第百二十五話 帰還者と新たな住人達
「う〜ん。最初に西暦の数字を入れてみたり、それとも生年月日を組み合わせてみたりして……。でも、やっぱりなんか違うみたいだよなぁ……」
「彼方くん。それ、たぶん適当な数字をいくら入れてみても絶対に無理だと思うわよ。だって全部で23桁もあるんだもの。天文学的レベルの確率で、それをピタリと選び当てるなんて事は至難の業だと思うの。しかも、それが本当に当たっているかどうかを、こちらの世界からでは確かめられないんだから」
……もう、かれこれ30分くらいだろうか?
俺は異世界ATMの前で、椅子の上に正座をしながら。23桁の数字が表示されている画面と、ずっと睨めっこを続けていたんだけど。
確かにそうだな。
これは紗和乃の言う通りだと思う。
どうやらこの異世界ATMの、送金口座の番号を当てるのは絶対に無理そうだ。それこそ、宝くじで1等が連続で当たる確率よりも難しい気がする。
まだ、正解の数字を入力した途端に『ピロロロ〜ン!』って祝福のファンファーレが、このATMから鳴り響いたりしてさ。
まるでパチンコの大当たりみたいに、ATMから大量の銀玉が溢れ出してくるとか。そういう結果が伴ってくれるならマシなんだよ。
でも多分……例え正解を当てたとしても。このATMからはそういう反応は全く無さそうな気がする。
この異世界ATMで実際にお金を送金してみて。
本当に元の世界の自分や、その家族の口座にお金が入ったかどうかを確かめる術もないんじゃ、さすがにお手上げだ。
……ん? いや待てよ。
そもそも俺、自分の銀行口座の番号なんて全く覚えてないぞ。じゃあ大前提からして、最初から無理無理だったんじゃないか。
俺は『ふぅ〜……』といったん深呼吸をする。
少し疲れたので、シェルター室の床の上にちょこんと座り込む。
さっきからずっと数字とばかり睨めっこをしていたから、目が疲れたな……。首筋あたりをトントンと手で叩きながら、少しだけ長めの休憩を取る事にした。
すると、俺の為にミルクティーのペットボトルを用意してくれたティーナが近くに来てくれた。
「彼方様、お疲れ様です。あまり無理をし過ぎないで下さいね。このATMという機械はきっと逃げてはいきませんので、後でまたゆっくりと挑戦出来ると思いますから。……あ、後、レイチェルさんから連絡が届いていました。エルフ族の皆様が全員、無事に地下の農園エリアへの移動が終わりましたので、確認しにきて下さいとの事です」
「レイチェルさんから? そうか、うん。すぐに行くよ!」
どうやら俺は、結構な時間をこのシェルターの中で過ごしてしまっていたみたいだな。
コンビニの外に並んでいたエルフ族の大行列は、もう地下9階層への移動を全て終えたらしい。
そういえばエルフ族の誘導の途中で、このシェルター室にいきなり来てしまったけど……。
また玉木が怒ってたりしないかな? もしそうなら、ちゃんと謝っておかないといけないな。
俺はティーナと一緒に、地下の農園エリアへとすぐに向かう事にした。
「――ん? 紗和乃は、一緒に来ないのか?」
俺はまだATMの画面を連打でタッチしまくっている、紗和乃にも声をかけてみたんだが……。
「うん。私は大丈夫よ! もう少しだけここで、この異世界ATMを調べてみるわ。送金以外にも色々と出来る事があるかもしれないし。他にどんな機能があるのかをちゃんと把握しておきたいから」
「了解だ。――でも、さっきの俺みたいにあまりそのATMに夢中になり過ぎないようにな! 時間はまだまだいっぱいあるし、後でゆっくりと調べても良いと思うぜ」
紗和乃が大きく頷いて、笑顔でOKサイン出してくれた。
俺とティーナは紗和乃をシェルターに残して。そのままコンビニの地下の最下層へと向かう事にする。
300人近いエルフ族が集まっている農園エリアは今、一体どうなっているのだろう……?
