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事故の理由

千秋さんに会いたい…。

時々、声が聞こえるけれど…。姿を見る事が叶わない。


あいつの声がして、心拍数が上がる気がした。いや、いやいや!目なんか覚ましたら、あいつがいる。

あの家に連れ戻される。そんなの嫌よ。私は、あそこになんかもどりたくないもの。今、目を開けるべきじゃない。


私は、真っ暗闇を当てもなくさ迷っている。ただ、真っ暗な視界が広がっている。時々、千秋さんの声が聞こえてくるだけの世界。


このまま、此処にいていいの?


「いずれ、記憶は変わるから」


そうだ!あの人に言われたじゃない。それまでの辛抱なのよ!


だから、心配いらないのよ!


「でも、もし入れ替わったのがバレたら?」


「大丈夫!相手の記憶もいずれ変わるから…」


そうだった変わるのよ!相手の記憶も変わるの。


だから、大丈夫。何も心配しなくていいのよ。


私が怯える必要なんてないのよ!


大丈夫、大丈夫だから…。


でも、怖くて目が開けられそうになかった。


そうだ!今のうちに、頭を整理しなくちゃ…。


◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆


磯辺葵との入れ替わり…。


私は、事件当日の朝4時にあのアパートを飛び出した。もう、限界だった。恭介の夜泣き、母乳を売る事、雪那にさせている行為。一滴の罪悪感が、いつの間にか心の中に濃いシミを作っていた。私は、橋の欄干から飛び降りようとした。


「ごめんね」


「死ぬのは、およしなさい」


その声に振り返ると、白髪頭を腰まで伸ばし、前髪で目は見えず、ニッと笑うと歯茎からの出血なのか赤黒い歯が見えているお婆さんが立っていた。


「止めないでよ」


「これをあげよう」


そう言って、お婆さんは、私の手に小さな人形の手を握りしめさせる。


「何ですか?これ」


「あなたを助けてくれるものだ!」


「助ける?」


「そう、他人の人生と変わる事が出来る!生まれ変わるのは、どんな人生がいいんだ?」


「子供がいない人生」


「それから?」


「普通の人生」


「それから?」


「旦那さんに愛されてる人生」


「それから?」


「キラキラ輝く指輪がある人生」


「そうやって、沢山考えながら歩きなさい」


お婆さんの真っ暗な目が私を見つめる。


「そしたら、どうなるの?」


「それが、選んでくれるから」


「それでも、私は私でしかないじゃない」


「3ヶ月経ったら、全部忘れるから…。あなたの記憶は相手に、相手の記憶はあなたに…。全部、全部流れ落ちるから」


「でも、3ヶ月以内に周りにバレたらどうするの?」


「大丈夫!バレたって、3ヶ月経てばそれも忘れてくれるから」


そう言って、お婆さんは私にさらに近づいてきて耳元でこう言った。

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