第八十八話 緑魔龍公爵の攻撃
グランデイル軍宿営地の中心部にある、白い天幕の中。
そこには俺を王都から追放した張本人――グランデイル女王のクルセイスが待ち受けていた。
白い天幕の中は、周囲からは見えないように大きな布で覆われている。中にいるのは俺とアイリーンと、そして目の前にいるクルセイスの3人だけだ。
見た目の若さや、清純さとは打って変わり。その言動には、いつも支離滅裂な所が目立つグランデイル王国の若き女王様。
ドリシア王国のククリアいわく。隠された裏の顔を持つ可能性があるという謎の女王が今、俺のすぐ目の前に座っている。
何だろうな、この不思議な感覚は……?
なんだか俺には、この人が全ての始まりであり。全ての元凶であるような気もしてきた。
なにせ俺達をこの世界に召喚した、張本人でもある人物だからな。
もし、この人の手によって。
異世界召喚なんてものが行われなければ――。
この世界でクラスメイトの8人が惨殺されるという悲劇だって、起こらなかっただろう。
俺も、みんなも、今頃は元の世界で平凡な学生として普通の暮らしをしていたはずだ。
そう、全てこの人が余計な事をしなければ……だ。
だが今となっては、その仮定も虚しい。クラスのみんなで誰1人として欠けることなく、平和に元の世界に戻れるという選択肢は、もう無くなってしまったのだから。
椅子に座っていたクルセイスは、俺を見るやいなや。すぐさまその場でスッと立ち上がってみせた。
そして両手を合わせながら、懇願をする様に。俺に深く頭を下げて、涙ながらに謝罪の言葉を述べてくる。
「コンビニの勇者様……! 国家転覆を企てた『不死者』の勇者にそそのかされたとはいえ。グランデイル王国が、これまで貴方様に大変失礼な行動をとってしまった事を、この場で心からお詫びさせて頂きます。本当に大変申し訳ありませんでした……!」
見た目だけなら美少女ともいえる、クルセイスの白々しい謝罪を、俺は無表情かつ無言で聞き流していく。
「――ですが、こうしてグランデイル王国にお戻り頂けて、本当に私は嬉しいです。これから私達は共に手を携えて強大な魔王と戦い、人類を救う為に頑張って参りましょう! そして魔王を倒したあかつきには、必ずや皆様に『召喚戻し』の儀式を行う事で、元の世界に戻れるお手伝いをさせて頂きます!」
「そっか。分かった。……で、お前の話のオチは何だ?」
「は、はい!? 『オチ』とは、一体何なのでしょう?」
俺はいかにも異世界モノの話で、主人公にお願いをしてくる善良な女王様の役を演じている大根役者に。
冷淡な態度を返して、鋭く睨みつける。
「アイリーン! 黄金剣を抜いて、目の前の女の喉元に剣を突きつけるんだ!」
「――了解しました、店長!」
アイリーンが腰に付けている黄金の剣を鞘から抜き。
その剣先をクルセイスの喉元、数センチ前の所に密接させて突き付ける。
「ひいいぃぃぃぃッ!? な、何をされるのですか!? コンビニの勇者様!!」
「もうそういう演技はいいんだよ、クルセイス。あんたが見た目とは違う裏の顔を持っていて。陰で倉持達を操り、2軍のみんなの殺害に関わっている事は分かっている。だから、さっさと口を割って本当の事を話すんだ!」
「こ、コンビニの勇者様……? 私には、一体何の事を仰っているのか全然分かりません! どうか、剣をお納め下さい!」
わざとらしく手足をビクビクと震えさせながら、怯えているように見えるクルセイス。
確かに今の所は、クルセイスが持つという『裏の顔』とやらの正体は分かりかねるな。
見た感じは突然の事態に怯えているだけの、ただの20代前半の若い女性の反応にしか見えない。
「アイリーン、どうだ……? クルセイスからは、何か隠された能力のようなものを感じられるか?」
俺はコンビニの騎士であるアイリーンに、クルセイスに隠された能力がないかを尋ねてみる。
「店長、残念ながらこの女性には、一般人程度の能力しかありません。多少は、剣術や馬術の心得はありそうですが……。それも一般的な騎士としての能力を、少しかじった程度の実力です。もし今、私が少しでも力を込めれば、軽々とこの女性の首を刎ねてしまう事が出来るでしょう」
「そうか、じゃあ試しに一回首を斬り落としてみるか。それでその後に、魔族みたいにニョキニョキと首が再生してくるのかどうかを、試してみてもいいかもな」
「……ひ、ひいぃぃ!? どうかお許し下さい! コンビニの勇者様に私が働いてしまった数々のご無礼につきましては、誠心誠意お詫びをさせて頂きます! もし私の命を奪う事でグランデイル王国をお許し頂き、魔王軍との戦いに参加して頂けるのなら、私はそれでも構いません。この命を喜んでコンビニの勇者様に差し上げます。ですので、どうかご冷静になって下さい。お願い申し上げます!」
目をつぶりながら、全く抵抗をせずに。アイリーンの剣を受け入れようとするクルセイス。
おかしいな……。
さっきから何なんだ、この『普通』な反応は?
