第三十三話・後編:ふたりの帰る場所
どうにか今日も4話分を。
どうでしょう?皆様楽しんでいただけてるでしょうか?
次回からは、本作において、大切なエピソードを掲載していきたいと思います!
よろしければ。
復旧作業が、ようやく一段落した。
連日続いた緊急対応も、応急処置も、ようやく終わった。
ひとつひとつの部署が、いつもの顔を取り戻しつつある――そんなある日のことだった。
凛夜は、重たかった肩を軽く回しながら、ある部署の扉を開いた。
「カガリ、ひさしぶ――ぐふぉっ!?」
その瞬間、胸元に衝撃が走った。
文字通りすっ飛んできたカガリの頭が、勢いよく腹にめり込んだのだ。
「ぐ……まだ腹筋が回復してないってのに……」
だが、凛夜の苦悶の声に応えることもなく、カガリはそのまま凛夜にしがみついていた。
肩を震わせ、顔を胸に押し付け、声を――必死に、押し殺して。
泣いていた。
ようやく会えた。ようやく、触れられた。
ようやく、抱きしめることができた。
それでも、泣きじゃくるわけにはいかないと、声だけは漏らさないように――
けれど、その震えが、涙が、想いが……痛いほど伝わってくる。
凛夜は何も言わずに、そっとその背を撫でた。
ゆっくりと、丁寧に、優しく。
「……つらい思いを、させちまったな」
そのひとことに、カガリの指がきゅっと服を握った。
どれほど寂しかったか。
どれほど不安だったか。
それでも支え続けた自分に、凛夜が気づいてくれていた――
その想いが伝わった瞬間、カガリはようやく、声を出した。
「……ばか……凛夜の、ばか……」
涙まじりの声でそう言ってから、彼女はふにゃりと笑った。
頬を濡らしたまま、今度は甘えるように、凛夜に寄りかかってくる。
「儂、ずっと我慢しとったんじゃからな。撫でるだけでは、許さんぞえ?」
「……はいはい、好きなだけ甘えてくれ」
どこか呆れたような、けれど限りなく優しい声で凛夜はそう答えた。
しばらくのあいだ、ふたりは誰にも邪魔されることなく、ぬくもりを分け合った。
まるで時が止まったような、静かな、優しい時間だった。
やがて、カガリが落ち着いてきたのを見計らって、凛夜はそっと話を切り出す。
「俺達もようやく一段落したな。……カガリ。家を探さないか?」
「え?」
「俺とお前で住む、ふたりの家をさ」
カガリは、目をぱちぱちと瞬かせた。
ぽかんと口を開けたまま、しばし言葉を失って――
「……え、ええと、そ、それはつまり、正式な新婚生活というやつで……」
耳が赤く染まり、頬がほんのりと桜色に色づいていく。
だが、次の瞬間にはその顔が満面の笑みに変わっていた。
「善は急げじゃっ!」
ぐいっと凛夜の手を引くカガリ。
「今すぐ探しに行くのじゃ!好みは、庭付きで、縁側があって、あとは布団がふかふかで――」
「……もうちょっと落ち着け」
「だってうれしいんじゃもん!ほんとうに、うれしいんじゃもん!」
笑いながら、泣きながら、凛夜の手を握るカガリ。
その手のぬくもりは、ずっと待ち望んでいた“ふたりの時間”の始まりだった。




