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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第一章
23/39

第二十三節 黒薔薇と第二チュートリアル


そよそよと、音楽を奏でる風と木の葉のハーモニーが心地いい。木の葉の隙間から漏れる仄かな暖かみを持った日差しに、思わず寝てしまいそうになってしまう午後。だが、寝てはいけない。寝たら、確実に食い殺される。


遭遇戦(エンカウント)だーー!!」

「ユーリうるさーーい!!」


隣で何処か興奮気味に叫んだユーリにルルが叫び返す。興奮というか恐怖と、今なんだ!?という怒りや焦りや色々……まぁ色々の咆哮である。その咆哮で目の前の魔物が一瞬怯んだのは好都合である。魔法でも積んでたか?

目的なく進む四人を突如囲んだのは言わずもがな魔物の群れである。青黒い毛皮に殺気と殺戮に飢えた爛々と光る紅い目。姿は兎を模しているのだろう、長い耳が特徴的だ。そんな小型の魔物が計六体。この魔物は爛々と光る目の通り、無我夢中に殺戮を好む極悪非道な魔物の一例である。戦闘能力がない者には不意打ちをついて奇襲すると云うーー『ALUTAPARNアルタパロン』にも登場した魔物だ。差異を挙げるとすれば、あちら(ゲーム)は三体一対の魔物で、目が三つだったことだろうか。多少の差異はあれど魔物は魔物である。変化している可能性は想定内だ。


「六体か。一人最低一体、んで誰かが二体」


ナオがポツリと呟き大剣を構える。それを皮切りに全員が武器を構える。魔物も殺る気だと理解したのか、甲高い唸り声を発する。騒音とも言えるような濁った音にルルが顔をしかめる。


「うちとなおみんで二体する?」

「いや多分、ルルの魔法でも行けるぞ」

「適材適所?」

「それだ!」


ナオの呟きに答えたユーリとソラリスにルルが助言すれば、ユーリは目を輝かせて「今一番の解答!」と笑う。そうしてナオを見れば、彼女も同じことを考えていたのだろう、ナオが頷いた。大まかな方針は決まった。一人一体を目標に、適材適所で残り二体を倒す。それが分かれば、あとは合わせるだけだ。そこは要注意。両者と魔物が睨み合う。唸り声とそよそよとした優しい音楽が不協和音となる。そうして、数秒の睨みあいの後、開戦の火花は突然切って落とされた。


「先手必勝!」

「ルル!」


まるで合図と言うように突然、ルルがなにかしらの魔法を放とうと杖を振り上げかけるのをソラリスの声が制する。バチバチッと杖の先のラピスラズリが仄かに火花を散らした。かと思えば、魔物の足元で火花が散り、それに驚いたように少しだけ体勢を崩した。ルルの近くでも軽く火花が散り、魔法よりも先に飛び出すつもりだったナオが軽く足を止め、「焦げる?!」とユーリが魔物と同じように驚きながら叫んだ。


「ごめんなさい!」

「気を付けろ!」

「〈風属性防御力上昇ウィンド・ガードアップ〉!」


ルルの謝罪にナオが叫びながら再度飛び出し、ユーリも同時に飛び出すと魔法を全体にかけ、同じく体勢を立直し飛び出した魔物がよく使用する風属性の防御力を上げる。


「えっ?!」

「ん?」


すると、()()()ルルの驚愕の声が聞こえ、ユーリは一瞬立ち止まりかけ、ハッと我に返った。


「ごめん!ルルの仕事だねこれ?!」

「大丈夫だよユーリ!ボクもだったし……今は集中!」


申し訳なさそうにユーリが叫びながら飛んできた魔物を蹴り飛ばせば、ルルから気にしないで!と声が飛び杖を掲げる。先程はルルが先走ったが今度はユーリが先走ってしまった。事前に打ち合わせもせずに直接本番に乗り込んだのだ。しかも戦闘スタイルは多少違う。戦闘の合図、という明確なものがなかった以上、ナオもユーリも真っ先に飛び出したのもある。歯車が噛み合うように立ち回る必要もある。あとで話し合いかな?とユーリは思いつつ、ナオが薙ぎ払った魔物を振り返った。魔物はこちらが人数で劣勢であるからか、それとも殺戮を好む為か、小回りの効く体を存分に使い、致命傷を与えるの隙を狙っている。


「狙っているのは首か」


ソラリスが片手で自分の首筋を撫でる。根気よくか否か魔物が狙っているのは急所。その証拠に大振りが目立つとも言えるナオに二体分の攻撃が集中している。まぁナオはそんなこと諸共せずに一体目を軽く体を捻ってかわし、後方からきた二体目の攻撃を大剣を振り回し、ふっ飛ばしている。ソラリスもハルバードを振り回し、魔物からの跳躍を使った素早い攻撃をかわし薙ぎ払っている。と、その時、ナオに向かって三体の魔物が跳躍した。一体を大剣で薙ぎ払い斬り伏せると大剣を地面に軽く刺し、遠心力を使い回し蹴りを放つ。回し蹴りによって魔物二体が吹き飛び、吹き飛んだ先でユーリが刀二振りを横に構え、一体を切断。もう一体をソラリスがハルバードの切っ先で突き刺しとどめを刺す。一気に三体を失い状況が変化した。戦場はたった一手で幾多にも変化する。ふと、ナオは大剣を抜き放ちながら思い、残りの三体を見やる。残り三体ならばルルの魔法でもいける。誰もがそう思い、ナオがルルにその旨を伝えようと口を開きかけた、次の瞬間。魔物の一体ーー残った三体の中で一回りほど大きい魔物が「キィイ!」と天高く吠えた。この魔物はこんな甲高い、黒板を引っ掻いた時のような耳障りで不快な声だったのか。そう少しだけ思ってしまったナオと、思わず耳を塞いだユーリに今度は、ルルの驚愕の声が飛び込む。


