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第八十三話 ミランダを目指す勇者達


 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



 西方3ヶ国連合の国の1つ。


 カルツェン王国の王宮内に、異世界から召喚された3名の勇者達が集まっていた。



 彼らはグランデイル王国が主催した、アッサム要塞攻略戦の後――。カルツェン王国からの勧誘を受けて、転籍をした勇者達である。


 3人の勇者達は元々、グランデイル王国から与えられた『貴族』の称号を持っていた。

 だが、カルツェン王国からは、より高待遇なカルツェン騎士団の『将軍』としての地位が与えられ。現在はその重要な役職に付いて王国に貢献をしている。



「いやぁ〜、水無月(みなづき)殿〜! 今回の遠征も大成功でしたな! まさに異世界の勇者様方のおかげで、我がカルツェン王国軍は大勝利でしたぞ〜!」



 水無月をはじめとする、3人の異世界の勇者が椅子に腰掛ける王宮内の客間。そこにカルツェン王国の国王、カール・グスタフ・カルツェンが慌ただしく入室してきた。


 グスタフ王の見た目の年齢は、おおよそ50歳ほどに見える。

 恰幅(かっぷく)の良い豪華な衣装を身にまとった国王で、この世界では珍しい男性の国王でもあった。


 女神信仰が強いこの世界においては、女王が国を治めることが一般的とされている。

 だが、グスタフ王はその愛想の良さと、計算高く、したたかな性格を武器に。王族関係者達に上手く取り入り、この世界の権力者達の間を渡り歩いてきた、実力のある商人出身の王でもあった。



「――グスタフ王。今回は、魔物の数もそんなに多くはいませんでした。それに味方の援護もありましたので、決して私達の力だけで勝てたのではありません。これからも精進(しょうじん)を重ねて、我々を迎え入れて頂いたこの国の為に、全力で働いて参ります」


「またまた、ご謙遜(けんそん)を〜! 水無月殿は勇敢にも魔物の先頭集団に単騎で突撃し。そのまま敵軍を全滅までさせておいて、味方の援護なんてまるで必要無かったではないですか! ハッハッハ! いやいや本当に獅子奮迅(ししふんじん)の大活躍ぶりに我が軍の騎士達も皆、絶賛しておりましたぞ!」



 カルツェン王国は、つい先日。


 王国の国境付近に陣取っていた魔王軍、黒魔龍公爵(ブラックサーペント)が率いる黒熊(ブラックベアー)の軍団と、大規模な戦闘を開始していた。


 その中でカルツェン軍の先陣をきった『槍使い(ランサー)』の水無月洋平(みなづきようへい)は、敵の魔物の集団を単騎で壊滅させる大活躍をしたのである。


 もちろんそれは、水無月だけの力によるものではない。一緒に遠征軍について行った、他の異世界の勇者達。


無線通信(テレフォン)』の勇者――川崎亮(かわさきりょう)

地図探索(マップ)』の勇者――佐伯小松(さえきこまつ)らの手厚いサポートがあったからである。


 グランデイル王国を離れた彼ら3人は、新しい国で将軍の地位を与えられ。魔王軍との戦いにおいても、最前線で戦い続ける事で独自の成長を遂げていた。



「――時に、水無月(みなづき)殿、川崎(かわさき)殿、佐伯(さえき)殿。御三方に、実はご報告があってここに来たのですが……」


 グスタフ王が急に畏まって、椅子に腰掛ける3人の前で頭を掻き始める。どうやら何か3人に、お願いがあってここにやって来たらしい。



「どうしたのですか、グスタフ王? 改めて僕達に報告をする内容とは、一体何なのでしょうか?」


 槍の勇者の水無月が王に、その内容を聞き返す。


「ええ。実はつい先日。グランデイル王国が、魔王軍によって滅ぼされた旧ミランダ王国の領土に大規模な遠征作戦を行うと発表したのです」


「グランデイル王国が大規模な遠征を……?」



 これには水無月をはじめとする3人の勇者が、一斉に驚きの声をあげる。

 お互いの顔を見合わせて、パチパチと瞬きを繰り返し。最後には怪訝(けげん)な表情を浮かべた。


 グランデイル王国は東の大国として有名だ。だが、異世界の勇者の召喚に成功してからも、約半年以上も勇者育成プログラムに時間をかけていたりと、魔王軍との戦いにはやや消極的な姿勢を見せていた。


