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第二百八十九話 女神の泉の攻防④


「逃走経路を作ってくれたって、それは本当なのか、ククリア?」



 俺は頼れる相方のククリアに、問いかけてみる。


 ククリアは俺が夜月皇帝(ナイト・エンペラー)を追って。敵陣の中に突入している間……ずっとコンビニに突撃してくる、ライオン兵達の相手を引き受けてくれていた。


 合計10体を超える巨大土竜(ビッグ・モール)達を巧みに操り。無限に湧いてくるライオン兵達を何度も撃退して、倉持、名取の2人を守り続けてくれた。


 どうやらククリアが操る巨大土竜(ビッグ・モール)達は、何らかの魔法的な能力強化が行われていたらしい。


 その大きな表皮は、鋼鉄のように硬く頑丈になり。両手から伸びる鋭い爪は、ライオン兵の体を一撃で引き裂くほどに強化されている。


 コンビニの周りを囲むようにそびえ立つ10体の巨大土竜(ビッグ・モール)達は、押し寄せるライオン兵の群れを食い止める、防波堤のような役割をずっとこなしてくれた。



 でも、それももう……限界に達している。


 無数のライオン兵達に群がられた巨大土竜(ビッグ・モール)達は、次々と打ち倒されていき。


 現在、コンビニの周囲に残されている巨大土竜(ビッグ・モール)は、わずか2匹だけにまで追い込まれていた。


 ククリアは残り2匹となった、巨大土竜(ビッグ・モール)達を操りながら、俺の問いかけに答えてくれた。



「ええ……こちらの形勢が不利なのは感じていましたからね。地中に眠る巨大土竜(ビッグ・モール)達をここに呼び寄せる際に、大きな地下のトンネルを掘らせてから呼び寄せておきました。その地下トンネルに入って、全速力で逃げれば迷いの森の外に出られるかもしれません」


「マジかよ……さすがはククリアだな! 賢すぎて俺は本当に頭が上がらないよ。その地下トンネルをぜひ、使わせてくれ! みんなをコンビニの地下シェルターに入れたまま、コンビニ支店をカプセルに戻して。俺とククリアで全速力でその地下トンネルを駆け抜けるんだ!」


「分かりました。……では、ボクは地下トンネルへの入り口作りますので。一時的にライオン兵達の足止め役を、コンビニの勇者殿にお願いしたいです!」


「オーケー、任せれたぜ! まだ生き残る希望があるのなら、俺は全力で奴らを食い止めて見せるぞ!」



 よし! ククリアのおかげでようやく、かすかな希望が見えてきたぞ。


 朝霧が予言していたような事態は、絶対に起こさせない。ティーナやみんなの事は、必ず俺が守ってみせる。


 コンビニの地下シェルターに入っているみんなは、例えコンビニをカプセルの状態に戻したとしても。そのままシェルターの中に残っていられるから、安全を確保出来るだろう。


 右腕を失ったフィート。そしてライオン兵に襲われて片足を喰われた倉持も、確かに重症ではあるけど……。

 シェルターの中には、『回復騎士(ヒーリング・ナイト)』の遺伝能力を持つアリスがいてくれるから大丈夫だ。


 アリスの回復能力は、コンビニ本店の香苗美花(かなえみか)よりも優れているくらいだからな。だからきっと、フィートと倉持の怪我を完璧に治療してくれるはずだ。



 ――そう。俺達は、まだ誰も『大切な仲間』を失ってなんかいない。


 だから朝霧の予言は、必ず回避出来る!



