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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第一章
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第三十五節 黒薔薇のワルツを共に



ルルとソラリスを護るように魔物の前に仁王立ちするナオに、ルルは初めて彼女を見た時の高揚感を思い出した。格好いい、きれい、あんな風になりたい!憧れと尊敬が困惑と恐怖に陥っていたルルに正気をもたらし、さらにさらにと魔力を上昇させていく。それに共に治癒に当たっていたユーリも気づいたのか、「わぁ」と感嘆の声を上げている。ちなみにその間、回復されているソラリスはただただ静かに成り行きを見守っていた。今にも動き出せます!と言わんばかりに回復量で回復していくソラリスの腕が、まだやれると拳を作る。そしてその指先はーー


とその時、対峙していた魔物が後ろ足を蹴って跳躍した。素早い動きでナオを中心に半回転し、護るべき彼らをターゲットにする。しかし、ナオにはそれさえも分かち切っている。魔物は弱っている者から狙う。なら何故二人が来る前に怪我をしたソラリスを狙わなかったという話だが、自らの狩りの時間になるのを待っていたのだろう。それがこの結果だが。盾を装備させる時間をも相手に与えてしまった、そこが魔物の失策の一つだろう。

さて、ナオは半回転する魔物と同じように自らも足を軸に魔物と共に回転。自らの死角をなくすと、大剣を持つ右側を狙って魔物が駆けた。魔法を用いているのか、そのスピードは速く、ユーリと同等とも言えた。だが、ナオには見切れる。何度彼女を見ていると思っている、何度そのスピードに救われたと思っている。ナオは目の前に接近する魔物を注視し、タイミングを計る。そうしてガンッと勢いよく盾を振り上げた。いい具合に魔物の顎に直撃した盾をそのまま振り切り、下から大剣を振り上げれば、脳にダメージがいったにも関わらず魔物は後ろ足で盾を蹴り上げ宙返り。後方に着地した。グルル、と鋭い牙を剥き出しにして魔物が唸る。ユーリに破壊された尻尾部分の蛇が影響しているのだろう、死角にまで目が行き届いていない。だが魔物の切り替えの早さは凄まじく、脳のダメージをもろともせずに再びナオに向かって駆け出す。それと同時にナオも見るからに重そうな盾を片手に駆け出しブンッと大剣を振り回した。今度は魔物がタイミングよくその一撃を上空へ跳躍して避け、ナオの死角に着地。その死角を補うようにナオが盾を振り上げる。すると盾の先に土が付着していたのか、目眩ましに魔物を直撃し、魔物が悲鳴を上げる。すかさず、ナオは懐に潜り込み、大剣を切りつけた。


「チッ」


だが、目眩ましがあろうとも動けると言わんばかりに魔物は大剣を喰らうかの如く牙で防いだ。思わず舌打ちが漏れる。ナオが魔物に蹴りを入れ、大剣を振り抜きながら後退すれば、魔物もそれに続く。ナオの持つ盾は光属性ではあるものの、防御特化の代物である為、魔物に振り回したところでダメージが入るかは些か不明だ。いやあまり入っていないだろう。入っているならば防いだ時に多少怯むはず。それがないということはそう言うことだ。それか怯む程にもならないダメージ量か。すぐに戦闘に復帰出来るか不明な二人がいる以上、長期戦は危険だ。後退する自分を追うように接近し爪を上段から絶え間なく振り下ろす魔物を尻目にナオは自らの武器に〈光属性攻撃力上昇(ライト・パワーアップ)〉を重ね掛けする。ユーリには先程かけたものが時間切れで切れているだろうが、ナオ自身は来る途中にかけた。重ね掛けで攻撃力は上昇するが、これがどれほどの威力をもたらすかは不明瞭に近い。ともあれ、やるっきゃない!