 ようやく勇者達のお披露目となった、前回のアッサム要塞の攻略戦も。水無月達にとっては初めての魔王軍との戦いだったのだ。


 そんなグランデイル王国が突然、大規模遠征を行うと発表したなんて、一体どうしたのだろうか……?



「今回の遠征では、アッサム要塞に駐留するグランデイル軍3万人に加えて。グランデイル王国に現在所属する、全ての異世界の勇者が動員されるそうです。おそらく……グランデイル王国の女王クルセイス殿が、祝勝会の場で帰還を歓迎すると宣言していた『コンビニの勇者』殿も、今回の遠征に参加するのではと各国の王族の間では噂になっておりますぞ」


「――あの彼方(かなた)が、グランデイル王国の遠征に参加するんですか?」



 いやいや、あの彼方(かなた)は……と、3人が客間の中でざわつき始める。


 確かにアッサム要塞での戦闘で大活躍をしたのは、コンビニの勇者である、秋ノ瀬彼方(あきのせかなた)だ。その実力は3人とも、目の前で見ていたのでよく理解している。


 あの時、秋ノ瀬彼方が戦場に助けに来なかったなら。選抜メンバー達は全滅をしていただろう。それくらいに魔王軍の赤魔龍公爵(レッド・ワイバーン)の力は圧倒的だった。


 そしてそれを倒したコンビニの勇者の力は、更に凄まじかったのだ。


「でも……彼方は、1度グランデイル王国から追放された身だし。そう簡単には、グランデイル王国に戻らないような気がするけどな」


「そうだよなぁ。あれは委員長が彼方を無理矢理、追放したようなものだったしな。俺なら絶対に根に持つと思うけど、グランデイル王国と仲直りが出来たのかな?」


「あっ、でもそうか! その委員長は確か、クルセイスさんに逮捕されたんだよな! だとしたら、彼方も今ならグランデイル王国に戻りやすいのかもしれないな」



 3人はグスタフ王からもたらされた、現在の状況をもとに。コンビニの勇者の遠征参加の可能性を議論していく。そしてそれは、決してあり得ない事ではないと結論づけたようだった。


「……もし、あの赤魔龍公爵(レッドワイバーン)を倒した英雄、『コンビニの勇者』殿に、今回の遠征に参加をして頂けるのなら。これほど心強い事はありませんぞ! 我が国もぜひ遠征に参加して、カルツェン王国が誇る勇猛な騎士団の力を、見せつけてやりたいと思っております」


 興奮気味に3人に熱弁するグスタフ王。


 カルツェン王国に所属する3人の勇者の代表である水無月が、少しの間だけ思案を重ねてから……グスタフ王に返事をする。


「分かりました。私達も、彼方(かなた)が参加をしてくれるのなら実に心強いです。なので、今回の遠征に参加をさせて頂き。お世話になっているカルツェン王国の名に恥じない戦いぶりを戦場で発揮して参りたいと思います!」


「おおっ!! 本当ですか!? それは実に頼もしい! 水無月殿、川崎殿、佐伯殿! ぜひぜひ、カルツェン王国の騎士団を率いる将軍として、戦場での大活躍を期待しておりますぞ!」


 グスタフ王は『ガッハッハ!!』と、大口を開けて豪快に笑う。


 元々、最前線で魔王軍と戦っていた西方3ヶ国連合の1つ。カルツェン王国としては、早く召喚された異世界の勇者に戦闘に参加してもらい、魔王軍との戦いに終止符を打ちたいと思っていた。