コイツが全ての元凶じゃなかったのか? クルセイスは裏で女神教と繋がっていて。クラスメイト達の命を無惨に奪った、残虐な一面を隠し持つ悪党という話ではなかったのかよ?
ククリアが言っていた、クルセイスの『裏の顔』とやらは今の所、まるで見えてこない。
それとも、このクルセイス自身も――ただの操り人形に過ぎなかったという事なのか? つまりは陰で女神教の指示を受けて行動していただけ、という事なのだろうか?
「……アイリーン。やっぱり何も変化はないのか? 目の前の女はただのビッチなのか?」
「店長。私はその『ビッチ』という単語の意味が正確には分かりかねますので返答に困りますが……。この女性が、ただの一般人と同等の能力しか持っていないという事は分かります。魔力も持たず、強い筋力もない普通の女性です。私や店長に何か危害を加えるという事は、目の前の女性にはおそらく出来ないと思います」
そうか。だとすると、ククリアの『共有』の能力で探れなかったというのは、何かの勘違いだったのだろうか?
どちらにしても、目の前にいるクルセイスはグランデイル王国の女王の立場にいる人物だ。裏の顔があろうが無かろうが、俺達より深くこの世界の裏の情報について知っているはずだからな。
まずはそれを、この機会に全て聞き出す事にしよう。
「……クルセイス。俺はあんたにずっと聞きたいと思っていた事があるんだ。剣を突き付けながらで悪いが、俺達に隠している事を全て話してもらうからな!」
「か、隠している事……? 私は異世界の勇者様方に隠している事など、何もありませんが?」
アイリーンが黄金の剣を更に数ミリ。クルセイスの喉元に近づていく。そしてその鋭い剣先を、クルセイスの首筋に直接突きつけた。
クルセイスの喉元からは少量の赤い血が滲み出し。それが首筋を伝うようにして、地面にこぼれ落ちていく。
「……ひ、ひいいぃぃッ! ハイ! 何でもお答えを致します! コンビニの勇者様の質問には、私は何でもお答えしますのでどうか、どうかお許しを……!」
体を痙攣させるようにして、全身を震えさせながらクルセイスがそう答えた。
無抵抗の一般人を脅しているように感じられて、少し気が引ける気もするが……。でも相手は、あの胡散臭いクルセイスだ。ここで警戒を緩める訳にはいかない。
「――じゃあ、まずはお前が俺達をこの世界に召喚した事についてだ。お前は異世界の勇者がやがて魔王となり、この世界で女神教徒達に追われる存在になる事を最初から知っていたのか?」
「異世界の勇者様が魔王になるですって? そんな!? 私はそのような情報は一切、聞いた事がありません! コンビニの勇者様、それは本当なのでしょうか?」
「質問に質問で返すのは辞めて貰おう。そうか、あくまでシラを切るつもりなのかは知らないが、それなら女神教の事については何か知っているのか?」
「女神教はこの世界の全ての国で信仰されていて、とても大きな影響力を持つ宗教組織です。グランデイル王国内でも女神教は多くの人々に信仰されていますし、女神教を統括されている枢機卿様も、数年に一度我が国に訪れて下さる事があり、私も子供の頃からお世話になっています」
「――枢機卿? それは一体、どういう存在なんだ?」
俺が鋭い目で睨みつけると。クルセイスは両脚を震わせながら、枢機卿についての情報を話し始めた。
「は、ハイ。枢機卿様は女神教の全てを統括されている、最も偉い役職に就かれている方です。グランデイル王国をはじめ、南のバーディア帝国や他の様々な国々で、政策顧問を務めていらっしゃいます。ですが、滅多にお会いする事は出来ない、ご多忙な方でもあるのです」
喉元に突きつけられているアイリーンの剣に怯えながら。必死に呼吸を整えるように、クルセイスは説明を続ける。
