第三十五話 谷底の世界
――そこは、とても静かな空間だった。
まるで薄暗い深海の中を漂っているような、不思議な感覚がする。
全ての思考や感情が、絵の具のように微睡みの中でゆっくりと溶け合って、混ざり合い。
やがて一つの何かに生まれ変わっては、またどこかへと消えていく――。
そんな穏やかな潮流のように、不思議な感情の起伏を脳の中で、繰り返し感じながら……。
俺は、その場で静かに目覚めた。
「………ううっ………」
重い瞼をゆっくりと開くと。
そこには電気の照明に照らされた、小さな部屋が見えた。
奥にはパソコンの置かれた机があり。簡易ベッドやソファーも置かれている。
一瞬だけ、直前の記憶がハッキリと思い出せなかった俺は……。
そこがコンビニの『地下シェルター』の中なのだ、という事を思い出すのに、少しだけ時間がかかった。
そして、どうしてここにいるのか。その経緯を全て思い出した時、俺は慌てて周囲を見回す。
「――ティーナ! ティーナはどこにいるんだ……?」
俺が辺りを急いで見回すと、
すぐそばの床に、ティーナが意識を失って横たわっているのを見つけた。
俺は慌ててティーナに声をかける。
「ティーナ、無事か? 大丈夫なのか!?」
声をかけられたティーナは『ん……』と小さく声を漏らし、ゆっくりと体を起こして目を開けた。
良かった。どうやら無事みたいだな……。
「彼方様――? ここは、一体……?」
目を覚ましたティーナも、どうやら今の状況がすぐには分からなかったらしい。
もっとも、ティーナはおそらく。金森の攻撃を受けて、谷から落下してしまった時には、既に意識を失っていただろうから……。何も分からないのは無理もないと思う。
谷から落下していく途中で、俺は空中にコンビニを出現させた。
そして俺とティーナは、コンビニの中に吸い込まれるように落ちていき。そのままティーナの体を抱えた俺は、この地下シェルターの中に急いで避難をして、無事に2人で難を逃れる事が出来たという訳だ。
そう――。ここは、コンビニに新しく追加された耐久設備の一つ。『地下シェルター』の中だ。
壁外区でグランデイル軍に包囲された時に、この地下シェルターはガトリング砲などと一緒に、新たな『耐久設備』としてコンビニに追加されていた。でもまだ、その紹介はしていなかったな。
地下シェルターは、コンビニの事務所の床に……いつの間にかその入口が作られていて。広さ自体は、そんなには大きくない。でもその中には、ビックリするくらいに色々な設備が揃っていた。
上の事務所と同じように。シェルターの中にもパソコンがあって、監視カメラやドローンの操作、商品の発注もこなす事が出来る。
なので、この地下シェルターの中に篭っていても。コンビニの業務全般は、基本的には問題なく行う事が出来るという訳だ。
まあ、正直……。
ここが本当に『地下』なのか? っていうと、微妙なラインなんだけどな。
実際、俺達は谷底に落下をしていく途中でコンビニの地下シェルターに入った訳だけど……。
コンビニが空中にある時点で、『地下シェルターに隠れる』というのも、厳密に言えばおかしな話だ。だから実際には、地下シェルターといっても、どこか普通とは違う別の空間にいるような感覚なのかもしれない。
そもそも落下中のコンビニの中で、重力を無視して動けた事から見ても。俺が能力で出すこのコンビニ自体が、外の世界とは違う、異空間になっていると言えるのかもしれないな。
目を覚ました俺とティーナは、さっそくパソコンを起動させる。