 だから、後から参戦をしてきたグランデイル王国などに活躍の場を奪われる訳にはいかない。


 100年近くも、先頭に立って魔王軍と戦ってきた誇りがカルツェン王国にはあるのだ。

 もし遠征軍が魔王軍を一気に蹴散らして、魔王の居城にまで大侵攻を開始するというのなら――。


 今回は決して、それに遅れを取るわけにはいかないのである。



「それにしても、あの彼方(かなた)がグランデイルにか……」



 遠征への参加を決めた槍の勇者の水無月は、どうしても心の奥で()に落ちない違和感を感じてしまう。


 確かに、委員長である倉持は逮捕された。


 それはアッサム要塞攻略戦後の祝勝会の会場で、クルセイスさんによって発表されたのを直接聞いているので理解はしている。


 だけど、あれだけの強さを身に付けた彼方(かなた)が……。本当にクルセイスさんの誘いに乗ったのだろうか?


 彼方は元々3軍の勇者として、王都に放り出されたメンバーの1人だ。その彼方が、グランデイル王国に帰還するとしたら。何かよっぽど好条件な勧誘でも受けたりしたのだろうか? 


 水無月のよく知るコンビニの勇者の彼方(かなた)は、そういった権力とか名誉など求めない、猫のようにのんびりとした性格であった事を知っている。


 それを思うと。水無月は何か言いようのない不思議な不安感に襲われてしまう。もしかしたら、今回の遠征では何か良からぬ事が起きるのでは……と。



「……グスタフ王! 申し訳ありませんが、私からも少し進言がございます」


「おお、水無月殿! どうかされましたか? 我が国の騎士団を率いる将軍の水無月殿のご意見であれば、ぜひぜひ私も参考にさせて頂きますぞ!」


「ハイ。実は今回の遠征に、カルツェン王国から参加をする異世界の勇者のメンバーは――私1人だけにして頂きたいのです。川崎、佐伯の2名の将軍には、カルツェン王国に残って頂く形が良いかと思います」



 ええっ!? と、水無月の隣に座る2名の勇者が、互いに顔を見合わせて驚愕の表情を浮かべる。


「それはまた、どうしてなのでしょう、水無月殿? グランデイル王国は、自国に所属する全ての勇者を今回の遠征に参加させると宣伝しておりますぞ。我が国もグランデイル王国に遅れを取らない為に、持てる全ての戦力を投入した方が良いかと思うのですが……?」


「ええ。グランデイル王国に所属する異世界の勇者は、コンビニの勇者や、王都にいる2軍の勇者も含めるとしたら、合計20名を超える大人数となるでしょう。その中にカルツェン王国に所属する3名の勇者が参加しても、大きな戦果を挙げられるとは思えません。むしろ戦場でのサポートに特化した川崎くんや、佐伯くんは、グランデイル王国に利用されてしまう可能性が高いと思います」


「なるほど……。我が国の力を全て出しきるより、ここは少しだけ温存しておいた方が良いと言うわけですな。うーむ。確かにそれも一理あるかもしれませぬな」


「ハイ。今回の旧ミランダ王国への遠征はあくまで、魔王退治の序盤戦でしかありません。その先に、魔王領への侵攻がある事を考えると、ここで全ての勇者を出撃させる必要性はないかと思います。むしろ、万が一の備えとして。カルツェン王国の王都を守る為に、残しておいた方が良いでしょう」



 グスタフ王は水無月の提案に、納得がいったという表情をする。そして自身の胸をドンと叩いて大声を出した。


「了解致しましたぞ! では、我がカルツェン王国の騎士団は水無月殿に率いて貰い。ミランダ領に向かってもらいましょう! 前線にいる軍勢を統合すれば、5万人ほどの軍勢が集められるはずです。残りの兵力は、川崎殿、佐伯殿と共に王都の守りとして残す事に致しましょう!」


