第31話 地底都市ドワーフの街
「それにしても、まだ先が続くのか。長いな」
俺達はかれこれ砂の精霊さんと別れてから既に3時間近く経っていた。遺跡をマッピングしながら移動しつつ進んでる実感はあるものの、何も発見がないままでいた。
「おっ! あそこ、少し大きい空間があるみたいだな」
「待て! 主よ! 何か音が聞こえる!」
カーン……カーン……カーン……
俺達は警戒しながらその空間へと足を踏み入れた。すると変な歌声が
「今日も金属っ♪掘り当てたぁ~♪ 明日も金属っ♪掘り当てろぉ~♪」
……ちっさな人がいた。髭まみれのもじゃもじゃおじさんだ。俺は恐る恐る話かけた。
「あ、あのぉ~? すいませーん」
「ん? なんじゃお前は! お前さんテイマーか? なんでこんなところにおる?」
質問多いな。
「砂漠で魔物の討伐をしてたら流砂に巻き込まれまして……仲間共々この地下? 地底に落ちちゃったんですよ。あ、俺の名前は冒険者のムクノキといいます。テイマーですよ」
「ワシの名はボルガン。見ての通りドワーフじゃ。その穴はおそらくサンドワームの穴じゃろうな。今までよく生きておったな」
「従魔もいるので」
「そうか。そしてここはお前さんの言う通り地底じゃ。サンドワームの巣穴があっちこっちにあってとてもここまで来れるはずがないんじゃが……」
「そのサンドワームなら、もうあらかた倒しちゃったんでいませんよ。ただ穴だらけで崩れないかちょっと不安なんですよね。ここ」
「なんじゃと!? それは本当か! ムクノキと言ったか。お前さん、ドワーフの今後の未来を救ったぞ」
ドワーフの今後の未来? どういうこっちゃ? ただ魔物を倒して進んでただけで宝すらなくてどんよりしてたのに、知らないうちに砂の精霊助けてドワーフを助けて? この地下だか地底だか知らんが、どうなってんの。
「えーっと?」
「よーくきけ! この地底にサンドワームがわんさかいたのは知っておるじゃろう? そいつらのせいでワシらの地下採掘場がどんどん食い荒らされて規模が縮小しておった。そこにお前さんだ。サンドワームを倒したと言う。それはつまり地下採掘場の規模を元に戻せるということじゃ! ちょっと確認するのに時間が必要じゃがな。」
「あー…… でも、サンドワームの穴は水浸しかも?」
いや、砂の精霊さんがどうにかしててくれてる? まぁいっか。それにしてもサンドワームさん、めっちゃ迷惑魔物ですやん。災害指定級ですやん。駄目ですやん。
「とりあえず地底都市ドワーフの街に来い!」
ブツブツ言っているとボルガンさんに手を掴まれて引きずられてしまった。さらに下に行く道があり、俺達は後ろをついていった。
「つ……辛いっ!!!!!!!! ドワーフの洞穴の道の高さがとても低い!!!! こ、腰が!!!」
「若いくせになにをいうておる。そりゃ、ワシらのサイズだからしょうがないじゃろう。文句言わんとついてこい」
「我は元の姿に戻っておるから楽じゃがのぅ」
「丁度いい高さなのぉ~♪」
ヴァイスの変化がうらめしい!!! ちなみにプリンは人間形態のままだぞ。子どもには丁度いい高さだな。
「……お前さん、その従魔、フェンリルじゃないか? フェンリルは従魔なんぞに普通はならんはず……」
「我は主について行きたいと思っておるからじゃ」
ヴァイスが上手い事言っている。飯の美味いじゃないぞ? ま、ここは黙っておいてやろう。
**
そしてそんな洞穴を進む事数十分。少し拓けたそれも天井が高い場所に出た。ヴァイスは獣人に戻る。
「ここから先がドワーフの街じゃ」
するとここからもでも聞こえてくる鉄を打った音、怒声罵声の声。そしてなにより熱気がムンムンとしている。
「さすがドワーフの街だけあるな」
「じゃろう?」
さらに先に進む。と、そこへ門番が話かけてきた。
「ボルガンさん、そちらの方は?」
「あぁ、こいつらはあのサンドワームを倒しまくってここにたどりついたらしいテイマーの冒険者じゃ」
「サンドワームがいなくなったんか!!!!!」
「こいつらの言う事が正しければの。それで確認をとってもらっている間、ここに居てもらうことにしたんじゃ」
あ、やっぱりそうなるのね。まぁ全部倒せているのかは、わからんからいいけど。どうしても戻りたい時は転移がある。
「よろしくお願いします」
もちろん門番さんもドワーフで髭がもじゃもじゃだったぞ。街中に入るとまさにドワーフという街並みであった。ボルガンさんについていきながら建物を見る。建物自体は普通だが、鍛冶屋と武器防具屋が多い。しかも外から見てもわかるが、サイズがでかい? なんで?
「あぁ、それはじゃな。ワシらドワーフはカバナルの街に卸しに行っているからじゃな」
「なるほど。通りでカバナルの冒険者の装備の質がいいと思った」
「そういう事じゃな。お前さんの防具も儂らドワーフが作ったもんじゃな」
おぉ! てことはここで買った方が安いのでは? などと俺は思っていると
「ここがワシの家じゃ。まぁ入ってくつろいでくれ」
中は人間の家とそう変わらない。ちょっと天井が低いが、気にならない程度に高さはあるようだ。
「ワシはこの街の国王の所へ行ってくる。兵士を派遣して調査をすることになるだろう」
「あ、わかりました。俺達はどうすれば?」
「特にすることはない。ワーム調査だけじゃしな。ついでにお前さん等がワームをほぼ全部倒したと街の人に言いふらしておいてやるわい」
「それは勘弁してください」
「ガッハッハッハ それじゃ、ゆっくりしていてくれ。あ、それと泊まるとこもこの部屋を使うといいじゃろ」
「あ、わかりました。ありがとうございます」
「じゃあの」
そしてボルガンさんは出ていった。放置された俺達はここなら転移して一旦戻っても大丈夫だろうと判断し、森へと転移した。
**
「久々の外だー!」
「「「わんわんわん」」」
「おー! フェルイレ、フェルトゥ、フェルサー元気だったかー?」
久しぶりでもないが、嬉しそうに近寄ってくるので撫でてやる。ふわふわで相変わらず癒やされるー。ついでにプリンに綺麗にしてもらっておこう。
「主よ。これからどうするのじゃ? もうあそこに居る必要はないじゃろ?」
「そうなんだけど、ドワーフの街がワームでやばいことになってたのは事実だろうし、とりあえずドワーフの街で少しゆっくりするつもりだ」
「ゆっくりするぅ~♪」
「「「「「わんわん」」」」」
お? 子フェンリルがメンバー交代してるな。
あっちで地球産出すのはあれだから、こっちで休憩がてらなんか食べようか。あ、これにしよう。
ボスココの巨大ティラミス5個!
さぁ、たーんと召し上がれ!
従魔達は無言でティラミスを平らげた。俺、そんなにまだ食べてないんですけど……
まぁいいか。休憩は出来た事だし、
「おーい! 戻るぞー!」
俺達は転移でドワーフの街に戻った。
最近、展開早すぎるかな? と思いつつ思うだけで爆走中……
ヴォルガン→ボルガンに名前を変更