そして外の監視カメラの映像を確認しながら、周囲の様子を探る事にした。
「……もしここが、本当にあの『魔王の谷』の底なのだとしたら。周囲には、ヤバい何かがウヨウヨいるかもしれないからな」
「彼方様……」
ティーナが俺の左手を不安そうに強く握る。
俺はパソコンの画面上で、監視カメラのアイコンを何度もクリックしてみたが、カメラの映像は全て真っ暗なままだった。
「おかしいな……。これ全部、壊れているのか?」
コンビニの周囲を映し出す監視カメラの映像は、全てが真っ暗だ。監視カメラの起動アイコンが押せない訳ではないので、単純に映像を録画するカメラ本体の方が壊れているのだろう。
まあ、あれだけ深い谷底に落ちたんだ……。
外のコンビニが無傷な訳が無い。
むしろ、既にコンビニは全壊していて。この地下シェルター以外は、バラバラになっている可能性の方が大きいだろうな。
どちらかと言えば、俺やティーナの体が無事である事の方が奇跡なんだが……。それは、この地下シェルターの中が現実の空間とは別に隔離された異空間だから――と、考えるしかないだろう。
監視カメラの映像を確認する事を諦めた俺は、続いてドローンの操作が出来るのかを試してみる。
現在、俺のコンビニには合計5機のドローンが格納されている。
元々あった索敵用の1機と、煙幕散布機能を搭載した新型が4機で、合計5機だな。
そのうち3機のドローンはやはり、操作不能な状態だったが――。残り2機は操作する事が出来た。幸いカメラ機能も無事みたいだ。
「よし……! これなら周囲の索敵が出来そうだ」
2機のドローンを上空に飛ばし、真下のコンビニ周辺の様子を俺達は観察する。
「彼方様、これは………」
「ああ、完全にバラバラになっているな……」
映像に映ったコンビニの姿は――。
見るも無惨な状態に変わり果てていた。
建物自体は既に倒壊していて、完全にスクラップ状態だ。元の形が全く分からないくらいに、バラバラになってしまっている。
むしろ、この状態なのに地下シェルターの中はどうして無事なのか……と、思えるレベルだよな。
やっぱりこの地下シェルターの中は、外とは隔離された別の空間になっているんだと思う。
倒壊したコンビニの周辺は、白い濃霧で覆われていて、周囲の状況が全く掴めなかった。
おそらく魔王の谷の底は、この白い霧が隅々までビッシリと全体を覆っているのだろう。
まともに外に出たら、すぐに迷子になってしまいそうだ。
その時――。
コンビニを上空から撮影していたドローンの映像に、大きな影が映り込んだ。
俺とティーナは、その映像を見て戦慄する。
「アレは、まさか……!? か、カディスなのか?」
ドローンのカメラに映し出された映像には、あのカディナの壁外区で倒した、カディスにそっくりな巨大な魔物が映っていた。
いや、これはカディスより遥かに大きいぞ……!?
見た目はカディスにそっくりだったが、大きさと色合いが全然違う。
カディスはその全体が緑色の表皮で覆われていたが、今、カメラに映っている魔物は外見が黒い色をしている。
そしてカディスより大きさが一回りは大きい。全長で約40メートルくらいはありそうな超大型サイズだ。
俺とティーナを驚愕させたのは、そのカディス亜種の大きさだけではなかった……。
なんとその巨大な魔物が、連続で3頭も――。
倒壊したコンビニの真横をゆっくりと通過して行きやがった。
――おいおいおい!
一体何なんだよ、ここは……?
