第二百六十話 最初の決断
「俺にグランデイル軍に投降しろだって!? 倉持、お前は自分が何を言っているのか分かっているのか?」
俺はようやく倉持のイケメン顔を、視界の正面に入れる事にする。
あまり倉持の顔を正面から見たくなくて、避けてきたけど。もうそんな事をしている場合じゃない。コイツは今、あまりにも意味不明な提案を俺にしてきやがった。
グランデイル軍に投降するって事は……つまり俺が、倉持達に降伏するって事じゃないか。そんな事をこの俺が本気ですると思っているのだろうか?
「話は最後まで聞いて欲しいな、彼方くん。君が怒るのは当然だよ。コンビニの勇者の力は僕もよく知っている。僕と美雪さんの2人が協力して戦ったとしても、彼方くんには絶対に勝てないだろう。それくらいの実力差はちゃんと理解をしているさ。それなのに、彼方くんに降伏をしてくれと頼んでいるのだから、分不相応なお願いをしている事は十分承知しているつもりだよ」
「なら、どうしてそういう提案になるんだ? 理由があるのなら、聞かせて貰おうじゃないか」
俺は倉持に詰め寄るようにして、尋ねた。
どうやら俺からツッコミを受けるのは、倉持としては想定内だったらしい。
やけに落ち着いた表情で、倉持は流暢に説明をしてきやがった。僕はプレゼンテーションが得意なんですよ、と言わんばかりのそのIT系の若いCEOみたいなドヤ顔が最強にムカつくけど。今は我慢をして、倉持の話を聞く事にしよう。
「彼方くんに投降をしてもらうのは、あくまでも表面上の事なんだよ。僕を監視している者達の目を欺く為のね。グランデイル軍はあの城を包囲して、城の中にいる人達には危害を加えないという事を条件に、彼方くんに降伏をして貰う事にするんだ」
俺は訝しげな視線で、倉持を睨み続ける。
もちろん、少しでも怪しげな言動取ったら返り討ちにしてやるくらいの覚悟でいる。元々、俺の中の倉持への信用度は全く無いに等しいからな。
倉持の提案内容は、基本的に俺にとっても常識的な範囲に収まる内容となっていた。つまり、この俺にもちゃんとメリットがあり。倉持の目的にも、同意出来る部分がちゃんとあったという事だ。
まずは倉持と名取の2人が、どうしても『女神の泉』を目指したいという理由には、コイツらなりに必然の目的があるようだ。
それは、あのグランデイル女王のクルセイスによって。倉持と名取は、強制的に『呪いのアイテム』を装着させられてしまっているとの事だった。
「呪いのアイテム……? それは一体、何なんだ?」
倉持と名取は、それぞれ右手に付けている『青いブレスレット』のような物を俺に見せてきた。
「これは僕と美雪さんが、グランデイル南進軍の総大将に任命された時に、その証としてクルセイスに付けられたものなんだけどね。やられたよ……。あのクソ女に僕達はまんまとハメられた訳さ。これは一度付けたら二度と外せない、呪いのアイテムになっているんだよ」
「見たところは普通のブレスレットのように見えるけど……。無理矢理外すと、何か問題でも起きたりするのか?」
よくファンタジー世界にあるような、外した途端に死に至るような呪いとか、これはそういう類のモノなのだろうか……?
