第百九十三話 魔王領からの帰還
ラプトルからの提案は、俺にとっても予想外な内容だった。
「この浮遊動物園を貸してくれるって……それ、本当にいいのかよ?」
俺は裏返るような声で、思わずラプトルに聞き返してしまう。
この動物園の敷地の外には、ターニャを含めたマイラ村の村人達、おおよそ1500人が待機している。
彼らを一体どうやって、コンビニ共和国へと連れていくのかについては、俺も真剣に悩んでいた所だった。
コンビニ本店にいる仲間と連絡が取れて、本店から装甲車や、輸送用の大型アパッチヘリを呼び寄せる事が出来れば、本当は一番簡単なんだけどな。
残念ながら、魔王領に入ってからずっと続いている謎の通信障害の影響で、コンビニ共和国との連絡はいまだ取れずにいる。
俺の問いかけに対してラプトルは――、
「別に構わないさ。減るものでもないしな。この動物園の大きさなら、外にいる人間達を十分に収容出来る余裕があるだろう。彼らを怖がらせないよう、魔王軍に所属する魔物達は地下の階層に控えさせて、外には出さないようにしておくから問題ないはずだ」
俺を安心させるように。まるでアイドルのような爽やかな笑顔で、快く返答してくれた。
外で俺の帰りを待っているマイラ村の人々全員に、まさか危険な魔王領の中を、徒歩で歩いて貰う訳にはいかない。
かといって、キャタピラー付きのコンビニ支店1号店の中に乗せられるのは、せいぜい30人が限界だ。となるとやはり、砂漠の村人達を連れて行く手段として、ステルス機能もあるこの浮遊動物園は、最良の輸送手段であるのは間違いないだろう。
「分かった。本当に助かるよ、ラプトル。外のみんなには俺から説明をしておく。仲間の勇者達はともかく、砂漠の村人達にはお前が黒魔龍公爵である事や、魔王軍の大幹部である事は伏せておくからな」
俺の言葉の意図を察した、ラプトルは首を縦に振って頷いてくれた。
「ああ、その方が良いだろうな。外にいる人間達を無事に運んで、このは様の体を無事にカナタに引き渡した後で……。オレはカナタの仲間達のいる場所に合流しようとは思っていない。オレはあくまで魔王軍のリーダーである『黒魔龍公爵』だ。オレがコンビニの勇者の陣営に与するという事が伝わってしまうと、今後のカナタの行動の、足枷になってしまう可能性が高いだろうからな」
ラプトルはそう言って、自重気味に笑ってみせた。
俺はそんなラプトルの様子を、少しばかし訝しんで見てしまう。
なんていうか、少しだけ不安を感じたんだ。
ラプトル自身に俺達への悪意は本当になく、厚意からその提案を申し出てくれているのは分かるのだが……。あまりにもラプトルにとっての利益が少なすぎる気がする。
もちろん、ご主人である冬馬このはの体を俺に預けるんだ。俺や、俺の仲間達に好印象を持って貰った方が、より大切に冬馬このはの体を扱って貰えるかもしれない。そういう打算的な行動であるのならば、俺もラプトルの行動の意図を理解しやすいのだが……。
どうもそれだけではない、何かがある気がする。
例えるなら、もう後の事を考える必要のなくなった人物が、人生の最後に自分の納得のいく行動をしようとしているような……そんな不安を覚えてしまう。
もしかしたらラプトルはもう、冬馬このはの側に居続けるつもりはないのではないか?