「今回の遠征も、グランデイル王国の都市が、魔王軍の緑魔龍公爵の配下の魔物達によって襲撃を受け。深刻な被害が出た事を枢機卿様に相談した所、『世界中の全ての国々に呼びかけて、大遠征を行うように』、とのご指示があったので、私はその通りに実行しているだけなのです。他の国々も今回の遠征に参加して頂けるように、枢機卿様が直接世界中の国々に声をかけて下さったのです」
なるほど、女神教の『枢機卿』か。
あまりその名前を俺は今まで聞いた事はなかったが、この世界の陰で暗躍をする、女神教のトップに立っている存在だと言うのなら。
おそらく異世界の勇者を魔王にする為に、裏で暗躍をしたり。魔王を倒した後に得られる『何か』を直接回収している、女神教のボス的な存在なのかもしれないな。
そしてグランデイル王国を中心にした今回の大遠征も、その枢機卿とやらが、直接指示をして行わせているという訳なのか。
「……よし、クルセイス。それなら次は俺達が魔王を倒したら、元の世界に戻してくれるという約束を覚えているだろうな? お前はついさっきも『召喚戻し』の儀式を使って、俺達を元の世界に戻す手伝いをするなんて言っていたけれど。その情報は本当なのか? 俺達は魔王を倒したら、必ず元の世界に戻れるんだろうな?」
俺の質問に対してクルセイスは、少しだけ困惑したような表情を浮かべている。
おいおい、まさか……! やっぱり嘘でした、なんて今更言い出すんじゃないだろうな。
「大変申し訳ありません……。『必ず』というのは、お約束は出来ません。過去に元の世界に戻られた勇者様は、1人だけしかいないのです。ですので、私は皆様を元の世界に戻す為のお手伝いを、全力でさせて頂く事は出来ますが。それが必ず成功をするとは、約束出来ないのです」
「何だって? 過去にこの世界から、元の世界に戻れた勇者が本当にいるっていうのかよ……!?」
クルセイスからの思わぬ新情報に、俺は驚く。
いや、正直……俺は元の世界に戻れる方法があるなんてのは、この女が俺達に魔王を倒させる為についた、適当なデタラメで嘘だと思っていたんだよ。
実際、過去にこの世界に来たという勇者達も――。
最終的にはどんなに足掻いても、元の世界に戻れなかったから絶望をして。最後は女神教に追われて、魔王になっていったと俺は聞いていた。
この世界の過去の事実からも、あの聡明なククリアでさえも。元の世界に戻る方法の情報は知らなかったという。
だから俺は、その事についてはもう正直、諦めかけていたんだ。
コンビニにいるみんなも、今は何とかこの世界で努力しようと頑張ってはいるみたいだけど。心の奥底では元の世界には帰れないのだろう……と、みんな覚悟を決めていたと思う。
それがまさか、過去に本当に元の世界に戻れた勇者がいたという、新情報を聞く事が出来るなんて……。
「クルセイス、その話は本当なんだろうな? 過去に異世界から、元の世界に戻る事が出来た勇者は本当にいたんだなろうな?」
俺は問いただすように、クルセイスに再度質問をする。
「……ハイ。もちろん本当に帰れたのかどうかを、こちらから確かめる術はありませんので。確証があるのかと言われたら難しいのですが……。大昔に、この世界に1番最初に召喚されたといわれる『最初の勇者』は、グランデイル王国の地下に眠る装置を使って、元の世界に帰っていったという古い伝承が、今でもグランデイル王国の地下にある古い書籍には残っているのです」
「グランデイル王国の地下に、そんな『装置』が残されているというのか……? その最初の勇者とやらは、一体どれくらい前に存在していた勇者なんだ? それ以降の異世界の勇者の中からは、本当に元の世界に戻れた勇者はいなかったのか?」
「『最初の勇者』様の伝説は、太古の昔の話だといわれています。もしかしたら、この世界に『魔法』を広めたという、女神アスティア様が降臨された時代よりも――更に、昔の出来事ともいわれているのです。その後の勇者様の中で、召喚戻しの装置を試そうとした者も何人かはいたようですが、成功したのかどうかは分かりません。なにせ元の世界に戻れたのかどうかは、こちらの世界からは知る術がありせんので……」
