第三百七十八話 槍使いの勇者の来訪
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「おい、フィート! あまり足と尻尾を伸ばすなよ。ただでさえ、ヘリの中は結構狭いんだから。そんなに体をぐで〜っと伸ばしてたら、みんなが座りづらくなるだろ!」
「にゃ〜〜ん? 何を言ってるのにゃ〜、大好きお兄さん? 快適な空の旅をぬくぬくと楽しんでいるコンビニ猫に、もっと優しくしろなのにゃ〜!」
輸送機能付きの大型アパッチヘリの中で、後部座席に座りながら窓の外の景色を見つめ。長い尻尾をブルンブルンと自由に振り回しているもふもふ娘に、俺の顔はさっきから何度もペチペチと叩かれ続けていた。
コンビニから逃走した、動物園の魔王である『マコマコ』を見つけて、合流する事に成功した俺とククリア。
俺達は、マコマコが可愛がる翼を生やした黒い馬の魔物のトリオンの家族達の背に乗り。
無事にティーナ達とも、合流を果たす事が出来た。
そしてそのまま、トリオンの一家を引き連れつつ。バーディア帝国に来る時に移動手段として使用した、大型アパッチヘリを回収する事にも成功した。
今は、みんなで高速ヘリの中の座席に座りながら。真っ直ぐにコンビニ共和国へ帰還する為の、帰路についている所だ。
コンビニートのパティは、カプセルにしたコンビニ支店の中に残って、相変わらずチョコミントを貪り続けているみたいだけどな。
ちなみにマコマコとククリアは、空を飛べるトリオン達の背中に乗って、アパッチヘリの後をついて来ている。
マコマコ的には、狭いヘリの中よりも。可愛いトリオン達の背中に乗って空を飛んでいる方が、気持ちが落ち着くらしい。
そして、そんな冬馬このはに付き従うように。ククリアもトリオンの家族の背に乗り。大空をマコマコと一緒に飛びながら、自分の主人である冬馬このはとの300年ぶりの会話を楽しんでいるようだった。
「ねぇねえ、彼方くん〜! マコちゃんって、細くてモデル体型だし。背も高くてスラっとしてるから、すっごく格好良いよね〜! 真っ白で雪のようにサラサラの髪も、本当に憧れちゃうよ〜!」
玉木が窓ガラスの外を見つめ。大空を黒い馬の背に乗って飛んでいるマコマコの姿を羨望の眼差しで眺めていた。
「そうですね。マコちゃんは、本当に女性から見ても思わず憧れてしまうような、スタイリッシュな格好良さを持っていますよね!」
玉木に続いて、ティーナも窓の外に見えているマコマコの姿を見て。感嘆の声を漏らしている。
……うーん、やっぱりそういうものなのか。
女性の視点から見ても、マコマコの外見はどうやらかなり格好良いらしいな。
元々は日本人だから、マコマコも最初は黒髪だったらしいけれど。300年に渡る長い眠りにつき、体が魔王化してしまった際に、髪の色は真っ白な雪色に変化をしてしまったようだ。
この中で、男は俺1人しかいないけれど。女性視点から見て、マコマコはきっと宝塚歌劇団の男役トップスターのように見えているのかもしれないな。
性格は優しくて天然だし、背も高いし。ちょっとミステリアスな理系っぽさも兼ね備えているマコマコ。
うん。きっとこれからクラスのみんなと合流しても、人気者として扱われるに違いない。
……にしても、玉木やティーナが自然と冬馬このはに対して、『マコちゃん』呼びが出来ている事に俺はついついたじろいでしまう。
女の子は同性の友達を『◯◯ちゃん』呼びをする事に、ほとんど抵抗が無いみたいだな……。