それで、俺が紫魔龍公爵の記憶を継ぐククリアと会った事を伝えた時――。あんなにも安心をしたような笑顔を浮かべたのではないだろうか。
今後の事は、きっと俺とククリアが上手くやってくれるだろう。主人である冬馬このはについても、その身の安全は確保出来た。だからもう安心して全てを託したという、安らかな顔つきをしているようにも俺には思えてしまった。
浮遊動物園の地下10階層での話し合いが終わった後。
俺はまず、扉の向こうで待つ雪咲に会談の内容を伝える事にした。
「彼方くん、大丈夫だったの!? どう? ラスボスにはちゃんと会えたの?」
「……ん? ああ、ちゃんと無事に話し合いは終えてきたぞ。魔王である冬馬このはにも、俺はちゃんと会わせて貰えたしな」
俺は雪咲にラプトルとの話し合いの内容を簡潔に伝える。
そしてそのまま2人で、砂漠の外に待つみんなの元へと急いで向かう事にした。
地下階層から地上に向けて、大階段を駆け上がって行く間に、魔物の群れに襲撃されるという事はもちろん無かった。
各階層にぎっしりと密集している大量の魔物達は、階段を駆け上がる俺達の様子を、その場で大人しくじっと見守っているままだ。彼らはラプトルの指示を忠実に守っているらしい。
階段を駆け登る俺と雪咲の後を追いかけてくる事もないし、外に向かう俺達の行方を遮るような事もしてこなかった。
黒魔龍公爵との話し合いを終えた俺は、魔王軍と敵対する事なく、無事に外で待つみんなの元に出る事が出来た。
「――彼方様、ご無事ですか!? お怪我はありませんか?」
ティーナが心配そうに俺の近くに駆け寄ってくる。
玉木や香苗やアイリーンも、俺の近くに急いで駆けつけてくれた。どうやら外のみんなは無事らしいな。
俺と雪咲が動物園に入っていた間に、砂漠に残っていたみんなに何か問題が起きるという事はかったようだ。
「店長、いかがでしたか? 敵の黒魔龍公爵とお会いする事は出来たのですか?」
「ああ、無事に会えたよ。そして、ちょっとした提案も受けてきたんだ」
「提案〜、何なのよそれは〜? 彼方くん、もしかして『オレと手を組めば世界の半分をくれてやるぞ』みたいな怪しい提案をされたんじゃないでしょうね〜?」
「何でそんな昔の有名ゲームのラスボスが、勇者にしてくるような提案を俺が受けなきゃいけないんだよ……。仮にそれを俺が受けたとしても、今の魔王軍にこの世界の半分をくれるような力はもう残っていないと思うぞ。1年前くらいなら可能だったかもしれないけどな」
「ぶーーっ! 彼方くんが世界の半分を貰ってくれたなら、コンビニ共和国が世界最大の大国になれるじゃない! そしたら、みんなも安全に暮らせるし。私もわざわざアラブの石油王に嫁がなくでも、遊んで暮らせる毎日が手に入るかな〜って思ったんだもん!」
まだ、石油王に嫁ぐ夢を諦めていなかったのかよ。
別に毎日働けとは言わないからさ。俺の近くに一生いてくれれば、年間有給100日以上の高給秘書としてちゃんと雇ってやるから安心していいぞ。
俺と黒魔龍公爵との話し合いの内容に興味津々な玉木が、身を乗り出すようにして会談の内容を尋ねてくる。
世界の半分を貰う約束をした訳ではないが、俺と黒魔龍公爵であるラプトルとの間で、ほぼ同盟に近いような友好関係が結ばれたのは……この世界にとっては大きな変化と言えるかもしれないな。
俺達がこの世界に召喚された1年前頃から比べると、世界の勢力図は大きく激変したと思う。
東の人間領に侵略の手を伸ばし。100年余りもの長い間、人間と戦争を続けていた動物園の魔王軍は西の魔王領へと総撤退をした。
魔王軍による魔物の脅威が去った東の人間領の国々には、今は念願の平和な時代が訪れている。
魔王軍とずっと戦いに明け暮れていた西方3カ国連合の国々なんかは、今頃やっと手に入れた平和な時間を皆で喜びあっているのかもしれないな。
それとも前にザリルが言っていたように、戦争で金儲けをしていた大商人達が没落をして。世界には何か経済的な危機が起きていたりでもするのだろうか?
