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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第二章
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第四十三節 とある者達が紡いで


どうやら、求めていた情報えものを得たようだ。本棚に隠れるようにして身を潜め、彼らーー『ブラックローズ』一行を伺っていた彼女ーー以前から彼らを追跡し尾行していた人物だーーは足音を立てることなく静かにその場を去る。偽装工作に使っていた書籍を静かに音もなく本棚に戻し、静謐さを保ちつつも今日も人で溢れているロビーを抜け、図書館を出る。こちらも人で溢れる大通りを一本抜け、彼女は教会へと向かう。この街、「ソニアの街」の教会は住宅街から少し外れた街の片隅にあり、お祭り騒ぎのような大芸道の熱狂も人々の賑わいも何処か遠くの世界のことのように感じる。それほどまでに静かであった。だが一応、教会の周辺には関連性の高い建物が並んでいる為、決して無人と言うわけではないが。今現在は、休みなのだろうか、無人の如く静まり返っていた。


内更、都合がいい。


彼女はニヤリと内心笑みを浮かべながら、教会の木製の扉に手をかける。情報を得た『ブラックローズ(一行)』が図書館から出ていくのは予想出来ている。だが街の外にまではまだ行かないだろう、というのが彼女の推測だった。ルル(一人)が望んでいた魔法具専門店に行くと云う話を人間よりも聴覚に優れている耳が拾ってくれていたがゆえに。たまたま聞こえる距離で助かった、と内心安堵も含まれているものの。

さて、彼女は扉を自らの方へ引いて開けた、ものの、どうやら鍵がかかっているらしく、ガジャンッと無機質な音が周囲に大きく響いた。彼女が下を見ると扉に着いたメッキが剥がれかけた二本の取っ手を繋ぐように鍵が付けられさらに鎖でぐるぐる巻きにされていた。今は礼拝の時間ではないだろうし、中に入って盗みを働く輩を警戒して鎖をつけたのだろう。もしくは、『魔族』。それらを見て彼女は大きくため息をつくと、鍵に手をかざす。魔法で鍵を解錠すると、ガシャンと鎖と共に地面に落ちる。そうして再び扉を引けば、今度はすんなりと開いた。誰かに見られないように素早く中に滑り込むと、閉じた扉の向こう側で再びガシャンと音がした。魔法によって再び鍵を付けたのだ。これなら誰かが侵入したとは思わないだろうし、誰かが来たらすぐに分かる。外側ではなく、内側に付けるべきだったね、と彼女は誰に言うまでもなく嘲笑する。そして、静かに教会内ヘと歩み出した。


丁寧に手入れや掃除が行き届いているようで、木製の椅子には埃一つなく、正面のステンドグラスから漏れる光でまるで新品の如く木目を輝かせている。ステンドグラスの前には十字架と、その十字架を守るように聳え立つ石像がある。彼女にとって、憎々しい相手である神を模した石像だ。神を模した石像を一瞥し、視界から外すと壁際に目を移す。そこにはステンドグラスの光から身を隠すように二人の人物が影に身を潜めていた。まるで水面を覗き込んだかのように、はたまた鏡を覗き込んだかのようにその二人の顔は瓜二つ、双子だった。多少、雰囲気や服装が違う箇所があったが初対面では確実に間違えてしまうだろう。まぁ彼女は間違いはずないが。この双子こそ、教会での目的だった。


「姉さん!」


双子の一人が彼女を見つけ、嬉しそうに顔を綻ばせて彼女に抱きついてきた。「おっと」と突進してくる片割れを慌てて抱き留めると、彼女の胸に飛び込んで来た片割れの頭を優しく撫でた。


