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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第一章
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第三十七節 黒薔薇の何気ない食事


喧嘩両成敗、といえばいいのか。根本的な解決とまではいっていないにしても解決したであろうといういい雰囲気が彼らの間にゆっくりと、静かに流れる。その空気を切り替えるように、それこそ嬉しくてテンションが上がってしまって思わずと言った様子でユーリが「じゃあ!」とパチンッと手を叩いた。


「じゃあ!ご飯にしよっ!うち、もうお腹ペコペコ〜」


自身のお腹を抑えるユーリに、全員がそういえばと腹の虫の訴えを思い出す。ダンジョンを突破して魔物と戦って、夕食を摂る間もなく部屋へと直行してこの話し合いだったので彼女の言う通り腹が空いていた。よく腹の虫が大暴れしなかったなと、空気を読む力に驚かせれていると、ソラリスが立ち上がりながら言った。


「それなら、食堂に行って……いや、時間帯的にはギリギリか……?」

「あ!それなら大丈夫!部屋取る時にちょっと遅くなりますけど大丈夫ですかって聞いておいたから!夜中まで任務やってる冒険者ひともいるしそれに今日、前夜祭で、遅くまでやってるって!」


「ついでに前夜祭見たくてテラス席予約した!」とグッと親指を立てるユーリに全員が呆気にとられたのは言うまでもない。いつの間に?とユーリと共に部屋を取ったルルはナオの手から優しく手を外しながら考えていたが、しばらくして受付嬢と小声で話していたことを思い出し、納得した。本当に、行動力があるな、とナオは嬉しそうに微笑む。それとともに嗚呼やっぱり今日はお祭りだったんだぁと先程の窓からの賑わいを思い出す。


「……お前さぁ」

「ん?」

「なんていうか、ソラの言いたいことわかるかも」


呆れたような、何処か諦めたようなソラリスの声色にユーリが首を傾げる。仲直りできる前提だった、ということだろう。ソラリスがナオを一瞥すれば、彼女は「ユーリはそういうやつ」と肩を竦めた。なんとなく分かってきた。


「?なーにー?」

「なんでもないよ〜じゃあ!ご飯いこ!」


首を傾げるユーリにルルが笑いかけながら言えば、ユーリとナオも各々立ち上がる。そうして、この部屋に入るまではとは違った、それこそ心の底から楽しげな会話を弾ませつつ彼らは二階の食堂へと足を運んだ。

ユーリの言う通り、彼らが食堂へ赴けば、客の大半はユーリの言う前夜祭に向かったのかまばらであったものの「予約の方ですね〜」とテラス席へと案内された。テラス席には彼らの他にも二組ほどの客がおり、一組は風貌からして冒険者、もう一組は食事をしに来た恋人達のようだった。夜の風が彼らを優しく包み込みつつ、前夜祭の熱気を運んでくる。先にいた客達も前夜祭が気になるのか、手は食事に集中しているが、視線はチラチラと眼下へと向かっている。


「なんの前夜祭……っていうかなんのお祭りかなぁ?」


テラス席の縁から身を乗り出しながらルルが言う。ワクワクとその目はキラキラと輝いている。どうせいつの間にか調べてるんだろう?とナオがユーリを振り返れば、彼女はご明察と言わんばかりに笑った。ユーリはポーチからメモを取り出そうとし、あの薄汚れていた書籍ーー手帳でもいいのかもしれないーーを誤って取り出してしまったらしく、「あっ!」と違う違うと慌てながらそれをしまい、目的のものを取り出した。


「まっかせて!聞いておいたよ!」

「だからそれいつの間に……」

「受付の時!」


呆れた声色のソラリスが食堂の店員にメニュー表を返しながら言えば、ユーリが胸を張って言う。情報収集力が凄まじくて笑うしかない。気になって、時間があったからと以前泊まった宿屋でも同じことをしたユーリにナオは慣れているが、二人が慣れるまでは時間がかかるだろう。


「でさーこのお祭り、この城下町が誕生したお祝いなんだって。で、それには、ほら、あそこのお城あるでしょ?あれが関係あるんだって」


そう言ってユーリが街の奥に建つ城を指差す。月光に照らされて輝く姿は天から舞い降りた天女で、女神のような無言の慈悲がある。ナオが眺めていた景色の一つだ。そのお城をナオの肩越しに同じように窓から遠目でもあろうとも見ていたのかルルが「あれが?」と首を傾げる。