俺みたいな恋愛初心者かつ、女性への免疫力がまだまだ未熟な草食男は、簡単に『ちゃん付け』で女の子の名前を呼ぶ事が出来ないけれど。
こうもみんなが、自然にマコちゃん呼びが出来ている事に、ついつい嫉妬心を抱いてしまう。
やっぱり女の子は、同性同士のコミュ力が高いというか。すぐに仲良くなれる共感性の高さがあるんだと思う。
まあ、俺には『マコちゃん』呼びは、まだまだ敷居が高過ぎるので。しばらくは今の『マコマコ』の呼び方を継続させて貰う事にしよう。
「ぶにゃあ〜〜! そういえば、さっき『マコ之助』に思いっきりもふもふされたけど、すっごく気持ち良かったのにゃ〜! 大好きお兄さんみたいに、邪な気持ちで、あたいをもふる感じじゃなくて。猫をこよなく愛している、優しい気持ちの伝わるもふり方だったのにゃ〜」
「……いやいや、誰が邪な気持ちでお前をもふっているだよ!? っていうか、その『マコ之助』って何だ?」
「にゃあ〜! マコ之助は、マコ之助なのにゃ〜。あたいのネーミングセンスは、昔から卓越した才能があるって、近所のパン屋のパン耳ばあちゃんに褒められた事があるのにゃ〜!」
いや、もう……何というか。色々とフィートにツッコミを入れるのはやめておこう。
みんなそれぞれ好きに、マコマコの名前を呼べば良いさ。それだけマコマコが、みんなに好意的に受け入れられているって事だろうからな。
途中、空を飛ぶトリオン達を休める為に。海岸沿いの街に少しだけ立ち寄っていく事にした。
そこで俺達は、グランデイル軍が各地の占領地から総撤退を開始したという話を街の人達から聞く事が出来た。
――そうか。グランデイル軍は迷いの森の戦いで、虚無の魔王によって、かなりの数の白蟻魔法戦士達が倒されてしまったからな。
ある意味、クルセイスにとっては……致命的な損害を受けてしまったのかもしれない。
グランデイルの地下に巣食う白アリの女王が、無限にクローン兵を作り出せるのだとしても。きっとすぐに量産をする事は出来ないのだろう。
セーリスの話によると、地下に繭のようなものを産みつけて。そこからクローン戦士を作り出して育てていたらしいからな。
うーん……だとすると。
今後の俺達の行動は、どうするべきだろうか?
ここはアッサム要塞で、グランデイル方面に対して睨みをきかけせてくれている、カフェ好き3人娘達と合流をしてから、共和国へ戻るべきだろうか?
戦力の大幅に落ちたグランデイル軍は、すぐに外の領土に再侵攻してくる可能性はだいぶ低いように思う。
となると、このチャンスを最大限に利用して。
グランデイル王国へ俺達が直接乗り込んで、一気に決着をつけるべきだろうか?
迷いの森以降、行方の分からなくなった倉持と、名取の2人の事も気になるし。
敵が大量の白アリ兵を失い。まだその損失を回復出来ずに弱っている今だからこそ、3人娘達と共に一気にグランデイル城の地下にまで攻め込む、という作戦も有効かもしれない。
ここには、俺やククリア。そして最強……のはずだけど、普段は役立たずなニートのパティだっているし。
そこに強化された3人娘達の戦力が加われば。クルセイスと、ロジエッタのコンビと。地下に隠れている白アリの女王を倒す事も出来るかもしれないぞ。
ヘリの中で、今後の進路に迷っていた俺は……。
窓の外に映る遠くの景色を無言で見続けていたのだが、その時――窓ガラスの中に一瞬だけ……。
あの『叙事詩』の勇者である、朝霧冷夏の顔が映り込んだような気がした。
……えっ? まさか、本当に朝霧なのか!?