――なるほど、確かにそうだよな。
死んだ後に本当に『あの世』とか、『天国』があるのかどうかなんて。実際に死んでみた者でないと、分かるはずもないからな。
そしてそれを、生きている者に『あの世』から伝えるような術は無いという訳か。
だが今まで全く情報が皆無だった、元の世界に戻れるという方法の話の中では、1番しっかりした新情報である事は間違いない。
グランデイルの地下の底には、太古の昔……1番最初に召喚されたとされる異世界の勇者が、元の世界に戻る為に使った装置とやらが置いてあるらしい。
本当に元の世界に戻れたのかどうかは、確かめようがないけど。実際にその装置を見せて貰って、色々と調べて研究すれば何かが分かるかもしれないな。
そう思うと目の前のクルセイスは、最初から一貫して俺達に対して嘘をついていた訳ではない……という事になるのだろうか?
たしかクルセイスは、俺達を初めてこの世界に呼び出した時にこう言っていた――。
『……たくさんの強力な魔物達を生み出す魔王は、膨大な魔力を所有する、魔の根源とも言うべき存在なのです。魔王を倒すことで、その中に蓄えられた大量の魔力を回収する事が出来れば、『召喚戻し』という古いにしえの大魔法を行い、あなた様方を再び元の世界に戻す事も、おそらく可能だと思われます……』
魔王を倒したら得られるという『何か』について、クルセイスがどこまで知っているかは分からないが……。おそらくそれを使って地下の装置を使えば、俺達が元の世界に戻れる可能性がゼロではない、そういう意味で伝えてくれていたのだろう。
全く可能性が無いなんて言ったら、俺達はやる気を出さなかっただろうし。だからと言って『絶対に帰れます』と保証してくれた訳でもなかった。
つまり目の前のクルセイスは、本当に『嘘』はついてはいなかったという事だ。
でもこれは、どういう事になるんだ?
グランデイル王国女王のクルセイスが、影のラスボスのような存在だったんじゃなかったのか?
今の所、行動に変な所は確かにあるが。普通の女王様としての行動を逸脱して、裏で何かを企んでいたという証拠は何も出てこないぞ。
本当にこの人は、裏で女神教に操られていただけの操り人形でしかなかった……という事なのか?
いや、それだけでクルセイスを完全に信用する事はまだ出来ない。
俺は1番重要な事を、クルセイスに改めて質問する事にした。
「――クルセイス。それじゃあ、今度は大事な事を聞かせてもらうぞ。グランデイル王国に所属をしていた2軍の勇者のみんなが全員殺害されてしまった件は、あんたが陰で指示をしてやった事なのか?」
俺は再び鋭く睨みつけるようにして、クルセイスに真偽を問いただす。
「私が指示を……!? そんなっ! 絶対にそんな事はありません! 彼らは魔王軍の緑魔龍公爵によって殺害されたのだと私は報告を受けています!」
「それが本当だと断言出来るのか? みんなが殺されたのは、2日前に敵の襲撃を受けたからだと聞いたが。本当はそれよりも前に、グランデイル王国に所属する者の手によって、暗殺されていたんじゃないのか?」
「グランデイル王国が、異世界の勇者様を手にかけるだなんて……そんな事は絶対にありません! 異世界の勇者様は魔王を倒して下さる、この世界の全ての人々にとっての希望なのです! その勇者様を、私達の国が暗殺をするだなんて。そのような事をしたら、この世界にとっての大きな損失でしかないはずです!」
クッ……! 何度、問いただしても、クルセイスから返ってくる言葉は全て正論に聞こえてしまう。
確かに、貴重な異世界の勇者をわざわざグランデイル王国が手にかけるのだろうか……?
