第三百六十七話 想い出の中のコンビニ
地底湖の対岸で玉木と再会した俺は、いったん玉木を連れて、コンビニ支店にまで戻る事にした。
「……玉木、手がだいぶ冷えてるみたいだから、すぐにコンビニの中で体を温めてくれよな! エアコンの温度も少し高めに設定しておくから」
俺の後をゆっくりとついてきた玉木は、なぜかコンビニの入り口の前でピタリと立ち止まると。
その場でしばらく……両目を見開き。
普段、よく見慣れているはずのコンビニを見つめながら。ずっと洞窟の地面の上で立ち尽くしていた。
「――ん、玉木? 一体、どうしたんだよ?」
目の前に建つコンビニの外見を、何度も何度も見回して。まるで何かの強い衝撃を受けたみたいに、ワナワナと小刻みに全身を震わせ始める玉木。
「………コンビニ。ここは本当に………あのコンビニなの?」
口から発した言葉が、空気の中に溶け込み。
微粒子となって、酸素の中に染み込んでしまうかのような、小さな声で。
玉木は両目をずっと見開きながら。目の前に建つコンビニを、憧憬の眼差しで見つめ続けていた。
「ああ、いつも通りのコンビニだけど? というかさっき、一緒に中に入ったばかりじゃないか」
「…………」
玉木は、本当にどうしたんだろう?
地底湖の対岸から一緒に戻ってきてから、やっぱり玉木の様子がどうもおかしい。
結局、地底湖の対岸で何かを見つけたのかと聞いた時も、特に何も無かったと返事をしてくれたけど。
再会した玉木は、まるで生気が抜けたかのように。普段の姿からは想像も出来ない程に、大人しくなっていた事に俺は思わず戸惑ってしまう。
ちょっと前には、一緒にコンビニの店内に入って。
あれだけ『トイレ〜! トイレ〜!』って、はしゃいでいたばかりのだったのにな。
今の玉木はまるで、戦争中に遠い異国の地に置き去りにされてしまった子供が……。数十年ぶりに故郷の実家に戻ってきたかのような、切ない表情を浮かべているように俺には見えた。
無言の玉木は、そのまま地面に根を生やしたみたいに直立不動のまま立ち尽くし。目頭を熱くさせながら、ずっとよく見慣れたはずのコンビニを見つめ続けていたけれど……。
しばらくして、ようやく俺に小声で話しかけてきた。
「………彼方くん。私、コンビニの中のトイレを借りてもいいかな?」
「ああ、もちろんいいけど?」
いや、さっきトイレに入ったばかりだよな?
……っていう、俺からのツッコミ待ちのジョークなのかと一瞬、思ったけど。
何というか、今の玉木の顔はマジで真剣な顔をしてたので。俺はついつい、そのツッコミを入れるタイミングを逃してしまった。
無言でつかつかと、コンビニの中に入っていく玉木。
明るい照明のついた店内を、懐かしい我が家を見るようにぐるりと見回し。真っ直ぐにトイレの個室に向かって進み、中に入っていく。
そして玉木がトイレに入ってから、しばらくの時間が経ち。ようやく玉木はコンビニの水洗トイレから出てきた。
水を流したような音は聞こえてこなかったけど、やっぱりトイレは利用しなかったのかな……?
