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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第一章
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第八節 チュートリアル開始


気づけば穴に落ちた二人がいたのは、清々しいほどに晴れ渡った青空のもとに広がるとある森の中だった。近くにサラサラと音を奏でる小川が流れ、時折小鳥が水遊びをしている。二人が元々いたのは悠莉の住むマンション、そのあとが神様と名乗った少年がいた空間。あの少年(神様)の言うことが正しいのならば、此処は彼にとっての遊戯ゲームであり二人にとっての異世界ということになる。というか、室内から屋外に勝手に移動している段階でもはや信じるしかないのかもしれない。


「イッテェ……あいつ、カミだとしても違うとしても絶対殺す」

「なおみん顔怖いよー!」


ぶるぶると震える拳を握りしめる奈緒美に悠莉が言う。が、一見落ち着いているように感じる悠莉も奈緒美と同じように怒り心頭である。その証拠に悠莉の背後ーー奈緒美から見て正面の木が幹からなにかに()()()()()()に真っ二つに割れていた。奈緒美は怒りを抑えるように何度か小さく息を吐き、拳を下ろす。


「てか、うちらの今の格好ってさ、アバターの奴だよね」


ふー、ふーと息を吐き、怒りを沈める奈緒美を横目にいつの間にか、悠莉は小川を覗き込んでいた。小川はまるで鏡のように美しく、覗き込んでいる悠莉の姿を写している。奈緒美に同意を求めるべく、「ねー」と振り返った悠莉の姿は『ALUTAPARNアルタパロン』のアバター『ユーリ』の姿そのものだった。もちろん、奈緒美もアバター『ナオ』の姿になっており、あの少年の親切心かただの遊びか判断出来かねない。まぁ、本当に此処が異世界であり遊戯ゲームに似た世界ならばこの姿は正解だ。


「だな。『ナオ』、か……実際着てみると結構動きやすいんだな、これ」


呟きながら自らの体に視線を落とす奈緒実。

翠色の美しい長髪をポニーテールにし、結び目には緑のリボンをしている。髪の一房だけが新緑色をしており、瞳の色も大変綺麗な緑ーーエメラルドグリーンだ。服装は将軍をモチーフとした深緑色の軍服。肩からは内側が赤く、外側が深緑色のマントが勇ましくはためく。少々ヘソだしされるタイプらしく、可愛らしくへそが出ているが、ほとんどは裾で隠されている。深緑色の短ズボンに、金色で紋様が描かれたハイソックス。黒いロングブーツにはマントの内側と同じ赤い色の靴紐が揺れている。両手には黒い手袋をし、軍服の胸元には二人のチームを示す黒い薔薇のバッチが留められている。彼女の背にはいつの間にか大剣が背負われており、マントに引っかからないようになっている。ゲームでも背中に引っ付いていたので、その仕組みをそのまま持ってきたらしい。つまり、そこの仕組みは分からない、うん。


「なおみん、格好いい!スレンダーだし、こう、あれだ、絶対領域できてるもんね!出来る女、クールな女将軍って感じで」

「悠莉っ!」


突然の悠莉の褒め攻撃ことばに奈緒美が思わず待ったをかければ、彼女は顔を真っ赤に染めた奈緒美を見てニヨニヨと笑う。褒められ慣れていない奈緒美を褒めると、可愛らしい乙女のような表情になるのがなんとも楽しいというか嬉しい悠莉である。真っ赤な顔をどうにか落ち着かせ、奈緒美は腰に手を当て言う。


「そういうお前も、かわいい格好してんな?」

「え?ホント?ありがとー!これ、最初に見てからお気に入りでさー!」


満面の笑みで言う悠莉に、そのことを知っている奈緒美は優しく笑う。

薄い月のような黄淡色の長髪をお団子にし、結び目には簪を模した髪飾りをしている。瞳の色は髪の色と似たキラキラとした琥珀色。服装は着物とワンピースが合わさった、淡い黄色を基調とした浴衣ワンピースだ。極力露出は控えている、と言ったていのようで、大きくひらひらと揺れる袖口から見える腕は手の甲まで覆われた白い手袋で隠され、黄色のフリルがついている。胸元と腰回りの帯は黄土色で統一され、足を覆うは同じ色の長タイツ。茶色のブーツは動きやすさを重視しているのか踵はほぼない。帯には奈緒美と同じように黒い薔薇のバッチが留められ、左手首にはアンクレットが揺れている。彼女の腰には武器である刀二振りが差されている。こちらも帯に差さっているのかそれとも別の紐で括られているのか分からないくらいに、ゲームと同じように引っ付いている。恐ろしくゲームに忠実である。


そして二人の腰の後ろ部分にはこれまた武器と同じ様に小さなポーチがある。奈緒美はベルト、悠莉は帯に一体化するように付いており、おそらくこれがゲーム内でもあったアイテムボックスだろう。


奈緒美ーーナオと称した方が良いのだろうーーナオは背中の大剣がふと気になり、後手に大剣を抜き放った。重いと思っていた大剣を軽々と持ってしまい、目を見開き驚愕すれば、悠莉ーーユーリが問う。


