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不思議な機関車

作者: 望月雲の介

   不思議な機関車


 君はいきたい場所に連れて行ってくれる不思議な機関車を知っているかい?

 その機関車に強く願って乗車すれば、君のいきたい場所へひとっ飛び。

 ほらあそこに泣いている子供がいるね、行ってみよう。


「ねぇ、君はどうして泣いているのかな?」

「うっ、う~。お母さん」

「お母さんか~、もしかして君迷子かな?」

「……。うん」

「じゃあ僕が君のお母さんがいる場所まで連れて行ってあげる~。じゃあ、君は強く願って、『お母さんに会いたい』って」

「ぐすっ、分かった。『お母さんに会いたい』」

 シューっと、不思議な機関車は虹色の蒸気を吹く。

 虹色の蒸気が晴れるとあっという間に、迷子の子はお母さんの前に。


「っ! 健太どこに行ってたの!」

「お母さん!」

 よかったね、迷子の子はお母さんと出会えたね

「いったいどこに行ってたのよ!」

「ごめんなさいお母さん、でもね、機関車が連れてきてくれたんだ。……あれ?」

「何言ってんの~、でも、よかったわ~」


   × × ×


君はいきたい場所に連れて行ってくれる不思議な機関車を知っているかい?

その機関車に強く願って乗車すれば、君のいきたい場所へひとっ飛び。

 あれ? 今日は大きな箱を持った大人が一人、どうしたのかな行ってみよう。


「そこのおじさんどうしたの?」

「うん? あぁ、今日は娘の誕生日なんだ。だけど今日はこんな大雪で電車もバスも止まって、帰れなくなっちゃたんだ。せっかく大きなウサギのぬいぐるみを買ったのに……」

「じゃあ、僕がおじさんのお家まで運んでってあげる~」

「本当かい!」

「うん! じゃあ、おじさんは行きたい場所を強く願って」

「こうかい?」

「うんうん、しっかり手を強く握ってていいね。じゃあ行くよ!」

シューっと、不思議な機関車は虹色の蒸気を吹く。

 虹色の蒸気が晴れるとあっという間に、おじさんの家の前に。

「おぉ、すごい! ありがとう不思議な機関車さん。これで娘にプレゼントを上げることができるよ」

「どういたしまして~」


   × × ×


君はイきたい場所に連れて行ってくれる魔訶不思議な機関車を知っていますか?

 その機関車に強く願って乗車すれば、君のイきたい場所へひとっ飛び。

 校舎裏で一人の男子高校生をいじめる男子高校生三人組を見つけたよ。

 あれ、今日は、あの悪い子たちにしようかな。


「ねぇねぇ、君たち」

「あっ、なんだよ!」

「摩訶不思議な機関車に興味ない~?」

「ちっ、ねぇよ! あっちいけ!」

「まぁまぁ、話しぐらい――」

「黙れ!」

 いじめている男子高校生三人組の一人が僕に飲みかけのペットボトルの中の液体を乱暴にかけた。

「君たちがイきたいところにイくよ」

「えっ? それってどこでも行けんのか?」

「ウン」

「まじか、どこでも行けんのか?」

「ウソ」

「おいっ、じゃあおめぇら早くのろうぜ」

 いじめている男子高校生三人組は足早に乗車した。

三人とも銀行の金庫の中とか、クラスの美女の部屋とか、金持ちの家とか、と話し合ってる。君たちが今からイクのは——。

「ご乗車ありがとうございます。この機関車は『地獄行き~、地獄行き~』でございます」

 乗車してしまった高校生たちは焦り、摩訶不思議な機関車に罵詈雑言を浴びせ、車内を乱暴に蹴ったり、殴ったりしたが、全く摩訶不思議な機関車は反応しない。

 どす暗く重い蒸気が機関車全体を包み、あっという間にイクトコロに――。


   × × ×


 ご乗車ありがとうございました。不思議な機関車はみなさんの行きたいところへ、摩訶不思議な機関車はみなさんが逝くところへ。

 みなさんは悪いことをして、摩訶不思議な機関車に乗らないように気を付けてくださいね……。

 では、またこの世界のどこかで。——その行いきっと誰かが見てますよ。


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