第百六十三話 幻想の森の戦い
”ブーーーーーーーーン!!”
”ブーーーーーーーーン!!”
”ブーーーーーーーーン!!”
鼓膜の内部を激しく揺さぶる重低音の羽音が、再び聞こえてくる。
それは、巨大ハチの群れが織りなす、無数の羽音が混ざり合った大混声合唱だ。
重なり合う無数の羽音は、耳の鼓膜を破壊するほどに大きな騒音となり。コンビニの周囲全体の空気を揺るがす、大きな波紋となって轟いてくる。
巨大ハチ達は、上空でいったん密集体型を取ると。空中で黄色い大きな塊となって、一斉に襲い掛かってきた。
コンビニの屋上に1人で立ち尽くしている俺には――無数のハチ達の襲撃を回避する術なんて、もちろん何も無い。
俺を助ける為に、慌ててコンビニの屋上に駆け付けようとしたアイリーンも……今回ばかりは、わずかに間に合わない。
そして――。
”グサグサグサグサグサグサグサッ――!!”
数百匹を超える巨大ハチ達の尻尾の針が 四方八方から連続で俺の体に突き立てられた。
「うぐあああぁぁぁぁーーーッ!?」
巨大ハチ達の集団に襲われた衝撃で、俺はコンビニの屋上の上で2メートルほど後方に吹き飛ばされる。
コンクリートの床の上に、勢いよく倒きつけられたのと同時に――。横たわった俺の体からは、大量の白い光が放出された。
俺の体に群がっていた巨大なスズメハチ達は、その眩しいくらいに輝く白い光が放出をする熱によって――。瞬時に、遥か遠くの彼方にまで押し返されていく。
白い光は、まるでバリアーのように俺の体全体を包み込むと。透明な輝きを放つ光の球体を周囲に作り上げる。
そして俺が倒れている場所を中心に、半径3メートルほどの球体シールドを形成して、ハチ達の襲撃から俺の体を守ってくれた。
俺は呼吸を乱しながら、胸に手を当てて。
安全な白いシールドの中で、ゆっくりと上半身を起こした。
「……はぁっ……はあっ……はあっ………」
危なかった……。
どうやら、コンビニ店長専用服の『緊急防御機能』が今回も作動してくれたみたいだな。
これで1日に3回しか使えない自動防御機能のうち。
1回分をたった今、消費してしまったという訳か。
「店長ーーッ!! ご無事ですかーーッ!?」
アイリーンが俺が倒れている場所に、急いで駆け寄ってくる。
そして、自らの黄金剣を高速回転させて。まるで電動カッターのように剣を左右に振り回しながら、追加で押し寄せてくる無数のハチ達を、回転する剣の刃で斬り刻みがら俺の身を守ってくれた。
「ああ、こっちは何とか大丈夫だ。ありがとう、アイリーン! だけど、どうやら状況は最悪みたいだな……」
アイリーンは、倒れている俺の体に守る為に。自らの姿勢を低くして。必死に右手で黄金剣を回転させながら、ハチ達の襲撃を防ぎ続けてくれている。
「ハイ、店長はそのまま身をかがめていて下さいね! 少しでも起き上がると、敵の集中攻撃を受けてしまう可能性がありますから」
俺がアイリーンとこうして話をしている間にも――。
コンビニの周囲を取り囲む『樹木』の魔物達に付いたハチの巣から。大量に巨大スズメバチ達が生み出され、こちらに向かって集団で襲撃を繰り返してきている。
アイリーンが必死に、黄金剣を回転させて作り上げた電動カッターで、飛んでくるハチ達を撃退してくれてはいるが……これでは、身動きが取れそうにない。
ドローンを使ったミサイル攻撃を繰り出そうにも。コンビニのガトリング砲を作動させてハチ達を撃退しようにも。この屋上のスペースはあまりに狭すぎる。
もし、ここに空からミサイルを撃ち込んだなら。
俺とアイリーンも、その爆破と爆風の強い衝撃を同時に食らってしまうだろうからな。
じゃあ、俺達はこれから一体どうしたら良いのか?
