第13話 逆襲のゴブリン襲来
その日も鍛錬をした後、俺達はいつものようにヴァイスを背に、プリンを抱いて宿で寝ていた。
寝静まった夜中、いきなりおおきな鐘の音が、街全体に響いた。
カーンカーンカーンカーン
俺は飛び起きた。プリンをヴァイスに乗せ部屋から出ると宿の女将さんが
「魔物が襲来したみたいだよ! はやく避難所に逃げなさい!」
と周りのお客さんに言ってまわっていた。
「あんたは冒険者だね。冒険者の人はランクを問わず、冒険者ギルドに行って指示を受けな!」
と俺に言い早足で去っていった。
「はぁ……魔物が夜中に襲ってくるなよ」
俺は愚痴言いつつも、いつもの剣と鎧を着た。ヴァイスとプリンを起こそうと揺さぶったが、ヴァイスは寝ぼけたままだった。
「おいヴァイス。獣人になっといてくれよ」
「まだ我は眠い。我ぐらい強ければある程度は平気だから寝かせておいてくれんかの?」
「お前の力が必要になるかもしれないだろ。頼むよ」
「わかったわかった。これでいいかの?」
ヴァイスはうつらうつらしながら獣人になった。プリンは既に覚醒しているようでまだ獣人になって横になって寝ようとしているヴァイスのほっぺたをぺちぺち触手で叩いていた。あ、写真取りたい。
冒険者ギルドに到着するとギルドマスターが冒険者を集めて話をいているところだった。
「いいか! 魔物はゴブリン1000匹! 数が多い! 強い個体もいた! ゴブリンジェネラル級はAランクとBランクの冒険者数人必要だ。単体ならそう強くはないがゴブリンを統率しているから知識があると思われる! 前線はA,Bランク、前線部隊はジェネラル含め、強い個体を優先的に殲滅! C,Dランクは強い個体には手を出すな! A,Bランクのフォローにまわりながら雑魚共を蹴散らせ! E,Fランクは避難民の誘導だ! 街の地図はそこにある! 誘導が完了次第避難民とそこで待機! それでは作戦開始!」
なるほど。わかりやすい作戦だ。俺はFランクだから避難民の誘導か。街の地図を手に取り俺はギルド内を見渡した。するとそこには見知った顔があった。エリンだ。彼女は確かAランクだったか。エリンの元へ行き、俺は一言声をかけた。
「エリン! 死ぬなよ?」
「ん? ムクノキじゃないか! まかせとけ。これでもAランクだからな! それよりもお前の方こそ死ぬなよ?」
「俺はFだから避難誘導だ。死ぬ事はないだろう」
「そりゃそうか ま、油断はするなって事だ。じゃあな」
そういうと彼女は去っていった。ABランクが総勢20名 CDランクが50名 EFランクが30名。一人頭10匹か。EFランクは実質は戦わないが。大丈夫か?
俺はそれから外を出た後地図の場所の避難所へと向かう人達を誘導していた。すると
「グギャギャギャギャギャ!」
遠くから大きな声が聞こえた。鷹の目のスキルを発動し、街の周りを確認すると西側から大きな地震のような音が鳴り響き街へと近づくゴブリンが一斉に突っ込んできた。前線は弓や魔法を使って倒してはいるものの数が多い。街にゴブリンが近づいてきたと同時に冒険者と防衛隊が前に出て応戦をした。
守るのは冒険者だけなわけないか。これなら……
俺はなるべく避難民を避難所へ移動するよう急かしながら一人、二人と避難民を誘導した。
ヴァイスはまだ眠たいらしく避難所の前で待ってると言って避っていった。
何分位経っただろうか。
俺は少し汗を流しながら誘導しているとチラホラとゴブリンを見かける様になってきた。こっちに近寄ってくる度に斬り伏せているのだが、少しづつ多くなってきているように思う。
なんとか俺達E,F冒険者メンバーは最後の避難民であろう人物を避難所に届けた。
疲れ切った顔で避難所へ入っていく冒険者。
俺は避難所の横で壁にもたれかかり、鷹の目で前線を見ていた。状況がどうにも芳しくないように思えて仕方がない。
「ヴァイス! ちょっと前線の様子を見に行こう」
「主。我はまだ眠いのだ。寝かせてくれ」
夜は駄犬なのかな? 怠けたいだけなのかな? すると
ぽんっ
「おいこら! 戻るな! 獣人に戻れ!」
「Zzzzz…」
寝た。まぁいいか。周りには誰もいないしこのままでも。どうせ前線に行けば起きるだろう。俺はそのまま引きずって前線に行った。
喧騒が大きくなってくるにつれ、周りの現状を俺は把握しつつあった。
周りが火の海で鷹の目では見られなかったのだ。
「これは少しまずいな。強い個体が多すぎる」
現状ジェネラル1体にキングが5体。雑魚ゴブリンはまだたくさんいる。
キングは何体か倒しているようだが、上位種が多すぎて押されている。C,Dランクの冒険者も何人かはやられながらも雑魚を近づけないように善処していた。
「くそ! また一人やられた! これ以上近づかせるな!」
「でも、雑魚の数が多すぎですよ! 俺達だけじゃ防ぎきれない!」
「へばってんじゃねーぞ! 魔法使いの範囲魔法はまだか!?」
「MPがもうないそうです! マナポーションもなくなったと今連絡がありました!」
「このままだとまずいぞ! おい! どーするよ! ちくしょう! こっちも一人やられた!」
どうしたらいいんだろうなホントに。と思っていると
「ギャギャギャギャギャ!」
ゴブリンが複数突っ込んできた
「うるさいなぁ。トルネード!!!!!!!!!」
ヴァイスが寝ぼけざまにトルネードを放つ。ゴブリンはその風圧に耐えきれず吹き飛ぶ。冒険者達はいきなりの範囲魔法にびっくりをするもなんとか範囲外へと逃げ延びた。
「良し。静かになった。Zzzzz…」
「ちょっ! 何してくれとんの! この駄犬!!!!!」
急いで俺はその場から去って木陰に隠れる。
「ヴァイスは見られてないよな? 大丈夫そうだ。この駄犬め。後で説教だ」
「ぷるぷるぷる?」
なんでもないよプリン。だが、ヴァイスのトルネードのおかげか、周りの雑魚がとばっちりで巻き込まれ半分片付いた。上位種も3体巻き込まれ倒されていた。これで後はジェネラル1キング2雑魚半数となった。
「まだまだ安心はできんな。暗殺スキルフル使用して死角から援護するぞ! プリン俺が傷をおったら回復してくれ! 痛覚遮断は…使わないでおこうか。ヴァイスは……ここに放置だな」
「ぷるぷるぷる♪」
プリンは俺の服の中に隠れてご機嫌だ。さぁ。反撃の開始だ!