第百六十七話 天気の勇者
目の前に立つコイツが灼熱砂漠の魔王、モンスーンなのか……。
魔王領に住む3人の『忘却の魔王』の1人。
俺が魔王領で倒した青の神官メフィスト。そして、緑の神官ソシエラを操っていた親玉でもあり。
魔王領の中にあるこの砂漠の大地を支配し、無限の能力を持つ――元『異世界の勇者』でもあった存在だ。
それにしても、いきなり魔王自ら登場してくるとは恐れ入ったぜ。しかもコイツ……今、さらりと、とんでもない事を言いやがったぞ。
砂漠の魔王モンスーンは、さっき自分の事を――元『天気の勇者』だと名乗った。
それはつまり、自分自身の能力を暴露したも同然じゃないか。
広大な砂漠地帯を作り出したり、恵みの雨を降らしたり。鬱蒼と生い茂る緑の森を砂漠の中に作ったりと……なるほどな。モンスーンが天気を操る能力を有しているのなら、その関連性にも納得がいく。
後は、その『天気』の能力を使うモンスーンが、一体どれくらいの強さを持った魔王なのか――という所が一番気になる訳だが……。
少なくとも俺自身は、まだ『魔王』ではない。
過去にこの世界に召喚されたコンビニの勇者はそうだったかもしれないが、今の俺は魔王になる気なんてさらさら無い。
だからここは純粋に、『異世界の勇者』である俺と、『灼熱砂漠の魔王』モンスーンとの、一騎討ちという事になるのだろう。
「よおおおぉぉぉぉおおーーーッ! てめえは俺様の守護者を2人も始末してくれたみたいだなぁぁぁ? 人様のテリトリーにいきなり乗り込んできて、傍若無人に暴れ回るとはいい度胸じゃねえかよおおおおぉぉ! この俺様にケンカを売ったからには、ここでぶちのめされて死ぬ覚悟は、もちろん出来ているんだろうなあああぁぁーーーッ!!」
長身マッチョな金髪男が、大声で俺に怒鳴りつけてくる。
金髪に青い目の異世界人か。どうやら、日本人じゃないのは間違いないな。
見た目の印象だけだと、アメリカとかヨーロッパあたりで暮らしていそうな白人にも見える。
砂漠の魔王であるモンスーンの身長はかなり高く、軽く190センチは超えていそうだった。
その威勢の良い口調や、見た目の雰囲気からは、体育会系の脳筋パワータイプって感じがプンプンと伝わってくる。
俺はこの異世界に来て初めて出会った本物の『魔王』に、少しだけ緊張してしまう。
足がガタガタと細かく震えて、全身が身震いを起こしているのが分かった。
元々俺達異世界の勇者は、本来はこの世界で暴れ回る『魔王』を倒すという目的の為に。異世界から召喚をされた……ってのが、始まりの動機だった。
だから今回はある意味、やっと本来の目的である魔王と勇者が直接勝負をする――という展開になったんだ。初めての魔王戦に緊張してしまうのは、仕方がない事だろう。
……でも、残念ながらコイツは、俺達が本来倒すべきだった目標の魔王ではないんだ。
召喚された俺達、元2年3組の異世界の勇者達に最初に託されのは――魔王軍を率いて西から人間領に侵攻をしてきている『動物園の魔王』である、冬馬このはを討伐する事だった。
魔王領に隠れ住んでいる、『忘却の魔王』の1人――砂漠の魔王と戦うなんて予定は、当初の俺達のスケジュール帳には全く書かれていなかった事だ。
つまり現在進行形で俺は……この世界で本来やるべき事から、脱線しまくっているという事なんだろうな。
おまけに相手は、話が通じるのかも怪しい脳筋バカだし。
だが、ここは何としてでも、目の前のコイツから新しい情報を引き出したい所だ。
モンスーンが魔王の1人である以上――。俺のまだ知らない、この世界の秘密を沢山知っている可能性がある。