クソッ……!
そんな答えは、俺にだってとっくに分かっているんだよ!
今、巨大ハチ達を量産し続けている元凶――。
あの大きなハチの巣が、大量に枝にくっ付いている巨大な樹木の魔物達。アレを全て、ミサイルでなぎ倒してしまえばいいんだ。
コンビニの周囲を取り囲んでいる数十体の樹木の魔物に、ドローンのミサイル攻撃を全弾ぶつけて。
全てを焼き尽くしてしまえばいい。それでハチ達の攻撃をいったん止める事が出来るだろう。
でも……。それだけは、俺には絶対に出来ないんだ。
正義の味方であるはずの、『異世界の勇者』のこの俺にはな!
それがもし、平気な顔で出来るようになれるのなら。俺も晴れて、サイコ野郎のソシエラを操る、砂漠の魔王――モンスーンのお仲間の1人に成り下がってしまうだろう。
罪の無い人間を大量虐殺すれば、『魔王』への階段を順調に駆け登る事になるからな。
「……店長、このままでは、もう……この場を持ち堪えられそうにありません」
アイリーンが黄金剣を、俺の頭上でくるくると回転させながら、疲労の色を濃くした表情で告げてくる。
先ほど、一時的にコンビニ店長服の防御機能で吹き飛ばした巨大スズメバチ達の群れは。すぐに新しい集団を形成して、コンビニの屋上にいる俺達2人に向けて、一斉に襲い掛かってきている。
たしかに……。
このままコンビニの屋上に居続けるのは、マズイよな。
安全なコンビニの中ならともかく。外にいたら巨大ハチ達に四方八方から同時に襲われて、格好の餌食にされてしまう。
ここは、何とかこの危機的な状況を回避しなければいけないだろう。
「分かった、ここは俺が何とかする……! すまない、アイリーン。もう少しだけこの場で持ち堪えていてくれないか?」
「了解です。ここは私にお任せ下さい、店長!」
アイリーンが全力でスズメバチ達の撃退をしてくれている間に――。
俺はスマートウォッチを操作して。上空のドローンをコンビニの屋上付近にまで降下させて、呼び寄せる事にする。
ドローンのミサイルで、コンビニ周辺を攻撃をする事は出来ない。
もし屋上にミサイルを発射させれば、俺とアイリーンにも命中をしてしまうし。何よりハチ達の発生源でもある、ハチの巣が大量に付いている樹木の魔物達にも攻撃を加えてしまう事になる。
だから、今の俺がこの場で取り得る選択肢は――。
もうコレしか残ってないだろう。
「偵察ドローン全機、煙幕散布開始――!!」
空中に待機させていたドローン達のうち。
煙幕散布機能を持つ偵察ドローン全機を、コンビニの屋上付近にまで呼び寄せる。
俺の操るドローンには、煙幕を散布出来る機能を持った機体も複数、存在しているからな。
……昔、カディナの壁外区に押し寄せてきたグランデイル軍から逃げ出す時にも、俺はこの煙幕散布機能のお世話になった事がある。
もちろん、ただの煙だけで巨大スズメバチ達の襲撃を何とか出来るとは俺だって思っていないさ。
だけど俺のイメージ的には、ハチは『白い煙』が苦手なんじゃないか、って印象がある。
よくテレビでスズメバチの巣を駆除している『スズメバチハンター』みたいな人達が、白い煙を大量に巣の中に流し込んで、ハチを弱らせてたりしているのを見ていたからな。
だから、ハチ達を弱らせるとまではいかなくても……。
この煙の中で視界が悪くなり。俺とアイリーンの元に殺到してきているハチ達の、指令系統を混乱させてくれるだけでもいいんだ。
要は、少しの間でもいいから時間が稼げればオッケーだ。
その間に、俺とアイリーンが装甲の厚いコンビニ支店1号店の中に戻る事が出来ればそれでいい。
まずは、屋外にいるというこの危機な状況を回避して。安全なコンビニの店内に戻ってから、ソシエラと樹木の魔物達への対策を考える事にしよう。