あのカディスの亜種タイプが3体も……。大きさも全然違うし。あんなの、学校の校舎に足が生えたような化け物が、連続で歩いてきているようなものだぞ。
「ヤバいな……。ここはまさに本当の『異世界』なんじゃないだろうな」
「か、彼方様! あちらの方も見てみて下さい!」
ティーナがもう1機のドローンの映像を指さす。
そこには――。全長が約50メートルは超える、大型のダンゴムシのような生き物が、こちらに向けて近づいて来ていた。
「いやいや……。流石にその大きさは規格外過ぎるだろう! あんなの巨大な山がそのまま地面をスライドして、ズリズリと動いてきているみたいな、ヤバい迫力があるじゃないかよ……」
巨大な紫色のダンゴムシの魔物は、丁度コンビニの真上付近をゆっくりと通過していく。
地下シェルターの中にいる俺達は、その重みでここが潰されてしまうのではないかと、室内で怯えながら身構えた。
しかし、俺達のいる地下の部屋には、振動はおろか。外の音さえも聞こえてこない。
紫色の巨大ダンゴムシは、そのままコンビニの真上をゆっくりと通過して……過ぎ去っていった。
もちろんドローンが映し出すコンビニの建物は、更にペッシャンコに押し潰され。平べったい鉄板の固まりみたいな状態にされてしまったけどな。
「……ティーナ、大丈夫か?」
「はい、大丈夫です。彼方様……。でも、この部屋の中はどうして無事なのでしょうか?」
「俺もそこはよくは分からないんだ……。でもきっとここは、外の世界とは違う別の空間に存在している場所なんだろうと思う。もし外と繋がっているなら、今頃、俺達も押し潰されてペチャンコになっていただろうしな……」
ある意味、前回のコンビニのレベルアップで。この『地下シェルター』が追加されていたのは、本当にラッキーだった。
もし、この地下シェルターが無かったとしたら。
谷底に落下した時の衝撃で、既に俺達は死んでしまっていただろうし。今さっきも巨大なダンゴムシに轢かれて、それこそ見るも無惨な死に方を遂げていただろうと思う。
なんだかコンビニが、俺達がこの先遭遇するピンチを見越してレベルアップをしているみたいな気がして、俺は少しだけ陰鬱な気分になる。
このコンビニ……。
マジで何か変なチートの神様の作為的な操作とかを、されてないだろうな。
「――どうかしましたか? 彼方様?」
「いや、何でもない……。ちょっと深く考え過ぎただけさ」
何となく、消灯スイッチが後出しだった件もあって。俺はこの世界のチートスキルのレベルアップに懐疑的な思いを抱いてしまう。
まあ、今回はそのお陰で命拾いをしているのだし。
そう文句ばかりを言ってもしょうがないか。
たまには、少しだけでも感謝をしておくとしよう。
だが、このまま地下シェルターの中にずっと篭り続けるという訳にもいかないだろう。
まずは、食料や飲料水の問題がある。
残念ながら、パソコンで発注したコンビニの商品は――全て、コンビニの倉庫に出現する。なので、この地下シェルターの中ではそれらを受け取れないのだ。
だから一度は、この地下シェルターから外に出て。外の広い空間でコンビニを消して、また新しく出し直さないといけない。
でもあんな巨大な魔物がウヨウヨ歩いている、この魔王の谷の底を……。生身の人間が歩くなんてのは、まず無理だ。ここは白い濃霧に包まれていて見晴らしも良くないし。踏みつけられたりでもしたら、完全におしまいだ。
安全を取るなら、ここは迂闊に動いたりはせずに……。
ドローンを使って、周辺の索敵を念入りにしてからの方が良いだろう。
俺はまだ稼働している2機のドローンのうち。1機を上空に飛ばし、まずこの谷の深さを調べてみる事にした。
谷の上から下を見下ろした時も、だいぶここは深さがありそうだったけど……。当たり前だが、俺達はずっとこんな谷底に居続ける訳にはいかない。
まだ脱出方法は分からないが、いつかはここから外に出なければいけないのだから。
上昇していくドローンの映像が、その高さの表示を数字で教えてくれる。
――200、300、400メートル。
おいおい、この谷はどんだけ深いんだよ……。
――1000、1500、2000メートル。
その後、ドローンの映し出す高さの数値が、なんと4000メートルを超えた辺りで――。
やっと白い霧の層を抜けて。上空の太陽の明かりがわずかに見えてきた。
すると――。
”――ザザザ――″
突然、ドローンの映像が乱れ始める。
「――何だ何だ!? 一体どうしたんだ!?」
上空に飛ばしていたドローンは、どうやら見えない『何か』に接触をして。そのまま下に降下して墜落してしまったらしい。
「マジかよ……。この魔王の谷には、谷底から上に上がろうとするモノを妨害する結界みたいなものでも、存在しているってのかよ」
上から底に落ちる時には、そんなの全然無かったぞ。
つまりはこれが、噂の『魔王の呪い』って奴なのか。
この谷に1度落ちた者は、2度と這い上がってくる事が出来ない。大昔から言い伝えられている伝承の秘密はどうやらそういう事らしいな。
……んん?