そして西の魔王領の中でも、大きな変化があった。
忘却の魔王として、長く魔王領の中で勢力を誇っていた3人の魔王達の1人。灼熱砂漠の魔王、モンスーンがその命を落としたのだ。
3人の忘却の魔王達は、お互いに同盟関係を結ぶ事で女神教の魔女達からの追撃を長い事逃れていたらしい。
砂漠の魔王であるモンスーンがいなくなった事で、これから魔王領の中での勢力バランスにも、大きな変化が起きてくるのは間違いないだろう。
だが、この世界とって1番の大きな変化であり。最大の脅威となりそうな出来事は……。
北の『禁断の地』から新たに動き始めた太古の勢力。
過去にこの世界全てを支配した、巨大コンビニを操る灰色ドレスの女が従える、太古のコンビニ軍団が動き始めた事だろう。
その目的はまだ正確には不明だが、どうやらあの悪魔女はコンビニの勇者である俺を闇堕ちさせて、この世界の『魔王』として育てあげようとしているらしい。
これからも俺の後を付け回してくるのか、しばらくは様子をみる事にしたのかは分からないが……。今後の世界にとって、あの太古の悪魔である巨大コンビニが、1番の脅威となるのは間違いないはずだ。
そんな劇的な変化を遂げて、目まぐるしく移り変わる世界情勢の中で。コンビニの勇者と、動物園の魔王陣営との間に友好的な同盟関係が今ここで結ばれた事になる。
これからまた世界は大きな激動をしていく事になるだろう。もしかしたら、今ここにいる俺には知り得ないが……。この世界ではすでに、俺の知らない他の所で大きな変化が起きているのかもしれないしな。
ティーナや玉木、そしてアイリーンにラプトルとの会談の内容を伝えた俺は、さっそくマイラ村のみんなをコンビニ共和国へ連れて行く為に、ターニャに話しかける事にする。
「――ターニャ、良かった! すまない、またターニャにお願いがあるんだけどいいかな?」
「ハイ、勇者様。あの巨大な乗り物の上に、砂漠の人々を乗せて遠くへ運んで行くんですよね? みんなには私から声をかけておきますので、どうかお任せ下さい!」
「えっ!? まだ俺は何も話していないのに……。どうして、それが分かったんだ?」
ターニャが俺がこれから話そうとしていた事を、まるで全て予想していたかのように。余裕の笑顔を浮かべて微笑んでいる事に、思わず驚いてしまう。
「砂漠の民を救う異世界の勇者様の伝説には、勇者様が巨大な『箱舟』にみんなを乗せて。不毛な砂漠の大地から、清浄なる大地へ運んで下さるという伝承もあるのです。ですから、空からあの巨大な乗り物が降りてきた時に、私達はみんなピーンときました。これがきっとあの伝説の箱舟なんだって!」
「そ、そうなのか……。ははっ。まあ、結果だけみれば同じ事かもしれないし、そうだな、アレが伝説の箱舟だと思ってくれて構わないぞ」
実はアレは、100年以上も東の大陸に住む人間達を苦しめ続け。凶悪な魔物が地下にわんさかとひしめいている『魔王の居城』だなんてターニャには言えないな。
もし詳しく説明したらみんなは怖がってしまって、誰も浮遊動物園に入ってくれないかもしれないし。
少し騙しているようで悪いが、ここは浮遊動物園を警戒されて、動物園の中に入ってくれないような事態になる事は避けた方が良いだろう。
そうならないように俺はターニャに、みんなへの説明役をお願いしようと思っていたんだが……。この浮遊動物園を砂漠の民を救う伝説の箱舟として、みんなが既に認識してくれているのなら好都合だ。
もちろん動物園の中に入ったマイラ村の人々が、絶対に中の魔物達によって危害を加えられないように、ちゃんと守らないといけない。
その点だけは、俺やアイリーンを始めとするみんなで目を光らせながら、責任を持って砂漠の人々をコンビニ共和国へ導いていこうと思っている。
異世界の勇者と親しい、砂漠の民の代表であるターニャの号令のもと。マイラ村に集結していた砂漠の村々の人々は、次々と巨大な動物園の中に乗り込んで行った。
合計で1500人近い人々がいたにも関わらず、広大な動物園の敷地は全員を容易に収容する事が出来た。