コンビニの周りを取り囲んでいる、大きな樹木の魔物達の間を縫うようにして。
大量の偵察ドローンが白い煙幕を地面に散布しながら、幻想の森の大地ギリギリのラインを、ハイスピードで滑走していく。
地面に走る、白煙の線を何重にもクロスさせ。
白い煙幕を森の中に大量にばら撒いたドローン達が、再び上空へと飛び去っていった。
煙幕を無事に撒き終えたドローン達が、空に飛び去った後のコンビニ支店1号店の周囲の様子は――。
まるで大雪の中で、視界がホワイトアウトしてしまったくらいに、真っ白な煙に包み込まれていた。
周辺の景色は全て白色一色に染め上げられて。一寸先の視界まで……何も見渡せないような状態になっている。
「ヤバいな……。これはちょっとやり過ぎてしまったかもしれない。敵もこっちを識別出来ないだろうけれど、これじゃあ俺達も、どこから敵が襲ってくるのかが分からなくなってしまったぞ……」
「ご安心下さい、店長。私はサーモグラフィーの能力で、敵が発する赤外線を分析して、その熱源を視認する事が出来ます。なので巨大ハチ達がどこから襲ってくるのか、大体の位置は掴めていますので!」
アイリーンが誇らしげな顔をしながら、白い煙の中で黄金剣を振り回し。周辺で飛び交うハチ達を正確に斬り落としていく。
さすがは近代戦仕様に対応した、うちのハイテク騎士様だぜ! なにせ『コンビニの騎士』様だからな。
遥か未来の壮大な宇宙を舞台に戦う、『ジェ◯イの騎士』じゃないから、勘違いをしないでくれよな! それに青い髪の色をしたヒロイン候補には、外れは無いって聞くしな。
「――店長! このまま屋上から下まで一気に駆け降ります。店長は私の背から、絶対に離れないようについて来て下さいね!」
「分かった。俺は絶対にアイリーンの後ろを離れないから、頼むぜ、うちの頼れる青髪ヒロイン枠!」
「……? 店長の仰る言葉の意味が、私には少し分かりかねますが。でも、お任せ下さい。私が必ず店長をお守りしてみせますから!」
密度の濃い白い煙幕の中を、俺とアイリーンは一歩一歩、足を進めながら。少しずつ前へと進んでいく。
途中、襲撃をしてくる黄色いハチ達を……。アイリーンが黄金剣を回転させながら、もの凄い勢いで弾き飛ばしていく。
どうやら敵は、煙のせいで狙いを完全に絞る事が出来ないらしいな。先程のように集団で密集をしながら、襲ってくる事はほとんど無くなっている。
濃い白煙の中を縫うようにして。ハチ達はまばらに単発でしか、襲い掛かってくる様子がない。
一応、俺の『煙幕目くらまし作戦』は、成功をしたと言って良いのかもしれない。
コンビニ支店1号店の屋上から、地上へと無事に降りた俺とアイリーンは、とうとうコンビニの入口部分にまで到達出来た。
巨大ハチ達の攻撃を防ぐ為に。コンビニ支店1号店は周囲には強化合金シャッターを展開していたが、その入口部分のシャッターを俺は少しだけ開錠する。
そしてシャッターが開いた、そのわずかな隙間に。俺とアイリーンは体を滑り込ませるようにして、急いでコンビニの中へと駆け込んだ。
「ハァ……ハァ………。何とか無事にコンビニの中に戻ってくる事が出来たみたいだな……」
俺は自分の体の様子を見回して、ハチに刺されていないかを念入りに確認してみたが……。どうやら無事らしい。
見た感じ、アイリーンも無事そうだ。2人とも怪我をする事なく、ちゃんとコンビニの中に戻ってくる事が出来たみたいだな。
「――彼方様! ご無事ですか!?」
「彼方くん、大丈夫〜〜!? 外でハチに顔を刺されまくって、ゾンビみたいなヤバい顔に成り果てたりしてない〜?」
「彼方くん! アイリーンさん! 大丈夫ですか!? もし、怪我をしていたら私に言って下さいね! 『回復術師』の能力を使って、すぐに傷口を回復致しますので!』