「お疲れ様、ガンマ」


彼女の優しく、歌うような声色に抱きついた片割れーーガンマと呼ばれた少年は顔を上げ、如何にも満足ですと言わんばかりの満面の笑みを浮かべた。


「シータもお疲れ様」


片割れを撫でていない左手をもう一人の双子ーーシータと呼ばれた少年に向ければ、彼は少し恥ずかしそうに頬を染めながら、片割れと同じように彼女に近づき、頭を撫でられる。かわいいなぁ、と彼女はほっこりとした気分になる。


「シータ照れてる〜」

「照れてない。此処が教会だから一応警戒して……」

「嬉しいくせにー!」

「嬉しいけども!ガンマのおバカ!」


よくわからないけれども、仲良く言い合いをする双子の表情は楽しそうなので、彼女はとてもとても満足である。かわいい。最近、とある憎き神様のせいで色々ごたついたりなんだりするのが多かった為、余計に癒される。かわいい。言い合う可愛らしい双子を彼女は優しい笑みで見つめる。そんな彼女の慈愛を持った眼差しに気づいたのか、双子が言い合うのをやめ、少々照れたように()()()()が小さく赤く染まっていた。そう、()()()()。それは『魔族』の象徴あかしとも言えた。

この世界では、尖った耳と血を彷彿とさせる瞳を持つ者は『魔族』と称される。『魔王』の配下であり、世界の暫定的な敵であると。魔物はまた少し異なる認識があるが、『魔族』の中には多種多様な種族とその特徴を持つ者がいる為、特定のどの種族が、とは言い難い。耳が尖っているだけ、似たような紅の目を持つだけ、片方であればそれはそれでなにも起きない。基本的にエルフやらの別の種族でも耳が尖っている者もおり、そちらは目の色が固定されてるのでハーフやクォーターでない限り見分けがつく。紅い目もハーフであれば存在する。そのため、片方だけ合致すれば、せいぜい村八分やらが大小起きる程度。だが、それによって、自ら『魔族』へと与する者も現れると云うのに。人類が人類の敵を生む。なんと皮肉なことか。その事実に、人類はーー神は知らないふりを決め込む。都合の良いことだけを見て、自分に都合の悪い事は視界の隅に追いやる。


「ーーだからこそ、この世界は醜い」

「?ベータ姉?」


ほのぼのとした雰囲気にポツリと投げ込まれた憎悪に双子が不思議そうに彼女を見やる。彼女はなんでもない、と表情を作り双子の頭を撫でた。


「シータもガンマもあの方のーー主様のお仕事はどうだったの?」


彼女の問いかけに双子はにっこりとそっくりな顔を見合わせ、シータと呼ばれた少年が懐からとあるものを取り出す。それは小さな十字架。十字架の中心と縁には銀色の装飾がされ、中心には薔薇を模したレッドダイヤモンドが埋め込まれている。なにを隠そう、『魔族』が求める『神様』の心の一部だ。


「とーぜんっ!」

「本当は教会ごと燃やしてそこから見つけようと思ったんだけどね?一応人が多いとこだから自粛したんだ」


クスクスと顔を見合わせて笑う双子に彼女は、似ているなぁと内心思う。そうして何処か陰を持つ双子の表情に小さく頷いた。例え教会を燃やさなくても、此処を襲撃しなくともどうせ『魔族じぶんたち』のせいにされる。何処か諦めに近い感情があった。


「ベータ姉は?」

「私はあと少し、かな。主様への報告には良いけど、もうちょっとしたサプライズが欲しいなぁって」

「ふーん、そっかぁ……ねぇねぇ、そのサプライズでさぁ、僕達一回くらい殺り合いたいんだけど」


ガンマと呼ばれた少年の、何処か愉しそうな表情に彼女は「言うと思った」と肩を竦める。片割れたる少年も「言うと思った」と呆れた表情をしているがその真っ赤な瞳の奥には片割れと同じ戦闘(殺り合い)を欲していた。

