第百四十八話 聖なる雷撃
砂漠の魔王モンスーンの守護者である、青い神官。
青髪のイケメン男、メフィストの右手から放たれた聖なる雷撃が――轟音を響かせながら俺の体に直撃する。
”ズドドーーーーーーーン!!”
「ぐうああああぁぁぁーーーーッ!?」
プスプスと皮膚の焼ける匂いがする。
生き物を直火で丸焼きにしたような、焦げ臭い匂いが、俺の体全体から染み出てくる。
もしも、空から落ちてくる落雷の直撃を受けたとしたら――。きっと人間の体は、こんな感じになってしまうんだろうな。
正直に言って。こんなに強烈な一撃をまともに食らったなら……普通の人間は一発で『人生』という大舞台から、強制フェイドアウトさせられてしまうだろう。
まあ、それは『普通の人間』ならだけどな。
「ハッハッハーーッ!! 愚かなり、魔王領に侵入して来た若き異世界の勇者よ! 神聖なる砂漠の神、モンスーン様に逆らうという愚行をしでかすから、このような目にあうのだ! モンスーン様の代理として、砂漠に住む人間共を統治しているこのワタシが、聖なる神の雷撃を持って貴様に厳罰を下してやったぞ!」
勝ち誇るように、大きな雄叫びを上げて。
青い神官メフィストは、ドヤ顔で声を荒げて叫び続けている。
「……フン、愚かな異世界の勇者はどうやら、その姿や形も一切残さぬ程に、黒焦げと成り果ててしまったようだな。まさに愚か者が辿る結末としては、実に相応しい惨めな最期ではないか!」
「――まあ、確かにそう思うよなぁ? 俺も、そこだけはお前に同意してやるよ。愚か者を葬る時には、強力な一撃でちゃ〜んとトドメを刺してやらないといけないよな! 後でお前が最期の瞬間を迎える時には、形も残らないくらいにお前の体を粉々に粉砕してやると、今から俺は予告しておいてやるからな!」
自信満々で笑っているイケメン男に。
俺は中指を高らかに突き上げながら、返事をしてやった。
「――な、なんだと……!? そんなバカな? どうして、お前はまだ生きているのだッ……!?」
自慢の雷撃攻撃を直撃させたのに。
俺が即死をせずに。平気な姿でいる事に……メフィストは激しく動揺している。
俺は自分の体からモクモクと湧き出ている黒い煙を、両手で一気に振り払う。
そして、スマートウォッチを操作しながら。すぐに反撃の態勢を整えた。
確かに……今のは、かなり凄まじい威力の雷撃だった。
でも、俺の体を守るコンビニ店長専用服の、無敵ガードを破壊するほどでは無かったみたいだ。しかも幸いな事に、腕に付けていたスマートウォッチも壊される事なく無事だった。
俺の体をしっかりと守ってくれるだけでなく。
体に付けている装備品まで、ちゃんと守ってくれてるなんて……コンビニ店長服が高スペックでマジで助かったぜ!
「よーーし! 全攻撃ドローン部隊、あの青い神官野郎に一斉集中砲火開始だ!! 全火力を一点に集中させて、イケメン男のお尻に鋭く尖ったミサイルを何本もぶち込んでやるからなッ!!」
砂漠の上にあったコンビニ支店2号店は、コイツの雷撃を受けて黒焦げにされてしまった。
だけど、先にコンビニの屋上から出撃させていたドローン部隊は、全機……空の上に待機をさせていたから健在だ。
もちろん、それほど大量の数がコンビニから出撃出来ていた訳ではない。でもあの青い神官野郎を背後から強襲するのには、十分過ぎる戦力はあるだろう。
”ドシューーーーーーッ!!”
青い神官メフィストの背後に、攻撃ドローン部隊から小型ミサイルが一斉に射出される。
俺はすぐさま、後方にジャンプをして。
青い神官野郎の体から離れて、距離を取った。
”ズドドドドドドドドーーーーーーーン!”