店内に残っていた、ティーナ、玉木、香苗の3人が心配そうに駆け寄ってくる。
「ああ、俺なら大丈夫だよ! アイリーンが俺の身を守ってくれたからな。アイリーンの方こそ大丈夫か? 俺を守ってくれている時に、ハチに刺されたりはしなかったのか?」
一緒に店内に入ったアイリーンは、少しだけ息を切らしていたが。その美しい整った顔で、静かに深呼吸を繰り返している。
そして、落ちついた表情で黄金剣の手入れを始めると、
「私は大丈夫です。ですが、店長……これからどう致しましょう? 敵はその数を無限に増やして襲ってきています。このままでは、私達はコンビニの外に出る事は出来なくなってしまうと思いますが……」
アイリーンが心配そうな顔で俺に尋ねてきた。
そうだよな。
問題はこれからどうするか……だ。
「彼方くん〜! 外にいる魔物達は、みんな元は『人間』だったんでしょう? それもみんなまだ、意識がちゃんと残っているんでしょう?」
玉木が悲しそうな顔で、俺に尋ねてくる。
そうか、みんなにも外にいた俺とソシエラの会話は聞こえていたのか。
「ああ。人間と植物を混ぜて作り出したハーフの魔物だとソシエラは言っていたな。おそらく砂漠の村々から生贄として差し出された人々や、村からさらってきた人達を使って、あの樹木の魔物達をソシエラは作り出したのだろう」
「何とか、元の姿に戻して上げる事は出来ないのでしょうか? 皆さん、人間としての意識がまだちゃんも残っているというのに……」
俺は無言で考え込んでしまう。
外からは相変わらずら巨大ハチ達の激しい攻撃が続いていて。コンビニの外壁やシャッターを針で叩く音がずっと聞こえ続けている。
それでも、コンビニ支店4号店の時よりはだいぶマシだけどな。
コンビニ支店1号店は、強化製の合金シャッターで周囲を守られている。合金シャッターはミサイルを食らってもビクともしないくらいの強度があるし。
装甲がぶ厚いおかげで、店内にいてもハチ達の攻撃音は少し遠くで鳴り響いているように感じられた。
ソシエラにもし、あの巨大ハチ達以外での追加の攻撃手段が無いのだとしたら……。
しばらくは、コンビニの中で作戦を練る時間が稼げそうだ。
「――香苗は、どうだ? お前の回復の能力で、あの樹木の魔物達を元の人間の姿に戻して上げる事は出来そうなのか?」
俺はこの中で、唯一人間を治療をする事の出来る能力を持つ香苗に聞いてみる。
「彼方くん……本当にごめんなさい。それはきっと無理だと思うの。私は人間の病気や怪我の治療をする事は出来るけれど。外にいる人達はもう、厳密には『人間』とは言えない存在になってしまっているの。だから私の能力ではもう、彼らを救ってあげる事は出来ないわ。彼らはきっともう、何十年以上もあの魔物の姿のままでいるのよ。おそらく植物の中に、人間の『魂』だけを注ぎ込むような形で、あの魔物達は作られているのだと思う。だから、あの樹木の器から人間の魂を『出して』あげる方法以外にもう、完全な治療法はないと思うの」
「――『出してあげる』というのは、つまりは『倒す』という事を意味する訳なのか?」
「………………」
香苗が無言で口籠る。
そのまま無言でいるという事は、きっとそういう事なのだろう。
何十年も巨大な樹木の中に、意識だけを閉じ込められたままでいるんだ。
それも……おそらくは自分の意思では動く事も出来ない。ソシエラの玩具として。ただの操り人形に意識だけを閉じ込められた状態で、無限に生き続けさせられるという悪夢を、彼らは永遠に強いられている。
つまりは『殺して』あげる事の方が、彼らにとっては本当の意味での救いになるんじゃないだろうか?