「そうだね。もしこの青いブレスレットを強制的に外したり、壊したりすると。僕と美雪さんは世にもおぞましい、グロテスクな怪物に変貌を遂げる……という訳なのさ。そしてそのうちに自我も失い、醜悪な魔物へと完全に変わり果てるだろうね」
倉持は頭を左右に振って。やれやれ……と、大袈裟なため息を漏らして見せた。
倉持の言うこの呪いのアイテムとやらは、倉持達と一緒にいた『氷術師』の勇者である霧島正樹と、『水妖術師』の勇者である金森準にも付けられているらしい。
倉持と名取が、このクルセイス特製の呪いのアイテムの効果を知ったのは――ミランダ領での戦場の後の事だった。
クルセイスは、戦場で瀕死の状態にあった金森を蘇生する為に。このアイテムの呪いを強制的に発動させて、金森の体を醜悪な魔物の肉体へと変貌させてしまった。
俺は水道ホース野郎の金森が、実はまだ生きていて。グランデイル軍を率いて暴れ回っているという噂だけは、聞いていたけれど……。まさかそんな事になっていたなんて思いもしなかった。
つまり倉持と名取は、この呪いのブレスレットを付けている限り。クルセイスに対して反抗出来ないように、常に監視されている状態になっているという訳だ。
ただ……倉持には、防御結界を張る事の出来る名取が味方に付いている。レベルアップをした名取の力を借りれば、もしブレスレットの呪いが発動しても。
名取が張る、呪い緩和の防御結界内にいる限りは、その効力を抑える事が出来るとの事だった。
「僕達は何とかして、あの邪悪なクルセイスの支配から抜け出そうと試行錯誤していたんだ。そんな時に、バーディア帝国にあるという伝説の『女神の泉』の噂を聞いたのさ。何でも女神の泉が持つ特殊な効能は、この呪いのアイテムの効果を打ち消してくれるらしい。だから僕と美雪さんはクルセイスの命令に従い、グランデイル軍を率いて、忠実に帝国領への侵攻を進めているフリをしてきたんだよ」
「お前と名取が、どうしても女神の泉に向かいたいという理由は分かった。そしてお前達2人は、まだクルセイスさえも知らない女神の泉の場所を特定している。だからそこに行く為に、護衛役としてこの俺に協力をして欲しいという訳なのか」
「そうなんだよ、彼方くん。さすがだね! 君は昔から物事への洞察力が異常に鋭い時があったからね。いつもはバカ丸出しで、のほほんとしたナマケモノみたいな顔で過ごしているくせに。急に野生の勘を働かせて、油断ならない態度や行動をする時があったから、君ならきっと理解してくれると信じていたよ」
褒められているのか。貶されているのか。
よく分からない表現を倉持が俺に対してしてくる。
まあ要するに、コイツは俺の事が気に食わないんだろう……と、理解した。
昔からコイツは、何でか俺に対して冷たい態度を取ってきた印象があるからな。理由は良く分からないけど、何か俺が機嫌を害するような事でもしたのだろうか。
倉持は他にも、女神の泉に向かいたい理由を俺に説明してきた。
何でも倉持は、異世界の勇者としてのレベルがかなり上がっていたらしい。
現在は、『不死者』の固有能力として。合計で7回までなら、死んでも蘇生が出来るという能力を手に入れているようだ。
「ふふ……。僕も本当に死に物狂いだったからね。それでも、既に5回分の命はクルセイスに奪われてしまったから、僕が現在生き返れる回数は、たったの2回だけという訳さ。それでも、それが貴重なものである事は間違いない。あのクルセイスに反旗を翻すには必要な能力だからね。おそらく女神の泉に行く事が出来れば、僕の能力は更に向上するだろう」
「つまり、お前はクルセイスにも、そして帝国の夜月皇帝にもバレないように。こっそりと少数精鋭の部隊で女神の泉に向かい、『不死者』の能力を大幅に向上させたいという訳なんだな?」
「そうだね。僕の率いてきたグランデイル南進軍は、あの城を包囲する為にここに駐留させておく。そして少数精鋭の味方だけを引き連れて、僕と美雪さんと、彼方くんの3人で女神の泉を目指したいんだ」
「グランデイル軍に投降した俺を勝手に連れていって。お前の監視者達は本当にそれで納得するのか? むしろ逆に怪しまれるんじゃないのか?」
最強の能力を持つコンビニの勇者を、夜月皇帝に従うライオン兵対策の護衛として、連れていきたいという希望は分かる。
でも、城のみんなを守る為に人質として投降したこの俺を。倉持達が勝手に連れ出して、単独行動をするというのは大丈夫なのか?
