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第二百七十五話 カエルの森の妖精


「ペィペィペィペィペィ……むにゃむにゃ〜」

 


「――おい、お前は一体、何者なんだ?」



 俺は緑色の小さなカエル達に混じっていた、変なおっさん姿のカエル人間に声をかけた。


 外見は人間の子供くらいの大きさがあり、頭の部分だけ黄色いカエルの顔をしている。そしてそれ以外は、中年の男性のような姿をした謎の生物だ。



「……むにゃ? あるぅぇ〜〜? どーして、オラの姿が人間に見えてるんだぁ〜? オラはカエルの妖精だから、人間には絶対に姿が見えないはずなのにぃ〜」


「いやいや、完全に丸見えだぞ。一匹だけ、黄色いカエルだし。ゲコゲコ言わないで、ペィペィ言ってるし。しかも、頭以外は人間のおっさんの体つきをしてるし」


「あるぇまぁ〜? 人間に自分の姿を見られるってのは、結構恥ずかしいもんだなぁ〜。今まで、1万年近くこの辺りで生きてきたけどもぉ。だ〜れにも、見つかった事なんてなかったから、少し恥ずかしぃなぁ〜」


「えっ……!? 1万年を生きているだって?」



 それじゃあ、太古の昔に生きていたコンビニの大魔王より。遥かに昔から、この黄色いカエル人間は生きてきたって事なのか?

 いや、もしかして……。このカエルは女神アスティアがこの世界に誕生した時代から、ずっと今までここで生き続けているんじゃ……。



「か、彼方様、どうなされたのですか……?」


 ティーナが、なぜか不思議そうな顔をして。後ろから恐る恐る、俺に小さな声で問いかけてきた。


「えっ、いや……。ここに寝ている不思議なカエル人間に俺は今、話しかけてたんだけど。何でも1万年近くも、このカエルはここで生きてきたらしいんだよ」


「カエル人間だって? さっきから何を訳の分からない事を言っているんだい、彼方くん?」


「にゃあ〜、変態お兄さんが、妄想の中の友達とお話しする謎スキルをゲットしちゃったにゃ〜! これでコンビニのトイレの中で、1人でぶつぶつ話し始めたら、もう手遅れなのにゃ〜」



 倉持やフィートが、俺に対して不審な目をして見つめてくる。


 ……えっ、これはどういう事なんだ? 


 もしかして、みんなにはこの黄色いカエル人間のおっさんが見えていないのか?



「コンビニの勇者殿……。コンビニの勇者殿の目には、ボク達には見る事の出来ない『何者』かが見えていて。そこでその者と今、会話をしているという事でいいのですか?」



 ククリアが現状を確かめるようにして、俺に問いかけてきた。


「……ああ。俺にはここに黄色いカエルの頭を付けた、カエル人間が見えている。そしてそいつは、この地で1万年以上も前から生きてきたカエルの妖精だと言っているんだ」


「カエルの妖精? それは本当なのかい、彼方くん?」


「どごどこ、どこにいるのにゃ〜! 美人のカエルの妖精さ〜ん!」


「彼方様……私には、カエルの妖精様の姿を見る事が出来ないみたいです……」



 どうやらみんなには、本当に黄色いカエルの姿は見えていないようだな。

 

 それだけじゃない。おそらく黄色いカエルの話す声さえも。みんなには全く聞こえていないのだろう。つまりは俺がここで独り言を話しているようにしか、見えてないという訳か。


「これは、どういう事なんだろう? 何で俺にだけ、このカエルの妖精の姿が見えていて、しかも話す事が出来ているんだ?」



 驚いた俺の声に反応して。黄色いカエル頭のおっさんが、寝ながら俺に話しかけてきた。


「そいつは、オラが知りたいくらいだよぉ〜。オラは、このカエルの森を見守り続けてきた『不老のカエル』。つまりはカエルの妖精なんだぁ〜。オラはアスティアはんと、同じように歳を取らないからぁ。昔からず〜〜っと、この森の中でひっそりと生き続けてきたのさぁ〜」