俺は訝しげに、少しだけ様子のおかしい玉木を見つめていると。
玉木は今度は、店内の商品の中から『昆布おにぎり』を1つだけ手に取り。ゆっくりとこちらに戻ってきた。
「………彼方くん、コレ、食べてもいいかな?」
「ああ。もちろん、どうぞ。玉木なら、コンビニの中のものはいくらでも食べて構わないからな」
「ありがとう………」
玉木は大人しく、コンビニの床の上にちょこんと正座をして座りこみ。
そして両手を震わせながら、ゆっくりと手にした昆布おにぎりを、自分の口に近づけていく。
そして震える手で、一口、一口、昆布おにぎりの味をじっくりと噛み締めるように、咀嚼をして。
玉木は好物の昆布おにぎりを、コンビニの店内で静かに食べ始めた。
俺はまた、『いや、さっきめちゃくちゃ昆布おにぎりいっぱい食べてたじゃんかよ! トイレから出た後に3つぐらい口の中に放り込んで、ガツガツと美味しそうに頬張ってたよな?』という熱いツッコミを玉木に入れようとして――。
結局、今回も言いそびれてしまった。
何というか今の玉木は、そういうノリツッコミがめちゃくちゃ入れずらい雰囲気を漂わせていたからだ。
パク……パク……。
玉木がこんなにもゆっくりと昆布おにぎりを食べている所を、俺は初めて見たかもしれない。
いつも幸せそうな顔をして、ガツガツとコンビニの食品を勢いよく貪っているのに。
今はまるで、お金持ちの深窓令嬢が初めて庶民の食べ物を食べたかのような、上品な食べっぷりをしている。
まあ、そんなに丁寧に味合わなくったって。事務所のパソコンで発注をすれば、幾らでも昆布おにぎりは倉庫に湧いてくるんだけどな。
ホントにどうしちゃったんだろうな、玉木の奴……。
『……ゴクリ』と、指についた最後の米粒を喉の奥に流しこみ。
ペットボトルのお茶を少量だけ口に含んだ玉木は、満足したように深い吐息を漏らした。
そして、心の底から愛おしそうに。懐かしいものを見るような視線で、マジマジと手に持つ緑色のお茶のペットボトルを見つめている。
その後、玉木は……しばらく放心状態になってしまったかのように。呆然としてコンビニの店内の様子をずっと静かに見つめ続けていた。
えっと……何なの、この沈黙?
何だかお付き合いし始めの彼女を、初めて自分の部屋に招き入れたような緊張感があるんだけど。
そんなにマジマジとコンビニの店内を見渡さないでくれよ。定期的に掃除したといた方が良かったのかな……と、謎の冷や汗が出てくるじゃないか。あ、でもコンビニは一度しまえば、元通り綺麗に戻るんだっけ。
やがて、しばらくすると。
玉木の目からは、小さな涙の線がゆっくりと頬を伝っていき。それが幾重にも織り重なりながら、コンビニの床の上に滴り落ちていった。
「お、おい……! 玉木、マジで大丈夫なのかよ!? やっぱり体調が悪かったりするんじゃないのか?」
俺はすぐに床に正座している玉木の元に駆け寄ると。
ポケットから白いハンカチを取り出して、玉木の頬を伝う涙の線をゆっくりと拭ってやった。
どうしよう、お腹を下痢で痛めたとか。体のどこかに痛みを感じているとかだったりするのだろうか?
そんな俺の心配をよそに。玉木は小さな声で俺にゆっくりと語りかけてくる。
どうやら玉木が涙を流した理由は、体に異変が起きているからでは無いようだ。
「………彼方くん。昆布おにぎりって、本当に、本当に美味しいんだね………。こんなにも美味しい物が、この世の中にはあったんだね………」
「――ん? どうしたんだよ。いつも食べてるくせに。ああ、そうだぞ。コンビニで扱ってるおにぎりはどれも、みーんな美味しいからな! だから玉木が食べたい分だけ、幾らでも食べてくれて構わないんだからな」
玉木の目元から溢れ落ちた涙を、丁寧に拭きながら。俺は玉木の顔を見つめて、思わずニッコリと微笑んでしまう。