「うん。鏡の中にはもう一つの世界がある……そんな話し聞いたことない?あのお城、本当かどうかはわかんないけどね、その鏡の世界から来た賢者様によって作られた鏡のお城なんだって〜まぁ今は壊れたとか修復したとかでほぼ模造らしいけど。で、そのお城が出来てお城を囲うようにして、この城下町が誕生した」

「前夜祭が城で、明日が街ってことか」

「そういうこと〜」


ナオがユーリの言葉を引き継いで言えば、彼女は頷きながらメモを締まった。なるほど、お祭りの所以を聞いてから周囲を見渡すと鏡をモチーフにしてるのか、楕円形に加工されたランタンがそこらかしこで瞬いている。確かに何度も補修をしているのだろう、遠目からでも鏡()()()()光沢と云えばいいのか、白い光沢が様々な光に反射しキラキラと輝いて見える。まぁ以前までは本当に鏡のお城だったのかもしれないが、巨大すぎる鏡も鏡で色々起きそうだと、話を聞いたユーリは当初思っていたが、口を一応閉ざしておく。今議論すべきはそこではないし、今は模造だからいいのだ。魔法があるのだし、そういう全てを解決するモノがあったっておかしくはない。


「お祭りだから、明日も出店とか色々あるんだって!ね、行ってみない?」

「え、行きたい行きたい!」

「人混みに紛れるのは疲れるから嫌だがな……」


行きたい行きたい!と鼻息荒く、肩を弾ませるユーリとルルに水をかけるように、ソラリスが多少拒否の体勢を取れば、二人から「えー」とブーイングが飛ぶ。それが何だか、仲の良い姉妹の風景に見えてナオは小さく微笑む。


「ま、明日になったら決めようぜ。それくらいはいいだろう?ソラリス」

「……ッハ、そーだなぁリーダー?」


顔を見合わせて、まるで悪巧みを話し合うように笑い合うナオとソラリスに、行きたいとせがんでいた二人もクスクスと楽しげに笑う。前夜祭で浮かれた愉快な空気が料理がやってくる僅かな時間を楽しいもので包んでくれる。それはきっとなにもお祭りの空気だけでないことを全員がわかっていた。料理が来るまで彼らは思い思いに会話を楽しむ。ユーリとルルがボールを投げては大きく盛り上がり、その会話にナオとソラリスがさりげなく加わる。すると、おそらく何処かの広場でやっているのだろう舞台なのか、歌声が聞こえてきた。その歌声に彼らはちょうどタイミングよく運ばれた夕食を口に運びながら聞き惚れていた。


だが、聞こえてくる歌声にただ一人、ナオだけは小さく首を傾げていた。何故なら、歌声が二重に、重なるようにして聞こえていたからだった。二人で歌っている可能性も否定は出来ない。だって歌っている本人が見えないのだから。だがしかし、歌っているのは明らかに一人なのだ。そのような話を食べながらしていたからでもあるし、地元民なのか先に食事をしていた恋人達が「一人で歌っている」と言っていたのを聞いたからでもある。だからこそ()()()()聞こえていて、しかも()()()()()()()()()()()()のが気になっていた。やまびこが、声が反響して聞こえている可能性だってあるのだし、とナオは自らの疑問に蓋をして、それを口に出すことはしなかった。


『♪帳の中から、こちらを覗く淡い瞳♪それは鏡の賢者様の瞳♪』

『♪鏡の中から、こちらを見上げる銀の瞳♪それはきっとーー』

「ーーずっと、来ない、貴方の瞳」


自分の口から呟くように転がり出た、歌詞なのかはたまたただの言葉なのか自分でも分からない()()にナオは気にする様子もなく、食事を続ける。脳裏で何かが瞬いたとしても、心臓がトクン……と小さく音を奏でても。()()()目を見開いたとしても。どれもこれも、今のナオには要らないものなのだ、きっと。

お久しぶりでございます…もう、一年も終わってしまいますね…早いなぁ…ということで、とりあえず区切りがいいところまで投稿をしようとやってまいりました…!投稿数は少ないですが、投稿していきます!

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