それこそ、監視者達に怪しまれてしまうんじゃないのだろうか。
「……そこは大丈夫だよ、彼方くん。クルセイスの部下達には、投降した彼方くんが実は帝国南部にある『座標』の場所を知っていた。そしてそれを調査する為に、僕と美雪さんが少数精鋭の部隊だけを連れて、彼方くんを同行させたという形にするつもりだから」
「お前……『座標』の事まで知っていたのかよ?」
「もちろんさ。座標はクルセイスも、女神教の幹部達も探し求めているという重要なモノだからね。この僕にとっても、元の世界に戻る為には必要なものだ。その場所を、彼方くんが実は知っていたという形でクルセイスの親衛隊には報告しておく。そしてそれを手に入れる為に、彼方くんを連れて僕と美雪さんは隠密行動を取るという計画なのさ」
倉持はどうだい? と言わんばかりのドヤ顔で、俺に自分の考えたプランを誇らしげに説明してくる。
「クルセイスは、座標を喉から手が出るくらいに欲しがっていたからね。それを見つける為に探索に向かったという事にすれば、彼らに怪しまれる事はないはずさ」
……なるほどな。
ようやく倉持達の計画の全貌が俺にも見えてきた。
倉持と名取は、自分達に付けられた呪いのアイテムを取り除く為に、そして自分達の能力を上昇させる為に、伝説の女神の泉へどうしても行きたい。
だが……帝国の夜月皇帝が管理をしている女神の泉に2人だけで向かうには心配がある。
そこで最強の力を持つと評判の、コンビニの勇者の俺を一緒に連れて行きたいらしい。
その為にも、ティーナや、ミズガルド達のいるカラム城を3万人を超えるグランデイル軍で包囲して。城の中の人達の安全を確保する条件と引き換えに、一時的に俺に、倉持軍に投降したという形を取らせる。
そして、クルセイス達の求める『座標』のありかを……実は俺が知っていたという虚偽の報告を監視者達に伝え。その場所を調べに行くという名目で、密かに倉持と名取は俺を連れて、帝国領の南部へ堂々と探索に向かうという訳だ。
城の中の人々を人質を取られている俺は、倉持に逆らえない。だから探索に同行させても不自然ではないからな。
……でも実際は、名取が既に場所を特定している女神の泉に密かに向かい。そこで2人は呪いのアイテムを外し。クルセイスに反感を抱く一部の反乱勢力と共に、グランデイル王国を再奪取しようという計画を立てているという訳か。
国家転覆罪で、クルセイスに逮捕された事がある倉持がまさに今、それを現実のものとして……クーデターを実際に行おうとしている事になる。
「まぁ、そういう事になるね。これは彼方くんにとってもメリットがある事なんだ。女神の泉の場所を知っている僕達に同行する事で、彼方くんも女神の泉に行く事が出来る。そこでコンビニの能力を、更にレベルアップさせる事も出来るはずだ。呪いのアイテムが外れたら、僕と美雪さんは彼方くんの仲間になる事を約束するよ。一緒にあのクルセイスを打ち倒して、この世界に平和を取り戻そうじゃないか!」
倉持が両手を翼のように大きく広げて。
怪しい救世主のようなポーズをとって、俺に片目でウインクをしながら優しく微笑みかけてくる。
ああ、何でだろうな……。
お前がそういう態度を取れば取るほど。余計に怪しが目についてしまうんだけど、きっと本人はその事には無自覚なんだろうな。
倉持が思っていたよりも、この世界の知識を深めていた事には俺は驚いた。
そしてコイツは俺が知らないグランデイル王国の情報も、沢山知っているのだろう。でも、俺の本当の敵である『コンビニの大魔王』の事までは理解していない。
コイツにとっての敵はあくまでもクルセイスで。その先にもっと恐ろしい太古の悪魔がいる事までは、理解出来ていないのだろう。
だから、俺はここで決断をしないといけない。
つまり倉持の提案してくる案に、俺が乗っかるのかどうかという事をだ。
「倉持……俺にも実は、女神の泉に向かわないといけない理由があるんだ。泉に向かうメンバーとして、俺以外の仲間を引き連れていく事は可能か?」
俺からの突然の提案に対して、倉持は難色を示した。