だからここは少しでも長くモンスーンと対話をして。出来るだけ多くの情報を聞き出してやろう。
俺1人でまともに魔王と戦っても、勝てる保証が無い以上……。アイリーンがここにやって来てくれるまでの時間を、何としても稼がないといけないからな。
「――ちょっと待ってくれッ! お前と殺り合う前に、俺は一度お前と話をしたいんだ! 俺には魔王であるお前に聞きたい事が山ほどある! だからまずはそれに答えてから、俺と勝負をしてくれないか!」
高圧的に腕を組んでいるモンスーンに、俺は大声で呼びかけた。
なにせ、この世界で初めて出会った魔王だ。
しかも、元無限の勇者でもあり、この世界に召喚されてきた異世界の勇者の先輩でもある。
魔王が一体どれほどの強さを持つ存在なのかが分からない俺としては、少しでも敵の強さやその能力を探り出したかった。
……だが、俺の訴えを聞いたモンスーンは。
まるで子供のように唇を突き出しながら、首を大きく横に振ると――。
「やーーなこったッ!! 何で俺が新米勇者の与太話に付き合ってやらねえといけないんだよッ!! そんなのは女神教の魔女共とでも勝手に話し合いやがれッ!! 俺は、てめえとサシで勝負をする事にしか興味がねーーんだよ!」
「なっ………!?」
やっべぇ! コイツ想像以上に脳筋のバカだぞ。
この世界に来てから、この手のキャラには今まで一度も遭遇した事はなかったけれど。まさか、こちらの話が一切通じないステレオタイプの奴なんじゃないだろうな?
俺がモンスーンを訝しげな目で見つめていると。
急にモンスーンの背後から。赤色と白色の衣装を着た、2人組の男女が前に飛び出てきた。
「――モンスーン様、ここは私達にお任せ下さい! 異世界の勇者など、私達だけですぐにひねり殺してみせます!」
「そうです! 魔王様自ら戦う必要はございません! ここは我らに任せて、どうぞお退き下さい!」
2人の男女は、それぞれ全身にマントのようなローブを着込んでいたが、見た目の雰囲気でコイツらが一体何者なのかは……大体、察しがついた。
おそらくコイツらは、モンスーンに仕える残り2人の守護者――。『赤の神官』と『白の神官』なのだろう。
青と緑の神官はもう、俺がこの手で倒しているからな。残りの色を考えれば、消去法でほぼ間違いないだろう。
それにしても、厄介な奴らが来ちまいやがったな。
ただでさえ、本物の魔王が目の前に現れて大ピンチだっていうのに。その手下の守護者が更に2人もモンスーンと共にここにやって来るなんて。状況が最悪過ぎるだろ。
俺は今から1人で、コイツら全員を一度に相手にしないといけないのかよ……。
いくら俺が、大幅なレベルアップをしていたとしても。さすがに『コンビニの勇者』VS『砂漠の魔王&その守護者×2人』の組み合わせはキツ過ぎないか?
タッグマッチどころか、1対3の変則マッチをいきなり強制されて。しかも相手陣営には、本物の『魔王』が含まれているんだぞ。
俺はまだ、アイリーンとも合流出来ていないし。
これじゃあ、正直勝てる気は全くしないぞ。
もし、コンビニ本店のレイチェルさんがここにいてくれたのなら、勝てるかもしれないけれど……。残念ながら、レイチェルさんはここには居ないからな。
砂漠の魔王モンスーンを守るようにして飛び出てきた、2名の守護者達に対して。筋肉ムキムキの上半身裸男のモンスーンは、その場で大きく息を吸い込むと……。
突然、大声で自身の配下である守護者達に対して、声を荒げて怒鳴り散らした。
「この、ばっか野郎共おおおぉぉぉおおおーーッ!! コンビニの勇者と俺がサシで勝負をしなくちゃ意味がないだろうがああぁぁぁあーーーッ!! このクソアホ共がああああぁぁぁ!!