「なおみん、どうしたの?わぁ、大剣それ、凄いね!」

「いや……軽いな、と」

「そりゃあなおみん、メイン職『聖騎士パラディン』だし、サブ職『戦士ソルジャー』でしょー」

「それにしては、なぁ……」


クスリと笑うナオにユーリも楽しげに笑う。ナオは基本的にメイン職を攻撃職重視にし、攻撃力を上げている。『聖騎士パラディン』の下級職が『騎士ナイト』であり、とある条件を満たしていることで大剣をメイン武器に設定している。まぁ攻撃力が高い分、素早さや支援、回復と言った部分に多少の支障等は出るのだが。それを補うようにサブ職はタンクにもなりうる職業構成をしており、攻撃と防御に全てを回していると言ってもいい職業構成を取っている。


「ふふふ、格好いい」

「嬉しそうだなぁ」

「だって!一目惚れしたやつっ!」

「はいはい」


大剣を再び背に仕舞うナオが、嬉しそうに刀を優しく撫でるユーリを見て呆れたようなしょうがないなと云う表情で笑う。ユーリはナオの弱点を補うように素早さを重視した職業構成になっている。と言ってもユーリ自体がバランスに特化した職業選択をよくやる為、ナオと共に相談してワクワクしながら決めたのだが。ナオが攻撃と防御に特化、ユーリがバランスよく。全てに対処はできないが、それでも優勝するほどのコンビネーションだ。また刀は上級職『剣士ソードマスター』のみが装備できる武器でもある。ちなみに、ユーリはそれを知って下級職であり『剣士ソードマスター』に転職出来る『戦士ソルジャー』に即決していた。


「名前もね、あるんだよ!ねー!」

「はいはい」


嬉しそうに笑うユーリにナオも笑い返す。と、次の瞬間、ユーリは突然笑みを消した。気丈に振る舞ってはいたが、やはり何処か恐怖があったのだろう。


「ユーリ」

「大丈夫だよ、なおみん。うちらなら」


真剣な、強い意志を持った瞳に奈緒美も真剣な瞳で頷き返す。大丈夫、二人なら。二人でならきっと、元の世界に帰れる。あの少年が、神様が何処まで本気か分からない。けれども、自分達はお人形ではない人間なのだと、言ってやろうではないか。ユーリがナオに手を差し出せば、その手をナオが握る。それは、二人の絆を表しているようで。我知らず、二人は笑っていた。そうして、誓うようにパンッ!とハイタッチを交わす二人。

さあ、早く元の世界に帰ろう。


その時、ガサガサッと近くの茂みから音がした。小鳥が飛び立つ音もしていたため、二人はなにか動物がいるのだろうと思ってしまった。もし人間に警戒心を持たない可愛らしい動物であるならば、見るだけでもいいから癒やされたい。そんな小さな願い事だった。だがそれは、簡単に砕け散る。


「えっ」

「はっ?」


茂みから出て来たのは可愛らしい動物ではなく、少年が見せたものの中にいた、知能を持たない化け物ーー魔物であった。漆黒の闇を思わせる巨大な図体は熊のようで、六つもある瞳は蘭々と赤く光っている。爪も牙も刃の如く鋭く、口からは獲物を見つけた興奮か吐息が漏れている。つまり、絶体絶命である。


「グアアアアアアア!!!」

「きゃああああああああああ!!!!」


魔物の咆哮と共に二人の悲鳴が上がる。それが合図と言わんばかりに二人は魔物と反対方向に全力疾走した。獲物を見つけたと言わんばかりに魔物も二人を追いかける。右側は森、左側は小川、ある意味一本道を無我夢中で走る。


「どうしよう!?なおみん!」

「どうしようもこうしようもねぇ!まだ死にたくない!」

「てかここで死ぬのは絶対イヤ!」


絶叫するように、走りながら叫ぶ二人に魔物が迫る。迫りくる恐怖に呼吸が乱れ、足がもたつく。二人の体が、アバターの体が生存という意志を掬って駆けていく。恐怖に支配される脳内で必死に次の一手を考える。どうする、どうする?早く、早く逃げないと!そう思っていても、すぐにどうにか出来るはずもなく。嗚呼、けれども。ナオは震える両手で大剣の柄を握り、抜き放っていた。出来るだろうか、いや、やるしか、きっとない。ユーリにその意図を伝えるべく、視線を向ければ、彼女も刀の柄に手を伸ばしていた。何処までも何処までも()()()()鹿()だ。二人はアイコンタクトを取ると、ほぼ同時に急旋回し、魔物を振り返った。猛スピードで突進してくる魔物に向かってナオが大剣の切っ先を向ける。深呼吸をし、叫ぶ。


「ーー〈春嵐六花はるあらしろっか〉!」


ナオが持つ大剣に桜の花びらと雪の結晶が纏う。それを確認し、ナオはニヤリと笑った。嗚呼、()()だ。『ALUTAPARNアルタパロン』で作ったオリジナルスキル。二つの、春と冬が美しく調和し、優雅な嵐となり魔物にぶつかる。嵐の攻撃に魔物はふっ飛ばされるが、いまだに倒れる気配はなく、六つの目で二人を睨みつける。


「ユーリ」

「うん」


二人は、一言、相手と意志を伝えあった。

さあ、試そうか(チュートリアルだ)

不定期投稿です(定期)

結構書き溜め(過去作を下敷きに序盤は書いたので)あるので、最初は投稿頻度と話数多いと思いますが、中盤からはゆっくり(流れは過去作を下敷きにしたが、順番変えたりほとんど新しく書いたりしているので)になると思います。

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