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第六十八話:芦屋冥道の章4「復活の影」

これで個別エピソードは終わります。

次の話より、物語はエンディングへと向かっていきます。

静寂。

永き封印の果てに訪れる、ただ一つの揺らぎ。

それは、時の堤にわずかに走った罅。かつて芦屋冥道と呼ばれた男の魂が、再び目覚めた瞬間だった。


──時は、現代。

紅明が目覚める「数年前」──

彼に先んじて、封印の底から這い出た存在があった。


かつて冥道を封じた「封神陣」は、1200年の歳月により霊力がわずかに衰えつつあり、

そこに呼応するように、紅明の眠りにも、兆しが現れ始めていた。


「……紅明が目覚める気配。ならば、俺もまた目を覚まそう」

封印の狭間、冥道の声が闇を震わせる。


“均衡”が崩れ始めた。

古の英雄たちの想いがかろうじて保ってきた均衡が、千年の時を越えて軋み始めていた。



東京の片隅、誰も知らぬ地下の深奥に、冥道は姿を現していた。

肉体は滅びたが、残された魂魄と呪力により、彼はなお現世に具現化する術を得た。

それも、長くはもたぬ。一度完全に滅んだ者が現世を歩むには、何か“依り代”が必要だ。


「……俺を拒んだ世界。俺を選ばなかった者たち。いまこそ、貴様らに裁きを与えよう」


冥道の眼差しは、かつての京ではなく、今の東京を見据えている。


「完全なる異界の門──“大百鬼夜行”を、今度こそ完成させる」


その鍵はひとつ。

かつて久遠宗雅が遺した血。

芦屋の血と交わり、今なお続く血脈──久遠凛夜。


「お前の魂が、俺を再び世界に繋ぐ扉となる」


冥道はかつて宗雅を引き込もうとしたように、凛夜をもまた、その闇に引きずり込まんと目論んでいた。

しかも今回は、かつての宗雅のように仲間に守られることも、導かれることもない。

たった一人で抗う少年に、冥道は“選ばれなかった者の呪い”をぶつけるつもりだった。


「俺はこの世界を、再び練り直す。俺を拒んだ世界など、いらぬのだ──」



冥道の暗躍は、まだ誰にも知られていなかった。

ただ紅明だけが、遥か深い夢の中で、その目覚めに薄く気づいていた。


“またあいつが、動き始めている──”


薄れゆく結界。

異界の門を開く呪。

密かに蓄積される妖気と、“大百鬼夜行”の儀式。


冥道の野望が再び現世を包み込むまで、残された時間は、あまりにも少ない。


だが、世界はまだ気づかぬ。

かつて忘れられた名の陰陽師が、再びすべてを呪うため、歩み始めていることを──


冥道の章、ここに幕。

だが彼の野望は、まだ終わらない。

未来へと続く、凛夜たちの戦いの序章は、静かに開かれようとして



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