モンスーンに怒鳴られた神官2名が、『ひいィィ!』と悲鳴を上げて震え上がる。
おいおい、これじゃあ完全に時代遅れの不良番長じゃないかよ。
怒鳴られた赤色と白色の神官達は、すぐさま後方に後ずさり。モンスーンの背後に回って、何度も何度も自分達の主人に向かって頭を下げ続けていた。
「――いいか? てめえらは、砂漠の境界線に行って防衛線を固めてこい! このクソ野郎のせいで俺の守護者が2人もやられちまったんだ。今、女神教の奴らは、動物園の魔王退治に全戦力を集中しているだろうが……。こちらの戦力が落ちた事に気付いたら、反転して一気に砂漠に押し寄せてくるかもしれないぞ! 俺がここでコンビニの勇者と遊んでいる間に、邪魔が入らないよう。絶対に砂漠に誰も侵入させないようにしておけよ!」
「ハハーーッ!! 畏まりました、モンスーン様!!」
2人の神官達が、モンスーンに最敬礼のポーズをとって。そのまま急いで幻想の森の外へと向かっていく。
よくは分からないけど、俺にとっては敵の戦力が減ってくれるのは助かった……。さすがに魔王とその守護者2人の、合計3人と同時に戦うなんてのは超絶無理ゲー過ぎるからな。
2人の神官達がいなくなった後で、モンスーンは再び俺に向き直ると――。
首をゆっくりと回しながら、指をポキポキ鳴らし。その場で肩を揺らして軽い準備運動をし始めた。
「さあ、邪魔者は消えたしよおおおぉぉ! さっさと始めようぜーー!! コンビニの勇者よおおぉぉぉ!!」
――瞬間。
俺が瞬きをして。目を一瞬だけ閉じてしまった、そのわずかな時間に――。
モンスーンはいつの間にか、俺の目と鼻の先の距離にまで急接近してきていた。
「えっ――!?」
速い……と、感じる間さえ無かった。
ただただ、それはほんの一瞬の出来事だった。
何か飛び道具のような能力を使ってくるのかと警戒をしていた分。『おいおい、まさかの肉弾戦かよ――』と、舌打ちの一つもしたい気分だったが……。
そんな心の余裕すら、俺には与えては貰えなかった。
接近してくるモンスーンのあまりにも速い動きに、全く反応する事が出来ない。
長身から繰り出される、重い拳による圧倒的な威力の一撃が俺に迫ってくる。
コンビニ店長専用の黒いロングコートが、とっさに俺の体を包み込んだ。
コートが防護壁となってくれたおかげで、致命傷だけは避ける事が出来たけど……。
俺の体は数十メートル先にまで、一気に弾き飛ばされてしまっていた。
「ぐふぉおッ…………!?!?」
「おらぁおらぁおらぁおらぁぁぁーーーーっ!!! どうしたよおおおおぉぉぉーーーッ!! 俺はまだまだ、全然殴り足りないぞおおおおおぉぉぉーーーッッ!! コンビニの勇者あああぁぁぁ!!」
弾き飛ばされた俺の元に、また瞬時にモンスーンが高速移動で駆け寄ってくる。
再び重量級のメガトンパンチで殴り飛ばされ。
殴り飛ばされたその場所に、また一気に駆け寄ってきたモンスーンが、何度も何度も馬乗りになって俺に殴りかかってくる。
モンスーンに殴られるがままに、地面の中にズブズブとめり込まされていく俺。
ロングコートが緩衝材になってくれているから、かろうじてまだ意識を保っていられるが……。
もしコート無しなら。一発一発の重いパンチで、全身の骨は粉々に砕かれて。これはショック死してしまうようなレベルだぞ!
……このままだとマジでヤバい! 落ち着いて、息を吸い込む時間さえ与えられないなんて……!
俺はひたすらに防戦一方に回って。完全に野獣と化したモンスーンのサンドバッグ状態にさせられていた。
クソッ……!! どこかでこっちも反撃をしないと……!
このままだと本当に、俺は殺られてしまう!
「――こ、この野郎……ッ!! 調子に乗るんじゃねぇぞおおおおぉぉ!!」
もう、後先を考えているような時間は無い。
一点突破で、一気に集中攻勢に出るしかなかった。
俺はモンスーンに殴りつけられた直後に、すぐに反撃の体勢を整えると。
肩の上に浮かぶ2機の守護衛星から、青いレーザービーム2本を――真上にいるモンスーンに向けて一気に解き放った。
”ドシューーーーーーーーッッ!!”