ティーナ、玉木、香苗、雪咲の4人は、1階にある動物園の管理小屋へと入り。中の近代的な機械や、動物園の管理施設の様子を興味深げに観察して回っている。
コンビニの守護騎士のアイリーンは、魔物達が集結している地下階層へと繋がる大階段の前に立ってもらい。地下から魔王軍の魔物達が、地上に飛び出て来ないかを常に警戒して貰う事にした。
空中浮遊動物園は砂漠に残る人々を全て乗せると、再びステルス機能を発動して空に浮かび上がる。そして、透明迷彩をその周囲に展開させた。
これでこの巨大な動物園の存在は、外からは見る事が出来なくなったはずだ。
浮遊動物園の飛行速度は結構速く、時速30〜40キロくらいは出ていた。
これならそれほど時間をかけずに、灼熱の砂漠地帯を通過して。魔王領と人間領との境界にあたる、山岳地帯を飛び越える事も出来るだろう。
俺はコンビニ共和国へと到着するまでのわずかな時間を、空中飛行する動物園の中でどう過ごそうかと悩んでいると。
思いがけず最下層のラプトルからお呼ばれをして。2人で冬馬このはの眠るブルークリスタルの前で、語らう時間を設ける事が出来た。
「……カナタ、お前はこの世界に来てどれくらいの時間が経つんだ?」
「具体的な時間はよく覚えてないな。多分、1年くらいは経ったと思うけれど」
短めな黒髪を撫でながら、ラプトルは少しだけ笑う。
「そうか。このは様もこの世界に召喚されて、約1年くらいで当時この世界で暴れていた魔王を倒す事に成功したんだ。もちろん色々とあったけどな。オレは割と楽しい旅だったと思っている。ミレイユやメリッサ、デイトリッシュ達もこのは様をよく支えてくれた。ミレイユとメリッサは、いつも馬が合わなかったから喧嘩ばかりしていたがな。それを優しいこのは様がいつも上手に嗜めてくれて、オレ達は勇者様を支える守護者としてよくまとまっていたと思うよ」
ラプトルはこの世界に来てからの、懐かしい想い出話を俺に聞かせてくれた。
主に冬馬このはが日本から初めて召喚されてきた時の事から、魔王を倒すまでの冒険物語が想い出話のメインだった。
本当は魔王化した際の、女神教徒達が動き回った陰の陰謀や策略の話なども聞きたかったのだが……。
ラプトルはそれらの重苦しい話はしたがらなかった。
異世界の勇者としての責任を果たそうと、召喚元のグランデイル王国を旅立ち。仲間の勇者達と切磋琢磨して魔王と戦う、まさに王道な異世界召喚勇者としての冒険譚が、ラプトルの口から楽しそうに語られていく。
「……当時の魔王は、そこまで強いという訳でもなかった。でも姿を隠す能力に長けていてな。西のフリーデン王国という場所の近くにある、山岳地帯に魔王はその身を潜めていたんだ」
「フリーデン王国? あまり聞かない名前の国だな」
「今はもう滅んでしまったからな。その当事者であるオレが言うのもなんだが……。オレ達魔王軍の侵攻作戦で、一番最初に滅ぼしてしまった国でもあるんだ。当時のこのは様は、その魔王が潜む山岳地帯に1万匹の監視フクロウを空に解き放ち。そして山の中には、3万匹の夜目に特化した偵察型の黒猫を配置させた。そして約1ヶ月間をかけて、魔王の居場所をとうとう突き止める事に成功したんだ」
「さすがは、動物園の能力を持った異世界の勇者だけあるな。動物達を用いた能力は得意だったという訳か」
「そうさ。このは様はいつもオレ達や、動物達にとても優しく接してくれた。日本にいた頃は、どちらかというと引きこもりがちで大人しい女学生だったからな。学校でも友達があまりいなくて、飼育部で動物達のお世話をするのが大好きだったらしい。このは様は特に猫が好きで、よく動物園の中でも可愛がられていたよ」
「俺も猫は好きだぞ。実家で『ミミ』って名前の子猫を飼っているんだ。保護猫だけど、俺にすっごく懐いてくれていてな。俺みたいなブサメンでも、毎日スリスリと頭を撫で付けてきてくれるんだ。ホントに可愛いよな、猫って!」
俺の言葉にラプトルは、突然キョトンとした顔つきをする。
何だよ? せっかく猫好き同士で意気投合出来ると思ったのに。俺の顔に変なものでも付いているのか?
