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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第一章
13/39

第十三節 黒薔薇と大会


「さあお次の組み合わせはー?」


司会進行役が闘技場の中央で演説者よろしく片腕を広げる。円形闘技場の両側、司会進行役が透明な筒で指し示す方向には参加者の入場口が二つある。係員の誘導でその片方の入場口に立った二人の目と鼻の先、反対側の入場口に現れた人物達を見てナオはハッと鼻で笑い、ユーリはオーバーリアクションで驚く。


「あー!なおみん!あの人達!」

「嗚呼、そうだなぁ」


そこにいたのはニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべる、酒場で喧嘩を売ってきた男達だった。女だからと、なにも知らないのに自分達の方が強いと言わんばかりの横暴な態度をナオが切っては捨てて勝った昨夜。売られた喧嘩は買うが……まさかこうも簡単に大会で当たるとは。


「なおみん」

「大丈夫だって」


挑戦的にニヤリと笑うナオにユーリはしょうがないなぁと小さく笑った。酒場での喧嘩が大会というフィールドに変わっただけだ。自分達が優勝を目指すのは変わらない。


「さぁさぁ!続きましてはこの二組だ!西の参加者は、大会常連とも云うべき『ドラゴンライン』だ!参加回数は優勝ものだが、そろそろ本当に優勝して欲しいくらいだな!?」


ドッと笑いが観客から溢れる。観客は司会進行役の恒例なのだろういじりに笑っているが、大会参加者で試合を観戦している参加者や冒険者からは「大丈夫か」とでも言うような笑みが漏れている。それが何処か失笑に見えるのは気のせいか。実力を知っているのかはたまた昨夜の騒動を知っているのか。男達のうちーー人数は四人だーーリーダーらしき男はブルブルと怒りで体を震わせ顔を真っ赤にし、仲間の男達は苦笑を浮かべている。理解できぬはリーダーだけ、か。なんとなくナオもユーリも苦笑を浮かべてしまう。それほどまでに努力家というかそういうのか、それとも鈍感なだけで周りが見えていないだけなのか。はたまた仲間達が優秀で、彼自身愛すべき馬鹿なのか。まぁ、わかりっこない。自分達はただ、目の前の壁を壊すだけ。売られた喧嘩を倍にして返すだけ。


「常連の西に対峙する東の参加者はっ!初参加、可憐なる少女達『ブラックローズ』!かわいいだけだと侮ることなかれ!」


司会進行役の台詞に観客から「頑張れよー!」と激励の声援が飛ぶ。冒険者達からは「お手並み拝見」とでも言うような視線が飛ぶ。まぁ、昨夜の二人の言葉を聞いていれば、多少なりとも強いのだろうと言うことは察する事ができる。その証拠に数人の冒険者はナオの鋭い殺気に気づいているようで彼女を二度見していた。


「四対二!さあどういう戦略が繰り広げられるかー?!」

「ユーリ、二」

「オッケー!なおみんもだね?」


司会進行役の言葉に相手の男達が多勢に無勢だと考えたのが、ニヤリと勝利の笑みを浮かべる。だがナオとユーリは冷静に、そして狙うもののために作戦を練る。今回は魔法使用不可。己の武器のみが勝利の鍵だ。もちろん勝手に魔法を使えないように、番号が書かれた木の板が魔法使用不可の効果を持っており木の板を戦闘時に持つことで正式に円形闘技場にて参加できる。つまり、木の板を持たずに闘技場にて戦闘を行えば即失格。人数がいる場合は交代時に木の板を渡せば、効果は持続され、参加できる。受付をしただけ、では大会に参加は不可能。木の板ーー参加権を戦闘時まで持たなければ意味がないのだ。またナオとユーリのように人数に差が生じる場合もあるため、参加人数は一チーム四人までと説明も受けている。


「最初の対戦者は前へ!」


身振り手振りを交えた司会進行役の言葉に相手側からは剣を持った男が歩み出る。ナオは大剣を抜き放ちながら、片手に持っていた参加権(木の板)を空に一度放り空中でキャッチする。司会進行役への参加権の提示だ。それに司会進行役は「確認した」と頷き、相手側にも提示を促すべく視線を向ける。すると相手側の男が受け取ったであろう木の板を提示した。


「両者、確認!では武器を構えっ!」


司会進行役の声とともに対戦者となったナオと男が武器を構える。両者、木の板を懐にしまい、司会進行役の開始の声を逃さぬよう耳を澄まし、相手を睨む。周囲も声援の音を潜め、開始を今か今かと待ちわびる。会場に響くは彼らを取り巻く暑苦しい熱気だけ。まだ対戦ではないユーリも固唾を飲んでナオの勝利を信じる。いや、ナオが勝つことは信じて疑っていないが。魔物との戦闘とは何処か違う、暑苦しく鬼気迫る雰囲気に呑まれているのだろう。それはナオも同じだった。戦闘狂、というわけではないと思う。だが、相手の力量を確かめられ自分達のも確かめられる戦い。何処までやれるのか、それがわかるのがなんとも嬉しかった。