答えはきっと、誰にも分からない。
でも俺は、自分にとって都合の良い方向になるように、解釈しようとしていないだろうか……?
何か、他に助けてあげられる方法はあるのかもしれない。
それに、彼らをもし全員殺してしまったら……。
俺の『魔王化』は、更に進んでしまうはずだ。
クソッ……! ソシエラの野郎は何がしたいんだ?
俺を新たな魔王にしたいのか? いいや、おそらくはその葛藤で身動きが取れないでいる俺を見て、嘲笑っているに違いない!
「彼方様……」
苦悩する俺のそばにティーナがやってくる。
そして俺の手にそっと、自分の手を重ね合わせてくれた。
温かいティーナの手の温もりが、直接伝わってくる。
ティーナが俺の事を本当に心配してくれているのが、伝わってきた。
ちょうど、その時――。
”ズドーーーーーーーーン!!!”
コンビニ支店1号店の店内に大きな揺れと衝撃が走った。
「……な、何だ!? 今度は何が起きたんだ!?」
「彼方くん! 大変、こっちに来て〜!」
コンビニの事務所の中から、玉木の声が聞こえてくる。
俺達は慌てて、玉木のいる事務所の中に駆け込んだ。
事務所の中で玉木はパソコンを操作して。偵察ドローンの映像から外の様子を確認をしていたらしい。
玉木が驚愕の表情を浮かべて見つめている、そのモニターの映像を、俺達も一緒に覗き込むと……。
「――な、何なんだ……この超巨大な樹木の魔物は……!?」
そこには――。
高さが30メートルを超えている、『超』が付くほどに巨大な樹木の魔物がコンビニの近くに立っていた。
その外見は、他の10メートル級の樹木の魔物達よりも……さらにおぞましく。大きな幹の表面部分には、人間の顔が至る所に無数にくっ付いている。
その全ての人間の顔が、嘆きに満ちた苦悶の表情で満ち溢れていて……。サイコ系のホラー映画に登場をする『人面タワー』のように、形容し難いほどの邪悪さと醜悪さに満ち溢れていた。
『苦しぃぃぃいいよぉぉぉぉ……』
『早くぅぅ、早くぅぅ、俺達を殺してくれぇぇぇぇ……』
『お願いぃぃぃ、もう……生きたくなぃぃぃぃ……』
『もう、解放をしてくれぇぇぇ、お願いだぁぁぁ……勇者さまぁぁぁ……』
巨大な樹木の魔物から聞こえてくる、怨嗟の呻き声の大合唱。
それはまるで地獄の底に響き渡る、亡者達が泣き叫ぶ呻き声のようでもあった。
「……コンビニの勇者よ、そのような場所に篭っていないで外に出てきてはいかがですか? ご覧なさい、私の最高傑作を! この魔物には人間の魂をなんと……贅沢に50人分も詰め込んだ、まさに至高の芸術作品なのです! この醜さ、そして醜悪さ! まさに人間達の姿をリアルに体現している魔物だとは思いませんか? 私はぜひ、この芸術作品の素晴らしさをあなたと分かち合いたい。……さあ、外に出てきて下さい、コンビニの勇者よ。季節の変わり目のように、目まぐるしく変化をするあなたの激しい感情の起伏を……ぜひこの私に直接見せて下さい!」
コンビニ支店1号店に向けて。
ソシエラを宿した人面樹の魔物が、天使のような微笑みを浮かべて語りかけてくる。
外に立つ巨大な人面タワーと化した巨大樹の魔物は――。その大きな木の根を使って、コンビニの側面に蹴りを入れるかのように攻撃を加えてきていた。
このままでは多分、コンビニはサッカーボールのように。超巨大な樹木の魔物の根によって、簡単に蹴り飛ばされてしまうかもしれない。
「あの野郎おおおぉぉ……!! 絶対に、絶対にアイツだけは、この俺が直接『殺して』やるからな!! 人間の魂をオモチャのようにもて遊びやがって……!」
俺は両手の拳を血が滲むくらいに強く握りしめ。
ソシエラに対しての憎しみの言葉を、大声で叫んだ。