第百四十七話 コンビニの勇者 vs 青の神官
青い神父服を着たサディスト野郎を、思いっきり殴り飛ばしてやったぜ。
はぁ〜! 実に爽快な気分に成れて満足だ。
やっぱ異世界の勇者の本来の仕事ってのはさ。こういう、弱き人々を守る為になるような事をどんどんしていくべきだと思うんだよな。
うんうん、これこれ。
これが本来の異世界の勇者の仕事だよ。
俺は今、最高に清々しい気分になれて、超気持ちが晴れやかになれたぞ。
マイラ村に住む村人達も。ターニャ達親子の3人も。
青色神官野郎の取り巻きである、サソリの形をした黄色い魔物達も。
完全に目が点になって、唖然としているみたいだな。
……まあ、俺のした常識外れな行為の意味が、みんなの頭の中ではすぐに理解は出来なかったんだろう。
青色の神官が、村の入り口付近で口から泡を吹いて倒れている異様な光景を見て。
マイラ村の村長さんは、まるで入れ歯が口から全部飛び出してしまいそうな勢いで大絶叫をした。
「し、神官様ぁーーっ!? な、なんていう事をお前はしでかしてくれたのじゃあ!! ああっ、もうこの村はお終いじゃあ〜! 全てお終いなのじゃあ〜〜っ! 我らは砂漠の神、モンスーン様のお怒りを受けて、一族郎党全て抹殺されてしまうのじゃあ〜〜っ!」
マイラ村の村長さんが、楽しみに取っておいた冷蔵庫のプリンを食べられて。絶望している玉木みたいな表情を浮かべているな。
なかなかリアクション豊かな爺さんみたいだけど。
流石にそこで、ずっと1人で大絶叫されていても困るからな。
俺は村長さんに呼びかけて、村人達と共にここから安全な場所に避難をして欲しいと頼んでみた。
「……爺さん、そこで1人で盛り上がっている所を悪いんだけどさ。もし、あんたがこの村の村長なら、村のみんなを安全に場所にまで避難させて欲しいんだ。これから俺はここで、あそこにいる青いサディスト野郎と、激しい戦闘をするつもりだからな!」
俺は村長さんの背中をポンポンと軽く撫でて。
マイラ村の人々を、いったん安全な家の中に避難するように誘導して欲しいとお願いをしてみた。
……だが、完全に放心状態の村長さんの耳には、俺の言葉は全然届いていないみたいだった。
その場でずーっと土下座をしながら。村長さんは天を仰ぎながら、延々と謝罪の言葉を砂漠の神様に向けて連呼し続けている。
あーー。これはもう、完全にダメな奴だな。
この村長さん、もう頭の中が完全に真っ白になっているみたいだ。これじゃあリーダーシップを発揮して、マイラ村の人々に避難を呼びかけてくれる、ってのはちょっと無理そうだ。
うーん、そうしたらどうしたものかな。
「――勇者様、分かりました! ここは私に任せて下さい。みんなーー!! ここから急いで離れてーー! すぐに家の中に逃げるの! 異世界の勇者様が青の神官を倒してくれるから、私たちは勇者様の邪魔にならないように、みんなで家の中に避難するのよ!!」
俺の困っている様子を見ていたターニャが、大声を上げてマイラ村のみんなに呼びかけてくれた。
その声を聞いた村人達は、何となく状況を察して。
みんな我先にと自分達の家を目指して駆け出していく。
「おおっ、サンキュー、ターニャ! 本当に助かったよ!」
ナイスアシストをしてくれたターニャに、俺は親指を立ててグーサインを送る。
「はい、勇者様ーーっ! どうかマイラ村の未来を……よろしくお願い致します!」
「おう、任せておけ! 俺が必ずみんなを救ってみせるからな!」
腰を抜かして、その場で動けないでいた村長さんは。ターニャ達親子が、3人がかりで腰に手を回して。一緒に家の中にまで連れて行ってくれた。
これでマイラ村の入り口には、砂漠の神――モンスーンの神官である青服野郎。
そして、その周りを取り巻いている巨大なサソリ軍団と、俺だけしか残っていない状況になったな。
「スゥーーーッ」
俺は一度、深呼吸をして。まずはゆっくりと呼吸を整える。