10発近い、小型ミサイルが白煙の糸を引きながら。
青い神官野郎の背中に全弾命中して、激しい爆発を繰り返す。
「うぐおおおあああああぁぁぁーーーっ!?」
自分の得意な必殺技を食らわせても、俺が無傷だった事に動揺をしてか……。
青い神官野郎は、後方のドローンから発射をされたミサイル攻撃に反応をするのが、完全に遅れたようだ。
メフィストは、ドローンから発射されたほぼ全てのミサイル攻撃を全弾、まともに背中に被弾してしまう。
現代兵器の破壊力をその背中に全て浴びて。メフィストはその場で大きな呻き声を上げながら、苦痛に顔を歪める。
よし、やったぞ!
どうやら砂漠の魔王モンスーンに仕えている、この青い守護者は……自身の身を守る『バリアー』のようなものは持っていないようだな。
以前に俺が戦った、動物園の魔王に仕える4魔龍侯爵達。
赤魔龍公爵や、緑魔龍公爵なんかは、自身の身を守る強力な結界を張って、常にその身を守る事が出来ていた。だから俺やアイリーンの攻撃はなかなか通じずに、俺達はかなり苦戦をした記憶があったからな。
この目の前の青い神官……イケメン顔のメフィストは、先程のコンビニからのガトリング砲も、まともにその体に食らっていたと思う。
今回の予期せぬ奇襲であった、空中ドローンからのミサイル攻撃も全弾被弾をして。かなりのダメージをその体に負っているように見える。
つまりは……この砂漠の神官には、自身の身を守る強力なシールドは何も無いという事なのだろう。
うちのコンビニを守護する青い騎士、アイリーンも防御用のシールドは持っていないしな。
おそらくこのメフィストも、アイリーンと同じで攻撃に特化をした守護者なのかもしれない。
ただ……。受けたダメージを、すぐに再生する事の出来る能力があるのはちょっと厄介だな。
まあ、でも俺が放つ攻撃がちゃんと通じているのなら、戦いようは幾らでもあるはずだ。
例えアイリーンがこの場に居なかったとしても。俺の持てる火力全てを総動員すれば、何とかコイツを倒す事が出来ると思う。
「よーし、コンビニ支店2号店よ、いったん消えろーーッ!!」
俺は先ほどメフィストの雷撃攻撃を食らって、黒焦げにされてしまったコンビニ支店2号店を、いったんカプセルに戻す事にした。
コンビニ支店シリーズは、初期の頃のコンビニ本店と同じ仕様になっている。しまうと、カプセルの形にはなってしまうが、また自由に外に出したりする事が出来るからな。
例え黒焦げにされて壊されてしまっても、またカプセルに戻して出し直せば、ちゃんと修復をされた新品の状態でまた使用する事が出来る。
コンビニ支店2号店は、既に屋根の上のガトリング砲もボロボロに破壊されているし、ドローンを出撃させる屋根の上のカタパルトも見る影も無いくらいに壊されてしまっているからな。
ここはいったん収納をして、もう一度出し直した方が得策だろう。
コンビニ支店2号店をカプセルに戻し、また外に展開をしようとした俺の前に――。
再び、青い神官――メフィストがぬらりと立ち上がり。
高速移動でこちらに向けて駆け寄って来ていた。
「なっ……!? コイツ、ミサイルが全弾命中したはずなのに! 何でまだそんな身軽に動けるんだよ……!?」
メフィストは、背中から青い血を大量に流しながら。
鬼気迫る表情でこちらに向かってきている。
よく見ると、その右手には既に収束された青い聖なる光が無数に束ねられていた。
ヤバッ……! こいつ、さっきの雷撃攻撃をまた放ってくるつもりなのか!?
俺のコンビニ店長服は、合計で3回だけしかチート防御能力を発動する事は出来ない。もし、あの雷攻撃の直撃を連続で食らったなら……それは本当にヤバイ事になるぞ!