「私のご提案を聞き入れて頂き、本当にありがとうございます。では、さっそく私はミランダ領に向けて出発を致します!」


 グスタフ王は『お任せしましたぞ!』と、笑顔で水無月に声を掛けてから客間を退室していく。



 王が去った後で、水無月を除く残りの2人の勇者が心配そうに声をかけた。


「水無月さん、どうして1人で戦場に行くなんてグスタフ王に話したんですか?」


「そうですよ! 味方にあの彼方(かなた)がいるのなら、負けないでしょうし。みんなとも戦場で再会できたかもしれないのに……」



 水無月は少しだけ考える仕草をとり、2人に小声でこう告げた。


「うん。俺も考えすぎかな……って思うんだけど。どうも今回の遠征は何か胡散(うさん)臭いものを感じるんだ。逮捕された倉持さんが、どうなったのかもまだ分からないし。だから今回は俺が先に探りを入れてこようと思うんだ。何も無いようなら、その時はやっぱり2人にも援軍にきて欲しいって、グスタフさんに声をかける事にするよ」



 実質……カルツェン王国に移籍をした異世界の勇者組のリーダーでもある水無月の意見に、2人が反対出来るわけもなく。


 今回の遠征に不参加となった2人の勇者は、カルツェン王国の王都にそのまま残留する事となった。



 その決断が後にどのような結果をもたらしたかは、この時の3人には予想など出来ようもなかった……。




 ☆ ☆ ☆ ☆ ☆



「……まったく、さっさとグランデイルの王宮に帰して貰えると思ってたのに。どうして俺達まで、アッサム要塞にずっと残っていないといけないんだよ……」



 グランデイル王国に所属する『火炎術師(フレイムマジシャン)』の勇者である、杉田勇樹(すぎたゆうき)が溜息を漏らす。


 約1ヶ月半ほど前に行われた、グランデイル王国によるアッサム要塞攻略戦。

 その戦いでは、敵の幹部である4魔龍公爵の1人を打ち倒し。異世界の勇者達の大勝利に終わって幕を閉じた。


 その後、アッサム要塞には進軍してきたグランデイル王国騎士団が駐留をし続け。西方3ヶ国連合の援護をしながら、これまで過ごしてきたのである。



「……まあ、杉田くんは妊娠中の可愛い奥さんが王宮の屋敷に残っているものね。心配だから、早く帰りたいよね」


 杉田と共に、アッサム要塞に残っている『回復術師(ヒールマスター)』の勇者である香苗美花(かなえみか)がクスクスと笑う。


 香苗も王都の病院に、自身が受け持つ多くの患者が残っていた為、グランデイル王国に残留を決めたのだが……。結局2人には、王宮に戻って良いとの連絡が本国から一切来なかった。


 その為、要塞の攻略後もそのまま駐留軍と共に残り続けてしまっていたのである。



「はあ〜。今頃、彼方(かなた)達はどうしてるのかなぁ?」


「うーん。彼方くん、もの凄く強くなってたから。もしかしたらもう、魔王を倒してくれているかもしれないね! でも、そうしたら杉田くんはどうするの? やっぱり元の世界には戻らずに、この世界に残り続けるの?」



 香苗の質問に、杉田は即答する。


「俺はたぶん、残るだろうな。なんたって嫁さんや子供もいるのに、元の世界に戻る……って事はもう出来ないさ。彼方(かなた)に俺の両親への手紙を渡して、『俺はこっちで元気にやってるから心配しないでくれ』って、伝えて貰うしかないよな。親不孝な息子で申し訳ないとは思うけどさ」


「ふふ。異世界で奥さんと子供が出来ました! って、ご両親は信じてくれるのかな?」


「あはは。まぁ、それは無理だろうなぁ〜!」



 杉田と香苗がともにクスクスと笑い合っていると……。

 2人がいるアッサム要塞の小部屋の中に、思いがけない来客が突然訪れた。



「――やあやあ、これは杉田(すぎた)さんに、香苗(かなえ)さん。どうも、お久しぶりですね!」


「く、倉持!? どうして、お前がここに!?」


「おや? 僕がここにいるのがそんなに不思議ですか? ――ああ、そうか。僕は国家転覆罪でグランデイル王国に逮捕されちゃいましたものね。お2人が驚くのも無理はないですよね」