「……カナタがブサメンだって? ハハッ、それは無いな。友人として1つ忠告しておこう。お前は『中の下』か、それよりかは平均な方だぞ。目つきが少し悪いのはマイナスだが、清潔感があるのはプラスだ。たまに笑った顔が優しい雰囲気を出しているしな。このオレが保証をしよう。カナタはもっと自分の顔に自信を持って良いと思うぞ」
なっ……!? 何でお前に俺の『顔』の論評をされないといけないんだよ。
しかも俺の事を『友人』とか勝手に言いやがったな。
会ってまだ間もないのに、何だよその強烈な親近感トークは。爽やか笑顔で話してくるから、こっちもツッコミが入れづらいし。
コイツは本当に、男女問わずに相手をたらし込むジゴロみたいな雰囲気を持っている野郎だな。
……まあ、でも不思議と悪い気はしないな。
それどころか、学校の級友と話しているみたいで心が少しだけ落ち着く感じがする。
俺はこの世界に召喚された、先輩の異世界の勇者の話をずっと聞きたかったんだ。それをラプトルは楽しそうに俺に語ってくれた。
本当は目の前のラプトルが、どれだけたくさんの人々を殺してきたのかを俺はよく知っている。だから仲間意識を持つ事は、お門違いなのかもしれないけどさ。
だけど、俺はもっと目の前にいるラプトルの話を聞いていたいという想いがあった。
それはこの黒髪優男のラプトルから感じられる、不思議な穏やかさが気になっていたからかもしれない。
魔王軍は既に存亡の危機にあり、眠り姫である冬馬このはの力はどんどん弱まっている。
もしかしたら、このまま魔王の力が減少し続けていくと。眠り続けている冬馬このはも、いつかは衰弱して死んでしまうという事もあり得るのかもしれない。
今まで魔王である冬馬このはの生存を第一に考えて、敵となる人間達を滅ぼそうと、100年も女神教と戦ってきたラプトルにとっては……それは死活問題であるはずだ。
それなのに……。目の前にいるラプトルからは、焦るような雰囲気がまるで感じられない。
どこかで主人である冬馬このはの『死』も。ラプトルはすでに受け入れてしまっているような、そんな達観した雰囲気を、俺はラプトルから感じてしまうんだ。
そんな不思議な面持ちで、冬馬このはの冒険物語を意気揚々と語るラプトルの話を、俺はずっと聞いていたのだが――。
突然、ラプトルが……ピタリと話を止めて、真剣な表情をした。
「……どうやらそろそろのようだな。――カナタ、動物園の上にいる人間達を全員、地下1階層に避難させてくれないか? そこには、飛行型の小型飛竜を数千匹用意させている。砂漠の人間達をそれに乗せて、急いでこの動物園から外に避難させるんだ」
「えっ、ラプトル……? それはどういう事なんだ?」
すると――突然大きな轟音が建物内に鳴り響き。
激しい振動が、浮遊動物園全体に襲いかかった。
”ズシーーーーーーン!!!”
「うおおぉぉっ!? この揺れは一体何なんだよ!?」
大きな扉を豪快に開けて、地上の大階段の前にいたはずのアイリーンが、俺とラプトルのいる地下10階層の中に飛び込んできた。
「大変です、店長!! 女神教の率いる空戦部隊が、この浮遊動物園に目がけて攻撃を仕掛けてきています!」