って事は、俺もティーナも。もう2度とここから上に脱出する事は出来ないって事なのか?
いやいやいや――それは流石に無いだろう。
それこそ、こういう時こそ……。ラノベ風の主人公補正みたいなのが自動発動して欲しいものなんだけどな。まあ、この世界はコンビニの勇者に対してはなぜか異常に冷たいから、期待はしないでおいた方が良さそうだけど。
とにかく今は脱出方法はもちろん大事だが――。この谷底で生き残る事がまずは先決だ。
俺達に残されたドローンは、あと1機だけ。
このドローンを使って、何とか安全にコンビニを出し直せそうな場所を、この魔王の谷の底で探しださないといけない。
俺はコンビニの周囲を最後のドローンでくまなく索敵する。
白い濃霧で覆われた谷底は、周辺の地形が複雑に入り組んでいて、かなり分かりづらかった。
でも粘り強く、約3時間ほど周辺の探索を続けた俺は……。
今現在のコンビニの落下地点から、西に30メートル程進んだ場所に。巨大な魔物達が侵入しづらい、岩壁の隙間のような場所を見つける事が出来た。
あそこなら、大型の魔物に踏まれる事もないし。敵に気付かれる可能性も低いだろう。
仮にコンビニの存在が気付かれて、地上部分を壊されてしまったとしても。地下シェルターの中にいれば、それは凌げるはずだ。
そして魔物が去った後で、またコンビニを地上に出し直す事も出来るだろう。
「よし、ここは一か八かだがやるしかないな! ティーナ、この地下シェルターからいったん外に出て、コンビニを出し直すぞ!」
「……外には、巨大な魔物がたくさん歩いていますが、大丈夫なのでしょうか?」
「ああ、ここからコンビニを安全に出せる場所までの道のりは、ドローンで何度もシミュレーションをしたから大丈夫だ! きっと安全にそこまで辿り着けると思う! 少しドキドキはするかもしれないけど、俺を信じてついて来てくれるか?」
「はい。私は彼方様を信じて永遠について参ります」
「よーし! なら、さっそく準備をするぞ!」
この地下シェルターのハッチを開けたら、外は恐ろしい魔物が溢れる、まさに地獄のような世界だ。生身の人間では到底生き残る事は出来ない。
それこそ、秒単位で瞬殺されてしまうかもしれない恐ろしい世界だ。
俺は念入りにドローンを使って周囲の様子を確認する。
もし、ハッチを開けた途端に……。上に魔物の巨大な脚があって。そのままペチャンコにされてしまうのだけは、本当に勘弁して欲しいからな。
そんなドジをしないように、用心深く念入りに周囲の安全を確認しておかなければならない。
そして、倒壊しているコンビニの残骸付近に魔物が完全に居ない事を確認した俺とティーナは……。
共に手を繋ぎながら、地下シェルターのハッチを開けて。谷底の世界へと大急ぎで飛び出した。
「うおおおぉぉ――っ!! ティーナ、行くぞおおおぉっ!! 猛ダッシュだああああぁぁーーっ!!」
「はいッ、彼方様!!」
俺達は全力で谷底の大地を走る!
