第五十八話 地下迷宮? 無限の進化を遂げるコンビニ
200匹を超えるガーゴイルの襲撃を、見事に撃退してみせた俺達――コンビニの勇者とその愉快な仲間達。
戦いの後に、全員が一斉にレベルアップをしたのは、まあ、一応理解は出来るんだが……。
なぜか赤魔龍公爵を倒したばかりの俺までが、みんなと一緒にレベルアップをしてしまった事には流石に驚いた。
「地下階層の追加って、一体どういう事なんだろう? コンビニの地下に、デパ地下みたいな広い場所が出来たって事なのかな?」
レベルアップによって加わった、新たなステータス欄を俺が訝しげに見つめていると。
「きゃあ〜! 彼方くん、大変よ〜! こっちに来て〜!!」
玉木が突然、悲鳴を上げて。遠くで叫んでいるのが聞こえてきた。
「――何だ、何だっ!? また敵襲か?」
玉木の声が聞こえてくる場所は、コンビニの倉庫からだ。そこで、一体何が起きたと言うのだろう。
俺は慌ててティーナと一緒に玉木のいる、コンビニの倉庫部屋に向かった。
もちろん、初めてのレベルアップにざわついていたクラスのみんなも……俺達の様子が気になって、一緒に後をついて来る。
「……ね、ねえ、これを見てよ〜! 彼方く〜〜ん!」
倉庫では、玉木が腰を抜かしながらペタンと床に座り込み。
部屋の壁を震えながら、右の人差し指で差していた。
俺とティーナは玉木の指差す方向を見てみると、そこにあったのは……。
「おいおい。一体何なんだよコレは……?」
いつの間にかコンビニの倉庫の壁に、巨大な『エレベーター』の扉が出来上がっていた。
今までは何も無かったはずの壁に、見慣れないエレベーターが突如として出現していたのである。
「……何だか、業務用のエレベーターみたいな雰囲気だな。こういうのは大体、デパートとか大きな建物の搬入口とかにあったりするような気がするけど」
俺は新しく出来たエレベーターの扉の周囲を観察しながら、感想を呟く。
「ねえねえ、彼方くん〜! これは一体どういう事なの〜? たまたま倉庫に昆布おにぎりを取りに寄ったら、突然、壁にこんなのが出現していて、ビックリしたんだけど!」
まーたコイツは、昆布おにぎり勝手に食べようとしてたのか……。
玉木はいっつも、コンビニの倉庫に勝手に入ってゴソゴソと食べ物を漁ったりするからな。
「ああ……実はさっきの戦闘の後で、また俺のコンビニレベルが上がったんだよ。そのおかげで、このコンビニに地下階層へ繋がるエレベーターが増えたって訳なんだ」
「エレベータ〜!? 地下階層〜!? 何なのよそれ! しかも彼方くんのコンビニ、またレベルアップをしたの? 私なんてまだ『レベル2』のままなのに〜!」
「それはそれで、お前もすげーよ! アッサム要塞攻略や、さっきのガーゴイルとの戦闘も経験しているのに、何でお前のレベルだけ、ずっと上がってないんだよ」
「ぶ〜〜っ!! そんなの私にも分からないよ〜!」
玉木が頬を膨らませて、その場でいじけてしまう。
俺は慌てて玉木の頭を撫でて、ヨシヨシしてあげた。
ついでに昆布おにぎりも見せたら、すぐに『えへへ〜』っと、元気を取り戻してくれたので、俺も一安心する。
……まあ、本人も気にしているだろうからな。