魔物が大きく爪を連続で振り下ろし続ける。それを盾でガードしつつ、後ろ足に力を込める。勢いが凄まじく、ジリジリとナオの体が押されていく。しまいには盾が邪魔と言いたげに魔物が盾に爪を引っ掛け、噛みついてきた。ガッと一気に加わる力に思わず盾を地面にぶつけてしまう。このまま二足歩行にでもなるのでないかというほどの上からの、押し潰そうとする力。だが、ナオは盾に当てていた手を外し大剣を両手で持つ。そうすれば突然力のなくなった盾を咥えていた魔物に隙が生じる。それでも魔物は盾に力を加えそのままナオの方へと距離を縮めようとする。が、ナオはそんなのを待っている暇はない。両手で持った大剣を上段から振り下ろした。全てを盾に集中していた脳天に喰らったその一撃はよほどのダメージを与えたらしく、一撃の反動で魔物が後方に仰け反るほど。盾を横に蹴り飛ばし道を作るとナオは大剣を勢いよく振り切った。魔物が甲高い、闇夜を切り裂くような悲鳴を上げて後方に吹っ飛んでいく。胸元に刻まれた一線は深い、だが致命傷にはなっていない様子だった。体力が多い、ナオはそう察しながら蹴り飛ばした盾に向かって手を伸ばす。すると、盾は独りでにナオのもとに戻って来る。まるでナオの手と盾に見えない糸が繋がっているかのよう。ナオは体勢を立て直そうと後ろ足を踏ん張る魔物に向かって跳躍し、上段から大剣と盾を振り下ろした。


「〈春嵐六花はるあらしろっか〉!」


花びらと冬を纏った嵐が魔物を襲う。弱点属性ではないので効果は薄いだろうが、ナオの持つスキルの中でも攻撃力が高い一撃だ。多少でも効果はあるはずだ。そのナオの考えは当たり、魔物の動きが鈍った。攻撃された箇所にさらに追撃を加えたのだ。よしっと内心ガッツポーズを決める彼女から逃れるように魔物がナオを振り払い後退しかける。と、ナオはとある気配に気づきニィと口角を上げて笑うと、未だに花びらと冬を纏う盾を自らに寄り添うに立てかける。すると素早くも軽やかな足取りでユーリがその盾を駆け上がり、盾に乗ったと同時にナオが勢いよく腕を上空へと振り上げる。勢いよく上空へと投げ出されたユーリが二振りの刀をさらに上段へと振り上げ、落下の速度を利用して今度こそはと、第二形態とでも言うのかそれともなにか作戦でもあるのか仁王立ちをする魔物に向かって振り下ろした。


「〈光華の園ライト・オブ・ガーデン〉!」


ユーリが振り下ろす直前に刀を交差させると、交差部分に光り輝く華が咲き誇る。それは二振りの刀に咲き誇りながらも美しく光り輝き、そうして悪なる者を浄化する光の華。ユーリが上段からの重い斜め切りを放つと同時に光の華は魔物に当たり、その場でまるで花が散るかのように爆風と共に弾け飛ぶ。光属性を持った花びらと爆風が魔物を包み、切り傷と共にじわりじわりと攻撃を加えていく。クルッと宙返りをしながらユーリが後退すると、そこへナオが盾を構えつつやってくる。


「よぉユーリ?」

「おっまたせ!なおみん!」

「んで?どうなったんだ?そっちは」


視線は依然として体勢をどうにか立て直しつつ、仁王立ちを維持しようと揺れる魔物を睨みつけながらナオが隣のユーリに問う。横目でナオも確認してはいたが、ずっとユーリとルルによる治癒を見ていたわけではない。おそらく回復はしたのだろうが、さて。


「ばっちし!ルルの魔力がこう、めちゃくちゃ上がってさ、めちゃくちゃ回復した……んでね、ちょーっとる気が溢れすぎちゃって」

「つまり?」

「名誉挽回……汚名返上?」


どっちだろ?と首を傾げたユーリの脇を疾風が駆け抜けて行った。それは見ずとも回復したソラリスであることは容易にわかった。弱者にあまり出しゃばって欲しくないーーいやこの場合は怪我人か。そんな叱咤を飛ばした方がいいだろうか、と内心考えたナオだったが、その心情の反面、手に持った盾は地面についていた。ナオの小さな行動にユーリは小さく笑う。