放出された青い光の直線は、馬乗りになって俺を殴り続けていたモンスーンの体に、正面から襲いかかる。
俺の体から放出された青いレーザービームに気付き。
とっさに、受身の体勢を取るモンスーン。
青い2条の光は、猛獣のように俺の身に襲い掛かってきていたモンスーンの体を――。約10メートルほど後方にまでに弾き飛ばした。
だが……弾き飛ばされた先の場所で。
体にこびり付いた埃を払って、平然と姿勢を整えているモンスーンの姿を見て――俺は愕然とする。
「チッ……ただでさえ攻撃力がヤバ過ぎるのに……! 自分の体を守る防御シールドまで持っているのかよ! 本当に厄介な奴だな……!」
巨大で筋肉マッチョなモンスーンの体の周りには、黄金色の丸い球体シールドが張られていた。
それは、以前に戦った事のある魔王軍の赤魔龍公爵が持っていた物と同じ種類のシールドのようだ。
あのシールドをぶち破らないと、直接モンスーンの体にダメージを与える事も出来ないってのかよ……。そんなの、今の俺には絶対に出来っこないぞ……。
――ん?
涼しい顔をして首を回したり。関節をポキポキと鳴らしているように見えるモンスーンだが……。
その右手の部分からは、モクモクと白い煙が沸き出ている。
俺は目を凝らして、よーく見つめてみると――。
どうやらモンスーンの右手は、完全に溶けて蒸発をしてしまっているようだった。
マジかよ……。俺の守護衛星から発射されたレーザービームを、奴は完全に防げていた訳ではなかったのか。
プスプスと白い煙が上がっている所を見ると。レーザーの直撃を食らった直後に、モンスーンは金色のシールドを展開して。胴体に直撃するギリギリのラインで避けた、という所のようだな。
もちろん、あれだけの至近距離で殴りかかっている時に。
とっさに防御シールドを張れる条件反射力は、本当に凄まじいとしか言いようがない。
でも、状況を察するに。モンスーンの体を守っている黄金色のシールドは、常時24時間――奴の体を自動的に守り続けているようなタイプのものではなさそうだ。
だとすると……俺にもまだワンチャン。奴に付け入る隙はあるのかもしれない。
それに今、モンスーンの右手をレーザーで破壊出来たのは本当に大きい。
これでモンスーンはしばらくは、俺を殴りにくるという行動が出来ないはずだ。その間に……ここは何としてでも反撃の体勢の整えるしかないだろう。
モンスーンは負傷した自分の腕を見つめながら、大声で俺に呼びかけてくる。
「――おいおいおい、いきなり飛び道具かよぉッ? こっちはせっかく気持ちよく男同士の殴り合いを楽しんでいたっていうのによぉぉ!! そういう反則を平気でしてくるような奴は、俺は気に入らないぜえええぇぇ? 異世界の勇者なら正々堂々と『拳』だけで魔王に勝負を挑んでこいよなああぁぁーーッ!!」
「……誰が、てめえと正々堂々の殴り合いなんかを望むかよ!! それに、いきなり一方的殴りかかってきたのはお前の方だろうがッ!」
自分勝手なルールを強要してくる筋肉野郎に、俺は中指を立てて反論してやる。
コイツが俺と同じ時代、世界、文化を共有出来る場所から召喚をされた奴なのかは分からないから――。『fuck you!』の意味が通じているかは疑問だけどな。
モンスーンは失った自分の右手をマジマジと見つめながら、『やれやれ……』といった顔つきで、小さくため息を吐く。
「よーし、そういう事なら俺もOKだぜ? 魔法ありの超常魔法バトルがお望みなら、俺も『天気』の能力を全て解放させて貰う事にするからな! 正直……すぐに殺してしまってもつまらないと思ったから、お前にハンデをくれてやっていたんだぜ? 俺は魔法能力を使わせたら右に出る者がいない、あまりにも最強過ぎる魔王様だからな。まだまだ未熟な新米の異世界の勇者なんて、本当に一瞬で蒸発しちまうぜ?」
そう言うと。モンスーンは俺のレーザーによって失った右腕を、高らかと天に向かって突き上げてみせた。
切断されている箇所からは、赤い血が大量に大地に滴り落ちている。
例え魔王になって、この世界で不老の寿命を手に入れた超常な存在だとしても……。どうやらその体の構造は、人間のままらしい。
「この世全ての理を覆し、大地の嘆きと渇きを癒せ! ――――『慈愛の回復雨』!!