もちろん、地下シェルターから出た飛び出た時点で、コンビニは能力を使ってすぐに消しておいた。
後は、安全な場所でコンビニを出し直すだけだ。
白い霧のせいで周囲の方向感覚は全く分からない。
それでも、俺達は事前にドローンで確認した方角を信じて、全力で駆け抜けるしかない。
その距離は、直線でたったの30メートル。
駆け足で行けば10秒もかからないはずなんだ。
心臓が止まりそうになるくらいに、緊張で鼓動を高鳴らせながら――。
俺達は谷の岩壁にある場所にまで――何とか辿り着く事が出来た。
巨大な岩壁の隙間に入った俺は、すかさずコンビニを目の前の場所に出現させる。
「出でよーーッ!! コンビニーーッ!!」
俺とティーナの目の前に、再び出現するコンビニ。
丁度、谷の岩壁にある窪んでいる隙間に。コンビニの建物全体は、スッポリとはまり込むようにして収まった。
「――よし、今だ!! 中に入るぞ、ティーナ!!」
俺とティーナはコンビニの店内に急いで駆け込み、真っ直ぐに倉庫部屋に向かう!
そこで、ありったけの食料と飲料水を袋に詰めて。地下シェルターの中へとダッシュで運び込む。
あれだけ巨大な魔物が、ウヨウヨと外を歩いている世界なんだ。
地表に立つコンビニは、いくら狭いスペースに隠しているとはいえ。きっとすぐに見つかってしまうだろう。
だから、俺達はすぐにでも安全な地下に隠れないといけない。
シェルターの中でしばらくは生活が出来る様に。ここで食料品を大量に確保しておかないといけないんだ。
「か、彼方様……! 巨大な魔物が、こちらに向けて接近して来ています!!」
「くっそ……! もうコンビニに気付いたのかよ!? 仕方がない!! ティーナ、急いで地下シェルターに避難するぞ!!」
「ハイッ! 彼方様!!」
事務所のパソコンのモニターには、黒い色をしたカディスの亜種タイプの魔物が1匹。こちらに向けて猛突進をして来ているのが映っている。
たった1匹とは言っても、その全長は40メートル近くある超巨大な化け物だ。
強化ステンレスパイプシャッターを壁面に展開しているコンビニでも、おそらく一撃で粉砕されてしまうだろう。
持てる限りの食料品や衣類を抱えた俺達は、慌てて地下シェルターの中に逃げ込む。
そして、ハッチを閉めようとしたその瞬間……。
″”ズドドドドーーーーーーーン!!!!″”
物凄い轟音と、コンクリートや金属パイプが砕ける音が、閉める寸前のハッチの隙間から聞こえてきた気がした。
地下シェルターの中は、外の空間と隔離された異空間だ。
コンビニの事務所と繋がる扉をしめた事で。外部の音は一切聞こえなくなった。
だが、直前に聞こえてきた衝撃音から……。
地表のコンビニ部分は、巨大な魔物の突進を受け。激しいダメージを負ったのは間違いないだろう。
俺は地下シェルターの中のパソコンを起動させて、外の監視カメラの映像を確認してみる。
「うおっ、マジかよ……!? 一撃で、ここまでコンビニが完全に破壊されてしまうのかよ!」
外部の様子を映すカメラのほとんどは破壊されていて。映像は全て真っ暗になっている。
ほんの僅かに残った店内用の監視カメラの映像には、コンビニの建物が完全に倒壊していて。外から店内がむき出しの状態になっているのが分かった。
店内には、僅かに数本の柱が残っているだけのボロボロな状態になっている。
「ハハハ……。こんなの完全に無理ゲーじゃないかよ……」
こんな恐ろしい所で、生きていけるはずが無いじゃないか……。
俺が地下シェルターの中で、パソコンのモニターの映像を見つめながら乾いた笑いを1人で浮かべていると。
『――ピンポーン! コンビニの勇者のレベルが上がりました』
俺の脳内に、お馴染みのレベルアップ音とアナウンス声が突然流れてくる。
……だが、今回はいつもと違う事があった。
『――ピンポーン! コンビニの勇者のレベルが上がりました』
『――ピンポーン! コンビニの勇者のレベルが上がりました』
『――ピンポーン! コンビニの勇者のレベルが上がりました』
なんと、能力のレベルアップ音が……。
立て続けに4回も、連続で俺の脳内に鳴り響いてきたのだ。