多くの思いが交差するように静まり返り、屋台側の声が何処か遠くから響く。そうして


「ーー始めっ!」


戦いの火花が切って落とされた。先手必勝。司会進行役の声が耳に入った瞬間、ナオは大剣を勢いよく振り回した。ブォン、と風圧が衝撃波となってバリケードに守られた観客を、相手のチームを、そして相手の男を襲う。「わっ」と衝撃波から腕で顔をかばった男が呟くように叫ぶ。その隙をナオが見逃すはずはない。地面を蹴り、男の前にまで一気に跳躍すれば、男は瞬時に武器を構える。容赦なく男に上段から振り下ろされた大剣。それを男は間一髪で防ぎ、途端に周囲からは先程よりも興奮をはらんだ声が響く。持てるだけの力で男が大剣を振り払い、追撃と言わんばかりに蹴りを顔面に向けて放つ。ナオは蹴りを首を傾げるようにしてかわすと、後方にステップを踏む。大剣を構え直し、横に薙ぎ払えば男は剣を縦に構え攻撃を防ぐ。大振りな分、ナオの攻撃には隙が生まれると思っているのだろう。だからこそ、男は一歩後方に足を引き、自らの方へナオを武器ごと引き寄せようとした。そうして剣を引き抜き無防備になったところを狙う。恐らくそういう作戦だったのだろう。だが、


「っ?!」

「あめぇんだよ」


ナオの持つ大剣は男の作戦とは裏腹に引いても押しても、うんともすんとも言わなかった。しかも、後方に引こうとした体も動きが鈍い。ニヤリとナオが口角をあげて笑う。動かなかったその理由は次の瞬間に訪れた。ガガガッと大剣を力の限り押し付けるようにして上へ振り上げる。大剣に力を篭めていたが故に動かなかったのだろう。そう察することが出来る。魔法が使えない以上、男を阻んだのはナオの力。男女の差など全く微塵も感じさせない、戦いに特化し馴染んだアバターの身体とそれを自在に操るナオ自身の力と言っても良かった。ガッと天に向けて振り上げられた大剣に連なるように男の剣も上へ持ち上げられ、男の両腕がまるで万歳をするように天へ向けられる。呆けた表情だったのも、一瞬。すぐに体勢を立て直そうと今度こそ後方に足を引く男。しかし、それはナオも同じだった。え?と思う男の視界の隅にクルクル回りながら地へと落下する剣が入る。はっと男が手を見れば、先程あったはずの剣が消えていた。腕に伝わる痺れに気づくのが遅れたが、先程の攻撃と共に剣がふっ飛ばされていたのだ。


「っ、剣かっ!」

「嗚呼」


武器がなければ、勝敗は決する。勝利の条件は「()()()()()()()()()()」。それは勝利の鍵とも云うべき武器を奪うでも可能。相手がもう戦うのは無理だと思わせればいい。まぁ素手での戦いとなった場合は判断が難しいが、概ね武器を奪うか急所を寸止めだろう。だからこそナオは相手の(手段)を奪うという作戦を取った。魔法が使えたならばまた違ったが、このあとにユーリが二人分と自分にももう一人分いると考えると体力は温存するに限る。

男の手が回転しながら落下する剣に伸ばされる。だが男の手が剣に触れるよりも早く、素朴でありそして使い勝手がよさそうな剣はナオの手に吸い込まれるように落下した。その剣の切っ先をこちらに掴みかかろうとしていた男の首筋にピタッと当てれば、男は待てをされた忠実な犬のようにピタリと動きを止めた。


「チェックメイト」

「……参った」


武器がなければ戦えない。素手で戦えるのはナオの予想通り、できない模様だ。司会進行役が「勝者は、一回戦『ブラックローズ』!」と、男の仲間ーーリーダーが「なにやってんだよ!?」と叫ぶ。そうして割れんばかりの歓声があがる。予想していた者、予想を裏切られた者、歓声を上げる者、と、闘技場を囲む声は十人十色だ。身の丈以上とも言える大剣をまるで手足のように操り、一瞬にして勝利への方程式を導き出す。まさに戦い慣れている強者とナオは冒険者達の認識として浸透していく。そして、そんなナオがチームを組み、簡単に二人と言ってのけるユーリも。


「さっすがなおみん!最速記録だよー!」

「それ、ゲームの時の記録を言ってんのか?」

「そうとも云う〜比較対象がないもので〜」


「おめでとう〜!」と祝福の拍手と笑みを浮かべるユーリの元へ、ナオは剣を男に返し戻る。礼儀正しく、お互いに相手への敬意を払い握手を交わして。ユーリへ参加権の木の板を渡そうとナオが手を出せば、ユーリも木の板を受け取ろうと両手を出す。しかし、それがユーリの手に渡ることはなかった。木の板は、パキッと甲高い音を立てて縦に真っ二つに割れたのだから。


「えっ」


そしてその音は対戦相手である男達の方からも、また観客に紛れ込んだ参加者達からも立て続けに響く。不気味にパキッ、パキッと響き割れていく木の板。


「……こ、れって」


それが意味するのはーー


「魔物だっ!」


敵襲。

今日は此処まで。次は魔物が対戦相手となります。

不定期投稿(定期)ですので、気長にお待ち頂ければ嬉しいです。

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