そこは余り触れないでおいてあげた方が良さそうだ。でも本当に『暗殺者』の能力は、レベルアップがちょっと遅い気がするのは何でだろう……。
「とりあえず、このエレベーターを試してみる事にしよう! 地下に何があるのかも気になるしな」
俺はティーナを連れて2人でエレベーターの中に入る。
玉木には何かあった時のために、クラスみんなと一緒にここに残ってもらう事にした。
「え〜っ、彼方く〜ん、私も一緒にいきたいよ〜!」
「玉木は今回は、お留守番だぞ。もしまた魔物が襲ってきた時に、パソコンの操作が出来る人間がみんなの側にいた方が良いだろう? ガトリング砲の操作をみんなに教えてあげれる人が必要だし。屋上のアイリーンと一緒にコンビニの防衛を玉木に任せたいんだ。頼むよ!」
俺に頭を下げられて頼まれた玉木は、満更でもないという顔色を浮かべると――。
「う〜ん。もう、しょうがないな〜。出来るだけ早めに戻って来てよね、彼方くん!」
左右に手を振って、いつものニッコリ笑顔で俺を送り出してくれた。
「おう、分かった! 出来るだけすぐにここに戻ってくるよ。――よし、ティーナ。行くぞ!」
「はい、彼方様!」
俺はティーナと一緒に、倉庫に出現した大きなエレベーターの中に乗り込む。
エレベーターの中は思ったよりもかなり広かった。
人数で言ったら、余裕で10人以上は乗れそうだな。
エレベーターの中には大きな鏡が付いてるとか、下に赤い絨毯が敷いてあるとか、そんなオシャレな感じは全く無い。ただ真っ白な壁とボタンしか付いていない、地味で簡素なエレベーターだった。
地下階層へと繋がるエレベーターのボタンは5つだけ。
『B1』から『B5』までの、5つのボタンが扉の横のパネルに付いていた。
俺はとりあえず、B1のボタンを押してみる事にする。
”ウイーーーーーーーン!”
大きな音と振動がして、ゆっくりと扉が閉まると。エレベーターが地下に向けて動き出す。
”ゴゴゴゴゴゴゴ――!!”
思ったよりも揺れないな。結構しっかりとした作りのエレベーターらしい。それにしても、地下1階か……。
イメージ的にはコンビニには元々『地下シェルター』があったから、そこに繋がりそうな感じはするけれど。
「まあ、あそこも地下というより『別空間』のような感じだったし。このエレベーターもそことは繋がってない可能性が高いよな」
「彼方様、この『エレベーター』という部屋はどういう仕組みで動いているのでしょう?」
「――ん? ああ、そうか。ティーナはエレベーターは初めてだったよな。うーん、何て言えばいいかな。大きなワイヤーのようなモノでエレベーターを天井から吊るして、それを機械の力を使って引っ張る事で部屋全体を上下に動かしているんだよ」
「凄いです、そうなのですね! こんなにも大きな部屋が自動で動くなんて、私、本当にビックリしちゃいました!」
ティーナは俺達と違って異世界人だものな。
きっとエレベーターという言葉や、その存在自体が、人生で初めての体験なのだろう。
俺はエレベーター自体は、特に珍しいものではないんだけど……。
地上はともかく『地下』に降りていくというのは、何となくちょっと怖さを感じてしまう。元々、お化けとか幽霊が苦手だし。地下は暗くて怖いというイメージがどうしてもあるからな。
”――ガターーン!!”