普通、必殺技ってのは連続で撃てないのが公式ルールだろう!
もし、あんな強力な攻撃を連発されたなら……。
俺のコンビニ店長専用服は、あっという間に防御シールドを全て破壊されて、丸裸状態にされてしまうぞ!
「――今度こそ、その身に聖なる雷撃を受けるが良いわッ!! 『雷光流撃』ーーーッ!!」
”ズドドドーーーーーーーーン!!”
青い神官メフィストの手から放たれた青白い光が――轟音を響かせながら俺の体に迫ってくる。
その青い光の束が、俺の体に当たって炸裂をする前に。
俺はギリギリ……メフィストと俺の体との間に、鋼鉄の金属板を持つ、シールドドローンを割り込ませる事に成功をした。
放たれた青い雷撃の全てを受け止めたシールドドローンは、空中で大爆発を引き起こす。
”ドゴーーーーーーーーン!”
「ぐおおおおぉぉぉッ………!!」
俺の体はドローン大爆発の爆風に巻き込まれ、大きく後方に弾き飛ばされた。
メフィストが放つあの雷撃は、本当にシャレにならないくらいに強力だ。
なにせあのコンクリートの壁に覆われたコンビニを、一撃で丸焦げにしてしまうくらいの威力があるんだからな。
――だが、金属成分100パーセントのシールドドローンは、雷の攻撃を防ぐ避雷針として。十分過ぎる程に、優秀な性能を発揮してくれた。
強力な電撃をまともに食らったシールドドローンは、見るも無惨なくらいにボロボロに焼け焦げてしまったけどな。
「おのれ、貴様……! 絶対に許さんぞぉぉぉッ!!」
俺をまた仕留め損なった事を知ったメフィストは、青い雷撃を放ったばかりの右手をすぐに引っ込めると。
今度は左手に青い光を収束させて、再び電撃を放つ構えを取った。
――こ、この野郎ッ!
連発にも程があるだろうが!
コンビニを一撃で黒焦げに出来る雷撃を、そんなにポンポンと連続で撃ってこれるのかよ……! このチート野郎めッ!
おそらく俺がドローンを使って雷の攻撃を防いだ事で。
俺の体に特別な雷撃の耐性がある訳ではないと、メフィストは見抜いたのだろう。
ならば連続で電撃を食らわせる事で、一気にトドメを刺す作戦に切り替えたらしい。
――クッソ! 攻撃特化にも程があるぞ。
どうやらコイツは防御を無視して攻撃魔法の習得だけに特化をした、生粋の戦闘タイプの守護者みたいなだな……。
俺は鋼鉄製のシールドドローン2台を、急いで合体させる。
そして再びホバーボードのように、空を移動する為の土台にした飛行型ドローンに飛び乗った。
そのまま空中でドローンを操作して。放たれたメフィストの雷撃攻撃を……ギリギリの所で回避をしてみせる。
”ズドドドドドドドーーーーーン!!!”
