飾偽羽 ━ カザリギバネ ━
もし、私に本物の翼があれば……。
どこまでも、飛んで行けたのだろうか?
あのどこまでも続く青い大空に、心ゆくまで自由に羽ばたきたい。
そう願うことは、不自然では無いはずだ。
まるで檻のように続く、この世界で。
青い空を、ただ漠然と見上げるだけの自分ではなく。
自由に羽ばたける、あの鳥のような翼があれば。
……しかし、何も無い背に幻想を抱いたところで。
只々虚しいだけだと、自分でも最初から分かっている。
それでも私は願うのだ。
ここではない、どこか遠くへと――。
未だ見ぬアナタの元へと、飛んで行ける翼が欲しいのだ。
晴れの日も、雨の日も。
風吹くの日も、雪の降る日も。
どこまでも、遠く、遠く。ずっと飛び続けて、もっと遠くへと――。
そしてやっと出会えたアナタの傍で、ゆっくりと羽を休めたい。
しかし、実際の私は……例え翼があっても、きっとどこへも飛んでは行かないだろう。
その証拠に。この檻には、最初から鍵などかかっていなかったのだから。
アナタは私が自ら飛び立つていくことを、望んだのだろう。
しかし私は、この檻の中に入った時から誓ったのだ。
――アナタの傍で、永遠に過ごそう。
――アナタの為に、永遠に歌い続けよう。
飾りでいい。偽物でもいい。
アナタが私を《天使》と呼ぶのなら。
アナタの為の、飾偽羽が欲しい。
お読み頂き、ありがとうございます。
『翼を望みながらも、その翼を必要としない少女』の矛盾した心の物語でした。
ちなみに『飾偽羽』は私の作った造語なので、いくら調べても出てこないと思います。(…多分)
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ありがとうございました。