ。フェンリルさんの支配した森に俺はいたのか。なんてところにいたんだ俺は。
「それに、お主、なぜいきなり我の森に現れた? どうやって? 我にはお主の事が不思議でならん。観察するためにまわりの魔物は倒してこっそり見ておったが」
あー。なるほど。そういう事か。通りで魔物が少ないと思った。フェンリルさんが倒した魔物をプリンが吸収していたところ、プリンに出くわしたいう訳か。
「どうやってきたかはわかりません。あ、コレ、切ったのでうさぎの焼いたお肉どうぞ。焼いてるだけなので、アレですが…」
「!! なんじゃこれは! 焼いただけなのにここまで美味しくなるものなのか!」
フェンリルさんは一口食べた後に子どもフェンリルに食べさせた。子どもフェンリルといってもほとんどお母さんフェンリルと変わりない大きさだが…。
「ところで、そのスライムの個体、お主にやたら懐いておるのぅ」
「あぁ、このパンをあげたら懐いたんです。お一つどうぞ」
「!! なんじゃこのパンは! 柔らかくてこれも美味しいではないか!」
「ぷるぷるぷる♪」
プリンも警戒を解いたようだ。
「よし決めた! お主と共に我もついていこう! お主の従魔となってやろう! 我が子達よ、当分の間我はこやつと共に行く事にする! この森を頼んだぞ!」
「え?」
「不服か? なに、肉ぐらいなら我が狩ってきてやる。その変わり毎日の食事を我によこせばよい。どうだ?」
強そうだし、何より肉がこれでいつでも食べれる。うん、食事問題解決だしいっか。
【フェンリルと従魔契約しますか? YES/NO】
俺はYESと念じた。
「それではよろしく頼む」
俺はフェンリルを従魔として迎え入れたのだった。名前はヴァイス。ドイツ語で白だ。
そして鑑定結果はというと…
名前:ヴァイス(フェンリル)
職業:京介の従魔
LV:57
HP:459 MP:186
ATK:167 DEF:118 MAG:92 SPD:324
スキル一覧
魔法反射 切り裂く トルネード(風魔法) 変化 疾走
「強すぎ!」
「主よ。我はドラゴンの次に強い種族で長命なのだ。なめてもらっては困る」
俺はとんでもないのを従魔にしてしまったのかもしれない…。
強くしすぎ……てないはず。多分