窓ガラスに映り込んだ朝霧の顔は、とても険しい表情をしているように見えた。
そして俺に対して、無言で首をゆっくりと横に振っているように見える。
俺はすぐに、後方に振り返った。
「――朝霧ッ!!」
ヘリの中に、当然だが……朝霧の姿は無かった。
「か、彼方くん……どうしたの? 今、もしかして冷夏ちゃんの名前を呼んだの?」
俺の様子を心配した玉木が、問いかけてきた。
「いや……何でもないんだ。俺の気のせいだから、特に気にしないくれ」
みんなにはニッコリと微笑んでみせ。
俺は何事も無かったかのように、その場を取り繕う事にする。
でも、もちろん俺の内心は……嵐が吹き荒れている海のように激しく動揺していた。
これはきっと、また『神のお告げ』なんだと思う。
俺だけが、未来予知のチート能力を貰っているようで悪いけれど……。外部から『俺の物語』という本を読み。未来の情報を先に読んでいる朝霧が、今、アッサム要塞に立ち寄るのはやめておけ……と、きっと俺に警告をしてきたに違いない。
――という事は、逆算的に考えると。
今すぐにコンビニ共和国に戻らないと、きっと『何か』大変な事態が起きる可能性があるんだ。
それも事態は一刻を争う気がする。あんな形で、急なメッセージをあの朝霧が俺に伝えにきてくれたんだからな。
ここで寄り道をせずに、真っ直ぐにコンビニ共和国に戻らないと。取り返しのつかない『何か』が起きてしまうに違いない。
――よし、急ごう!
コンビニ共和国に一刻も早く帰るんだ。
「ティーナ、玉木、フィート! 予定よりヘリの速度を上げて、急いでコンビニ共和国に帰る事にするぞ!」
「……ええっ? うん、いいけど〜。麻衣子ちゃんや、有紀ちゃん、みゆきちゃん達に挨拶をしていかないで大丈夫なの〜、彼方くん?」
「ああ。3人娘達には、後でまた合流する事にするさ。それよりも今は、一刻も早く共和国に帰りたいと俺は思っているんだ」
「にっひっひ〜、あたいも噂のコンビニ共和国に行って。美味しいサバの料理をいっぱい食べたいのにゃ〜。噂に聞く『さくら亭』っていう大きなレストランで、素敵なシェフにサバ料理を作って貰うのが楽しみなのにゃ〜!」
食い意地のはったもふもふ娘が、口からよだれを垂らしながらずっとニヤニヤしていた。
うん、そんな姿も可愛いから今は許す。
……でも、冗談は抜きにして。ここはマジで急ぐ事にしよう。
「ティーナ、ヘリの運転をお願い出来るかな? 俺は後ろを飛んでいるマコマコとククリアにも、移動速度を上げる事を伝えてくるから」
「了解しました、彼方様。私はちゃんとヘリの操縦もマスターしておきましたから、全部私にお任せしちゃって下さいね!」
さすがは俺のティーナたん……じゃなくて、万能ティーナさんだ。
今のティーナは、コンビニ戦車の操縦から。アパッチヘリの操縦。そして覚醒した能力を活かして、戦闘への参加も出来るし。まさにコンビニチームにとって、なくてはならないメンバーに成長したと思う。
もう、俺の贔屓を無しにしても。
どこに行く際にも必ず一緒に来て貰わないといけない、大切な存在になっている事は間違いなかった。
「よーし、みんな行くぞ! 共和国のみんなに会うのも久しぶりだしな。本店のレイチェルさんや、座標の謎を解いたというターニャにも俺は会いたい。まだこれからやるべき事はいっぱいあるからな!」
『おーーっ!!』という掛け声を、全員で出し合って。俺達は真っ直ぐに、懐かしのコンビニ共和国に向けてヘリで空の上を進んでいく。
正直……俺はほとんど、共和国でゆっくり過ごす事はなく。ずっと外の世界を飛び回ってばかりいたけれど。
今、コンビニ共和国の中の街は、どれくらい発展をしているのだろう?
