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ルミナエクリプス〜光と闇の戦士〜  作者: teamリヴィーシャ
第一章
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第十二節 黒薔薇と外面


楽しかった。笑い合って、泣き合って、話し合って。私の、大切だった。きっと、あの子もそう思ってくれている。私達は俗に言う親友だと思っていた。でも……突然、あの子は私の前から去った。いや、まるでいないものとして扱った。


「ねぇ、なんで無視するの?」

「こっちこないで」

「なんで?」

「ウザいから」


それは、どういう意味なの?あなたは、私の友達なのでしょう?あの時、最初に出会った時だって……!


「なんで?ずっと友達だって……」

「うるさい!」


今までにない大声に身体が震えた。

ガラガラ、ガラガラ。

足元が崩れていく。底のない、奈落へと落ちていく。その先に有るのは地獄か、それともあなたのいない場所か。足に力が入らない。信じていた、だって、友達だから。きっとあの子もそうだと()()()()()()()。嗚呼、私は……


「なんで?ねぇ……友達じゃなかったの?ねぇ……」

『……お……ん……』


どれが嘘で、どれが本当?信じればいいの?信じ込めばいいの?ねぇ、嘘つきは誰なの?ねぇ……誰か、教えて。誰か、()()()()の意味を教えてよ。


『……な……み……』


私は、あなたのために、自分のためにどうすればよかったの?無理して笑えば、同じように大声を上げれば、元に戻れたのかな?何を言えば、元に戻れた?もう、それもわからない。私がわからないこと全部、あなたなら知っているんでしょ?ねぇどうして?

ねぇ、答えてよ!!



「なおみんっ!」


ユーリに耳元で名を呼ばれ、ナオはハッと我に返った。ユーリの大声に周囲の人々が何事かと訝しげな視線を寄越していたが、次第にそんな視線も四方八方から響く喧騒に気を取られ、消えていく。ナオは片耳を抑えながら、ユーリを振り返った。


「なんだよユーリ、うるさい」

「なんだよじゃないでしょ!さっきからずっと呼んでるのに上の空!」


まったく!と両手を腰に当て怒った様子を見せるユーリ。だが次の瞬間には心配そうにナオの顔を覗き込んでいた。


「もしかして、眠れなかった?大丈夫?」

「大丈夫だ、ユーリ。ちょっとボーッとしてただけ」

「無理しないでよ!大会もあるんだから……」


心配するユーリにナオが苦笑と共に言う。昨日今日だ、眠れなかったかもしれないと言うのは否定出来ない。不安げなユーリに「大丈夫だって」とナオはニヒルに笑ってみせる。


「大丈夫だって、俺だぜ?」

「うん……まぁ、なおみんだもんね!此処に来るまでたくさんの人からイケメンだね、とか、頬染めて握手してください、とか、魔法で絵描いてもいいですかって声掛けられたもんね!」


友人が褒められて嬉しいのか、先程までの不安顔とはうって変わり、ニヤニヤと笑うユーリ。そんな彼女にナオも小さく笑う。


「褒めてんのか?」

「当たり前でしょー!自慢の相棒だもん!」


二人して顔を見合わせて笑い合う。そう今日は、昨日ユーリが言っていた当日参加大歓迎の大会だ。二人は受付をするため、『白銀の星』近くの建物に来ていた。当日参加者として登録をし、イリヴァの街の中央に設置された特設の円形闘技場を見下ろせる建物。普段は武器屋として営業している建物には二人以外にも当日参加者が大勢やって来ている。ナオとユーリは大勢の対戦者を横目に見ながら、人波から逃れるように路地裏で佇んでいた。路地裏を抜けた先はもう一つの大通り。イリヴァの街は四つの大通り何処からでも中央の広場に向かえる造りとなっている。その路地裏を抜けた目と鼻の先には屋根の頂点に十字架が刺さる教会が建っている。


「なおみん」

「嗚呼」


ただ静かにユーリがナオに声をかける。教会、神様と名乗った(あの少年)が自分の心を隠したと言っていた場所。それがあそこなのか検討もつかないし、心を無くし遊戯のことにしか興味のなさそうな彼のことだ。本当に神様=教会に隠しているのかも怪しい。そして『魔族』が狙っているというのも。


「まっ、考えたってわかんねぇもんはわかんねぇな」

「だねー」


腕組みをし、壁に寄りかかった状態でナオが言う。彼女の言う通り、考えたって分からないものは分からない。


「なおみん!優勝、しようね!」


何処か重い空気を吹き飛ばそうとしたのだろうユーリが胸の前でグッと拳を作って言う。ナオは「嗚呼」と力強く、見る者を惚けさせてしまいそうなほどに凛々しい笑みと共に頷いた。


