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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第一章
24/39

第二十四節 黒薔薇と亜種

亜種である魔物は四人が支援魔法をかける時間なんぞ与えるか、と言わんばかりに大きく跳躍した。青黒い毛皮が太陽を覆い隠せば、彼らを暗く絶望へと引き寄せる影が包む。


「〈小風の膜リトルウィンド・バリア〉!」


咄嗟にルルが防御魔法を唱えれば、ルルとナオを緑色の半透明の円形型の防御膜が包み、上空から落下する魔物の一撃を防ぐ。だが、ビシッという音と共に壁はいとも簡単に崩壊の道を辿る。不安に目を見開いたルルが別の魔法を唱えようとする。間に合わないな、そう思うよりも早く、ルルの詠唱よりも早く、ナオがルルの前へと躍り出ると「攻撃!」と短く叫んだ。ハッとルルは〈攻撃力上昇(パワー・アップ)〉をかければ、ナオは勢いよく壁を蹴り上げた。攻撃力が上がった脚力が割れていた壁を破壊し魔物ごと吹き飛ばす。壁の破片が魔物に勢いよく突き刺さりながら消えていき、かすかに魔物に攻撃を加える。


「ごめん!」

「謝んな!」


ルルの謝罪にナオが叫ぶ。咄嗟の判断にしては最善策と言えるだろうとナオは思っていた。だからこそ、それを示すように魔物に向かって駆け出しながら振り返り様に、安心させるようにルルに笑いかけた。勇敢で凛々しい笑みに自分の頬が紅く染まるのがルルにはわかった。「なおみんがまたやってるー!」と体勢を立て直した魔物の向こう側でユーリが叫んでいる。意味は分からなかったが、揶揄われていることはわかった。というよりもゲーム中、その威力というか安心感をもろに直接受けていたのは何を隠そう隣でプレイ中のユーリである。ゆえにルルの反応はよく分かる、うん。ギュッと杖を握り締め、うん、と力強く頷くルルにナオは前を向くことで答えとする。


「〈大地の恵みよ(アース・フォリオ)〉!」


ラピスラズリが茶色と橙色に輝き、その光は美しき宝石の如く煌きを放ちながら粒子となって、大きく大剣を振りかぶるナオに纏う。地面についた足がズンッと重い音を出して一瞬地面に沈む。地属性の攻撃が一気に上がり、ナオの威力を受け止めようと地面が勝手にクレーターを作ったようだ。地面から足へ、腕へと伝わる湧き上がる岩をも砕く力の激流に身を委ねるようにナオは魔物へと大剣を振り回した。ガキンッ!とやはりと言うべきか、甲高い音と手に伝わる微かな痺れにナオはクッと顔を顰めた。魔法で威力をーー恐らく弱点と思われる属性の威力を上げようとも物理では歯が立たないのだろうか。いや


「舐めんじゃねぇぞ」


まるで吐き捨てるようにナオは呟き、大剣を振り切る。とそのまま魔物の足元を狙って大剣を振り下ろす。案の定、巨体ゆえかわせなかった魔物がヨロリと体勢を崩す。その場で一回転し、勢いをそのままに先程と同じ箇所(足元)に再び大剣を振り切れば、魔物の動きが微かに止まる。やはり、毛皮は頑丈ではあるものの、足元は頑丈ではないらしい。またナオの攻撃が当たった部位全てが均等の頑丈さではないようだ。その証拠に微かに魔物の青黒い毛が宙を舞っている。ユーリとソラリスが先程攻撃した時は毛が舞っていなかったのを考えると、ナオの考えは正しく、また全員に伝わったことだろう。すると、魔物がナオを殺気に満ちた瞳で振り返った。巨体ゆえに小回りが効かないのか。と思いきや、素早い脚力で一気に後方へと飛び退く。飛び退いた衝撃で木の葉が揺れ、バキィ!とちょうど魔物の真下にあった木が押し潰される。ガッと魔物は押し潰した木を鋭い爪で宙へと飛ばすと、続いて片方の爪を振り回し、器用に木のナイフを作り上げるとナオとルルに向かって弾くように飛ばす。ナオはそれに自らの前に〈防御壁ガード・ウォール〉ーー多少色の付いた半透明の壁を指を鳴らすと共に縦ではなく横に設置する。横に設置すれば、木のナイフは一直線に彼女へと向かう。魔物が愚かにも真っ赤に染まるナオを思い浮かべ、血のような瞳を三日月型に歪ませる。嗚呼、だが、忘れるな。声にならない言葉が呟かれる。

次の瞬間、バッとナオの前に、正確には横に設置された魔法の上へ誰か(ユーリ)が着地する。それを確認するやいなや、ナオは魔法を斜めに傾け大剣に乗せるようにして押し出す。そうすれば、勢いよく押し出されたユーリが空中を滑るように跳躍する。


「〈炎の雨壁ファイアー・レインウォール〉」


襲いくる木のナイフを真っ赤に焼けたマグマの如く熱い炎がユーリを優しく包むカーテンとなって防ぎ、焼き落としていく。もちろん焼け落ちた木のナイフの上に魔法は容赦なく、トドメと言わんばかりに炎の雫を落としている。攻撃を防がれ魔物の表情が歪む。歪んだ一拍後にはユーリは魔物の前に二振りの刀を振り下ろしていた。バツを描くように振り切られた攻撃は魔物の片目を正確に射抜き、巨体化する際に鳴いた不気味な甲高く不愉快な叫び声を魔物が上げる。