いつも『美味しい、美味しい!』って、コンビニのおにぎりを嬉しそうに食べてくれる玉木も好きだけど。
こうしてお米の一粒、一粒まで丁寧にじっくりと味わってくれて。コンビニのおにぎりの味に改めて感動をしてくれている玉木の姿を見るのも……何だか珍しくて。俺はコンビニ店長として、つい嬉しくなってしまう。
今の玉木の顔は、いつもと違ってビックリするくらいに無表情だけどさ。
目から溢れ出てくる涙が、本当に『コンビニ』の事が大好きなんだ……って俺に語りかけてくるんだよ。
うん。コンビニ好きに悪い奴なんていない。
だからコンビニの店長でもある俺は、まるで自分の事のように、コンビニを愛しく思ってくれている玉木の事を、改めて本当に大切な存在だと思えたんだ。
「玉木、美味しいものを食べて感動をした時は、いつもみたいにもっと笑ってくれてもいいんだぞ?」
「いつもみたいに………? 玉木紗希って、彼方くんの目から見て、どんな風に笑う子なの?」
「――ハァ? 本当にどうしたんだよ? 玉木はどんな時でも笑顔で、周囲にいるみんなを一緒にいるだけで、全員ハッピーな気持ちにさせてくれる、優しい気遣いの出来る奴じゃないかよ」
「………気遣い? ハッピー? この私が………?」
キョトンと、瞬きを何度も繰り返す玉木。
そして、まるでその言葉が今の自分には最もかけ離れたものであるかのような表情で、不思議がり始める。
これは思ったよりも、遥かに重症かもしれないな。
さっき地底湖の対岸に行った時に、玉木の身にはきっと何かあったのかもしれない。
もしかしたら、地底に生えてる怪しげな野生の毒キノコでも採取して食べたんじゃないだろうな?
「玉木、本当に大丈夫なのか? 何かおかしなキノコを食べたとか、地面で転んで頭を打ったりとかはしていないよな……?」
俺は心底、玉木の体を心配をして。
玉木の顔を近くから覗き込むようにして見つめる。
すると玉木は……無表情のまま、俺の顔を見つめ返してきて。何かを急に思い出したように、落ち着いた声で返答してきた。
「………うん。実はそうなの、彼方くん。向こうで美味しそうなキノコが生えてたから、ついつい手に取って食べてしまって………。そうしたら足を滑らせて、頭も地面に強く打ちつけてしまったみたいなの」
「マジかよ……!? そいつはヤバいな。待ってろよ、今すぐ包帯と薬を事務所から持ってくるから!」
俺は事務所で包帯と、何か毒キノコに効果のありそうな薬を全て持っていく事にした。
……といっても、医療知識の無い俺にはそんな異世界の毒キノコに効果のある薬なんて、まるでわからないからな。
とりあえず栄養剤や、利便作用のある缶コーヒーを持っていく事にした。
地面に転んだという玉木の後頭部を、念入りに調べてみたけれど。特に転んだ時の傷跡のようなものは見当たらなかった。
それに、さっき地底湖の奥で見かけた時は少しだけ黒っぽく見えていた玉木の髪色は……。今はいつも通りの茶色に戻っている。やっぱりあれは、俺の見間違いだったのだろう。
だけど、まだ安心は出来ない。玉木には、しばらくベッドの上で安静にしておいた貰った方がいいだろうな。
俺が持ってきた栄養ドリンクと、缶コーヒーを少量ずつ口に含んだ玉木は、
「うん………もう、大丈夫だよ。彼方くん。少し時間が経てば、きっと元通りになると思うから」
と、やっぱり無表情のまま答えてくれた。
まあ、しばらくは様子を見守るしかないだろうな。
俺としては、いつもの笑顔全開な玉木の顔が見られるまでは、まだ安心は出来ないけれど。
今の玉木は毒キノコと後頭部強打の後遺症で、一時的に部分的な記憶喪失に陥っているのかもしれない。
玉木は一通り、コンビニの店内をじっくりと見回した後……。今度はいったんコンビニの外に出て。地底湖周辺の壁画をゆっくりと観察するように見回りながら、遠くに歩いて行ってしまった。