エレベーターが地下1階にたどり着いた。
大きな扉が開くとそこには――。
「おいおい、何なんだよここは……!?」
エレベーターの扉の向こうは、完全な――『闇』だった。
完全に真っ暗で何も見えない。吸い込まれそうなくらいに深い闇が永遠に広がっていた。
暗闇の怖い俺はとても、エレベーターから外に降りる勇気なんて全く無い。だってこれは怖すぎだろう。完全に真っ暗だし、何も見えないじゃないか……。
せめて、懐中電灯くらいここに持ってくれば良かった。
……と、俺がエレベーターの中でずっとビクビクと尻込みをしていると。
”――パチン”
突然、地下1階の暗闇の中に。眩いばかりの明かりが灯される。
「えっ、えっ、これは一体……?」
俺が訳が分からずに、エレベーターの中で腰を抜かしていると……。
「彼方様。扉を出てすぐそばの壁に『照明スイッチ』が有りましたので、それを押してみました」
ティーナが笑顔で、俺にそう教えてくれた。
何だ、照明のスイッチがあったのか……。
マジでびびったじゃないか。だって本当に何にも見えないし。ただ真っ暗な空間が、無限に広がっているようにしか見えなかったからな。
照明の灯された地下1階は、広大な倉庫のような広さがあった。
うん。普通に学校の体育館くらいの広さと高さがありそうだな。これが地下1階だなんて、絶対に物理法則を無視している気がする。
きっと地下シェルターの時と同じで、この場所はちょっとした異空間みたいになっているんだろうな。
「それにしてもここは本当に広いな。そして、何にも置かれていないんだな……」
床は広大なコンクリート製の床になっているんだけど、ただ広いだけだ。天井もめっちゃ高いけど、この広大なスペースには何も物が置かれていない。
「うーん、もしここを活用するとしたら、倉庫として使うくらいかな? 色々と大きな物も置けそうだし。きっとたくさんの人を匿うような機会があったなら、結構な人数も収容出来そうだけど……」
とりあえず地下1階は馬鹿でかい広大なスペースがあるという事が分かったので、もういいだろう。
俺とティーナは今度は地下2階に向かう事にした。
あっ……。もちろん地下1階の照明は付けっぱなしにしておいたぞ。降りた時に、目の前が真っ暗な空間になっているのは、怖くて嫌だからな。特に俺がだけど。異世界コンビニだから、電気代は気にしなくていいし。
”ウイーーーン!”
再び地下に向けて動き出すエレベーター。
俺とティーナは、今度は地下2階に降り立った。
「おおおっ!? ここは何だかめっちゃ豪華だな!」
地下2階の様子は、そう――。
まるで俺達がよく知る、『ビジネスホテル』のような空間になっていた。
降りてすぐ目の前には、横に長く広がる廊下があった。床には赤い絨毯が綺麗に敷かれている。
廊下にはそれぞれ『201』『202』と言った部屋番号が割り当てられた個室が並んでいて――数字は『230』まで連続で続いている。
つまり、合計で30部屋がこの階層にはある事になるな。
地下2階全体のイメージとしては、一辺に合計6部屋が設けられいる廊下が全部で5つ。それが直線で結びついて、大きな五角形のような形を作り出している。
俺とティーナはさっそくその中の1つ、『201』号室に入ってみる事にした。
入り口の鍵はまさにビジネスホテル風だな。部屋の中に入ると、机の上にカード型のキーが置かれていた。
この部屋から出る時は、このカードをかざすだけで扉の開閉が出来る仕組みになっているようだ。
そして、肝心な部屋の中はというと――。
「うおおおおっ!? コレ、まさにビジネスホテルじゃん! それもかなり豪華な部屋だっ! ユニットバスじゃなくて、バスとトイレが別々に付いてるし。快適な『ベッド』まで置いてある! 大きさはダブルベッドサイズだし、超快適な部屋じゃないかよ!」
俺はフカフカなダブルベッドの中に、思いっきりダイブする。
ああっ……。もふもふ、もふもふ。
何て気持ち良いんだよ……。この包み込まれるような幸せな感触。柔らかい毛布の肌触り。こりゃ完全に人間をダメにする悪魔のベッドだ。
コンビニの事務所に置かれている、簡易ベッドとは快適さが比べ物にならない。それくらいにめっちゃ気持ちが良い、至福の心地良さがここにはある。
部屋の中は、クーラーも完備されていて快適だし。
部屋の隅には小さな簡易冷蔵庫も付いていた。
そして、何と……小型の『テレビ』までついているぞ!
「おいおいおい! マジでテレビが置いてあるじゃないか!? これ、本当に俺らのよく知っているあの『テレビ』で間違いないんだよな?」
ああ……母さん。
俺のコンビニはとうとうここまで来たよ。
俺、もうやり遂げたよね……? だからここで、安らかに残りの人生を過ごしても良いんだよね? だって、異世界であのテレビが見れるんだぜ?
