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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
プロローグ
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第四節 二人の少女

西暦二〇XX年。

明日から始まるゴールデンウイークに誰もが浮かれる季節。春が終わり、葉が次第に夏を知らせる役割へと移行しようとする僅かな時季。とある大学内のキャンパスも明日からのゴールデンウイークの予定を思い浮かべて頬を綻ばせる学生や、溜め込んでしまった研究や課題をこなそうとする教授、家族との日々を思い浮かべる者と様々な者が浮かれていた。そんな楽しげな人々が足早に帰路につくのを横目に、ホットミルクティーを飲む少女がいた。二人掛けのベンチに腰かけ、まだ少し肌寒いのか膝には可愛らしい黒猫デザインの膝掛けをかけている。仄かに温かいミルクティーを飲み干し、容器をごみ箱へ入れる少女。そうして、左手首に巻いたこちらも可愛らしいデザインの腕時計を見た。猫の形になった枠組みの中では針が肉球の形になった切っ先が一時を指し示そうとしていた。


「なおみんっ!遅くなってごめ〜ん!」


と、その時、明るい声が少女を呼んだ。彼女ーーたちばな奈緒実ナオミが顔を上げるとこちらに向かって一人の少女が手を振りながら駆けて来ていた。片手には小さな百合が描かれたエコバッグを持ち、疾走に合わせてブンブン左右に揺れ動いている。一人の少女は奈緒実の前まで駆けて来ると、先程と同じように「ごめんね!」と顔の前で手を縦にかざし謝った。


「いいって。どーせ、遅くなると思ったしな?悠莉ユウリのことだ、あれやこれや目移りしてたんだろ?」


ニヤリと意地悪げに笑う奈緒実に彼女ーー黒沢くろさわ 悠莉ユウリは図星だったのか、少しだけ頬を赤らめて反論する。


「そうだけど!なおみんの好きな飲み物も買ってたの!あげないよ!?」

「それは欲しい。悪い悪い」


クスクスと二人は楽しげに笑い出す。それが二人の日常だった、楽しい会話だった。奈緒実はクックックと、喉の奥で笑いをこぼしながら膝掛けを片付け、ベンチに置いていたリュックサックに詰めながらそれを肩にかける。悠莉も背負っていたリュックサックを「よいしょ!」ともう一度背負い直す。


「んじゃ、家行こっか!」

「嗚呼」

「ゴールデンウイーク、ゲーム三昧だよ!」


おーっ!と片腕を上げて楽しそうな悠莉に奈緒実も小さく微笑む。悠莉の言う通りこれから悠莉の家ーー一人(ひとり)暮らし中ではあるがーーでゴールデンウイーク中、ゲーム三昧である。悠莉が楽しそうに奈緒実の隣に並び、二人は他の学生達同様、近くの駅に向かって歩き出す。


「ねぇねぇなおみん!とりあえず、帰ったらヨルちゃん抱っこするでしょ?あ、あとね、今日の夕飯と明日のお昼ご飯、簡単だけど作ったよ!焼きそばとね、オムライス!味はいつも通り保証できかねません!」


胸の前で両腕をクロスさせ、バツ印を作りながら話す悠莉に奈緒実は「うん、いつもありがとうな」と相槌と共に返答をする。


「んで、悠莉、そのエコバッグの中身は……」

「お菓子と飲み物たーくさんっ!」


エコバッグを掲げて悠莉が言う。まぁ先程もそのような事を言っていたのだから、だいたいの中身は想像がつく。


「いつもありがとうな」

「ふふっ、いいえー!その分、なおみんには部屋の掃除手伝ってもらってるもん。あとはヨルちゃんの洋服とかさっ!だからお互い様だよ!」

「ハハ、ありがとな。今度コンビニで飲み物奢るわ」

「そんな良いってー!あ、じゃあさ、うち、なおみんの料理食べたい!」

「わかった」


わーい、と嬉しそうに笑う悠莉が駅の入口へと入っていく。いつの間にか、駅に到着したようだ。二人はそのまま改札口を抜け、駅のホームへと進んでいく。ホームへと行くとすでに電車は来ていた。駆け込み乗車にならぬよう、人の流れにそいながらゆっくりと電車に乗り込む。電車内は昼時を少し回ったこともあってか人はまばららだ。そのおかげで席に座ることが出来た二人は仲良く隣合わせに座る。と、座った席の前方の壁に見知ったポスターを見つけ、悠莉が奈緒実の肩をトントンと指先で叩いた。そのポスターは黒い背景に黄金に輝くバハムートを持った荒々しくも美しい戦乙女ヴァルキリー達がこちらに向かって手を伸ばしているものだ。


「なおみん、あれ!」

「ん?嗚呼、『ALUTAPARNアルタパロン』か……来月だったか?アップデートって」

「うん。十時間の大型アップデートだよー!そのあとは恒例のアップデートイベント!」


クスクスと楽しげに悠莉は笑い、他の乗客の迷惑にならないよう小声で奈緒実に言う。


「なおみんもやるでしょ?」

「嗚呼、当たり前だろ?それにアップデート……来月は大会だぜ?」

「目指せ優勝!『ブラックローズ』!」


小さくガッツポーズをした悠莉だったが、次の瞬間には電車内だと気づいたらしく、掲げていた腕をソッと下ろした。小声とはいえガッツポーズをしてしまったことが恥ずかしくなったのか、頬を軽く染める彼女の様子に前方の席に座る老夫婦が優しい笑みを浮かべていた。それも余計に恥ずかしいのか照れたのかまるで頬の赤みを払拭するように、悠莉は目的地に着くまで小声ではあるがテンション高く、マシンガントークを奈緒実に繰り広げていた。悠莉のマシンガントークを奈緒実は相槌を打ちつつ、時折「聞こえねぇマシンガントーク」「ごめん!何処から?もう一回言う?」というやり取りを加えていた。

とりあえず、プロローグを終わらせます!

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