「それは無理だね。あくまでも彼方くんは、僕達のもとに人質として投降したという形になっているんだ。もし彼方くんの仲間を一緒に連れて行くとしたら、僕達の行動はきっと監視者達に疑われてしまう。この呪いのブレスレットが外せるまでは、僕も美雪さんも、少しでも彼らに疑われるような行動は出来ないからね」
「……つまりお前の提案は、あくまでも俺1人だけを女神の泉に連れて行く事が前提なのか?」
「すまないけど、今回はそうさせて貰うよ。僕も美雪さんも、これまで忠実にクルセイスの指示に従うフリをし続けて自分達の安全を確保してきたんだ。ここまできて、少しでも疑念を抱かせるような行動を取る訳にはいかない。女神の泉に到達をして、この呪いのブレスレットを外せた後なら、何でも協力をするよ。彼方くんの仲間を女神の泉に連れていって構わないし。僕と美雪さんも、ぜひその協力をさせてもらおうじゃないか!」
「………………」
俺は両目を閉じて、じっとその場で思案する。
これはきっと、重要な選択肢になるに違いない。
俺が帝国に来た一番の目的は、女神の泉に行く事だ。遺伝能力者として、眠っているティーナの能力を女神の泉の力によって覚醒させたい。
そして、ククリアが仕える『動物園の魔王』。現在は眠り姫となり、徐々にその力が弱まりつつある最強の魔王、冬馬このはを目覚めさせる。
それは、きたるべき最終決戦。『コンビニの大魔王』である、もう1人の俺との戦いに備える為にも絶対に必要な事だ。
だが……倉持達は、クルセイスに疑われないように。女神の泉に向かうのは、俺だけにして欲しいと要求してきている。
もしその計画に乗れば、ティーナはカラム城に閉じ込められたままになるだろう。俺がティーナから離れている間に、何かしらの危機がティーナに迫ってきたら、対処する事が出来ない。
俺は彫像のように両手を広げながら。俺からの快い返事を待ち続けている、倉持の怪しい目を見つめる。
そして、直感する。
やはり俺には、この倉持の話を100%信用する事が、どうしても出来ない。
確かに辻褄は合う。納得出来る部分もあったさ。
だが……根本的に俺は、倉持を丸ごと信用するなんて絶対に出来ない。
もし、倉持の話が全部、嘘なら……全てはクルセイスが駒として利用している倉持に言わせているだけの虚偽なのだとしたら。
本当は倉持と名取は、女神の泉の場所を知らないかも知れない。そうなったら俺は単にみんなから切り離されて、敵の罠に落ちるだけだ。
ティーナから遠くに離れてしまった事を、俺はきっと後で後悔する事になるだろう。
それはおそらく、朝霧が警告してくれた。
大切な仲間を失うという……最悪な悲劇の結末に繋がってしまうんだ。
たった、一度きりしかない人生。その中ではたくさんの選択肢があり、後で自分の選ばなかった別の未来を後悔する事が、きっとたくさんあるのだろう。
でも、俺はここで絶対にティーナを失う訳にはいかない。悲劇の運命を嘆く、異世界の薄幸なヒロインを演じる訳にはいかないんだ!
だから、決断する事にする。
今の俺に出来るのは、ティーナやみんなを危険な目に遭わさない為に。全力で考え抜いて、最善と思える行動を取らないといけない。
朝霧の警告を無駄にしない為に、想定される最悪な事態だけは絶対に回避しないといけないからな。
「……分かった。倉持、お前の提案を俺は受け入れる事にするよ。俺もお前達と一緒に、女神の泉に向かう事にする」
俺の返事を聞いた倉持は、目を輝かせて喜びの声をあげた。
「さすがは、彼方くんだね! やっぱり君なら僕の話に乗ってくれると信じていたよ。さあ、共に女神の泉を目指そうじゃないか! そしてお互いの能力を成長させて、一緒にクルセイスを倒そう! 僕も美雪さんも、今後は彼方くんの力になる事を約束するよ」
倉持は、黒い結界を張っている名取に目線で合図を送った。
そういえば、こんなにも嬉しそうに笑う倉持を見るのは本当に久しぶりな気がするな。
子供の頃は、まぁまぁ仲の良かった関係だったのに。俺は特に意識はしていなかったけど、いつの間にかコイツの方が俺から勝手に離れていった印象があった。