そういえば寝る場所とか、食事をとる場所とか。
用水路の整備とか、そういったものもこれから色々と整備をしていかないといけないよな。
さすがにあのだだっ広い野原で、全員が野宿をするという訳にもいかないだろうし。
その辺の事も、エストリアと話し合いをしながら進めていかないといけない。
エレベーターに乗った俺とティーナは、コンビニの地下9階層にまで一気に下降する。
そして、目的の地下の農園エリアに到着をして。
そこに降り立った俺達の、目の前に広がっていた光景は――。
「うおおおおおっ、何だか凄いな!? まるで富士山のふもと辺りに広がっている、某有名キャンプ場みたいになってるじゃないか……!」
俺とティーナの目の前には……。
広大な大自然が広がる農園エリアの土地に。大小色とりどりのテントが、等間隔で無数に建てられている。目視で確認出来る範囲でも、その数はおおよそ200は超えていそうだった。
その巨大なテント場の間を、たくさんのエルフ族が自由に歩き回っている。どうやらさっそくココルコの木の栽培を始めているらしい。
大きな木製のクワや、農耕用の道具を持って。ココの実を均等に大地に植える作業を始めているようだった。
驚いたのは、ココルコ木のその成長速度だ。既にあちこちの大地から、人間の膝下くらいにまで伸びた緑色の芽がすくすくと成長をしている。
「ああ〜〜!? 彼方くん、やっと来たのね〜! もう、途中でどこかに勝手に消えちゃうから、心配したじゃないのよ〜!」
エルフ族の誘導係を引き受けてくれていた玉木が、こちらに急いで駆け寄ってきた。
頬を膨らましてプンプンとしている様子だが……それほど腹は立てていないようなので、俺は一安心する。
きっとエルフ族の大移動が上手くいったので、玉木も安心をしたのだろう。後で玉木には、ちゃんとお礼を言っておかないとな。
農園エリアの中心地には、レイチェルさんと四条の2人がエルフ達に囲まれて立っていた。
どうやらレイチェルさんが直接指導をして。エルフ族の為の農道の整備や、用水路の確保。収穫をしたココの実を収容する為の倉庫の建造などを、既に始めているようだった。
四条は自身の能力である、『防御壁』の壁を建造出来る能力を上手に使い。小さな小屋や、大きな屋根付き倉庫の作成を器用にこなしている。
今まで四条の能力は、敵との戦闘の際に。目の前にでっかい防御壁をただ建造するだけなのかと俺は思っていたけれど……。小さな壁を器用に組み合わせたりして。レンガの家のようなものまで、上手に作り出している事に驚いた。
『防御壁』の能力って……割と建築家のような事も出来たりする万能な能力だったんだな。
俺は思わず、そばにいる玉木に向かって声をかける。
「何だか、本当に一からエルフ族の為の国作りをしているって感じなんだな」
「うんうん。今回は京子ちゃんが大活躍をしているからね〜! 今日中に小川から水を引いてくる用水路や、収穫をしたココの実の収容倉庫。あと、カップヌーボーの貯蔵庫もこのエレベーター近くに作るんだって〜!」
「本当か? それは凄いな! でも、あれ……? エルフ族はみんなあのままテントの中で生活をするつもりなのか? アレって全部俺のコンビニの商品として扱っていたテントだろう? もしここで寝泊まりをするのなら、上の階のホテルとか、それともこの農園エリアに四条の能力を使って巨大な『宿泊所』みたいなのを作ったりしなくていいのかな?」
俺はまるで野外の巨大キャンプ場のように。辺り一面の敷地にズラリと立ち並んでいるテントの群れを見渡しながら、玉木にそれを尋ねてみた。
「うん、それがね〜。普段エルフさんは私達のように、建物の中では寝たりしないんだって〜。森の木にハンモックや天幕を張ったりして、基本は野宿のような生活をいつもしているらしいのよ。だから、まだココルコの木が成長しきっていない今は、テントが丁度いいみたいなの。もちろんコンビニのホテルは超快適だから、後で絶対に遊びに来てね〜って誘ってはいるんだけどね〜!」
そうなのか。エルフ族は森の中で、ほぼ野宿状態で暮らすような生活スタイルをしているのか。
……いや、俺なんかもアウトドアのキャンプ生活とか、割と好きな方なんだけどさ。小さい頃は、親父に連れられて自然教室とかもよく行ってたし。
でも、テントでキャンプをすると夜は結構冷え込んだりもするし、それこそずっと外にいたら、蚊とかブヨとかに肌を刺されたりもするんだぜ?