「うおおおおおぉぉぉぉーーーッ!!」



 大きな雄叫びを上げながら、俺はコンビニに迫り来るライオン兵達の群れのど真ん中に突撃していく。


 ククリアが、逃走経路を作ってくれている間。


 出来るだけ多くのライオン兵達を、俺が1人で相手をしなくてはいけない。だからここは目立つ行動をして、敵の目を俺だけに惹きつけさせよう。



 ――すると。突然、コンビニの上空から大きな雄叫びのような声が聞こえてきた。


 空中にいるドローン部隊の防空網が破壊され。無防備になったコンビニの上空から、再びライオン兵達の大群がこちらに向けて飛び込んできやがった。


 敵はまだ2万匹以上は余裕でいるからな。最前線にどんどん突撃しようと、後続のライオン兵達の群れが、空に向けて一斉に大ジャンプを開始したのだろう。



 さっきと違って、コンビニの屋上に設置された地対空ミサイルの発射装置はもう壊されている。


 だからここは、俺自身の力で……空から降ってくるライオン兵の(かたまり)を吹き飛ばさないといけない。



「よーーし! もう一度、全員ぶっ飛ばしてやるからな! 覚悟しやがれよ、『青双龍波動砲セルリアン・ツインレーザー』ーーッ!!」



 俺はコンビニの上空にむけて。再び両肩に浮かんでいる2つの守護衛星から青いレーザー砲を発射させる。



 “”ズドーーーーーーーーーン!!””



 空中から、巨大な塊となって降ってきたライオン兵の集団は……おおよそ200匹くらいはいただろう。


 大きな塊となり、空から隕石のように落ちてきていた全てのライオン兵が……。俺の放った2本の青いレーザービームの直撃を喰らって。空中でバルーン風船のように一気に弾け飛んだ。



 真ん中に密集していたライオン兵達は、ビームの光熱で瞬時に全身が溶け去り消失する。


 その周りにいたライオン兵達は、爆発の衝撃で四方八方に飛び散っていった。



「――よしッ! 後は俺が、全力で敵をぶちのめしてやるだけだぜ!!」



 空中から降ってくるライオン兵達を退けた後は……。俺はひたすらコンビニの周辺に無限に駆け寄ってくる敵を、サッカーボールのように順番に蹴り飛ばしていった。


 気持ち的には、無限にもぐら叩きゲームをしているような感覚だな。


 次々と、四方八方から湧いて出てくるライオン頭を。オモチャのハンマーではなく……強烈な蹴りによって弾き飛ばしていく。当たり前だけど、それでも敵の勢いは一向に収まる気配はなかった。



 なにせ、ライオン兵の群れはまだ2万匹以上いるんだ。軽く数十匹くらいの敵を蹴り飛ばしたとしても、後から敵は次々と無限に湧いて出てくる。


 ここまでくると、流石に俺も体力の限界が近くなってきた。


 思いっきりライオン兵の顔を正確に狙って蹴り飛ばしているつもりなのに……。狙いを外してしまう確率が段々と上がってきている。しかも蹴り飛ばしたライオン兵達は、まだ生きていた。


 つまりは俺の蹴りの威力が、確実に落ちて来ているんだ。これじゃあ、ただ敵を弾き飛ばすだけで。コンビニ周辺の戦場は、本当の意味での無限もぐら叩きゲームと化している。



 いや、正確には無限ライオン蹴りゲームか。



 俺が必死こいて、汗を流しているこのタイミングで――。


 空気が読めない事でお馴染みの、コンビニのレベルアップアナウンス音が、また俺の脳内に直接響いてきた。

 


『――ピンポーン! コンビニの勇者のレベルが上がりました!』



「このタイミングでかよッ……!!」


 いや、こんな戦闘の真っ最中でも。久しぶりにレイチェルさんの優しい声が聞けて少しだけ癒されたぜ。



 早速だが、すぐに能力を確認してみる事にしよう。


 コンビニが大ピンチな時は、いつだって俺は……このレベルアップ音によって助けられてきたんだからな!