「っ!待ってそいつ亜種だよ!」

「?亜種?」


突然、なにかに気づいたのかルルが叫ぶ。聞いたことのない単語にナオが振り返り問えば、先程鳴いた一体を守るように他二体が集合し、青黒い毛皮を見せつけるように一体に覆いかぶさる。途端、三体を青白い光が包み、その光は徐々に徐々に大きくなっていく。


「……うそだろ」

「なにこれ、ナニコレ、なにこれー!!」

「おいユーリ!こっち来い!」


興奮というか、未知との遭遇に声高に叫ぶユーリの手をソラリスが引っ張り、後方に引く。「なにあれなにあれ!?」と叫ぶユーリを落ち着かせるようにソラリスが手を振る。と、その時、魔物を包む光が突然二人に向かって突進してきた。二人の名をナオとルルが叫び、先程よりも巨大化した光が二人を容赦なく襲う。ユーリとソラリスは咄嗟に横に並ぶと、ソラリスはハルバードを掲げ、〈攻撃力上昇(パワー・アップ)〉を付与させると横殴りに武器を振り回す。ガキンッ!とあり得ない音が響き、ソラリスの腕に痺れが一瞬走る。が、ハルバードを斜め上に滑らせ衝撃を緩和させると、トンッとユーリが彼の肩を足場に跳躍。いつの間にか自身の足に〈速度上昇(スピード・アップ)〉を付与していたため、まるで跳ねるように上空へと飛び上がると上段から刀を振り下ろした。再びガキンッ!と甲高い音が響く。斬り伏せるのは困難、そう判断したユーリは魔物を蹴り、宙返りをすると着地。すぐさま後退していたソラリスのもとに撤退する。すると、魔物を包んでいた光が晴れた。そうして現れたのは、先程までいた魔物の三倍はあろうかというほどに巨大化した魔物だった。


「……なぁルル、さっき亜種って言ったよな?」

「うん。亜種って言うのは、普通の魔物と違う変化をする個体のこと……最近多いんだよね」

「教会が放火とかされるようになった辺りから増えたって話だ」


ルルの解答にソラリスが付け足す。それってまさか……ナオとユーリは小さく目を合わせ、頷き合う。恐らく亜種それは、カミサマの仕業の可能性が高い。無邪気に「玩具なんだしいいでしょ?」と宣っているのだ。無限に出現する知能が低い魔物を意図的に改造し被害の憎悪を『魔族』に向けている可能性もなくはない。教会の放火とほぼ同時期ならば尚更。『魔族』が魔物の亜種を放つ明確な理由が思いつかない。もしやなんらかの実験か。それか、『魔族』の上、『魔王』と関連が……?考えれば可能性は無限大だし、そうなればもう分かりっこない。


「その考察は、ユーリが得意だな」

「うん、うちの分野かな」

「え?」

「は?なにが分野だって?」


考えたことは同じだったのだろうナオとユーリの呟きに、ルルとソラリスが反応する。が、二人が特になにも言わなかったので独り言だと解釈したようだった。ソラリスは怪訝そうな表情ではあったが。


「つまり、この魔物は三体で巨大化する亜種ってこと?……でもならなんで、さっきの三体は巨大化しなかったの?あ、亜種だったのはこの三体だけってことかー!」

「嗚呼、多分な……よくわかったな?」

「え?うーん……巨大化できるならした方が作戦的には良かったかもしれないなーって、巨大化それがいいって本能的にわかりそうだったし……そっから?」


ユーリの疑問と云うか解答にソラリスが口を挟むと、彼女からそんな答えが返ってくる。その答えにポカンとしたソラリスは多分悪くない。まぁユーリの言うように巨大化した二体の魔物だった場合、苦戦を強いられる可能性が高い。それをしない、つまりは六体中三体のみが亜種ということに他ならない。ソラリスは「たまたま残った三体が亜種」という事実から「他三体は通常の個体」とわかったが、ユーリは「作戦的に巨大化しないから三体だけ亜種」という別方向から答えに辿り着いたようだ。


「そういうやつだから、ユーリは」

「そういうってどういうことなおみん!」


もー!と頰をふくらませるユーリにナオは小さく笑う。クスクスとルルも笑ってしまい、ちょっとだけ空気が和む。目の前に敵がいることは変わりないが。


「攻撃手段的にはルルの魔法が一番か?」

「有効かどうかって話なら、アリだと思うよ!まだ魔法打ってないしね!」


ナオの言葉にルルが答えつつ、杖を振るう。先程のまるで刃物と刃物が交差したような甲高い音を考えるに魔法の方が効きそうだ。毛皮が頑丈で、もしかすると足の部分が弱点の可能性もある。まぁそれはやってみればきっと分かる。方向性は決まった。詠唱から発動までの時間を稼ぎつつ、体力を削る。上手く行くならば弱点もつきたい。


「大きいお花咲かせちゃうよー!」

「その前に色々もらっていい?」


ユーリがルルに首を傾げて言えば、「うん!」と元気な声が響く。するとハルバードを構え、ソラリスが言う。


「ルルだけじゃ支援魔法足りないだろ」

「嗚呼、多分な……頼む」


彼の提案にナオが頼めば、ソラリスは一瞬キョトンと目を丸くしたあと、頷いた。それにユーリが小さく笑い、ルルが不思議そうに首を傾げていた。

さてさて、二回戦を始めようか。

少し間が空いてしまい、申し訳ございませんでした。続きです!

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