俺はさっそく、リモコンでテレビの電源を付けてみた。
約40インチの液晶画面に映し出される、懐かしいデジタル映像。
「ああ……コレなんだよ。俺が異世界で究極的に求めていたのはさぁ……」
俺はベッドの上でだらしなく寝そべりながら。
じっくりとテレビ鑑賞を満喫する。
そして、約10分くらいテレビを見つめ続けて。
放映されている、ニュースやら娯楽番組やら色んなチャンネルを回してみて――。
一つの、ある結論に至った。
「うおおぉぉ、マジかよぉ……(泣)」
期待が大きかった分、比例して落胆の溜息も大きくなる。
――結論。
このテレビはダメだ、全然使い物にならない!
以前の俺のコンビニで扱えるようになった『異世界の書籍』と同じパターンだ。
テレビに映っているタレントさんは、一見するとみんな日本人なんだけど。俺のよく知っている、元の世界のタレントさんではない。
ニュースを見ても『ナタリア』とか『コメリカ』とか、よく分からない国の名前がいっぱい出てくるし。俺達の元いた世界とは、似ているがちょっと雰囲気の違う『別の異世界』の放送がそこには流れていた。
まあ、一応話している言語は日本語っぽいので……。見ていてつまらなくはないんだけどな。
だけど全然知らないタレントさんばかり出演しているし。
大食いの番組だとか、クイズ番組とか。普通に観ていて暇をつぶせそうな内容にはなっているけど、イマイチ面白くない。しかも途中でランダムに放送が切り替わるから、せっかく見ていてもぶつ切りにされちゃうし。
「ふぅ〜〜」
……まあ、いっか。
元の世界の情報は手に入らないけど、見ていてまあまあ楽しいし。これはこれで、暇つぶしにはなるんじゃないかと思う。
テレビを見ながら、だらりとくつろぐ俺――。
そう。
その油断と甘えが、全ての原因だった。
”ガチャリ――”
突然、部屋の照明が……何者かによって全て落とされる。
いきなり暗くなってしまった室内。
テレビの明かりだけが、かろうじて部屋の中を青白い光で照らし出している。
「――な、何だ、一体どうしたんだ? 敵の襲撃か? 俺を殺そうとするグランデイルの刺客か!?」
暗闇が何よりも一番怖い俺は、ベッドの上で身を潜めて怯えていると……。
「彼方様……。私はこの時をずっと待っていました……」
部屋の奥から、白いバスローブ一枚だけを体に巻きつけたティーナが現れ。
そろり、そろりと、こちらにゆっくりと近づいて来た。
ちょ、ちょっとティーナさん……?
その破廉恥な格好は、一体どうしたんですか!?
ニヤリと笑みを浮かべて。ゆっくりとこちらに近寄る白い女性の姿。
ティ、ティーナ……それはマジで怖いって!
俺、幽霊とか超苦手なのに!!
そういえば、俺がテレビをずっと見ている間……。
バスルームからずっとシャワーが流れている音が聞こえていたような気がする。それにティーナの姿が、部屋の中で全然見当たらなかったような気もするな。
「さあ、今はこの部屋の中にいるのは私と彼方様の2人だけです。邪魔なメス猫達は、誰もここには来ませんよ……」
「邪魔なメス猫達って……。ちょっとティーナさん? まずはいったん落ちつこうぜ。ほら、上でみんなが待っているからさ。ここで『ソレ』は流石にまずいと思うから!」
ニヤリと舌舐めずりをしながら。
ティーナがベッドの上にいる俺の、目前にまで迫ってくる。
うああああっーー!!
も、もう無理だ……!! きっと俺は欲望を剥き出しにしたティーナに『食われて』しまう!
だって、こんな快適な部屋の中だし。
しかも柔らかいベッドの上だし。無抵抗の俺には、ティーナの魔性の魅力から逃れる術は何も無い。
く、くそッ!
とうとう俺の貞操は、ティーナに奪われてしまうのか?