俺の乗る飛行ドローンを撃ち落とせずに。雷撃の轟音だけが、虚しく空に響き渡った。
「……逃げるでないッ、この腰抜け勇者めがーーッ!!」
「バーカ! 逃げないとお前の気持ち悪い雷撃を浴びて、俺は黒焦げにされちまうじゃないかよ! 命あってこその楽しい異世界生活なんだぞ! こっちはもう、お前の攻撃を食らうわけには絶対にいかないんだよッ!!」
本当はあと2回だけなら、コンビニ店長専用服の防御性能で攻撃を防ぐ事も出来る。
……だが、それはあくまでもこっちの切り札だ。
神官野郎には、まだそれを悟らせない方が良いだろう。
空の上を、魔法の絨毯に乗る魔法使いのように旋回する俺を目掛けて――。
青い神官メフィストは、右手と左手を砂漠の上で交互に繰り出し。聖なる雷撃とやらを連発で空に向けて放出してくる。
俺はそれらの連続攻撃を……空中でドローンに乗りながら全てスレスレのタイミングで、何とか避け続けていた。
「――うおおっ!? い、今のは危なかったッ……! おいっ、いい加減にその攻撃をやめやがれ!!」
「お前が避けなければ良いのだ! さっさと、ワタシの雷撃をその身に浴びて、神の裁きを受け入れるが良い!」
――あの野郎……。
余裕をこいて、ニヤついて笑っていやがるな。
あの顔はどう見てもこの状況を楽しんでいやがる、変態サディストの顔だぞ。
やっぱりクソ野郎だとは思っていたけど……。自分が圧倒的優位に立てる状況で、力の劣る相手を痛ぶるのが楽しくて仕方がないらしい。
クッソ……! このまま空をぐるぐる旋回してアイツの攻撃を避け続けていても、埒が明かないな。
もし、この場で俺だけが命惜しさにトンズラをしても良いのなら……。
この飛行型ドローンに乗って。さっさとあの雷撃バカから離れた所に遠ざかれば、それで助かるんだろうけどな……。
でも、それはダメだ!
マイラ村の人々。そして、ターニャ達親子がこの村に残っている以上――。
異世界の勇者様が空を飛んで遠くに逃げて行きました。なんてオチにする訳には、絶対にいかないからな。
だから、ここは俺が1人でアイツを何とかしないといけない。
俺は飛行型ドローンの上で、スマートウォッチを操作して。
マイラ村の隅々に配置させていた機械兵――コンビニガード達全員を、いったんメフィストの周辺に集結させる事にした。
ほんの少しだけでもいいんだ……。
青い神官野郎が、バリアーなどの防御手段を持っていない以上。火力の高い攻撃で一気に畳み掛ける事が出来れば、何とか倒せるはずなんだ。
集結したコンビニガード達――総勢100体は。青い神官の周囲に集まり、取り囲むようにしてその周りを180度ぐるりと包囲した。
そして……全員が一斉に槍を構えて。
タイミングを合わせて、飛び掛かるようにしてメフィストに向けて襲い掛かっていく。
「――ハッハッハ! 愚かなり、異世界の勇者よ! このワタシの能力をみくびったお前の敗北だぞ!!」
メフィストの体全体に、青白い光が勢いよく収束をしていく。
そして、今度は奴の手の平だけではなく……。
青い服を着たその体全体が、眩しい発光を何度も繰り返すようにして――輝き始めている。
「な……何なんだ、あの光は……!? あの野郎、まさか全体攻撃を繰り出す事も出来たのかよ!?」
おいおい……!
こいつはマジでシャレにならないぞ。
こっちの世界に来てからの俺の嫌な予感ってのは、大体当たってしまう事が多いんだよな。
だから、ここは絶対に警戒をした方がいいだろう。
砂漠の神官の体を包み込んだ青い聖なる光は――そのまま眩いばかりの輝きを全方向に向けて放ち始めると……。
「フッフッフ、食らうが良いッ! 『雷光散撃』ーーーッ!!」
メフィストは全身に集めた青い光をまるで散弾のように……。一気に自身の体から、全方角に向けて小さな雷撃の弾を大量射出させていく。
”ズドドドドドドドドドドドーーーッ!!!”
全方位に向けて勢いよく放たれていく青い光の散弾。
それは、まるで俺のコンビニから発射されるガトリング砲のように。連射をしながら周囲を取り囲んでいるコンビニガード達の体を一気に貫通して吹き飛ばしていく。
あの野郎……。どうやら体から放出させる雷撃の量を、細かく調節する事も出来るらしいな。
あの体全体が雷撃を自由に放出させる、強力な放電兵器になっているって事なのかよ。
奴にとって最大火力となる攻撃はやはり、両手に集中をさせた青い光を一気に解き放つ『雷光流撃』なのだろう。
……だが、その威力を意図的に弱める事で。雨粒のように細かくした電撃の散弾を、連続で体外に放出させる事も出来るらしい。
青い散弾をまともに被弾して。体を貫通させられたコンビニガード達はその場で爆発こそはしなかったが……。
その威力で体の機能は完全にショートして。そのまま次々と為す術も無く、後方に弾き飛ばされていく。
クッソ……!