おそらくこれから俺は……俺史上……最大級にヤバい戦いをここで繰り広げる事になりそうだからな。
なんと言っても、向こうでまだ口から泡を吹きながら倒れてる青色の神官野郎は……。おそらく、砂漠の神を自称している魔王――『灼熱砂漠のモンスーン』の守護者の1人に違いない。
今まで、『動物園の魔王』である冬馬このはの守護者であった、魔王軍の4魔龍公爵達と俺は今まで戦ってきた。
コンビニの守護者もそうだけど。
青い騎士のアイリーンや。白い純白のヤンキー花嫁騎士であるセーリス。
そして、ピンク色の綺麗な髪色をしているコンビニホテルの支配人でもあるレイチェルさんのように。
無限の勇者を守る守護者達は、その外見が色分けをされているという、特色があるみたいだからな。
このモンスーンの配下であるという青い神官野郎は……高確率で無限の勇者を守る守護者の可能性が高そうだ。
そして、もしそうだとすると――。
俺は魔王軍の赤魔龍公爵や、緑魔龍公爵に匹敵するくらいの強さを持つ強敵と。
今から、たった一人だけで戦わないといけない事になる。
……チラッとだけ。俺はスマートウォッチの画面を確認してみた。
アイリーンからの応答は、どうやらまだ無いみたいだな。
コンビニの守護騎士であるアイリーンなしで、敵の魔王に仕える守護者とこれからバトルをする訳か。
正直……俺一人で勝てるかどうかは、微妙だな。
まだ、『剣術使い』の勇者である雪咲あたりが、ここに居てくれたなら心強かったんだけど。
コンビニ支店1号店にいる、ティーナや玉木達とは今の所、全然連絡が取れそうにない。
……よし、それならしょうがない。
ここは覚悟を決めて、俺がやるっきゃないよな!
さっき俺はターニャに『全て任せろ!』と強く約束をしたんだ。
だから、ここで異世界の勇者が負けるだなんていう選択肢は絶対に許されない。
俺が負けたなら、さっきこの悪趣味な青い神官野郎が宣言をしたように。本当にマイラ村の人々は、全員この場で焼き殺されて。その焼死体を他の砂漠の村々に晒されてしまうという、残酷な目に合わされてしまうだろう。
伝説の異世界の勇者が、自分達の村に来てくれた事を心から喜んでいたターニャの為にも。
俺は、絶対にここでコイツに負ける訳にはいかないんだ。
パワーアップをした、コンビニの勇者の本気を見せてやろうぜ!
俺は、敵の守護者に勝つ為の戦略を、必死に頭の中で考えていると……。
村の入り口側で倒れていた青い神官が、ようやく腰を上げて。その場でゆっくりと立ち上がろうとしているのが見えた。
その形相は怒りを飛び越えて。まるで般若の仮面をつけたような鬼の表情になっている。
でも、よくよく見てみると。青い神父服を着ている神官の男は――見た目だけなら結構なイケメンの若い男である事に気付いた。
外見年齢は、20代半ばといったところか。青いショートカットのヘアーに、碧眼の鋭い目つきをしているまあまあなハンサム顔だ。
妖怪倉持よりも筋肉質で、背の高いスポーツマンタイプのイケメン男といった感じに見える。
まあ、異世界でイケメン顔をしているような奴は……高確率で性格の悪いクソ野郎だというデータが、俺的人生経験に基づく、異常に偏った統計結果から算出されている。
ちなみに参考資料は、うちのクラスの委員長である倉持悠都だけなんだけどな。
イケメンを見たら、とにかく警戒をする事。
これは異世界で生き抜く為の、必須項目だから忘れないようにしておいた方が良いぜ。倒れているゾンビは念の為に、2度撃ちしとくのと同じくらい大事だからな。
俺は敵である青い神官が本気を出す前に、一気にこちらから攻撃を仕掛けて、ケリをつける事にした。
コンビニ店長服のポケットから取り出した小さなカプセルを、右手親指でピシッと宙に弾き上げる。
『出でよーーッ!! コンビニ支店2号店ーーッ!!」
俺は高らかに、コンビニを召喚する言葉を叫んだ。
”ドゴーーーーーーーン!!!”