迫り来るティーナが、俺を優しくベッドの上に押し倒す。
「ハァ……ハァ……」
荒い呼吸の音が、テレビの音に混じって俺の耳元にかすかに聞こえてきた。
「大丈夫ですよ、彼方様。天井の染みを数えている間に、全て終わりますから……」
ええっと……。
うん、もう良いよね?
俺、そっちの意味でもゴールしちゃっても良いよね?
きっともう、誰も俺を怒ったりしないよね?
天使のように美しいティーナに、襲われる寸前の俺は――。
なぜか嬉しそうな表情を浮かべて、観念をする。
そして、心の覚悟を決めようと……ゆっくりと目をつぶった。
だが、その瞬間――。
”カチャリ――!!”
突然、部屋の照明が明るくなった。
――アレ?
何か急に、部屋の中が明るくなったんだけど……。
ティーナさんは、明るい部屋の中でするのが好みだったのかな……?
なーんて、俺がアホな妄想をしながら。
目を薄っすらと開けてみると……。
「あま〜〜〜〜いッ!! テイ〜〜〜っ!!」
ティーナの背後に、丸めた新聞紙を頭上に大きく振り上げた、玉木が飛び掛かってくるのが見えた。
”パシーーーン!!”
丸めた新聞紙で頭を強く叩かれたティーナは、その場で悶絶してベッドの上に倒れ込む。
「……た、玉木!? お前、どうしてここにいるんだよ!?」
「何やら胸騒ぎがしたから……。急いで、彼方くん達の後を追って来たのよ〜! そしたらやっぱり大正解だったわ! 『妖怪色欲メス猫女』をたった今、この手で退治してやったよの〜〜!!」
高らかに、勝利の雄叫びをあげる玉木。
っていうか、ティーナは大丈夫なのかな?
ベッドの上で気絶して、ピクピクと震えていらっしゃるけど……。
しかし新聞紙だけで相手を気絶させるとは、玉木……。
お前は本当に恐ろしい奴だよな。実は腕力とか、かなり強かったりするんじゃないのか?
ハッ!? もしかしてこれが、『アサシン』の真の能力だとでもいうのか!?
――その後。
目を覚ましたティーナは、玉木によって強制的に服を着せられ、俺の『童貞強奪事件』は未遂に終わった。
うん。なんて言うか、本当に残念だよ。
こんなにも心の底から、被害者になりたいと願った事件もなかったな。
本当に、色んな意味で残念な事件だった。
まあ、まだまだ地下は広いし。
玉木も加えて3人で、地下の探索を続けるとしますか。
俺達は、地下2階のビジネスホテル風の階層を去る事にした。
「ねえねえ、彼方く〜ん! この201号室のカードキーはどこにしまっておくのかなぁ〜〜?」
「んー? そうだなぁ。とりあえず、持って行っていいんじゃないのかな?」
こういうのは、普通のホテルだとフロントの人に預けたりする気もするけど……。まあ、別に良いだろう。どうせ俺のコンビニの中なんだし。
俺とティーナと玉木は、今度は地下3階に降りようと再びエレベーターに乗ろうとする。
すると――。
”ヴイーーーーン!!” ”ヴイーーーーン!!”
地下2階全体に、警報のような大きな音が鳴り響いた。
「な、何なんだ!? この音は……」
俺達が慌てて周囲を警戒すると――。
「……ちゃんと部屋の鍵は、フロントに戻してから外に出てもらわないと困ります」
廊下の向こうから、1人の女性がこちらに歩いてきた。
まるでエレベーターガールのように。綺麗に整った灰色の制服と帽子を着こなしている若い女性だ。
帽子の下からは、三つ編みにしたピンク色の髪が見えている。その外見は、ビックリするくらいに綺麗な女性だった。
「お、お前は一体、何者なんだ……!?」
俺は目の前の女性に声をかけてみる。
すると、女性はこう答えた。
「――私は、このコンビニホテルの『支配人』をしているレイチェル・ノアと申します。総支配人様、どうぞこれからよろしくお願い致します」