生活担当大臣の杉田が、また住民のクレームを受けて。悲鳴を上げていなければ良いのだけどな。
突然の、朝霧からの警告を受けて――。
まだ不安が拭えないでいる俺は、一刻も早くみんなの無事な顔を見たいと、強く願う事しか今は出来なかった。
☆ ☆ ☆ ☆ ☆
「防衛大臣様〜! アルトラス連合領から来た、貿易商人の一団が正門ゲートに到着しましたが……共和国内にお通ししても大丈夫でしょうか?」
コンビニ共和国の巨大な正門を監視する、ゲートキーパーの役職に就いている役人達が、正門を監視している防衛大臣の雪咲詩織に対して声をかける。
「……うーん、そうね。人数は20人くらいなんでしょう? レイチェルさんの作った監視装置にも反応無しだったなら、通しても大丈夫よ。うちが許可をするから、街の役所にまでちゃんと案内をしてあげてね!」
「ハハーッ! 畏まりました!」
正門ゲート付近で、剣の素振りをしながら軽く返事をする雪咲。
『剣術使い』の能力を持ち。異世界の勇者達の中でコンビニの勇者に次ぐ、最強の実力を持っていると噂されている雪咲は、共和国の守護神とも呼ばれていた。
そんな彼女だが、今現在は……どうやら退屈で暇を持て余しているらしい。
共和国の中に入るには、巨大な正面ゲートを通るしかない。
それ以外の場所には、『防御壁』の勇者である、四条京子が作り上げた、高さ5メートルにも及ぶ防衛壁が街を囲い込んでいる。
その為、必然として。共和国の防衛大臣である雪咲が、この正面ゲートを監視する役割をこなしているのだが……。
建国以来、この正面ゲートに怪しげな敵の一団がやって来たという事は殆ど無かったのである。
その理由としては、共和国の暫定大統領でもあるレイチェル・ノアが作成した特殊な『監視装置』が共和国のゲートには設置されているから、と言われていた。
レイチェルが夜鍋をして作成したといわれる監視ゲートは、コンビニ共和国に敵意を持って侵入しようとする邪悪な心を持つ者。
主に女神教から派遣された人物や、魔物の類が敷地内に侵入しようとすると。装置は大きな警報音を鳴り響かせる仕組みとなっているのである。
その為、防衛大臣を担当している雪咲が常時、目を光らせていなくても。
怪しい人物は、警報によって自動的に探知される為。その音が鳴った時にだけ、正面ゲートで対応すれば良い簡単な仕事と化していたのだった。
建国したばかりの頃と違い、共和国に魔王領から魔物が襲ってくるという事もほとんど無くなっていた。
それは魔王領の境界線に近い位置に、強い勢力を誇っていた砂漠の魔王モンスーンが撃破されたからとも言われている。
どちらにしても防衛大臣の雪咲は、共和国の守護神としての能力を活かす機会はほとんど無く。
毎日ただ、昼寝ばかりする猫のように。暇を持て余している状態が続いていたのは確かだった。
「ハァ〜〜、今頃、彼方くんはどんどんレベルアップをして強くなってるんだろうな〜。うちも、帝国領に向かうメンバーの中に参加したかったよ〜!」
体の鍛錬を怠らない為に、剣の素振りを繰り返し行いつつも、思わず不満そうにため息を漏らしてしまう雪咲。
そんな雪咲の元に、共和国内からもう一人。
今、この世界で最も忙しい立場にいると噂されている『生活担当大臣』の杉田勇樹がやって来た。
「おーーい、雪咲! どこにいるんだー?」
「ああっ? エロエロ魔人……じゃなくて、杉田じゃないのよー! こんな所に一体、何しに来たわけ?」
「いや……絶対に、俺の名前を呼ぶ時に。わざと最初に『エロエロ魔人』って付けて、お前遊んでいるだろう? まあ、そんな事よりも。今日はお前に良いニュースを持ってきてやったぜ!」
「良いニュース? 何よそれ?」
杉田はヘリでコンビニ共和国に向かって来ているというコンビニの勇者の彼方から、連絡のメールがコンビニ本店のパソコンに届いた事を雪咲にも伝えた。
おそらく本店のパソコンにメールが届くという事は、彼方は共和国からかなり近い距離の場所にまでやって来ている可能性が高い。