 杉田と香苗の前に現れたのは――。


 アッサム要塞攻略戦の後に、グランデイル王国女王クルセイスによって逮捕されたはずの、倉持悠都(くらもちゆうと)であった。


「倉持くん……。ここにいて平気なの? 何かクルセイスさんから酷い目に遭わされたりしていないの?」


 性格の優しい香苗美花は、アッサム要塞攻略戦で自分達を見捨てて逃げようとした、委員長の倉持を心配する声をかける。


 それを聞いた、倉持はフッ……と、にこやかに笑う。



「ええ。ご心配ありがとうございます。実は僕も長い間、罰として、グランデイル王国の地下牢に閉じ込められていたのですけれど。今回は魔王領への侵攻作戦が新たに開始されましたので、それに参加して異世界の勇者として活躍をする事を条件に、釈放されたという訳なんですよ」


「魔王領への侵攻作戦? 一体、それは何なんだ?」



 薄気味悪い笑顔を浮かべる倉持に、杉田が質問をする。


「はい。グランデイル王国が中心となり、このアッサム要塞に駐留する騎士団全てを率いて、旧ミランダ王国の領土へと遠征をするのです。今回の作戦には、僕を始めとする世界各国にいる異世界の勇者全てに参加をして頂き。一気に魔王そのものも滅ぼしてしまおう、という大規模な遠征になるそうです」


「魔王を滅ぼす? じゃあ、この遠征にはコンビニの勇者である彼方(かなた)くんも参加するの?」


「おそらく、彼も来るでしょう。僕もクルセイスさんから、遠征に参加をするようにと言われただけなので詳細は分かりませんが……。世界中にいる全ての異世界の勇者に参加をお願いしていると聞きました。なので僕達クラスメイトの全員が、今回の遠征では顔を合わす事になると思いますよ」


「そうか。じゃあ、いよいよ魔王と決着をつけよう! って訳なんだな!」



 杉田は、倉持の話を聞き興奮気味に意気込む。


 本当は妊娠中の妻に会いたい。グランデイル王国の王宮に早く戻りたい、という思いもあった。


 だが、例え魔王を倒したとしても。この世界に残り続けると決断をしている杉田は、帰りを待つ妻と子供のためにも、異世界の勇者としてこの世界を平和にしたい――という想いも人一倍強く持っている。


 もちろん、帰りを待つ家族の為に自分が死ぬ訳にはいかないが。家族を安心して暮らせる世界にする為にも、魔王は必ず倒したいと願っていた。


「――分かった。じゃあ俺達もその遠征に参加をするって事で良いんだよな? それと……確か近くの街で待機しているはずの2軍のみんなとも合流出来そうなのか?」


「ハイ。カブリンの街に待機している2軍のメンバーも、今回の遠征には参加して頂きます。彼らは僕らより先に出発して。すでにグランデイル王国から出撃した増援の騎士団を率いて、ミランダ領に向かっているはずです。僕達も彼らと合流する為に、一刻も早くこの要塞から出撃しましょう!」


「分かったわ! みんなも待っているのなら私達も、出撃します。みんなで協力をして魔王軍と戦いましょう」



 杉田も、香苗も何の疑いもなく倉持の話を信じてしまった。


 それは、たとえ倉持がこの世界に来てその態度が変わってしまったとしても。根本的には同じクラスメイトだから――という、仲間意識がまだあったからだ。



 いつかは魔王を倒して、元の世界にみんなで戻る。

 その為にみんなで協力して悪の親玉である魔王と戦う。



 その時が、とうとうやってきたのだ。

 

 ……と、今回の遠征で異世界に召喚された勇者全員が協力し合う未来図を、2人は思い描いていた。



 だから間違っても2人の頭の中には、既に2軍のクラスメイト達が全員殺されている。なんていう、恐ろしい発想は浮かびようがない。


「――では、金森くん達も来ていますので、みんなと合流しましょう。目指すは25年前に魔王軍によって滅ぼされた旧ミランダ王国領です。僕達が協力をして、魔王軍を打ち倒し、そしてみんなで元の世界へ戻りましょう!」



 倉持に連れられた2人の勇者は、こうして決戦の地。


 ミランダへと向けて進み始めた――。


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