()()()()()好きでしょ?なおみん?」

「……嗚呼」


何処か眩しそうな彼女の表情が、ナオの感情を物語っていた。それは何処か矛盾した思いで、とても欲しがっていたもの。()()()立ち上がれなかった自分にはない力強さ。ナオにとって眩しいもの。何度でも、自分は、自分達は傷つけられても立ち上がりたかった。


「名誉挽回したいって思うくらいはな」


まるで数刻前の言い争いが嘘のように、静かに、それでいて熱のこもった声色が夜の風に乗って響いた。

途端、鈍い音が周囲に響き渡った。その音の正体は、ハルバードを持ったソラリスが魔法を用いて大きく足を踏み出すと上空へと躍り出、そして上段から魔物の頭部へと強い一撃を振り下ろした音だ。ハルバードに刻まれた〈攻撃力上昇(パワー・アップ)〉がさらに魔物への攻撃力を高める。しかし、鈍い音は攻撃が通ったことを示してはいなかった。その強力な一撃は魔物が片手の爪で辛うじて防いでしまっていた。ガキンッと鈍い音が周囲に響き渡り、ソラリスの完治した腕に鈍痛となって響く。完治したとは言え、無理をすればまた怪我をするしすぐに実力が回復するわけでもない。腕に響く鈍痛にソラリスが顔を歪めた、その時、彼の左側から魔物の左手が伸びる。下から斜め上へ、撫でるように振られるその一撃は、ソラリスを狙っている。戦線復帰してすぐか?!ハルバードを振り切りが時間がない。だが、ソラリスは背後からの気配を感じ、魔物の胴体を蹴り上げ紙一重で攻撃をかわすと魔物の前に着地し、背を低くした。格好の餌食、と魔物がニヤリと笑った気がした。


「〈光り輝く流星よライト・シューティングスター!〉」


無防備とも言えるほどに両腕を挙げた魔物の腹、胴体に闇夜を切り裂きながら流星が衝突する。いや、そんな美しいものではなく、光り輝きつつも殺意を乗せた電撃と鋭さを伴った隕石だった。それは数にして無数。無数の矢となって魔物に食い込んでいく流星はまるで魔物を標本にするかの如く、光属性の牙を食い込ませていく。全身に響く痛みに魔物の動きが止まれば、下から顎を砕かんばかりにソラリスが足を振り上げる。ガッと脳にダメージが入ったようで魔物が痙攣を繰り返しながら後方へ飛んでいく。


「追加!〈麻痺(パラリシス)〉!」


吹っ飛んでいく魔物。三度頭部、全身にダメージを負っている。体からは出血し、傷はどれもこれも治る気配がない。回復手段を持たず、脳へのダメージや体へのダメージで動きが鈍い。そしてそこにルルの魔法も加われば、魔物はビシッとなにかに囚われたかのように動きを止め、先程よりもビクビクと痙攣を繰り返す。とどめを刺すならば、怒りを、後悔を叩き込むならば、今しかない。そう咆哮するようにソラリスはハルバードを後方に引き、勢いよく振り上げる。動けない魔物が再び吹っ飛ばされる中、さらに追撃を加える。


「〈光の矛先(ライト・オブ・ランス)〉!」


光り輝く槍がソラリスの指先から、指し示した魔物に向かって放たれれば、槍は召喚主の指示に従い魔物の胴体を貫いた。グサッと勢いよく、どこまでも響く音に魔物が体をくの字に曲げたと同時に地面に倒れ込んだ。


「おりゃー!」


倒れ込んだ魔物に最期の一撃!と言わんばかりにルルが光属性を付与した杖で頭を叩けば、それが致命傷となったらしく魔物は痙攣を一瞬したあと、動かなくなった。そうして、何処ぞの悪魔と同じように黒い不気味な煙となって消失した。目の前に現れた危機が去り、フッと安心感から息を吐いたルルはゆっくりと杖を下ろしながら自分とソラリスを眺める二人を振り返った。柔和な顔つきと、いつしか自分達がした憧れの表情にルルは、嗚呼、やっぱり、と思いながらナオとユーリに声をかけた。


「助けてくれて、ありがと!」

お久しぶりでございます…遅くなって申し訳ないです。最近一気に寒くなってきましたね、お体にお気をつけくださいませ。

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