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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第一章
36/39

第三十六節 黒薔薇の乙女と


ほのかに明るいランタンの光が優しく部屋を包み込んでいる。

真っ暗闇となった空には宝石のように瞬く星々が所狭しと広がり、その宝石箱の下では安全を約束された夜の街が楽しげな声を上げている。例え明日が来ないと知っていてもそれでいい、今をめいいっぱい楽しもうじゃないか!と言わんばかりに大小様々な光が踊る。踊る光達を街の奥に建つ城のような立派な建物が優しく、子を見守る母親の如く慈悲深く見つめている。また建物は此処からは見えないが、月光を浴びて違う一面を曝け出しており、それはまるで外界に降り立った女神の如く、純美な姿だった。

今夜はお祭りなのだろうか、何処までも何処までも、そう街の端から端までが色鮮やかな光に彩られている。いやそれともこれがこの世界の日常風景なのかもしれない。そんな、ひとときの幸せとでも言うような城下町の夜景を窓越しに眺めていたナオはゆっくりとカーテンを閉めた。木の温もりに包まれた部屋によく似合う淡い黄色のカーテンがナオの目の前いっぱいに広がる。カーテンを背に振り返ると、温かなランタンの光とは裏腹に部屋は何処かどんよりというか、緊張というか、言い表せないような雰囲気に包まれていた。それもそうか、とナオは小さく息を吐きながら、壁に背を預けて力を抜いた。ナオは今ベットの上に座っている。彼女の隣にはユーリが、二人の向かいのチェアには一人ずつソラリスとルルが座っている。


魔物を撃退し、ルルの感謝の言葉を聞いた後、彼らはまるでそうするのが当たり前のように連なって城下町に入り、宿屋に入り部屋を取った。その間、喧嘩なんてしてませんよ?仲良しですよ?と言うように、それとも緊張を解したかったのかユーリとルルがずっと他愛もない話をしていたが、ソラリスは口をつぐみ無言だった。時折、なにか言いたそうに口を開きかけ、此処ではなんだからと言うように口を閉ざす。そんな彼の気遣いが、()()()を妙に連想させてナオの少ない口数がさらに減り、部屋に着くなり、全員が無言となってしまった。誰かが話し始めるのを待っている。最初の会話の火蓋を落としたいが、それはとても勇気がいった。なにせ、一応彼らは仲違い中なのだ。戦闘の違いで、意識の違いで。でも、それなのに此処まで当たり前のように、以前のように分かれることなく来た。見捨てることだって出来たのに魔物から救ってくれた。ソレをしなかった、もうそれこそが答えのような気がするが自信は誰一人としてなかった。


「……改めて、助けてくれてありがとう、ナオ、ユーリ」


重い空気を切り裂くようにルルが可愛らしい声を響かせる。その声に、心からの感謝にいくらか空気が柔らぐ。


「いいんだよー!」


ねー!と隣に座るナオに寄りかかりながら、ユーリが笑う。軽く寄りかかってきたユーリにナオが苦笑を漏らしながら、「気にするな」と呟く。そうは言っても気にしてしまうだろう。そんな全員の心中を見通すようにルルが言った。


「ソラがボクを庇うのは、ボクが以前まで見つかっちゃいけなかったからなんだ」

「えっ?!」

「っ、ルル!」


突然、低い声で話し始めたルルにソラリスが身を乗り出せば、ルルは大丈夫と彼を手で制した。


「……見つかってはいけなかった……じゃあ今は大丈夫ってことか?」

「うん、完全に大丈夫とは言えないと思うけどね。いくらかは大丈夫……ボクは、『魔女』だから」


顔を俯かせ、何処か遠い過去を思い出しながらルルが言う。『魔女』、ルルにとって一番よく自分に馴染んでいて、一生ついて回る異名とも悪名とも取れるもの。それがあるからこそ、それをつけられた理由である過去があるからこそ、ソラリスはルルを護っていた。いや、それ以外の、亡き妹に似ているというのもあるのだろう。亡くなった妹を、護れなかった妹の為にも、護ろう、と。その脅威が過ぎ去ってしまっても、癖となって残りルルを安心させようと無意識に動いてしまっていた。

ソラリスが両膝に組んだ手を起き、少々前かがみになりながらルルの言葉を補完する。


「それもあるがオレと旅をしている時、精神的に不安定だったんだよ。そんで近距離遠距離どっちも出来るオレが前に出てた……それだけだ」

「うん、そうなんだ。あとは前言った妹さん。ボクたちは他人だけど、妹を見てるみたいだったから……それもあって、かな」

「ほへぇ……『魔女』ねー」


ソラリスとルルの言葉にユーリが相槌を打つ。二人の知る『魔女』と同じかどうかはわからない。だがソラリスとルルが、特にルルが『魔女』に拘っていたのは確かだろう。でなければ、メイン職を聞いた時にビクリと怯えるはずがない。それは今もだ。ぎゅっと膝の上に乗せた拳を握るルルの体は小さく震えていた。勇気を振り絞った、言わなくてもわかることだ。そんなルルの怯えた様子がナオとユーリには他人事とは思えなかった。