このままじゃ、本当にマズイぞ。
もうこうなったら一か八かだ。奴の隙を突いて、こちらから接近して、直接攻撃を仕掛けるしかないだろう。
「うおおおおおおおおおぉぉぉーーーーっ!!!」
俺は意を決して、大きな雄叫びを上げながら飛行型ドローンをメフィストの立つ場所に向けて飛行させていく。
……途中、砂の上に倒れているコンビニガードの手から槍を拾い上げて。鉄製の槍を前に突き出すようにドローンの上で構えながら、俺は突進を開始した。
「このままドローンを最大出力で前進させて! 一気に、てめえの心臓をこの槍で貫いてやるぜーーーーッ!!」
青い神官メフィストは、鬼気迫る表情で突進してくる俺の顔を見つめながら。
ニヤニヤと余裕ある顔つきで、口角を吊り上げて笑っていやがる。
「……フッフッフ。全く以て愚かな奴だな! 貴様の本当の狙いを、このワタシに分からないとでも思ったのか? そのような浅はかな作戦がこのワタシに通用するはずがないであろう、この愚か者めがッ!!」
100体を超えるコンビニガード達を弾き飛ばしたメフィストは、突然俺に背を向けて後方に向き直ると――。
両手に青い光を収束させて。強烈な雷撃攻撃を自身の背後の空に向けて連続で発射させていく。
”ズドーーーーーーーーン!!”
”ズドーーーーーーーーン!!”
メフィストの後方上空に、俺がこっそりと配置をさせていた攻撃ドローン5機全てが……。奴の雷撃によって破壊されてしまった。
「フン……機械の兵隊共にワタシを襲わせおいて。更に自分も正面から突進をしていくと見せかけておき。本当は後方から、あの空に浮かぶ不思議な機械を使って、ワタシの背後を襲おうと狙っていたのだろう? 全く持って愚かな……。このワタシがそんな狙いに気付かないとでも思ったのか?」
「……くっそ! なら、俺がこのまま直接攻撃をして、お前を命を仕留めてやるよ!! 覚悟しやがれ、この変態野郎がーーッ!!」
コンビニガード達も。
メフィストの後方に、密かに浮かべていた全てのドローン達も。
その全てを破壊されてしまって。
もう打つ手が残されていない俺は――。
そのまま雄叫びを上げながら。飛行型ドローンを一気に加速させて、神官野郎の正面に最大速度で突進を続けていく。
「……もはや希望を失い、完全に自暴自棄になったのか。よろしい、今度こそワタシが直接お前にとどめを刺して葬ってやるぞ!」
メフィストの両手が再び青い聖なる光を収束させて。眩いばかりの光を放ちながら輝き出す。
今度こそ俺を一撃で仕留める為に。その手に全エネルギーを溜め込んでいるみたいだな……。
今までで一番、大きな光の束が手の平の中に集められ。その光り輝く両手をガシッと合わせる事で、更なる強力な光の輝きを生み出している。
「うおおおおおおおぉぉぉぉーーーーーッ!!!」
俺はメフィストの正面に辿り着いた所で……、
奴の上空に向けて、大きくドローンの上でジャンプをした。
乗っていた飛行ドローンはそのまま、メフィストの体に目掛けて全速力をキープしたまま突進させる。
メフィストは、俺が飛行ドローンをミサイルのように、自身の体にぶつけてくるとは思わなかったのだろう。
とっさに収束させていた青い光のエネルギーを少しだけ放出し。
向かってきたシールドドローンを、強力な雷撃で一気に粉砕した。
”ドガーーーーーーーーン!!”