マイラ村の入り口に、巨大なコンビニが出現する。
砂の上で、起き上がったばかりの青い神官野郎も、その周辺にいる黄色いサソリの魔物達も。
それぞれの家の中に避難をしていたマイラ村の村人達も。
ここにいる全ての人々が、砂漠の上にいきなり出現をした巨大な現代建築物――『コンビニ』の圧倒的な存在感に驚きの表情を浮かべていた。
みんな初めて見る生コンビニに、ビックリしているみたいだな。
さすがに俺の元いた世界でも、砂漠で上でコンビニが営業をしているは一度も見た事はない。
砂の上に建つ『日本式のコンビニ』という……あまりにミスマッチな絵面には、苦笑をするしかないな。
まるでサハラ砂漠のドキュメンタリー番組か何かの生放送中に、いきなり日本のコンビニの映像が映り込んできたくらいの強烈な違和感があるぜ。
……だが、ここは油断をしている場合じゃない。
だから、俺もいきなり本気でいかせて貰う事にするぞ!
「――全コンビニ守護機兵隊、攻撃ドローン隊、シールドドローン部隊――総出撃、開始!!」
砂漠の上に建つコンビニ支店2号店の入り口から。次々と槍を持った機械兵であるコンビニガード達が飛び出してくる。
同時にコンビニの屋上にある上部ハッチが開き。
空戦部隊である大量のドローン部隊が、発進準備が整い次第――順次、砂漠の空に向かって飛び立っていく。
コンビニ支店2号店は、機能がアップグレードされたコンビニ支店1号店とは違って。コンビニを移動させる事の出来るキャタピラーや、合金製の鋼鉄シャッターなどは付いていない。
耐久性もコンビニの壁面にステンレス強化シャッターを展開するのがやっとなので、防御面はかなり弱い。
でも、各コンビニの支店で扱える商品は、共和国に残してきている本店との在庫の共有がなされているからな。
だから最新版のドローンも、無数のコンビニガード達もコンビニ支店から出撃をさせる事が出来るようになっていた。
流石にカタパルトや収納倉庫はないから、戦車やアパッチヘリを出撃させる事は出来ないけど、俺が操れる戦力としては十分過ぎるくらいだろう。
俺はスマートウォッチのタッチパネルを操作して。
コンビニから出撃させたコンビニガード達――おおよそ100体ほどを、マイラ村の村人達を守る為に村の隅々に配置させていく。
それと同時に、コンビニ支店2号店の屋上からは。
5連装式の自動ガトリングショック砲を高速フル回転させて。青い神官の周辺にうろついている、黄色いサソリ軍団に目掛けて一斉攻撃を開始させる。
「――全火力砲集中砲火!! 敵の魔物達を全部吹き飛ばしてやるぞ! いくぜーーッ!! ガトリング砲ーーッ!!」
”ズドドドドドドドドドドドドドドーーー!!”
コンビニ支店の屋上からガトリング砲が真っ赤な火を吹き。
連射されたガトリングショック弾の雨が、砂漠の大地に上に轟音を伴って降り注いでいく。
青い神官野郎の周辺にいた、巨大なサソリ軍団は――。次々にガトリング砲の集中砲火によってなぎ倒されていった。
激しいガトリング砲の炸裂音と、銃撃の雨によって巻き上げられた強烈な砂の嵐が収まると。
青い神官の周辺には、黄色いサソリの魔物達の姿は影も形も何も残っていなかった。
ただ砂漠の砂だけが、その周辺に残っているだけの状況となっている。
……なるほど。
どうやらあの黄色いサソリ達は、砂漠の砂で作られている魔物達みたいだな。
周辺にサソリの死骸が何も残っていない所を見ると。ガトリング砲によって魔物達は全て粉々に粉砕されて、おそらく……元の小さな砂粒に戻ったという事なのだろう。
村の入り口付近で舞い上がっていた砂嵐が、ゆっくりと収まっていくと。
そこには両手を広げて、ゆっくりとこちらに向けて歩いてくる、青い神官野郎の姿が見えてきた。
――チッ……!
