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第二二話:最強の証明

「……お前は俺が、直接もんでやる。かかってきな、バカ弟子」


紅明が片手を懐に突っ込んだまま、気だるそうに呟いた。


対する凛夜は、額に一筋、冷や汗を垂らす。


「……わかった。手加減、なしで行くぞ」


その声には、かすかに緊張が滲んでいた。


傍らでそれを見つめていたカガリは、ぽつりと呟く。


「この様な凛夜……初めて見るのじゃ……」


いつもは絶対的な自信と静謐な冷徹さを湛えた男――

その彼が、今、わずかに“気圧されている”。


そしてそれは、始まってすぐに確信へと変わった。


――ドンッ!


一瞬、視界から紅明の姿が消えた。


「……っ!?」


瞬きの間すら与えず、次の瞬間には――


――ガッ!!


凛夜の体が宙を舞い、無造作に地面へ叩きつけられる。


「ぐっ……!」


だが、凛夜は即座に立ち上がり、呼吸を整え、印を切る。

しかしその隙すら、紅明は許さない。


――ズドォン!!


足元から抉れた地面。

その破裂と同時に、凛夜が再び吹き飛ばされた。


技も、術も、通じていない。


それはまるで、子どもが初めて剣を握っているかのような一方的な光景だった。


「嘘じゃろ……?」


カガリは信じられず、思わず呟いた。


(この儂が見てきたどの凛夜よりも、今の彼は強い……はずだった。それなのに――)


その時、凛夜の気配が変わった。


「ぐっ…木、火、土、金、水!」


(な!?り、凛夜よ!その技を人に使うというのか!?)

目を見張るカガリ。カガリの知る凛夜は、その技を人に使うような男では無かった。決して。

しかし……。


「はっ!その技か…」

そう吐き捨て、つまらなそうにする紅明。


「五行滅殺!」

凛夜の渾身を込めた一撃が炸裂する……そう思えた。だが―――


――バシュン!!

そう、音を立てて、術式は霧散した。


言葉もなく立ち尽くす凛夜。


紅明はふいに動きを止め、煙草をくわえる。


「その技をお前に教えたのは誰だと思ってやがる?」

そう、気だるげに、こともなく言い放つ紅明。


「けっ。やっぱり鈍ってやがるじゃねぇか……このバカ弟子が」


その声には呆れが混じるが、同時に、何とも言えぬ哀しみが滲んでいた。

昔の凛夜を知る者だからこそ、その変化に胸を痛めているのだ。


「な……っ」


凛夜が、奥歯を噛み締める音が響く。


だがカガリの胸に渦巻くのは、驚愕と混乱だった。


(“鈍ってる”……? 儂の知る限りでは、今の凛夜こそが最強のはず。それが……それが“鈍った”と言えるほどに、過去の凛夜は――)


紅明は煙を吐き、肩をすくめる。


「確かに、技術はな。ちぃーっとばかりマシにはなってるよ。だが……“強さ”っつーのは、そういうのだけじゃねぇ」


「てめぇは、あの頃のほうが“鋭かった”――剣も、目も、心もな」


その言葉に、凛夜は拳を握りしめた。


カガリは見ていた。


その背に宿るもの。

怒りでも悔しさでもない。

それは――尊敬と慚愧の、混じりあった色。


(強さとは……なんじゃ……?)


これまでの“常識”が、音を立てて崩れ落ちていく。


今、彼女は知る。


本物の“強さ”を、まざまざと突きつけられているのだ。


それは同時に、自身の限界の輪郭を照らす“光”でもあった。


――強くなりたい。


――あの人の隣で、決して劣らぬ存在になるために。


紅明と凛夜、二つの「最強」がぶつかるこの光景は、カガリの魂に火を灯し続けていた。



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