爆破されたドローンの爆風と、立ち込める黒煙の上から。
鉄の槍を構えた俺が――。
一気に上空から、メフィスト目掛けて急降下を開始する。
「――バカめ! ワタシがそんな事も、計算出来ていないと思うのか?」
メフィストはすぐさま、上空にから襲いかかる俺の体に向けて。
両手を突き出すような形で、迎撃態勢をとる。
「今度こそ、本当に滅びるがよい! 異世界の勇者よッ!! 『雷光流撃』ーーーッ!!」
”ズドドドドドドドーーーーーーン!!!”
今までで、最も強力な凄まじい光のエネルギーが――俺の体に直撃をする。
あまりの衝撃に、思わず手から離してしまった鉄の槍は……聖なる雷撃の高熱により、一瞬で溶けてしまった。
全身を焼き尽くすような、恐ろしい衝撃が体中を駆け巡る。
脳回路が焼き切れたようにして、俺の思考は一瞬にして遮断をされてしまう。
凄まじい轟音と衝撃と共に。
まさに、大地を震わす肌の大きな落雷が――俺の体に向けて落とされた。
それは神の怒りと形容しても間違いないくらいに、あまりに強力過ぎる一撃だったのは……間違いない。
「勇者様ーーーーーーーッ!!!」
遠くから、ターニャの悲鳴が聞こえた気がする。
きっと家の中から、ずっと俺と青い神官の戦いを見ていたんだろうな。
真っ黒な煙に包まれた俺の姿を見て。
砂漠の青い神官メフィストは、勝利を確信して叫び声を上げた。
「フッハッハ! 愚かなる異世界の勇者よ。神の裁きを受けてそのまま焼き尽くされるが良い! この砂漠の地は我らの主人、モンスーン様が統治をされている聖なる領域なのだ。ここでは、例え女神教の枢機卿であっても、暗黒渓谷のシエルスタでも、虚無のカステリナであっても好きにはさせぬ。我らの神、モンスーン様だけが唯一無二の神なのだからな!」
「……そうか、そうか。なら、その神様気取りの偽物野郎を、やっぱりこの俺が直接倒してやらないといけないよなぁ?」
「――な……!? 何だと……!?」
俺は全身を包み込んでいた黒い煙を掻き分けて。
一気にそのまま、青い神官野郎の体に向けて。空から急降下をしながら攻撃態勢を整える。
そして、驚愕をしてその場で立ち尽くしている野郎の上空で――。
ポケットの中から、3つの小さなカプセルを取り出した。
俺はそれを、野郎の頭上に向けて投げつけると。
そのまま大きな声で、『ざまぁ!』と、あざ笑うようにして叫んでやった。
「出でよーーーッ!! コンビニ支店2号店、コンビニ支店3号店、コンビニ支店4号店よッ!!」
”ズドーーーーーーーーーーーン!!”
”ズドーーーーーーーーーーーン!!”
”ズドーーーーーーーーーーーン!!”
上空に突如出現をする、巨大な3つのコンビニ。
総重量が50トンを超える、コンクリート製の超重量級現代建造物が……合計で3つも同時に空中に出現をした。
そのまま3つのコンビニ支店は、重力に引っ張られるようにして……一気にメフィストの体を目掛けて加速しながら落ちていく。
「よーし! 一気にコンビニで押し潰してやるぜ。コンビニの勇者の最強の必殺技をしっかりと味わいやがれ! 俺はさっき、ちゃんとお前に予告をしておいたよな? 『お前の体を、死体も残さないくらいに粉々に粉砕してやるからな』ってよ……!」
頭上に突如出現をした、巨大なコンビニの建物3つに。
メフィストは顔を引きつらせて、恐怖に怯えた表情を浮かべている。
まあ、生物ってのは本能的に分かるものだからな……。
こんなのものは絶対に防ぎようがない。
もう自分は助かりようがないじゃないか……ってな。
「――さあ、青神官野郎ッ!! 俺の新必殺技、『無限コンビニ落とし』を食らいやがれーーッ!!!」