やっぱり、ガトリング砲だけじゃ無限の勇者の守護者は倒せなかったか。
黄色いサソリの魔物達を倒すついでに。俺はあの青い神官の体にも、大量のガトリング砲の雨を降らせてやったんだけどな。
さすがに、砂漠の魔王に仕える守護者だけはある。
どうやら、野郎はたいしたダメージは何も受けていないみたいだな……。
――というような、俺はバトルものの漫画によくあるような、王道展開を予想していたのだけれど……。
……んん?
よーく、青い神官野郎の姿を見てみると。
所々、青い神官服には無数の穴が空いていて。
体中から青い液体がこぼれ落ち、砂漠の砂の上を青色の血で染め上げている。
流れ出る青い血のような液体を溢れさせながら、苦痛に顔を歪めているような表情で。
青い砂漠の神官メフィストは、足を引きずりながらこっちに向かってゆっくりと歩いてきていた。
あれ……? おいおい。
ガトリング砲が結構、効いてるんじゃないのか?
実はコイツは思ってたよりも弱いとか。『奴は四天王の中でも最弱』とか、そんな感じだったりするのだろうか?
苦悶に顔を歪めながら。モンスーンに仕える青い神官は、俺の事を睨みながら怒声を上げて問いかけてくる。
「……き、貴様は一体何の能力を持った勇者なのだ! モンスーン様を守護するこの青き神官、メフィスト様の体に。これほどの深い傷を負わせるとは……! おのれぇ、絶対に許さぬぞおおおぉぉっ!!」
あっ……やっぱり、結構深い傷を負ってたんだ。
俺は、いまいち敵の実力が掴めないでいるんだが。
とりあえず聞かれたからには、こちらの自己紹介を相手にちゃんと返してやろうじゃないか。
「俺は『コンビニ』の能力を持つ異世界の勇者――秋ノ瀬彼方だ! お前らみたいな悪い魔王と、その手下共を倒して。この世界を、真の平和に導く為にこの魔王領にやってきた、本物の勇者様だぜ!」
うーん、自分で言っていて少し内容が白々しいな。
相手も魔王に仕える守護者の1人なら、魔王が元異世界の勇者な事はもちろん知っているだろうし。
俺達異世界の勇者が、どういう理由でこの世界に召喚されているのかも、大体分かっているはずだからな。平和の為に戦うぞ……と叫んでみても、ちょっとだけ説得力に欠けるのはしょうがないだろう。
本当はその辺りを、異世界の勇者の先輩でもあるモンスーンに色々と聞いてみたい所なんだがな。
例えば、どういう経緯で魔王になったのか?
女神教に所属する不死の魔女達についての情報も、知っている事があるなら俺に全部教えて欲しいくらいだ。
でも……まあ、それは今は無理そうだな。
正直、この魔王領に住んでいる先輩の魔王達は、それを素直に俺に教えてくれるような、優しい性格の奴らとは到底思えない。
自分の事を『神様』呼ばわりさせて、砂漠の村々から生贄を差し出せて巨人達に食わせているようなとんでもない奴なんだぞ?
そんなクズ魔王に仕えているこの青い神官も、絶対にまともな奴じゃ無さそうだしな。
なにせこのクソ神官野郎は、マイラ村の人々を全員火炙りにして焼き殺すなんて、さっき言い放ちやがった。
コンビニの勇者である俺がここにいるんだ。そんな非道な残虐行為を『ハイ、どうぞ!』と、やらせる訳ないだろう。
逆に、俺がコイツらを俺が全員を叩きのめして。
ターニャ達、マイラ村の人々に土下座で謝罪させてやるから覚悟しやがれよ!