「だから、こっちの件はボクも悪くてっ!」

「わーかってるよ」

「へ?」


ルルの言葉を遮るように片手をひらりと振ってナオが言う。きょとん……としているルルにナオはフッと小さく笑った。


「んな大事な、言いづらい話させて悪いな」

「まだ信頼できてないうちらに言うのは、苦渋の決断っぽいよねー!」

「え……あ、あの、『魔女』なんだよ……?」


その意味、わかっているの?と言わんばかりの困惑した表情のルルにナオもユーリもクスクスと笑う。その二人の笑みが優しくてルルは無意識に肩の力を抜いていた。


「それが?」

「『魔女』って()()でしょ?うちらも言えないこと()()()()あるもん。理由がわかっただけ充分!」


知ろうとしなかったのは、こちらも同じだから。二人の大丈夫だよと言わんばかりの笑みにルルはホッと胸を撫で下ろし、ソラリスも満足げに背もたれに背を預けていた。信頼を無くすと思った、いや仲違い中の現在でそれ以上に信頼を無くすなんてあるのかと思った。だがあの指摘はきっと信頼していたからこそのもので、だからこそ、ナオとユーリ(二人)の恐怖は計り知れない。


「……まぁ、うちらもやりすぎなところあったし……ね?」

「俺は()()でいいと思うけどな」

「それは、どういう意図のものなんだ?」


ヘヘ……と苦笑いを浮かべるユーリにナオが断固として言い放てば、眉を顰めてソラリスが問う。怒りを宿している、というよりも何故そうなったのかという疑惑の声だった。彼の問いかけにナオは小さく悲しげな表情を浮かべ、視線を逸らした。まるで思い出したくもない、と言うような仕草にルルとソラリスが目を見張る。ナオの背をユーリが優しく、何処か慈悲を宿した眼差しで優しく笑えば、なんとなく察してしまう。まだ、完全には信頼されてはいない。例えナオが紡ぐ、強者と弱者の立ち位置関係の持論が大小なりとも関係していようとも。きっとそれが原因でナオは意固地になっても強者を求め強者であろうとしたし、ユーリはユーリで自己犠牲を行った。ユーリのナオに向ける優しい笑みが本当で、ふとこちらを向いて笑った笑みが精巧に作られた嘘笑いのように見えてソラリスは微かにかぶりを振った。


「どういう意図っていうか……うーん、なおみん」

「……詳しくは、言いたくない。でも」


苦々しい表情を作りながらナオは、ふぅ……と息を吐きもう一度息を吸う。深く深く深呼吸を繰り返すと苦々しいものを吐き出した。本当はまだ、言っていいのか不安でしかない。でも、ユーリがいるからきっと大丈夫だと思えて。きっと、この二人は大丈夫だと少しでも思えて、それが答えだとわかっていても心はわかってくれやしない。いつか、そういつか、裏切るんだろ?と疑う。


「……言えるなら……強くなれば、傷つかないだろ」

「っ」


苦々しい表情から一変、何処か悲しそうなナオの歪んだ笑みにルルが息を飲んだ。つまりは、そういうことでしょう?一瞬、ルルの脳裏に浮かんだのは消え去りたい過去であり自らを形作るもの。だからこそ、ナオが抱く感情は決して間違っていないと確信があった。それはソラリスも同じだったのか、その顔は悲痛なまでに歪んでいた。咄嗟に、ルルはチェアから飛び降りると二人のもとまで駆け寄り、ナオの手を掴んだ。優しく、包み込むように両手でナオの手を握ったルルにナオが驚愕にビクッと身を竦ませた。


「……ルル?」

「大丈夫だよ、ナオ。大丈夫」


ボクたちを信じてもいいんだよ。

そう言うように、まるで祈るようにナオの手を包んだ手を額に擦り付けるルル。ルルの行動にナオはきょとんとユーリを見、ソラリスを見、そしてルルを見た。

信じてみたい、そう思うナオの心情を掬い上げるかのような行為にナオは我知らず小さく笑っていた、嬉しいそうに。


「何事も、やってみないと始まんないだろ?なぁ?」


同意を示すようにソラリスが言えば、ユーリが「なおみん」と優しく背を撫でる。少しでもいいよ、一歩一歩でもいいから、その一歩が大事なんだから。


「……嗚呼、そうだな」


かつて、ユーリに優しく寄り添ってもらいなにも言わずにそばにいてくれた時のように、ユーリでさえも拒絶してしまっていた時のように、それでも歩み寄ってくれるなら。許してくれるならば。きっと俺は、少しだけ成長出来る。


「ごめんな」

「違うよなおみん。それも必要だけど、もう一個の方が二人にとっては多分重要だよ!」

「多分は余計だなぁ」

「っはは……嗚呼、そうだな……ありがとう……みんな」


ナオの言葉にルルとソラリスが笑った。

これにて、喧嘩は一時終息、完結と相成った。

今回はここまで。また気長にお待ち頂ければ嬉しいです…!最近スランプやらやりたいことやら重なって…!創作が…!情景は浮かぶのに書き表せないジレンマ…!


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