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変わり者達

 不意に感じる恐怖。誰の感情か視線で探すも、視界にはそれらしき人物がいない。誰の感情だろう。


「ふぅ〜。ごちそうさま。オリちゃんは午後どうするの?」

「……うん。午後は自由時間だし、街に出るよ」

「そっか〜。私も午後は自由にしたかったけど、少し勉強しないと不味いかななんて」


 ユカはあまり勉学が得意ではない。うん、苦手なんだと思う。授業中に教師に当てられても、珍回答ばかりだし。


「大丈夫?今回の試験、前回よりも難しくなるって聞いたけど」

「うっ。だから勉強するんだよ〜。最後の手段としては、オリちゃん様教えて下さい」

「まあ、いいけど。あ、補修用の授業も午後に受講出来るから参加したらいいんじゃない?」


 何故か泣きそうな顔でこちらを見つめてくる。


「いや、以前受けたけど全然分からなかったんだよ〜。もう、こんなんやだ〜」


 とうとうユカが壊れた。流石に弄りすぎだな、反省反省。


「ごめんごめん。試験前にまた指導してあげるから、元気出して」

「ぐすっ。本当?」

「本当、本当」

「じゃあ、とりあえず今日も頑張る。今度宜しくね」


 そんなこんなでユカとは別れたものの、私の生活の中で欠かせない存在であることには変わりない。


 私たちが暮らす施設から出ると、当てもなく彷徨うふりをしながら、目的地へと向かう。

 外には室内以上のドローンが見回りをしている。それを撒こうとしても、逆に怪しまれるだけだ。


「ほんと、不便な世の中よね。これが昔の人が抱いていた理想の世界だなんて、バカみたい」


 自由に動くことが出来ず、常に監視の目がある。そして、その監視の目が私たちを評価する。


「まあ、いいけど。管理しているつもりでずっといればいいさ。……気付いた時には、既に遅いだろうけど」


 目的地のカフェに到着。ここは、最近だと珍しく生身の人間がお客様に接待している。


「いらっしゃい。なんだ折原か」

「失礼ですね。店長、こんな花の女子である私に対してなんだとは」

「あぁ、はいはい。そういうとこが面倒なんだが、まあいい。今日もよろしく」

「了解です」


 ここは私がアルバイトとして活動している場所。ただ店長が変わり者で、自身の感情や感覚を共有されても構わないと考えている。だから、他の店員も似たようなのが集まっている。

 とは言っても、お客様が不快な思いはしないように、感情フィルターを席の間仕切りに使用している。


「デバイスを用いての接客が当たり前の世の中で、このお店は本当に変わってるよ」


 いや店長がものぐさなだけか。支度を済ませ、表に出る。


「おお、そうだった。今日のシフトは折原と撫刺姉妹、小野田だから」

「げぇ、小野田が来るんですか?あの人、私たちを見る時の感情がイヤらしくて、気持ち悪いんですが」


 撫刺姉妹、読み方はナデサシ、撫でて刺す。物騒な苗字の姉妹だったけど、会ってみたら凄かった。正反対の価値観、感情で行動してて最初は頭がパンクするかと思うほど疲れた事を覚えてる。


「お前もそういう可能性がある事が分かってて、ここに来たんだろ。諦めな」

「……まあ、ここで働く以上仕方のない事ですが。しょうがない、精々苦しめるか」

「おい、折原やり過ぎるなよ。前回も小野田からはお前のせいで苦しんだことを聞いてたから」

「自業自得ですよ。あちらがこちらに対して感情をぶつけて来なければ、私も何もしません」

「もういいや。少しは気をつけろよ」


 疲れた顔をした店長は厨房へ引っ込んだ。仕込みの時間のようだ。あと、1時間しないうちに撫刺姉妹も小野田も来るだろう。揃い次第、午後の部のオープンだ。


 カランッ。CLOSE状態のお店に誰かが入って来た。緊張とやる気の感情を少し感じる。


「うぃっす!今日もよろしくっ。……なんだ店長は厨房か」


 元気多過ぎな感じで入って来たのは、小野田だった。うざい。


「うるさい、小野田。あとキモい視線で私を見ないで。間違えた、キモい感情で私を見ないで」


 小野田の視界に私が入った瞬間、身体がゾワッとする気色悪い感情が私を包む。包まれたと感じた時には、頭が勝手に私が経験した怖い記憶を回想していた。


「うるせぇ、折原。男はみんなこんなモンなんだ。お前も大概よ、どうやってんだよ。こんな恐怖の感情を即座に俺にぶつけるなんて」


 文句を言いながらも小野田は顔を真っ青にして私に言い返してくる。いい気味だ。


「お前らうるせぇーぞ。少しはいがみ合わないことを覚えろ」


 私たちの喧嘩?に腹を立てたのか店長が厨房から顔を出す。


 カランッ。そんな中で最後の店員達が到着した。


「おはっよーございます!撫刺姉妹、姉担当。貴方の心を癒すピュアな店員、ユイカ。参上!」

「こんちわー。姉ちゃん、もう昼だよ。……まあっいっか。撫刺姉妹、妹担当。……サイカ。今日もぐうたらしたいっす」


「あぁ、はいはい。今日もよろしく。……なんでこんな個性的な奴らしかこの店には来ないんだ」


 本日の店員が集結したが、店長は本当に疲れた顔で厨房へ戻る。いや、店長あなたが変わり者だからに他ならないと思うのですが。

読んで頂きありがとうございます。

書きたい事をこの物語でつらつらと描けたらいいなと思っていますので、宜しくお願いします。

読んで不快でなければ!

次も読んでもらいたいです。

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