「――おい、玉木! ちゃんと体を休めた方がいいぞ。体調が良くなるまで、事務所のベッドでゆっくり寝ていた方が絶対にいいって」
「ありがとう、彼方くん。私はもう、大丈夫だから。体を動かしていた方がきっと治りも早いと思うの。それよりも一緒にこの辺りを散策しましょう」
「お、おう……分かった。確かにティーナや、フィートの事が心配だからな。早く合流をして、コンビニの物資も届けてやりたいし」
「………ティーナ? フィート?」
ティーナ達の名前を聞いて、頭に疑問符を浮かべている玉木の様子を見て。
どうやら玉木の脳は、まだ正常な状態に戻っていないのだと分かり。俺はやっぱり心配になってしまう。
でも今は焦らずに、玉木の様子をゆっくりと見守り。少しずつ元に戻ってくれるように、待つしかないのかもしれないな。
その意味でも俺が色々と玉木に話しかける事で、一時的な記憶喪失から早く立ち直って。元の元気で笑顔いっぱいの玉木に戻ってくれたら良いのだけど。
――そんな、俺の心配をよそに。
無表情の玉木は、つかつかと地底湖周辺の壁に刻まれた文字や、壁画を興味深そうに眺めながら、どんどん前に進んでいってしまう。
「………ここには沢山の魔法文字が、記されているのね。これを書いた人は本当に凄い熱量を持って、ここで魔法の研究をしていたのでしょうね」
「ああ、こんなにいっぱいの文字や絵を壁に刻み込むくらいだからな。大昔にここに住んでいた奴は、怖いくらいに怨念染みた何かを持っていたのかもしれないな」
「………怨念ですって? ううん、違うわ。これは気高いくらいに純粋で尊い、『愛』なのよ」
「えっ、何だって……? あ、愛……!?」
――ええっと、玉木?
さっきとは、全然言ってる事が違うようだけど。確かお前も俺と一緒で、壁の文字を見て『不気味』だって言ってたよな?
「本当に、その人の事が好きで好きでたまらなくて。どうしても諦めきれなかった………。どうしても、もう一度だけ想い人に会いたかったのよ、彼女は………」
俺は玉木が何を呟いているのか、マジで全く分からなかった。
さっきまで俺と一緒に、壁の文字をホラー映画みたいだなって、共感していたのに。今はまるで、この壁に刻まれている文字を本当に愛おしそうに、玉木は指先でなぞりながら見つめている。
頭を打ってしまい、一時的な記憶喪失になった玉木には……。さっきまでとは違う『何か』が、この壁の文字から感じ取れでいるという事なのだろうか?
俺はしばらく不思議そうに、玉木の様子を見つめていると。
今度は、急に俺の方に向き直り。
また空気に溶け込みそうな小さな声で、俺に話しかけてきた。
「………そういえば、彼方くん。魔王領から2人の魔王が帝国領にやって来ていたでしょう? その2人はどうしたの?」
「んん? どうしたのかって、俺達みんなで撃退をして倒したじゃないか。その事も忘れてしまったのか?」
「倒した………!? 忘却の魔王を2人とも………?」
俺の返答を聞いた玉木は、その場で呆然として立ち尽くしてしまう。そして、一度だけ大きく深呼吸をして。改めて俺に問いかけてきた。
「………じゃあ、倒した魔王達の持っていた『魔王種子』はどうしたの? 不老の力を生み出す根源、魔王の心臓は?」
「魔王種子? ああ、そうか。それは確か……魔王シエルスタの能力を持つアリスの体にあった心臓は、パティが三色団子の槍で貫いてしまったし。虚無の魔王の中にあった心臓は、俺が光の剣で切り裂いてしまったからな……。だからもう、2つともこの世界には残っていないと思うぞ」
「光の剣………って、何?」
「あれ? 玉木にも説明しなかったっけか? 俺が虚無の空間の中で、勇者レイモンドから継承した新能力――『白銀剣』の事さ」
「…………!?」
玉木は両目を見開いて、驚きの顔を浮かべる。
そしてすぐに呼吸を整えて。
必死に冷静さを取り戻そうとしているようだった。