もしかしたら、あとほんの数分以内にも。彼方達を乗せたヘリが共和国の上空に到着する事だって、あり得るかもしれない状態だった。
「――ええっ、それ本当なの!? 彼方くんが共和国に戻ってくるの!?」
「ああ。だから、みんなで歓迎して出迎えてやろうと思っているんだよ。お前もすぐに、コンビニ本店に戻ってきてくれないか、雪咲?」
「わ、分かったわ! うちもすぐに準備するわね!」
慌てて剣を鞘に収めて、嬉しそうにスキップを踏み始める雪咲。
雪咲にとって、彼方と再会をするのは本当に久しぶりの事になる。
それに雪咲の親友である、香苗美花も一緒に戻ってきているかもしれない。どちらにしても、外の世界の情報を沢山持ってきてくれるであろう彼方達と早く再会したいと雪咲は思っていた。
そんな、嬉しそうに会話をしているコンビニ共和国の2人の大臣のもとに。
突然、今度は正面ゲートを監視していた警備担当者達からの緊急連絡が入った。
「た、大変です……! 防衛大臣様ッ! 正門ゲートのすぐ近くに、槍を持った怪しげな格好の若い男が倒れているとの報告が入ってきました!」
「えっ……? 槍を持った若い男ですって?」
報告を聞いた雪咲と杉田は互いに顔を見合わせて。
急いでその場から、正面ゲートの方角に向けて2人で一緒に駆けていく。
槍を持っているという事は……どこかの国に所属している騎士なのだろうか?
もしかしたら、ドリシア王国か、それともカルタロス王国から共和国に遣わされてきた使者という可能性もある。
ここに来る途中に何者かの襲撃を受けて、負傷してしまったのだとしたら……一刻も早く保護しないといけないだろう。
警備担当者達の誘導のもと、その若い男が倒れているという現場に到着した雪咲と杉田は……互いに顔を見合わせて、ゴクリと唾を飲み込み。
思わずその場で、言葉を失ってしまった。
「……そ、そんな!? こいつは『水無月』じゃないかよ!?」
「ど、どうして水無月くんがここにいるの? 確か水無月くんは、ミランダ領で戦車の砲撃を受けて死んでしまったって話じゃなかったの!?」
まるで幽霊を見たかのように、顔面蒼白な表情で問いかけてくる雪咲に、杉田も必死で言葉を返す。
「俺だって訳が分かんないよ! でも、彼方と香苗が確かに水無月は戦場で死んだって言ってたんだよ。と、とにかく急いで水無月をコンビニ本店にまで連れて行こうぜ! まずは地下の病院施設に連れて行く事が最優先だ!」
雪咲と杉田は、慌てて地面に倒れている水無月の様子を確認する。
どうやら水無月は、全身から大量の冷や汗を流しているが……特に大きな外傷や怪我は無いようだった。
ただ、何かにうなされているかのように。『ううっ……』と、苦しそうに呻き声を漏らし続けている。
「――誰か、ここに急いで担架を持ってきて! 水無月くんの体を刺激しないように、慎重にコンビニ本店に連れて行くわよ!」
死亡していたと思われていた、クラスメイトが突然姿を現した衝撃の事実に。
杉田と雪咲は、急いで白い担架の上に水無月の体を乗せて。共和国内へと彼を連れて行く事にした。
共和国の正門ゲートは、コンビニに敵対的な人物。
そして外から来た魔物が侵入をした際に、大きな警報音鳴らす仕組みとなっている。
その特殊な仕掛けの備わっている正門ゲートは、杉田達に運ばれて共和国の中に入っていく水無月の体に、特に何も反応を示さなかった。
レイチェルが作った監視装置付きの特殊ゲートには、唯一の例外適用がある。
それは――コンビニの『関係者』には、警報が一切作動しないというものだ。
こうして、帝国領からヘリに乗って共和国に戻って来たコンビニの勇者の彼方達とぼぼ同じタイミングで。
共和国の正門ゲートには、死亡していたと思われていた、『槍使い』の勇者の水無月洋平が姿を現し。
雪咲と杉田の2名によって、共和国内部に彼を連れて行く事となったのである。