「目も有効!」

「〈超速度上昇(ハイスピード・アップ)〉」


ブンッ!と無我夢中で振り回した、と言わんばかりの豪速の腕が空中を漂うユーリを狙う。だが、何処からともなく聞こえたソラリスのに魔法によってユーリの足に天使の羽を模した半透明の模様が付与される。それの魔法が来るのを知っていたかのようにユーリは空中で器用に身を捻ると魔物の振り切った腕にトンッと飛び乗り、目にも止まらぬ速さで魔物の前から消え失せる。途端、魔物の今だ無事であった片目を猛烈な痛みが襲えば、そこにいつの間にユーリが到達し、目に刀を突き刺していた。魔物がユーリを振り払おうと巨体を多少動かせば、今度は自らに魔法を付与したーーユーリと同じ魔法だーーソラリスが浮き上がった巨体を狙いハルバードを振り回す。弱点の一つである足に響くような一撃が加わり、不気味で甲高い音が魔物を中心に響き渡る。悲鳴のような超音波のような不快音。その音が全員の足を強制的に留め、まるで地面に足が縫い付けられたかのように動きを制限する。


「っっ、うるっさぁあ!〈拡大声量(フルボリュームボイス)〉!」


超音波とも言える魔物の攻撃にユーリが思わずと言った具合に魔法を飛ばす。ユーリの口元辺りから音符や五線譜を基調とした魔法陣が現れ、それが徐々に大きくなっていくようになっている。それが三つ。ふぅ、とユーリが勢いよく息を吸い込めば


「耳塞いでろ!!」


ナオの警告が響く。途端、まるで絶叫でもしているかのようなユーリの声が響く。「ああああ!!」という声が魔法を通して拡大し、先程の魔物の悲鳴の如く今度は魔物の動きを封じる。差異を上げるとすれば、声がつむじ風を巻き起こし魔物に攻撃している点だろうか。ナオに言われ素直に耳を塞いだルルが、ユーリが軽く咳き込んだのを見て終了と悟る。同じように耳を塞いでいたソラリスが肩で息をするユーリを後ろに引っ張り後退させながら魔物に向かって駆ける。ナオもバッと大きく跳躍する。


「〈草花の人形の宴プラントドール・パレード〉!」


後方によろめいた魔物にルルが追い打ちをかける。カァンと杖の石突きを地面に叩きつければ、地響きを上げながら何かが魔物の周囲を地面より覆う。そうしてバッと地面から飛び出たのは拗られた草木で出来た体を持ち花の顔をした魔法の一部。それは一斉に魔物へと襲いかかると草木の体で魔物を縛り付け鞭のように体をしならせて攻撃する。魔物に絡みついた草木もろともナオが大剣を振り切れば、切られた草木から毒が洩れ、ジュウゥ……と湯気を上げながら魔物の体を溶かしていく。それらはハルバードで攻撃したソラリスの付近でも起きており、幾度なく来る痛みに魔物が身を捩る。だが、それで終わらせるわけがない。


「〈春嵐六花はるあらしろっか〉!」


上段から斬り捨てるようにナオの大剣が、春と冬を纏った美しき刃が落ちる。その一撃は痛みに悶えていた魔物にさらなる痛みを与え、ナオは容赦なく大剣を押し付けるように振り払い傷ついていた魔物の体に凍傷を与える。しかし、魔物もやられてばかりではないと言いたげに体を勢いよく旋回させルルの魔法を振り払う。ブチブチと音を立てて草木を持った魔法が振り払われ、木々にあたって消えていく。だが、振り払われる前に与えられたダメージは継続しているらしく、魔物の動きは鈍い。これならば、誰もがそう思う。体力は半分以下に減った、弱点もついた。だがやはり、魔法の方がよく効いているような感覚がある。誤差かもしれないが。それでも()()()()は正解だと知っている。その証拠に、魔法を唱えようと口を開けたルルに向かって魔物が突如駆け出した。ユーリが瞬時にルルの前に踊り出ると刀を交差させ、大振りの攻撃を防いだ。ガキンッと目の前で火花が散る。


「ユーリ!」

「いいからやっちゃって!」


ズルッと押し出され、ユーリの足が地面を抉る。「っしゃあ!」と掛け声を上げてユーリが刀二振りを振り切り魔物を弾く。一瞬の隙を、杖を構えたルルは見逃さない。


「〈落ちろ星よ(メテオ)〉」


後方に崩れ落ちるように吹っ飛んだ魔物が大きくその目を歪ませた気がした。ルルの足元をーーユーリの足元までも届くほど巨大な魔法陣が青白く輝きながら刻まれる。かと思いきや、青白い光は真っ赤な燃える炎の光も纏い出す。それはまるで相反する力を纏っているかのようだ。ユーリが少し驚き、横に足をずらすと魔物に向かって一直線に二色の魔法陣が手を伸ばす。そうして魔物が魔法陣内に入った途端、魔法陣が輝き何処からともなく巨大な真っ赤に燃えたソレが魔物の頭上に落下した。魔法によって生み出されたであろう巨大なソレはメリメリッと木々をなぎ倒すような音を響かせながら魔物に食い込み、地面に押し付けていく。触れれば火傷するほどの炎と、動きを完全に制する重量はまさしく宇宙から落ちた星であった。魔物が魔法によって鎮められていく。鈍く、気味が悪い声を響かせながら。その声が、地響きが小さくなった時ーーそれは数秒の出来事であったが、近くにいたユーリには十分以上もの時に感じたーー魔物は完全に動かなくなった。


「んーー!やっぱり攻撃魔法はいいね!」

「いやっ、つよぉお?!」


勝利というか、感慨深く背伸びをするルルに、ユーリの驚愕の声が響いた。何処か呑気なルルと、何処までも楽しげにルルに笑いかけるユーリにナオとソラリスが同時に、安堵と呆れのため息をついた。

なにはともあれ、一件落着、である。

個人的にここで使った〈拡大声量(フルボリュームボイス)〉がお気に入りだったりします。

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