「そうなのですね………勇者レイモンドは、まだこの世界に存在していたのですね。それでまだ経験が未熟な彼方くんにも、あの無敵の虚無の魔王、カステリナを撃退する事が出来たという訳なのですね………」
「――ん、玉木? 今、何か言ったのか?」
玉木があまりにも小声で何かを呟き続けていたので、俺にはそれが何なのかを、上手く聞き取る事が出来なかった。
「これで、我々が追っていた忘却の魔王達の魔王種子は全て失われてしまいました。アスティア様に何と報告をするべきか………。それとも、やはり私がこの新しい彼方くんを魔王に育て上げ。そこから魔王種子を奪い取るしか方法は残されていないのでしょうか………」
玉木は小声で、ずっと何かをブツブツと呟き続けていた。そして時折、何かを考え込むようにして俺の顔をチラリと見つめてくる。
どうも今の玉木は、不思議な様子を見せる事が多いな。まるで夢遊病を患っているかのように、何かに取り憑かれていなければ良いんだけど……。
しばらく玉木は、茫然自失な顔色で洞窟の地面をじっと見つめていたが……。
やがて顔を上げると、俺に小さな声で問いかけてきた。
「………彼方くんは、これからどうするの? 大昔に存在した『もう1人の自分』の存在を知って。これから、彼と戦うつもりなの?」
「これからどうするか? うーん……そうだな。俺の頭の中で、一つだけ考えている事はあるんだけど。それはなかなか実現する事が難しいだろうな……とは思ってるんだ」
「考えている事………? それは、何なの?」
俺は腕組みをしながら、少しだけ考え込んでしまう。この事はまだ、誰にも伝えた事が無かったからな。
でも、玉木になら……。
あの女神教のリーダーでもあり、俺と同じように、この世界に存在する『もう1人の自分』の事と向き合わなければいけない運命にある玉木になら。俺が今、考えている事を話しても良いのかもしれないと思った。
「実は俺は、女神教のリーダーである枢機卿と手を結びたいと思っているんだ。そしてきっと、そうしないとあの大昔に存在した『コンビニの大魔王』には勝てないと思っている」
俺からの衝撃的な告白を聞いた玉木は、しばらく目を点にして。何かをじっと考察するように、俺の目を見つめ続けてきた。
「………女神教の枢機卿と手を組むですって? それは無理なんじゃないかしら。彼女は異世界の勇者達にとっての敵なのよ。この世界に召喚された沢山の異世界の勇者達を絶望に追いやり、魔王へと変化させてきた、いわばラスボスみたいな存在なのよ? そんな彼女と、彼方くんは本気で手を結ぶというの?」
クスクスクスと小さく笑う、玉木。
やっと玉木が笑っている顔を見せてくれて、俺は少しだけ安心する事が出来た。
でもその笑い方が、いつもの楽しい笑顔で満ち溢れた玉木のモノではなく。何だかあの朝霧や、クルセイスのような邪悪な雰囲気があって。
まだ全然、違和感は取れなかったけどな。
「いいや、ラスボスは他にいるんだ。そいつを倒す為に、俺と女神教の枢機卿は絶対にお互いに手を結び合えるはずなんだ」
「………ラスボスが他にいる? それは、一体誰の事なの? もしかして5000年前から生き続けてきた、大昔の彼方くんの事を言ってるの? 確かに枢機卿は、コンビニの大魔王と直接戦った事のある当事者ではあるけれど。でも彼女は、きっと………」
「――違う、コンビニの大魔王じゃない! 大昔に存在した過去の俺と玉木の2人を騙して、この世界を地獄に落とし全てを支配しようとした張本人。それは、コンビニホテルの支配人である『レイチェルさん』なんだ。コンビニの大魔王も、枢機卿となった過去の玉木も……。レイチェルさんに騙された、哀れな被害者なんだよ!」
「……………」
俺からの衝撃的な宣言を聞いた、玉木は……。
まるで時が止まったかのように、その場でピタリと動きを止めて。
ただ無言でじっと、俺の目だけを見続けていた。