見た感じエルフ族は、全員肌がスベスベで色白だし。蚊に刺されまくっているような、赤い湿疹の跡とかは全く無さそうだけどさ。
まぁ、その辺はやっぱり異世界ならではのチート性能なのかな? よくよく考えてみると。俺はずっとコンビニの中で暮らしていたから、この世界で野宿をした経験がない。
だから、この世界にも蚊がいるのかとか、気にした事がなかったからなぁ。
……後で、クラスの他のメンバーにもその辺りの事情を聞いてみるか。もしかしたら、俺の想像を超えるような超でっかい蚊とかが、外の世界を普通に飛び回っていたら嫌だし。そう考えると、本当に俺のコンビニって便利だよな。
「何を、急にニヤニヤしているのよ、彼方くん? またエッチな妄想をしてアドレナリンを大量放出していたの? ほどほどにしないといつか暴発して、いざという時に使い物にならなくなっちゃうんだからね〜!」
「バカ、エッチな妄想なんてしてねーよ! それよりも、エルフ族は野外で暮らしているのに、いつも肌がスベスベなんだな〜って感心をしていたのさ」
「ホントにそうよね〜! 永遠に若くいられるその美の秘訣をぜひ教えて欲しいわ〜! 野外でアウトドア生活をしながら、あれだけの美貌を常に保っていられるんだもの〜! それこそ紫外線とか浴びまくりのはずなのにね。私ね、エルフさん達から色白美肌の秘訣を聞き出して、それを『エルフ式美容術大全』っていうタイトルの本にして、出版するつもりなんだから! その本の印税で大儲けをして、念願の大金持ちになってみせるのよ〜!」
ほほう、それは実に良い心がけだな。
ぜひぜひ出版してくれていいぞ、玉木。
なんならコンビニのコピー機は、お前に無料で貸してやる。
もしその本の売り上げで儲けが出たら、そのお金を異世界ATMを使って元の世界に送金してもいいんだぜ? ……まあ、送金方法が解明出来るのに、数億年かかるかもしれないけどな。
「総支配人様。農園エリアにお越し頂き、ありがとうございます!」
俺と玉木が話をしているのに気付いたレイチェルさんが、小走りでこちらにやって来た。
農園エリアの中で土木作業をして、太陽の光に照らされているレイチェルさんもやっぱり色白で綺麗だよな。むしろ玉木は、エルフよりも。レイチェルさんに美白の秘訣を聞いた方が良い気がするぞ。
……おおっと!
俺はとっさに身構えて、ティーナの方を慌てて振り返る。
でも、後ろにいるティーナは、目を何度も瞬きをさせながら。不思議そうに俺の顔を見つめているだけだった。
――あれ、今回は俺の考え過ぎだったかな?