「……やっぱりなおみんって、カッコいいね!」


何処か嬉しそうにユーリが笑って言うのを、ナオはちょっと紅くなった頬をそのままにしてそっぽを向くことで答えとした。


ーー晴れ渡った青空にいくつもの魔法で彩られた花火が上がる。パァン、パァン、と破裂音と共に青空にワクワクドキドキを残していく色とりどりの花。その花が咲き誇っていくたびに人々の熱気が声となって盛り上がる。四つの大通りの先、中央の広場に設置された特設の円形闘技場には多くの人々が集まっている。円形の戦闘スペースを囲むように魔法で形作られたバリケードが設置され、人々が熱気と闘気を漲らせながら雄叫びを上げている。そんな人々の輪の向こうには多くの出店が並び、商売繁盛!と言わんばかりに応援の声に負けじと客寄せの言葉を叫んでいる。


「さぁさぁ!イリヴァの街恒例の武術大会開幕です!魔法以外の全ての武器、素手が使用可能!武器使用者は対戦相手の負傷を考え武器には魔法を付与させていただきます!って、魔法使用不可だっつーの!」


闘技場の中、拡声機となっている透明な筒を手に大会の司会進行役進行役が大きな身振り手振りで観客を湧かせる。ドワッと観客から司会進行役進行役の台詞に笑いが溢れる。四方から響く笑い声を聞きながらナオとユーリは参加者が集まるテント内にいた。司会進行役進行役が喋り、参加者を紹介するたびにテントから人が出入りしていく。そんな多種多様な人々をナオは見定めるようにエメラルドグリーンの瞳で見つめていた。強者は、いないものか。スカウトに匹敵する者はいないか。多くの思考が交差し渦巻く。見定めるナオを何度か女性の参加者が熱のこもった瞳を向けていた。それは見定めるナオが凛々しく、格好いいからに他ならない。言ってしまえば、真っ直ぐ伸びた背筋もエメラルドグリーンの強い瞳も男性参加者の誰よりも格好良かった。


「やっぱり、なおみんはイケメン女子枠かぁ」


ポツリとナオの隣でユーリが呟く。イケメン女子枠として女性の視線を掻っさらっているナオではあるが、それはユーリも同じである。ナオとはまた違った可愛しい系の外見に何人かが目を奪われていたが気づくことはない。


「結局、全員同じ穴のムジナってことだろ」

「?なおみん?そーいう話じゃないよ?なおみんが格好すぎる話だよ」

「あんがとよっ!」


突然の褒めにナオが顔を紅くし、叫ぶように言えば、周囲からは「可愛らしい」と反応が漏れる。これで今までのナオの()()()()()視線も紛れてくれるだろう。恐らく、ナオの提示する条件に合う人物はいない、ユーリはそう思っていた。理由としては、ナオの瞳が単調過ぎたから。お眼鏡に叶うのはきっと難しい。先程から自分を売り込もうと二人の話しかけてくる冒険者や参加者もいたが、ナオの瞳は動かなかった。それもしょうがない、とユーリは思っている。うんうんと勝手に自分の中でけりを付け、ふと顔を上げた。その瞬間、


「あ」


目に入った二人がいた。二人の周りがキラキラ輝いて見えたのは太陽の光だけではない。一人は美丈夫で、ローブに浮き出る線から見ると痩せているようなーーいや鍛えているが痩せて見えるが正解かーー体格の人物。もう一人は可愛らしい美少女。現実世界でならばモデルやアイドルにスカウトされそうなほどの愛らしさ。その証拠にチラチラと参加者からの視線を浴びている。パッと見は何処にでもいる普通の二人組。だがユーリには何故か目に止まった。


「なおみんなおみん!」

「ん?なにユーリ」


慌ててその二人組のことをナオに言おうとし、ユーリは彼女に声をかけたが、その瞬間に「五番と三十番の方!」と番号が呼ばれてしまった。


「呼ばれたな。行こうユーリ」

「え、あ、うん!」


三十番と書かれた木の板を握りしめ、ナオが出入り口に向かって歩き出す。ユーリがそれを慌てて追う。


「お前がなにを言おうとしたのかはなんとなく、想像がつく。だから、あとでな?」


自分の隣に陣取るユーリにニィと笑ってナオが言えば、ユーリは嬉しそうに「うん!」と頷いた。そうして係員だろう人に促され、人混みの中を突き進む。多くの熱気と興奮が二人を包み込み、だんだんと円形闘技場に近づく度に緊張感が増していく。


「さあお次の組み合わせはー?」


司会進行役が闘技場の中央で演説者よろしく片腕を広げる。円形闘技場の両側、司会進行役が透明な筒で指し示す方向には参加者の入場口が二つある。その片側に立った二人の目と鼻の先、反対側の入場口に見えた人物達を見てナオはハッと鼻で笑い、ユーリはオーバーリアクションで驚く。


「あー!なおみん!あの人達!」

「嗚呼、そうだなぁ」


そこにいたのはニヤニヤと気色悪い笑みを浮かべる、酒場で喧嘩を売ってきた男達だった。

あれ……なんか見たことのある方々がおりますね……

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