それでは、本当に緑魔龍公爵によってみんなは殺害をされてしまったとでもいうのか?
……あるいは裏で暗躍する女神教徒達によって殺害をされ、クルセイスもその嘘の報告を聞かされた、哀れな被害者でしかないと言う事なのか……?
「アイリーン……! クルセイスの今の言葉は本当に信用出来そうなのか?」
俺は判断に迷い、黄金剣をクルセイスの喉に突きつけているアイリーンにも尋ねてみる。
「店長、私には人が発する言葉の真偽を判定出来る能力は備わっていないので、分かりかねます……。ですが、目の前の女性が嘘をついて、何かを誤魔化しているようには見えません。剣を突きつけている今の状態で、グランデイル王国女王は、知っている事の全てを正確に話しているように私には見えます……」
そうか、アイリーンも俺と同意見という訳か。
みんなが殺害された件については、死亡した日のタイミングをズラして報告がされている。
だがその事は、女神教徒達によって裏で画策されていた事で……グランデイル王国は、その全ては把握出来ていなかったという事なのだろうか?
俺はいったん、アイリーンに剣を下ろすように声をかけた。
全身から滝のような冷や汗をかいていたクルセイスは、その場で崩れ落ちるようにワナワナと座り込む。
仮にクルセイスが何も知らない操り人形なのだとしても……。このグランデイル王国の騎士団の中には、そう言った虚偽の報告をクルセイスにした女神教の配下の者が、今も多数混ざっているはずだ。
だから、ここで決して油断をするという訳にはいかないだろう。
俺は、座り込むクルセイスを見下ろしながら。ふと、倉持に手渡された『紙切れ』の存在を思い出した。
コンビニの店長服の胸ポケットにしまっておいた、その紙切れを俺は広げて。中に書かれていた文字をそっと読んでみる。
そこには、倉持が書いたであろう『日本語』で、こう書かれていた――。
『――みんなを殺したのは、その女だ。
クルセイスが全員を直接手にかけた。
その女は『遺伝能力』の能力者で
異世界の勇者が束になっても勝てないくらいに強い。
だから、決して油断をするな。気をつけろ。
僕は常に監視をされている。
レベルが上がって蘇生回数が増えても
元の世界に帰れないように、すぐにその女に
殺されてしまう。――助けてくれ』
――なッ?
何なんだ、これは……!?
俺は慌てて目の前の紙をしまうと、足元に座っているクルセイスを見つめた。
本当にコイツがみんなを!?
遺伝能力者? ククリアと同じように、何か秘密の能力をクルセイスは隠し持っているというのか……?
俺は再びアイリーンに、目の前のクルセイスに対して黄金剣を構えるんだ! ――と、指示を出そうとした、その時だった。
そいつは、本当に最悪のタイミングで。突然、白い天幕の中に乱入してきた。
「ヒャッハーー!! コンビニの勇者とグランデイルの女王が勢揃いしてるじゃーん! これはまとめて大物2人を葬れる大チャ〜ンスだねッ! あたしがここで、一気にお前達を始末してやるよ! さあ、いでよッ! あたしの可愛いゾンビ達ーー!!」
俺とアイリーンとクルセイスの3人がいる白い天幕の中に。突然、地面から穴を開けて這い出るようにして、無数の緑色のゾンビ達が出現する。
そのゾンビ達の中に紛れるようにして、緑色のマントと深緑色の衣服を見にまとった、小さな黒髪の少女が立っていた。
そう、魔王軍の4魔龍公爵の1人である――緑魔龍公爵が、いきなり襲撃をしてきやがったんだ。