それともティーナ的には、レイチェルさんになら。俺が目を奪われても大丈夫という、安全基準でもあるのだろうか。
うーん、よくは分からないが……。
俺がレイチェルさんに見惚れる事は、どうやらティーナ的にはセーフらしい。
なので俺は、安心してレイチェルさんに話しかける事にした。
「レイチェルさん、本当に凄いですね! 何だか物凄く大規模な作業になっているみたいですけど。これ、全部レイチェルさんの主導で行っているんですか?」
ピンク色の髪を眩いばかりの陽光に反射させながら。いつもの営業スマイルで、ニッコリと微笑んでくれるレイチェルさん。
「ハイ。もっとも建築の仕事は全て四条さんにご協力して頂いていますので……。私は今回、ただの工事監督のような立場でしかないのです。客人のエルフ様達に、ぜひ快適なコンビニライフを味わって頂けるよう、そのお手伝いをさせて頂いております」
うーん、実に眩しい爽やかな笑顔だ。
俺が広告スポンサーなら、今の笑顔の映像をドアップにして、この農園エリアをアピールするCMをガンガンに地上波で流すだろうな。
それだけで明日には、日本中から観光客が農園エリアに押し寄せてくる気がする。
何だかレイチェルさんが監督って時点で、絶対な信頼感を感じるのは何でなんだろうな。
これが、玉木が現場監督です――なんて話を聞かされたら、余裕で役職変更をお願いする所なんだが。
「ところで、エルフ族が一番大切にしているココルコの木は、ここでちゃんと育てられそうなんですか? まだそういった実験とかも何もせずに、かなり見切り発車で引っ越しも決まってしまいましたけど……」
俺は、この農園エリアが本当にエルフ族に適する土地なのかを尋ねてみると。レイチェルさんは笑顔で返答してくれた。
「その点なら、どうかご安心下さい。ココルコの木は本当に成長が早く、既に20センチ位の長さの芽が地面から顔を出しているんです。とても可愛らしい芽なので、これから成長するのが本当に楽しみなんです。エストリア様の話ですと、すぐに大きな木になるので。今の所、何も問題は無いそうです」
朝の連続ドラマの爽やかヒロインのように。
太陽光を背景に、ポートレート撮影をしたような爽やか笑顔でレイチェルさんが無邪気に笑いかけてくれる。
「そうなんですね、それは本当に良かったです!」
何だかレイチェルさん、今日はとても機嫌が良さそうだな。
心なしかウキウキしているようにも見えるし。もしかしたら、コンビニに新しい住人が増えて、テンションが上がっていたりもするのだろうか。
レイチェルさんは俺のコンビニが発展していくのを、もの凄く喜んでくれる所があるからな。
でも、たまーにコンビニに陶酔し過ぎて。その発展の為なら手段を選ばないみたいな、悪い顔をしている時があるのが不安だけど。
「今回のエルフ族の皆様の居住地作りは、コンビニにとってとても良い機会でした。ここで四条さんに大幅なレベルアップをして頂かないと、この後に来られる沢山のお客様達の為の街作りが出来ませんからね」
「え? この後に来るお客様って……? それはどういう意味なんでしょうか、レイチェルさん?」
俺はレイチェルさんの言葉の意味が分からずに、聞き返してみると。
「……ふふ。それはまだ内緒です。でも、きっとすぐに分かりますよ、総支配人様」
ニコリと笑って、丁寧に俺に頭を下げるレイチェルさん。
うーん、何だか笑ってはぐらかされてしまったような気がするけど、本当にそれはどういう意味なんだろうな。
――そうだ! シェルターの中にあった異世界ATMの事についてもレイチェルさんに聞いてみよう。
コンビニの中の事なら、レイチェルさんは大体全てを把握しているような気もするし。
「レイチェルさん、そういえば前回のレベルアップでコンビニに追加をされた『異世界ATM』を、事務所にあるシェルターの中で見つけたんですけど……。そのATMの使い方について、何か詳しく知っていたりはしますか――?」
「ATMを見つけたのですね、総支配人様。アレはお金を無限に収納できる貯金箱のような役割をしていますので、今後コンビニが他国と通商をして得た収益を、まとめて貯めておける便利な設備になると思います。ただ、申し訳ありません。その機能については私もあまり詳しくはないのです。総支配人様の偉大なるコンビニは、全ての世界の神秘と繋がる究極の建造物ですので。コンビニの地下階層を統べる私であっても、把握出来ていないものもあるのです……」