 もちろん、じっくりと自分の新能力を確認しているような時間なんてない。



 俺は迫り来るライオン兵の波を蹴り飛ばしつつ。頭の中だけで小さく『――能力確認(ステータスチェック)』と唱えて。

 無心で敵と戦いながら、横目でチラリと新しく表示されたステータス情報を覗き込んでみた。



 そこに書いてあった、俺の新しい能力は………。




名前:秋ノ瀬 彼方 (アキノセ カナタ) 

年齢:18歳


職業:異世界の勇者レベル33


スキル:『コンビニ』……レベル33


体力値:33

筋力値:33

敏捷値:33

魔力値:13

幸運値:33


習得魔法:なし

習得技能:異世界の勇者の成長促進技能レベル5

称号:????


――コンビニの商品レベルが33になりました。

――コンビニの耐久レベルが33になりました。


『商品』 


チョコミント風オムライス

チョコミント風カレー

チョコミントパスタ

チョコミントムース

チョコミントスムージー

チョコミント風チーズケーキ


が、追加されました。


『雑貨』


チョコミントカラー下着

チョコミント色テント

チョコミント傘

チョコミント食器

チョコミントテーブルカバー

チョコミントテーブル

チョコミント椅子


『耐久設備』


コンビニガード《限定チョコミントカラーver》70体

ドローン《限定チョコミントカラーver》20機


が、追加されました。




「うおおおおぉぉぉぉーーーッ!?」



 いや、マジで何なんだよ! この連続チョコミントフィーバーはよ……!!


 前回もそうだったけど、コンビニをチョコミント商品で埋め尽くすつもりなのかよッ!! ちょっと運営の中の人出てこいよ! 俺のコンビニに一体何の商品を仕入れてきやがるんだ! 


 今の俺のコンビニに必要なのは、絶対に新しい武装兵器だろっ! チョコミント風オムライスって何だよ! いくらチョコミン党の俺でも、それは流石に味が恐ろしくてビビるぞ!!



 ――クソッ……!


 俺は意識を再び、ライオン兵達との戦いに集中させる事にする。


 ここは無駄な事にエネルギーを割いてる余裕なんてないからな。新しいコンビニの新商品はまた、チョコミント祭りだった。それだけの事だ。今は事実を淡々と受け入れるしかない。



「――コンビニの勇者殿ッ!! 地下トンネルが開きましたッ!!」



 コンビニの近くから、ククリアの叫ぶ声が聞こえてきた。


 ――よし! でかしたぜ、ククリア!

 これでここから逃げ出せるぞ!!



 俺はすぐに、ククリアの待つ場所にまで駆け寄っていく。


 するとそこには、巨大土竜(ビッグ・モール)達が通れるくらいの大きな縦穴が、ぽっかりと地面に口を開けていた。


「今から、この場所を通過して女神の泉から離れます! コンビニの勇者殿は、コンビニをカプセルに戻して。後方から追ってくる敵を防ぐ、しんがりの役をお願いします!」


「任せろ! 絶対にみんなの命を守りきってやるぜッ!」



 俺は空っぽになった女神の泉の中央に建っている、コンビニ支店1号店を急いでしまう事にする。



「消えろーーッ!! コンビニ支店1号店よーーッ!!」


 ポヨーーンと軽い音を発して。

 女神の泉の中から、一瞬にして消失するコンビニ。



「よーし、後は俺からの置き土産だ! 最後にこれでもくらいやがれッ!!」


 ククリアと共に巨大な縦穴に侵入した俺は、一度後方を振り返って。もの凄い勢いで俺達の後をついてこようとするライオン兵の群れに向けて。両肩の守護衛星の照準を合わせる。



「いっけええぇぇーーーッ!! これで最後だ!! 『青双龍波動砲セルリアン・ツインレーザー』ーーーッ!!」



 ””ズドーーーーーーーーン!!!””



 俺が最後に、手加減なしで放った全力の青いレーザー砲が――。迷いの森の夜を切り裂くようにして。地中から一直線に夜空に向けて放たれる。


 そのレーザー砲によって。間違いなく300匹を超えるライオン兵達が、一瞬にして霧散して消え去ったのは間違いなかった。


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