表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
72/88

第七十話:動き出す運命

また遅れました。

安定しなくて、申し訳ない・・・

山深い古寺の静けさを破るように、霊脈がざわめいた。空気に満ちる瘴気の密度が、明らかに変わっている。


紅明は、老いた身体に鞭を打ちながら、山門の前に立っていた。


「……っち。冥道の野郎、本格的に動き出しやがったな……」


異界と現世を繋ぐ《門》は、不穏な波動を帯びて脈動していた。紅明は震える手で印を結び、封印術式を再強化する。だが――


「……くっ……!」


痛みが全身を走る。奥歯を食いしばっても、身体の奥からこみ上げる鈍痛が治まらない。


(やべぇな……霊薬の効力が切れかけてやがる……)


かつて施した「若返りの霊薬」の効果は、もはや限界に近い。その反動は確実に紅明の肉体を蝕み始めていた。


――数日前。


逢魔の一室。紅明は、凛夜とカガリを呼び出していた。


「凛夜、カガリ。お前らに、話しておかなきゃならねぇことがある」


その声音は低く、どこか切迫していた。晴明にすら見せないその表情に、凛夜は戸惑いの色を浮かべる。


「話って……それは構わないが、じいさん、顔色が……」


カガリも心配そうに目を細めた。


「うむ……話の中身は後でも良いのではないか?今のそなた、まるで人間の皮を被った死神のようじゃ……」


だが紅明は、首を振った。


「いや、ダメだ。……もう、時間がねぇんだ」


その目は、凛夜を真っ直ぐに捉える。


「凛夜。冥道の狙いは……お前だ」


空気が凍りつく。


凛夜は動揺を隠せず、口を開いた。


「俺……だと? なぜ……俺が?」


カガリも凛夜の隣で表情を強張らせる。


「冥道の目的は妖魔の増殖だけではなかったのか?凛夜が狙われる理由など……」


紅明は、ゆっくりと、だが確実に言葉を紡いだ。


「凛夜……お前の両親は、“偶然”襲われたわけじゃない。……冥道の狙いは、最初からお前だったんだよ」


凛夜の瞳が揺れる。


「……どういう、ことだ?」


「お前の家――久遠家のルーツに関係がある。お前の先祖……その名は、“久遠宗雅”」


「……宗雅……?」


カガリが目を見開く。


「まさか……あの時代の陰陽師、久遠宗雅の……?」

 カガリは思い出してきた。封印の際に失われていた記憶を

「宗雅…久遠宗雅…久遠!そう…か凛夜はアヤツの…」


紅明は頷いた。


「その通りだ。お前の血は、宗雅の直系に繋がっている。つまり……お前には、“宗雅の魂の残響”が宿っている」


「……魂の、残響?」


「人は魂の器を持つ。記憶や人格こそ違えど、強き想いは“血”に刻まれ、代を超えて響く。冥道はそれを……“鍵”にしようとしている」


「鍵……?」

「ああ、久遠宗雅。かつての名を芦屋宗雅。凛夜…お前はな、芦屋の血筋なんだよ」


「冥道の目的は“完全なる同化”――つまり、宗雅の血脈を…自らと同じ芦屋の血を喰らい尽くし、己の闇を“盤石”にすることだ。お前は……その鍵になる存在なんだよ、凛夜」


凛夜は愕然とした表情のまま、口を閉じた。


自分がただの復讐者ではないこと。冥道の計画に組み込まれた“血の因果”の中心にいること。



カガリは、凛夜の肩にそっと手を置いた。


「凛夜。……それでも、お主は“お主”じゃ。たとえ誰の血を継ごうと、儂は……そなたを信じるぞ」


その言葉に、凛夜は少しだけ微笑んだ。


紅明は、そんな二人を見つめながら、ふと柔らかく言った。


「……お前らなら、大丈夫だ。信じてるぜ」


だが、その声音には微かな寂しさもあった。


(……もう長くは、持たねぇ)


自らの命が限界に近いことを、紅明は悟っていた。

現世に目覚めてから、色々と無理をしすぎた。最近は縁の癒しも受けていないし、もう効かないだろう。


――だが、それでもまだ伝えねばならないことがあった。


宗雅の意志、晴明の願い、縁の魂に託された“癒し”の思い――

そして、未来に託された、最後の希望。


その全てを、次代に渡さなければならない。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