「そうなんですね。レイチェルさんでも、分からない物があるんですね……」
うーん……。じゃあ、やっぱり異世界ATMの送金の数字は謎のままか。その辺りについては、きっと自力で解明をするしかないんだろうな。
「……そういえば異世界ATMとは別に、今回俺のコンビニには『コンビニ支店1号店』というのも新たに加わっていたんですけど……。実は、これもよく俺は分かっていないんです。『支店』というくらいだから、本店とは別にコンビニが新しく外に作れるのかと思っていたんですけど。その方法もまだ全く分かっていなくて……。レイチェルさんはコンビニ支店について、何か知ってたりしますか?」
「コンビニ支店の事でしたら、よく知っていますよ」
「ええっ、そうなんですか!? そ、それってどういう風にすれば、外に出せるものなんですか……?」
さすがは、レイチェルさん。
コンビニの商品や設備の事なら何でも知っているんだな。
むしろこれからは、コンビニのレベルが上がるたびにすぐにレイチェルさんにその使い方を指導してもらった方が良さそうな気がする。
「コンビニ支店1号店は、コンビニのレベルが5レベルの時と同じ状態のスペックで、外に展開する事の出来るコンビニの姉妹店なのです。本店には自動修復機能が付いてますので、異次元の空間に収納する事はもう出来なくなってしまいましたが……。支店は総支配人様が以前にされていたように。自由に収納をしたり、外に出したりする事が出来ます。普段はカプセル状の形になっていて、コンビニの代表者、あるいはその守護者の者であるならば、声を上げて呼び出すだけで、この世界に出現させる事が可能です」
「えっ、えっ!? 以前のコンビニみたいに自由に出し入れが可能なんですか?」
突然に与えられた情報量のあまりの多さに、俺は驚いてしまう。
コンビニレベルが5の時って……。
たしか、カディナの街を俺達が離れたくらいの時だよな?
ちょうど地下シェルターや、ガトリング砲がコンビニの屋根に初めて装備をされた時くらいだった気がする。
しかも、以前のように自由にコンビニの出し入れが出来るって事は……。
また俺の必殺技である『無限もぐら叩き』が使えるようになる――って事でいいんだろうか。
アレはある意味、俺自身が使える中では最強の必殺技でもあったから。また使用出来るのなら、本当に嬉しいんだけど。
「――えっと、レイチェルさん。そのコンビニ支店1号店は普段はカプセル状になっているとの事ですけど。それはこのコンビニの中の、一体どこに置いてあるんですか?」
「コンビニ支店1号店のカプセルでしたら、今はセーリスに持たせています。グランデイル王国に向かった皆様の身に何かがあった時には、必要な物だと思いましたので。取り急ぎ、すぐに渡してしまいました。総支配人様に相談せずに、私が勝手に判断してしまい、本当に申し訳ございません……」
「いえいえ、それは全然大丈夫ですよ!」
レイチェルさんが丁寧に頭を下げて謝罪をしてきたので、俺はとっさに気にしないで下さいと手を振った。
そうなのか。コンビニ支店1号店は今、セーリスが持っているのか。
今回のコンビニの支店は俺だけじゃなく、コンビニの守護者も扱えるという事らしいからな。
という事は、セーリスやアイリーン、レイチェルさんもそのカプセルさえ持っていれば、自由にコンビニを出せるって事なんだな。
「そのコンビニ支店も、もうすぐここに戻って来ると思います。コンビニはこれからきっと忙しくなると思いますので。私も四条様の能力アップが早めに出来る様に、ここで頑張って指導をさせて頂きますね!」
ん? コンビニ支店が戻ってくる?
これから更にコンビニが忙しくなる?
それは、どういう意味なんですか……と俺がレイチェルさんに尋ねようとすると――。
俺のスマートウォッチに突然――通知音が鳴り響いた。
どうやら、地上にいるアイリーンから連絡メールが届いたようだ。
そのメールには、こう書かれていた。
『――店長。グランデイル王国に向かわれていた杉田様が戻って参られました。ですが……その他にも、大勢の人々を連れていらっしゃるようです。おそらくその数は――3000人は超えていると思われます!」