第37話 日常生活
俺はスーパーの駐車場にいた。
「さて、何事もなく戻ってこれたな。10日間後か。普通に仕事の日だな。どうするかな」
今は考えても始まらんか。とりあえず食料の調達をしてくるかな。
俺はある程度の食料を確保して車に戻ってきた。すると俺のスマホの通知音が鳴る。
ピローン!
【ファンタジー系アニメ作品期間限定全話無料! 異世界生活 俺はこの世界でチートを使って無双する】
「な、なんですとー!!!!!!!」
このアニメ、俺のサブスクのアプリじゃ見られなかったやつではないですか! 題名の通りの内容でチートでひたすら魔物を倒して魔王を倒すアニメだ。これがAREMA TVで見られるのか!
現在シーズン4までで全48話が無料とは……シーズン5が始まるって事なのかな。わくわくするぞ。これは!
48話だと当分飽きないな。
俺はアニオタといっても次のシーズンがいつからとかそこまでは調べない。気にはなるがな。
「近くのやたら広い公園の駐車場にでも行くか」
あそこはいつもガラガラだしゆっくりするのによく利用している。
昔、その公園は土日は駐車場が毎日の様に満車だったんだが、時が経つにつれ、近所の子どもが少なくなってきて利用者が減ってしまったからだ。
「AREMA TV起動。お、これか。早速視聴しながら公園の駐車場に行こう」
俺は駐車場に付き、公園から一番遠い場所へ車を止めた。
「アイドリングストップよし。スマホ充電あり。さて続き続きっと」
異世界アニメってシーズン1がめちゃくちゃ面白いんだよな。
自身が強くなる過程も十分おもしろいんだが、やっぱりチートを使った魔物を駆逐したりする爽快感。これは見てる側はめちゃくちゃハマる。後はざまぁ系だな。俺も実際異世界ではコーラルに絡まれた訳だが。
そして俺は異世界アニメに没頭していくのであった。
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「あー腰が痛い……」
俺は車から外に出て背伸びをした。あれから1話から5話まで見てしまった。俺は自販機で缶コーヒーを買いに向かう。
「あ、ついでに小銭でありったけ、ジュース買っておいてやろう」
何本か購入した俺は誰も見てないのを確認し、そっと異世界ボックスへ収納した。
「こっちで唯一使えるこの異世界ボックス。これだけでもこの世界じゃかなり有利に働くよな。ほんと」
ほとんど食料しかいれてないけどな。なるべくあっちの今の世界を崩したくないのもあるが。
現代の技術の持ち込みダメ。ゼッタイ。
……カメラだけ入らないかな?
後で試してみよう。ちなみにスマートフォンは入らなかった。そりゃそうか。そして俺は一旦休憩も兼ねてコンビニへ。そこでインスタントカメラと昼飯を購入し車に戻る。
「デジカメやスマホカメラは無理だろう。ならばこのカメラならどうだ!」
……デスヨネー
うん。カメラは諦めよう。無駄な時間を使ったぜ。いや、こういう検証も大事だという事だと思う事にしよう。そうしよう。
俺が「中世には不釣り合いすぎる持ち物は持てないように」と言っちゃってるからな。
しょうがない。大人しく昼飯でも食べるか。
「後はなんか必要なもんはあるかなぁ」
何でも売ってるソン・スルーテでテキトーに遊ぶもんを買うのも有りか? いや、いくら砂金があるとしても、無駄に使いすぎるのもよくないか。それこそ 損・するって? うるせぃ。
俺はそれから特にする事もなく家に帰宅。そして夕飯まで異世界アニメの続きを見たり、庭の手入れをしたりして過ごした。
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それからというものの、平日続きで2~7日目は、会社にいつものように出勤。特に何事もなく仕事は定時で終了。行きと帰りで【異世界生活 俺はこの世界でチートを使って無双する】の2話分を毎日視聴して終わる。
土曜日出勤は辛いが定時だからここは仕方がない。
だが、異世界アニメを視聴しながらの通勤はやっぱりいい。今はちなみに全部で24話まで視聴しているぞ。シーズン2まで見終わった。チートスキルをある程度習得したっぽいから、シーズン3からはさらに無双していくんだろうな。わくわくが止まらん。
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そして日曜日。朝は食料の追加買い出しへ一人で行き、昼からは家族サービスを。そして一段落をした夕方、電話がかかってきた。神様からだ。俺は席を立ち誰も居ない部屋へと移動した。
「はい。もしもし? 村木です。神様どうしましたか?」
「あっちに居ないからどこにいるのかと思ってたら、こっちに居たのねー!」
「そうですね。ちょっと時間が空いたので、その間はこちらでいろいろとしようかと思って」
「なるほどねー☆ それでね。ちょっとまた不具合が出ちゃってあっちに戻る事が今出来ない状態なのよ」
オーマイガー! それはそれで困るんですけど。10日後に戻らないといけないのに……
「そ、それはいつまでですか?」
「わからないのよー。今日までかもしれないし明日かも、もしかしたら1ヶ月後とか」
「え? マジですか? あと3日後に戻らないといけないんですけど」
「ごめんねー不具合を解消まで転移するのは危険なのよ。体がバラバラになってあっちに転移したいなら無理にとは言わないけど」
スプラッター転移ですか? なにその転移。恐ろしすぎなんですけど。
「それは勘弁してください。わかりました。不具合ならこっちでは俺はどうしようもないですから、復旧するまで待ってます」
「ありがとねー。それじゃ、またー」
……まずい事になったな。俺一人だけなら別にアニメ見て暇つぶしをして待っていればいいだけなんだが、今回は仲間と約束してしまっている。あの時の不具合と逆のパターンか。
俺は部屋を出て戻り椅子に座り考える。
「まだ3日もある。とりあえずは考えるだけ無駄かな」
「何が3日なの?」
おっと声に出てしまって妻につっこまれてしまった。
「なんでもないよ。仕事の事だ」
俺はとっさに誤魔化した。
**
そしてあっという間に俺の帰還する期限になってしまった。俺は今、会社の駐車場にいる。そして一本の電話をかけた。
「もしもし? 神様ですか? 不具合どうなりそうです?」
「もしもーし。ごめんねー。あれからがんばってるみたいなんだけど、まだダメそうなのよー」
「そうですか。仲間に連絡を取る事は可能ですかね?」
「それも今は無理ね」
これはしょうがないかー。どうしようもできない。
「わかりました。復旧したら教えてください」
「はーい。了解だよー」
俺は電話を切っていつものように仕事に出る事にした。それからさらに電話がかかってくる事はないまま、既に5日が経過しようとしていた。