「――? お前、女神アスティアの事を知っているのか?」


 眠りかけている黄色いカエルのおっさんに、俺は思わず大声で問いかけてしまう。


「ん〜? 知ってるも何もぉ〜、大昔にここで一緒に暮らしていたくらいだからなぁ〜。アスティアはん、今は『女神』なんて大層な呼び名で呼ばれているのかぁ〜。あの人も、色々と大変なんだなぁ〜。あと、オラの名前は『コウペイ』だ。お前じゃないから、口の聞き方には気をつけるんだぞぉ〜〜!」



 何て事なんだ……。


 まさか、女神アスティアの事を知っている人物。正確には黄色いカエルの頭をした謎のおっさんだけど。

 ここで、アスティアに直接会った事のある関係者に出会えるだなんて思わなかった。



 今まで、ずっと知りたかった女神アスティアの秘密。


 そして女神教の真の目的。更には、このカエルの森の中心部にある女神の泉への行き方についても……。もしかしたら、この『コウペイ』を名乗るカエルの妖精なら、全てを答えてくれるかもしれないぞ。


「みんな、どうやらこの黄色いカエルの妖精の姿を見れて、話が出来るのは俺だけらしい。そして、このカエルの妖精はきっと女神の泉への行き方を知っていると思う。だから、みんなは少しだけこの辺りで待っていてくれないか? 俺はカエルの妖精と、2人きりで話をしてくる」



 コウペイの姿が見えないみんなは、俺の言葉に少しだけ動揺しているみたいだった。


 まあ、それは仕方が無いだろう。

 傍目には、俺が一人で何も無い場所に向かって、ずっと独り言を話している怪しい姿にしか見えないんだから。思わず、ザワザワしてしまうのは当然だ。


「……彼方様だけが、そのカエルの妖精様とお話が出来るのでしたら、私達はここで大人しく待っています。きっと、良い結果を聞き出せる事をお祈りしていますね!」


 俺の事を一番理解してくれているティーナが、真っ先に返事をしてくれた。


「まあ、怪しいキノコを食べて。怪しい世界に変態お兄さんだけが1人で迷い込んでいる可能性も無くはないけどにゃ〜。このままだと、迷いの森の中心部に行く方法が分からないのは事実だし、しょうがないから、お兄さんの言うことを信じて待つ事にするにゃ〜」


「コンビニの勇者様、どうかお気をつけて下さいね! 私もコンビニの勇者様の事を信じておりますから」


「コンビニの勇者殿。もし、女神アスティアの事についてのお話が聞けるのでしたら、ぜひボクもそのカエルの妖精さんと一緒に話がしたかったです。……ですが、ここはコンビニの勇者殿に全てお任せ致します。でも、ボク達にはあまり時間が無い事も忘れないで下さいね!」


「ああ。分かった。みんな、俺はこのカエルの妖精コウペイと森の入り口で話をしてくるけど。すぐに戻ってくるから、安心して待っていてくれ」



 俺はみんなに手を振って。森の入り口付近へと進んでいく。



 先ほどまで地面に寝そべっていた、コウペイは……。


 『よっこらせぇ〜』と、やはり仕草までおっさんっぽく。腰に手を当ててゆっくりとその場から立ち上がり。


 俺をカエルの森の入り口付近にまで、案内してくれた。



 森の入り口付近は、カエルの数が少ないみたいだ。

 不用意に歩いて、うっかりカエルを踏み潰してしまうという事が無さそうで安心した。


 やっぱり相手は、1万年以上もこの世界を生きてきた不老のカエルだからな。目の前で仲間であるカエルを踏み潰してしまうような、失礼はしない方が良いだろう。



「じゃあ、コウペイ。俺に全てを話してくれないか? コウペイは女神アスティアの事をどれだけ知っているんだ? そもそもアスティアとは一体……何者なんだ? 人間なのか? 神様なのか?」



 俺の真剣な問いかけに対して。『やれやれぇ〜』と地面にあぐらをかいて、再びおっさん座りを始めた黄色いカエル頭の妖精は……。


 指で頭頂部の部分をポリポリとかきながら。気だるそうに答えてくれた。



「アスティアはんが、何者かだってぇ〜? アスティアはんは、ただの普通の人間だぁ〜。たしか『マクティル王国』とかいう国の、お姫様だったとオラは聞いているぞぉ〜」


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