今思うと、もしかしてあの時の『将棋大会』の事を、いまだに根に持ってるとかじゃないだろうな。
倉持の指示を受けた名取が、俺達の周囲を覆っていた黒い球体シールドを解除した。
パリンと音を立てて崩れ去る、黒い結界。
そして黒い密室の中で行われていた、会談の外では――。白い鎧を全身に着た、クルセイスの親衛隊である『白蟻魔法戦士』が、俺達の周りをぐるりと集団で取り囲んでいた。
どうやら黒い球体の中に覆われて、外部との接触が取れなくなった俺達の様子を訝しみ。
白アリ達は結界の周囲を厳重に包囲して、外で待ち受けていたらしい。
倉持が言っていた、クルセイスに常に監視されているというのは……この様子だと本当なのかもしれないな。
「――皆さん、聞いて下さい! コンビニの勇者である彼方くんは、城にいる彼の仲間達の命を保証するという条件付きで、グランデイル軍に投降する事になりました。彼の身柄はこれより、グランデイル南進軍の総大将であるこの僕が引き受けます。追って指示を出すので、全員この場からいったん退いて下さい!」
大声を出し。自軍に所属する魔法戦士達に指示を飛ばす倉持。
俺達の周囲を取り囲んでいた白アリ達は、最初はザワザワとどよめき始めるが……。やがて、少しだけ後方に下がり。
俺と倉持達が通れるだけの通路を確保してくれた。
つまり、俺がグランデイル軍に投降したという倉持の話を、とりあえず彼らは信用したのだろう。
倉持が俺の近くに寄ってきて、小声でそっと耳打ちをしてくる。
「さあ、この後……僕は彼らに彼方くんが、クルセイスの求めている座標の位置を知っていたという話をします。そして一部の兵達を率いて、帝国領の南部に探索に向かうと彼らを説得してみせます。上手くいったらすぐにでも、僕と美雪さんと彼方くんとで女神の泉に向かいましょう!」
まるで仲の良かった子供時代に戻ったかのように。
倉持は頬を赤らめて、浮かれているように見える。
俺という仲間が増えた事が、そんなに倉持には嬉しいのだろうか。
まあ、それはそうか。今のこの世界でコンビニの勇者が仲間になるという事は、百人力の力を持つ味方を手に入れたようなものだ。
例え、夜月皇帝のライオン兵が襲ってきても、俺がいるなら対処も可能だろうからな。
倉持も、名取も。
これでやっと念願の女神の泉に向かう事が出来る。
その道中は、俺という最強の護衛役によって守って貰えるのだから。2人にとってはまさに自分達の目的が達成されたような気分になったに違いない。
………だがな、倉持。
俺はお前を100%信じるなんて、一言も言ったつもりは無いんだぜ?
確かに俺はお前と名取と一緒に、女神の泉へ向かうつもりだ。
でも、それはお前達の護衛役としてじゃない。
俺達コンビニチームの未来に向けて。必要な情報を持つお前達を、俺が逆に利用をさせて貰うだけだ!
「よーーし! いっくぞおおぉぉぉーーッ!!」
俺は全力で地面を蹴り、大地を駆ける。
そして勢いよく、100人以上の白アリ戦士達が群れている場所に向けてダイブをした。
空中で振り上げた右足を、ハンマーのように強く打ち下ろし。俺達を取り囲む魔法戦士達を、俺は一気に5人ほど同時に蹴り飛ばした。
「――なっ!? 一体、何をしているんだ、君はッ!?」
後方にいた倉持が驚愕の声を漏らし、名取も両手で口を押さえながら動揺する。
俺がいきなり攻撃を加えてきた事に動揺した白アリ戦士達は、一斉に俺の周囲を取り囲み。その場で臨戦態勢を取り始めた。
俺も右足を再度振り上げて、攻撃の構えを取る。
そして動揺する倉持にも分かるように、大きな声で叫んでやった。
「――倉持、俺はここにいるクルセイスの親衛隊を今から全滅させるぞ! だからお前も今、ここで決断するんだ。この場でクルセイスを裏切り、この俺に付くのか。それともグランデイル軍の敵であるコンビニの勇者をここで倒すのか。さあ、お前の本気度を試させて貰おうじゃないか! お前が本当にクルセイスと戦う意思があるのかどうか。今、ここで決断をしてみせろ、倉持ッ!」