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第十八話:夜明けの決意

本日も4話投稿です。次回は主人公の師匠が登場です!

結婚式の喧騒が過ぎ去った夜、二人はいつもの寮ではなく、逢魔庁が用意した一軒家にいた。


凛夜とカガリ――ふたりだけの、誰にも邪魔されない空間。


「……ふぅ」


シャワーを浴び終えたカガリは、白いバスローブを纏い、湯気の残る頬を押さえながらベッドの端に腰を下ろしていた。


心臓が、ひどく高鳴っていた。先ほどの誓い、そして今この静けさが、その現実をじわじわと実感させてくる。


「……ふぅ……ふぁあ……!」


鼓動を落ち着けようと深呼吸を繰り返すも、逆に緊張が増してしまう。


――そのとき、バスルームの扉が開いた。


タオルで髪を拭きながら現れたのは、白いTシャツとラフなズボン姿の凛夜だった。けれど、彼の動きもどこかぎこちなく、緊張しているのが一目で分かった。


視線が交錯し、何も言えずに見つめ合う。


「……」


凛夜が、そっと近づく。


その手が、カガリの頬に触れた。


「カガリ……」


「……凛夜……」


その名前を呼んだ瞬間、感情が溢れて、自然と唇が重なった。


やわらかな接吻は、次第に熱を帯びていく。


戸惑いも、恥じらいも、すべて抱きしめながら――


その夜、ふたりは初めて、真に結ばれた。



窓から淡い陽光が差し込む朝。


カガリがゆっくりと目を開けると、隣にはすでに起きていた凛夜の姿があった。


彼は穏やかな表情で、じっとカガリの顔を見つめている。


「……おはよう、カガリ」


静かな声。けれど、耳元で囁かれたそれは、胸の奥まで響いた。


カガリは一瞬で真っ赤になる。


「う、うぅぅ……! こ、こんな顔、見ないでくれぬかっ……!」


慌てて毛布を引き上げ顔を隠すが、全身がすでに赤く染まっていた。


凛夜はくすりと笑い、額にそっとキスを落とす。


「そう言うな。誰よりも、愛おしいよ」


「~~~っ……!」


カガリは、毛布の中から蚊の鳴くような声で返した。


「……お、おはようございます、凛夜様……」


そんな二人のやり取りは、静かで穏やかな、確かな幸福の時間だった。



朝食は、簡単な和食。


食後、食器を洗いながら、凛夜の表情が少し引き締まる。


「……そろそろ、向き合わなきゃな」


声に出した瞬間、自分の中にある迷いが晴れていくのを感じた。


――自分を引き取り、育ててくれた師。

――かつての自分にとって、全てだった存在。

――そして、今もなお心の奥底に刺さっている過去の影。


安倍紅明。


強く、厳しく、誇り高かった師。

けれど、あのとき自分は師の真意を理解できず、ただ反発し、逃げるようにその場を去った。


「師の“恨みに囚われるな”という言葉――あの時、ちゃんと向き合うべきだった」


今ならわかる。


過去と向き合わなければ、本当の意味で未来は築けない。


そして、何よりも――カガリと生きていくと決めたのだから。


逃げているわけにはいかない。


「……行ってくる。俺の“原点”に」


凛夜がそう呟いたとき、カガリはそっと立ち上がって彼の隣に並んだ。


「――儂も、行くぞ」


「……え?」


驚いたように凛夜が振り返る。


けれど、カガリの目は真剣だった。


「おぬしが過去と向き合うなら、儂も共におろう。凛夜ひとりに背負わせたりはせぬ」


その言葉に、凛夜は少し目を細め、そして微笑んだ。


「ありがとう、カガリ。……頼りにしてる」


「ふふ、当然じゃ」


ふたりは手を繋ぎ、互いの温もりを確かめ合う。


目指すは、安倍紅明が身を置く山深き隠れ寺――

その先に待つのは、懐かしい痛みと、そして新たな希望だった。


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