確かに、彼女の主から言われた事は彼らの尾行ーー『神様の駒を奪う事』。主はあの二人のどちらか、おそらく『闇の戦士』と呼ばれている方を捕らえ駒とするつもりなのだろうが如何せん戦力が分かっていない。あの神様が自ら引き入れた勇者のようなものなのだから、多少は歯応えがあるとは思うが。実力を見る分には良いだろう。


「うん、いいと思うよ?主様に確認は取るけど……まぁこっちに寝返らせる方針だし、使えなきゃ意味ないし」

「やったぁー!シータ、よかったねぇ!」


わーいわーい!と片割れの手を取って大喜びする少年に彼女は小さく微笑むと、魔法で自らの主へと連絡を取る。小声で連絡を取り合う彼女を双子が目をキラキラさせながら待ちわびる。暫くすると連絡を終えたのか、彼女が双子へと視線を向ける。


「良いって。でも何処にあの神の手勢がいて、こっちに擦り付けてくるかわからないから、襲撃するにしても用心で顔は隠しておけって」


我が主からの伝言も共に伝えれば、双子は仲良く「はーい」と返事をした。


「じゃあ、これ渡しておくね」

「準備しに行かなきゃー!」

「あ、ガンマ!」


片割れが先程の十字架を彼女に渡し、そのまま片割れに手を引かれていく。戦闘中に壊す可能性がないことはないが、神様の心の一部(これ)を一番壊したがっているのはなにを隠そう我らが主だ。おそらく『魔王』とやらも神様の心の一部(これ)を壊したがっているのだろうが、如何せんなにも動きがない故にわからない。宣戦布告のようなものは『神様』に対して行った。だがその後の集めるだのなんだの仕事は彼女らの主と彼女達兄妹に一任されている。報告もされているが、声高に『神様』に向かって宣言した時よりも、静かだった。その静かすぎる言動と『魔族』が抱え込むことになった怒りがまるで『魔王』の矛盾した行動のようで不気味だと我らが主は言っていたが……。まぁ怒りを神に向けているのは『魔王』だけでない。それを理解しているからこそ、自分達兄妹と我らが主の行動を不問とし目を瞑っているのだろう。なにはともあれ、自分達の利益に大部分はなるのだから。

彼女は片割れから十字架を受け取り、懐に仕舞い込む。これで幾つだったか。七つ……いやこれも入れて九つか。幾つ集めれば、心が戻るのか。それがわかるのはきっと『神様』だけだろう。破壊しても大丈夫なのか、それさえもよく分かっていない。だが、『神様』の遊戯が滞っていると思うと少しだけ留飲が下がる。あちらも必死なのだろう。魔物、『魔族』のせいだと人類を煽って、また遊ぶ。嗚呼、忌々しい。だからこそ、


「誰も()()()()()


彼女のその呟きは静かに、けれども大きく教会に響き浸透して行った。双子はいつの間にか、教会から居なくなっていた。顔を隠してあの四人に会いに行ったのだろう。気配がなくなるまで、扉が閉まる音にさえ気付かないほどに思考に埋もれていたようだ。けれども、それでいい。彼女の耳に、聴覚が優れている耳に静かであるはずの周囲のなにやら騒がしい音が響く。あの双子がなにかやったのか?いいや、違う。そう断言出来る確証が彼女にはあった。なぜなら。

パリンッ!と大袈裟なまでに大きな音を立てて、ステンドグラスが割れた。彼女がゆっくりとステンドグラスの見える中央へ歩み寄れば、そこにいたのはーー


「待ってたよ」


神々しいほどの色鮮やかな後光を一身に浴びる()()()()()()()()()()()()()()、純白の翼を持つ天使だった。

お久しぶりでございます…不定期投稿ではありますが、結構時間経っちゃった…リアルが色々ありまして…あと何分、描き溜めが出来てなくて…(言い訳)すみませんでした…m(_ _)m

作者は生きてます…!

はい…とりあえず一話だけでも投稿です!

また不定期投稿になりますので、お待ちいただければ嬉しいです!

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