”ザーーーーーーーーーッ!!”
天に右腕を突き上げているモンスーンの周囲に、青い光に輝く無数の雨が降り注ぐ。
その青い雨は、モンスーンが立っている場所――その半径1メートルほどの限定された部分だけに降り注いでいる。
先ほど俺のレーザーによって失われたモンスーンの右手が、みるみるうちに回復をし始め。あっという間に元通りの形に復元を完了していた。
おいおいおい……。
何なんだよ、あの能力は……!?
モンスーンは『回復術師』の勇者である、うちの香苗美花と同じような能力を持っているっていうのかよ……。
攻撃も回復も、全部こなせる万能能力を持っているなんて、完全にチート過ぎるだろう……。まさか妖怪倉持みたいに、複数の能力持ちだったりはしないだろうな。
「よーーーし、コンビニの勇者よおおおぉぉ!! これからお前を一瞬で溶かしちまう前に、たった1つだけお前の質問に答えてやるよ。色々と俺様に聞きたい事があるんだろ? ただ、答えてやるのは1つだけだ。死ぬ前に聞く事の出来る最後の質問だからな、俺に1番聞きたい事をちゃんと厳選して選ぶんだぜ!!」
既に右手を元通りに治したモンスーンが余裕を浮かべて、俺に話しかけてくる。
野郎……ッ!!
でも、ここはこちらの防御を固めるという意味でも、時間稼ぎはしないといけない。
なので、俺は……。
奴の言う通りに、この世界で『魔王』となった先輩の異世界の勇者に――1番聞いてみたかった事を素直に聞いてみる事にした。
「お前は、元は異世界から召喚をされた勇者なんだろ? 何で今は魔王なんてやってるんだよ……?」
「――ハッ!? 最後に聞きたい質問がそんなつまらない物でいいのかよッ! バカだな!!」
ハッハッハ! と、モンスーンは腹に手を当てて大笑いを始める。
そしてそのまま心底愉快そうな顔をして、俺に向き直ると。
「俺がこの世界で魔王をやってる理由はただ1つだぜ!! それは――この世界で1番、俺様が強い存在であり続ける事!! たったそれだけのシンプルな理由だぜ!!」
金髪筋肉男のモンスーンが興奮気味に語気を荒げて。
森の中全てに響き渡るような大声で宣言をした。
「あの胸糞悪いクソ女神教の魔女共や、枢機卿をも倒す事の出来る最強の存在になる事!! 俺がこの世界で成し遂げたい唯一の目標は、ただそれだけだぜ! 新参のおめえは知らないかもしれないけどよぉ……! この世界には、大昔にあの女神教をも圧倒した『最強の大魔王』って奴が存在したらしいんだぜ? 俺はその最強の大魔王の存在に憧れていて、いつかはその大魔王をも超える『ナンバー1』の魔王になってみせる!! 俺の力だけで、必ず女神教の魔女共を全滅させる事の出来る、最強の魔王になってやるんだよ!!」
モンスーンの両手に金色の光が凝縮されていく。
その輝きはあまりにも眩しくて、目を開けて直視する事が出来ない。
そう――。
あの圧倒的な光量を持つ輝きは……まるで、太陽だ。
「――さあ、最後に質問にも答えてやったから、もうこの世で思い残す事はねえよなあああぁぁぁ!! 俺の守護者達を2人も始末した落とし前を、キッチリと払って貰うぜええぇぇぇーーーーッ!!」
モンスーンが両手を大きく正面に振りかざすと。
太陽光を吸収して凝縮された、金色の大きな球体が俺の目の前に出現する。
目を開けていられない、あまりにも眩し過ぎる。
圧倒的な熱量を持つ光の輝きは……。
見る者全てを魅了する、美しく、神々しい輝きを放ちながら――。
一気に、凄まじい熱量を浴びて、『大爆発』を引き起こした。
「この世の全ての理を存在ごと抹消し、灼熱の業火で燃え尽きさせろッ!! 『灼熱太陽爆発』ーーッ!!」