「――なに、コンビニの勇者だと? ふん、聞いた事のない名前だな。お前がどのような能力を持っているのかは、ワタシにはよく分からないが、だがなるほど……。新参の『動物園の魔王』を退治する為に、女神教によってこの地に派遣されてきた哀れな勇者の1人という訳か。愚かな……貴様ら異世界の勇者が、一体どのような末路を最後に辿るのか――無知なお前に、このワタシがそれを教えてやっても良いのだぞ!」
青い神官であるメフィストは、ドヤ顔で俺に問いかけてくる。
きっと俺が何も知らない新参のペーペーで。
この世界の裏の事情を何も知らずに、ここに来ているんだと思っているんだろうな。
「ああ……ぜひ教えて貰おうか! この世界に召喚をされた異世界の勇者はやがて不老の魔王となり。その後、不老能力を手にいれる為に必要な『魔王種子』を奪う為に。この世界の裏で暗躍をしている、女神教の魔女達に命を追われ続ける事になるんだろう? そしてそんな逃亡生活に嫌気がさして、お前のご主人は砂漠で神様気取りのイカれた魔王になったって訳何だろう?」
「な……き、貴様ッ! 全てを知っているというのか!?」
青い神官男であるメフィストの体を見ると。先ほどのガトリング砲によって傷わされた傷跡が、どんどん修復しているのが分かる。
どうやらコイツは、自己修復機能を体に備えているようだな。
という事は、もっと攻撃を集中させて。一気にコイツの体を粉々にするくらいの重火力攻撃を加えないと、倒せないという訳か。
青い神官であるメフィストは、向かってくる足の速度を上げる。
そして、飛びかかるようにして、俺に向けて襲いかかって来た。
「――クソっ……! もう一度、ガトリング砲の集中砲火を食らわせてやるッ!」
”――ズドドドドドドドドドドド――!!”
コンビニ支店2号店の屋上から、再び5連装式自動ガトリングショック砲が大量の火を吐き出す。
数え切れない程の無数のショック弾が、一斉に青い神官メフィストの体に向けて飛んでいった。
だが……、青い神官メフィストは。
体をしなやかに回転させながら、砂漠の上で高速移動を開始すると。
コンビニ支店から射撃される全てのガトリングショック砲を、全弾スレスレの所でかわしながら。まるで舞を踊るようにして、こちらに急接近してくる。
走りながらメフィストは、右手に青い光の線を収束させ始めた。
そしてそこから、大きな雷のような光熱波を……コンビニに向けて一気に解き放つ。
「――砂漠の神、モンスーン様に仕える青き守護者の実力を知るが良い、若き異世界の勇者よ! 食らえッ、聖なる雷撃、『雷光流撃』ーーーッ!!」
”ズドドドーーーーーーーーン!!!”
メフィストの右手から放出された巨大な青い光は――まるで天から降り注ぐ聖なる雷撃のように。
砂漠の上に建つコンビニ支店2号店を、一瞬にして焼き尽くす。
そして、コンクリートの厚い壁に覆われたコンビニの外壁を、あっという間に黒焦げの状態へと変貌させてしまった。
「な……!? 俺のコンビニが、一撃で丸焦げにされてしまったのかよ……!」
「――さあ、今度はその奇妙な建物と同じように、貴様の体も黒焦げにしてやろうではないか! 異世界の勇者よ!」
コンビニを一瞬にして焼き尽くした青い神官メフィストは、そのまま砂漠の上を高速で移動をしながら駆け抜ける。
そして、驚愕している俺のすぐ目の前にまで、一瞬にして詰め寄ってきた。
しまった! コイツ――想像以上に素早いぞ……!
「……死ぬが良い、哀れな異世界の勇者よ! 砂漠の神たる我らが主人、モンスーン様の領地に土足で踏み込み。無礼を働いたその身の愚かさをあの世で呪うが良いわ! くらえ!! 電光流撃ーーーーッ!!!
青の神官メフィストの右手から。
強力過ぎる青い光の電撃が――再び、俺の体に向かって一斉に解き放たれる。
”ズドドドドドーーーーーーーーン!!”
砂漠の上に降り注ぐ、聖なる青い雷撃が……。
俺の体を青い炎で包み込み。一瞬にして、全てを焼き尽くしてしまった。